エラスが与えた眠りの中での幸福。支配者による平和な仮想現実という感覚は、言うまでもなく「マトリックス」などでおなじみのもの。そこから脱出し叛乱を起こすというくだりもおなじみですが、この盤石のプロットの上で何をやるかが肝心となってきます。
展開されたのは、メンバー個々の皮膚感覚に根ざした繋がりの確認でした。これは今シーズンで、悪く言えば執拗に、良く言えばじっくりと描かれて来たテーマの集大成でしょう。
エラス
絶対者としての力を存分に描いています。
瞬時に街が荒野と化すシーンのインパクトは得がたいもの。その直前に「養分」となる人間を地上から引き上げているあたり、とりあえずこの時点で人々の生命が担保されているという描写にもなっていて、段取りが見事でした。
この絶対者ぶりの加速によって、キャラクター的には面白味が失われました。母胎のイメージも皆無となり、単なる処刑人と化したわけです。ただ、インド神話に代表されるような破壊、創造、醸成といったプロセスを踏襲しているところに、神秘性が感じられるのも確か。
リュウソウジャーが立ち上がる姿は、正に理不尽な神への謀反とも捉えられ、ある意味、今シーズン最大のトピックである「シームレスな巨大戦」を端的に落とし込んだ構図になっています。これは凄いですね。
ヤバソード
エラスからまた誕生したという設定で再登場。今度は夢から覚めた者を排除していくという、ターミネーター的な役回りでした。まあ、それ以上でもそれ以下でもなかったというのは、彼にとって不幸だったと言わざるを得ませんが…。
クレオン
このキャラクターがどう活きてくるのか興味津々でしたが、なかなかの活躍。
まずはコウたちを夢から目覚めさせるという役割を担い、ストーリーの進行に一役買っています。そして、エラスの体内にとらえられたメルトの案により、メルトからサタンマイナソーを生み出して一気に脱出を計るという、素晴らしい活躍も。
巨大化要員が逆転劇のきっかけになる嚆矢は「チェンジマン」の最終話ですが、それに近い驚きがありましたね。こういう理知的な展開、それもメルトによる発案という強さも含め、実に好みの展開でした。
平和な夢
それぞれが、夢の中で個々の平和を見ているというのが冒頭の描写でした。コウは龍井邸からお遣いに出かけてナダと卓球をし、メルトはカフェでゆったりと読書をしつつモテていたり。トワは広い世界への憧れに胸をときめかせ、バンバはマスターブラックと剣術の稽古に励む…といった具合です。
今回のキーとなるのは、アスナとカナロ。アスナは大食いチャレンジを達成していて、カナロは理想の婚約者と遂に結婚式を挙げる直前でした。
これらは何の変哲もない…というか、普段から時々夢に見ていた光景ではないかと思えるところがあって、現実感と夢想の狭間を行き来する秀逸な感覚がありました。
しかし、理想の引力が強いカナロと、夢の中での皮膚感覚の乏しさを鋭敏に感じ取る現実派のアスナとで、両極端となるのです。これこそが今回の白眉。
カナロとアスナ
私は、今回もコウがエラスとの対決を先導するものと思っていました。ところが、この役割をアスナが担うことになろうとは…。
ある意味、食欲に支配されていて使命感とは最も遠いキャラだったアスナ。彼女の持つ「実感」が、エラスのもたらす仮想現実に「否」を唱えることとなるのです。
一方で、使命が理想となり、いつの間にか目的が手段にすり替わってしまったカナロは、甘美な夢にとらわれてしまうことになります。カナロの魂の叫びは、少し日常に疲れている大人には物凄く響くものでしたし、ヒーローがこんなことを言って良いのかというタブーに触れつつ、コウも一瞬迷いを感じたこともあって、暗い過去を持つリュウソウ族としては一つの結末として許容し得るものだったのかも知れません。
しかし、アスナは空腹は夢で満たされることはないという「真実」を突きつけて、それを真っ向から否定します。大食いヒロインがここで昇華されるとは!!
手を繋ぐこと、共に楽しい時間を過ごすことがアスナにとっての「次に繋がる希望」だったわけで、常に使命感に生活の多くを費やしてきたコウたちが忘れかけていたものを、唯一アスナのみが訴えられるという、凄まじい伏線回収。渾身の泣きの芝居も相俟って、ド終盤にあって真のヒロイン覚醒でした! 1年間、観てきて良かったと感じられる一幕だったのではないでしょうか。
そして、決意の変身が全員強化版になっているのが超絶力強く格好良いのです。この瞬間のためだけにとっておいたとも言わんばかりの迫力でした。
最終回
そして次回は遂に最終回。実際、どのような結末が待っているのか予想がつきません。さらに、郷さんはちゃんと出てくるのか(笑)。ういはちゃんと帰ってくるのか。
色々予想しつつ楽しみに待ちたいと思います。
アスナに尽きる、その一言です。この時期は一年間の集大成なワケですが、アスナ役の尾崎さんを始め、レギュラーメンバーの凄まじい成長を垣間見ることができました。昨今少なくなった4クール作品の醍醐味とも言えます。思わず尾崎さん表紙の〇レイボーイ買ってしまった・・・。
それは置いといて。
以前、コウ以上にレッドらしいアスナと書き込みましたが、それがここに来るとは・・・。コウって、良い意味で懐が広すぎてカナロ側にも寄ってしまうんですよね。でもアスナは良い意味で我儘なところがあって、こういう時に我を通すことができるんですよ。
なんやかんやで、力を入れてきた巨大戦も良い出来だったと思います。微妙に円谷っぽくなってしまったところもありますが、こればっかりはしょうがないですね(苦笑)。
そして、騎士竜総進撃(違)と全員の強化バージョン!見たかったものが最高の場面で見られた気がします。
ラスト1話でこんな展開になるとは、思ってもいませんでしたね。
まあ、ういちゃんはどっかで見たような映像で出てきましたけど(笑)郷さ~~~ん(水際をウルトラ5つの誓いを叫びながら走る天地人・・・って、違う)
でも、長老は最終回にはぜひ出てきて欲しいです。
いろいろと展開に不満もあったリュウソウジャーですが、ここに来ての盛り上がりはさすがですね。
そして次週はいよいよ最終回、今回以上の盛り上がりを期待してます。
それではまた
うーん、見事にやられました。アスナちゃん、いやアスナ様。心の底からの力強い台詞(願望?)といい、拳一発で地面があんなにヒビ割れるパワーといい、ド迫力のある見事な男前っぷりでした!!
ワイズルーとクレオンの動向も気になりますが、「エラス」と「ドルイドン」と「リュウソウ族」の決着がどうなるのか非常に楽しみです。
最終回を見終わった後で描き込んでますが(;^ω^)、
今回の見せ場はズバリ「芝居」でしたね。
育ちの良いカナロが弱音を吐くのも「らしい」と
思うし、同じ構図で仲間が居る、居ないの2バージョンを
撮るというのもハードルの高い撮影だったのではないでしょうか。