騎士竜戦隊リュウソウジャー 第28話「ミクロの攻防」

 直球の「ミクロの決死圏」ネタをまさか現代の戦隊シリーズで観ることができようとは。

 ミクロ化はウルトラの星の特権かと思っていましたが、なるほど、リュウソウルの万能性を活かし、敵側の能力に巻き込まれるプロットから離れた形でこういう話が作れるわけですね。



ベルゼブブマイナソー

 今回のマイナソーは元々極小だったという、正にミクロの戦いに相応しい一体でした。

 このテの話で、恐らく最も有名なのは「ウルトラセブン」のダリーの話だと思いますが、ダリーもこのベルゼブブマイナソーと同じく極小の怪獣であり、同じく気付かれず体内に入り込むという展開でした。

 一方で、今回のマイナソーが直接的にアスナの死を意図して送り込まれたのに対し、ダリーはあくまで細菌やウイルスの類として描写されており、ダリーに寄生された少女が血液を求めて徘徊するというホラー性も今回は皆無となります。これは今日的な描写と言えますね。

 そういえば、ダリーの話と同じく、リュウソウジャーも鼻腔から体内に入ってましたね。多分オマージュに違いない(笑)。

 ところで、ベルゼブブと言えば、キリスト教伝播の過程で貶められた土着の神が元となる、いわゆる「高次の悪魔」の一体であり、マイナソーのモチーフに採用されたことに対する驚きが少からずありました。どちらかと言えばマイナソーは妖怪的なモチーフが多かったので。あ、パーンマイナソーなんてのも居ましたが。

 デザインはその出自が意識されたのか、「蝿の王」としての分かりやすい意匠と共に、高貴な雰囲気の装飾が施されており、なかなか的を射たデザインだと感心した次第です。

 巨大化すればアスナの肉体が確実に破壊されるという恐ろしい展開も秀逸でしたね。阻止の可能性はあるが困難…というタイムリミット的なシチュエーションも見事で、今回のスリリングなストーリーテリングは正に芸術的でした。

 アスナのくしゃみと共に排出されたマイナソーが、換気扇で吸い込出された途端に巨大化するという描写も、秀逸そのものでしたね。

ミクロの戦い

 最新のテクノロジーを用いて撮影された体内は、ファンタジー寄りのイマジネーション豊かな描写ではなく、かなりリアリスティックな描写になっていました。もちろん、過度に生々しく描くことは避けられ、胃カメラの映像をデフォルメしたような感じに仕上げられていたのは巧いところでしたね。

 ただ、肺に寄生したマイナソーから伸びた尻尾が心臓に巻きついているという描写は、血管を経由しているにしても完全にファンタジーで、状況を分かりやすく示すための方便が使われています。戦隊の制作スタンスを端的に示していたと言っても過言ではないでしょう。

 アスナを傷付けまいと恐る恐る戦うリュウソウレッド&リュウソウブルーのアクションも面白かったですね。

コウとアスナ

 それにメルトも。

 三人の関係性が非常に静かに、かつ強烈に描かれていましたね。

 尾𥔎さんの汗だく(多分メイクですけど)になりながらの苦悶の表情が、筆舌に尽くしがたい色気に満ちていたのもさることながら、コウを信頼しきった覚悟の表情、事態の打開に焦るメルトを引き留める手など、この三人が六人のリュウソウジャーの中でもとりわけ強固な関係性で結ばれているのを、存分に感じさせてくれました。

 コウはナダ発案の「ドッシンソウルの衝撃波によって心臓を取り巻くマイナソーの尻尾のみを破壊する」という作戦を成功させるべく、特訓を開始。結局訓練中には一度も成功しないまま、アスナに使う羽目になります。

 当然、成功以外の結果は待っていないことなど分かっているのですが、芝居の素晴らしさがそれを許さないわけで、緊張感溢れる見事なシーンに仕上がっていました。

 訓練中に発せられるナダの厳しい言葉も印象的。というより、「レッドに相応しくない」という言葉は完全に後に繋がる伏線であり、独白のシーンでは自らがコウの跡を継いでレッドとなる意志を、しっかり吐露していました。ただしこれは、妬みからの地位奪取というより、純粋にリュウソウ族としての使命感がそうさせている可能性もあるので、一概にナダが危険人物であるとの断定はできません。

バンバ

 今回、最も印象を残す存在になってしまったバンバ。以前のバンバならば、アスナを救うために容赦なくマイナソーを生み出した人間を抹殺していたかも知れません。しかし、トワとカナロと共に、一貫して「人間からマイナスの感情が生まれることを阻止」する方向性で行動。ここではタイムリミット感覚のせめぎ合いが敵味方を対峙させて行われることになり、ガチレウスも加わってバトルが白熱化することになりました。これは凄い。

 そしてエピローグでは、無事だったアスナを見て安堵する一幕も。もう会えないと諦めかけていたというセリフからは、アスナに対する少し特別な感情も垣間見えており、バンバのキャラクター性の厚みをさらに増すことになりましたね。

次回

 次回はカナロがメイン。「仮面ライダーW」で馴染み深い、山本ひかるさんがゲストとあって、色々な面で楽しみですね。



投稿者: SirMiles

【マー 🏃 SirMiles / Masafumi Fujimura / https://sirmiles.com / maruzoku】 Run、音楽、プラモ。趣味は広く浅く。生業はIT系。

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9件のコメント

  1. 愚兄です。

    今回ストーリーも各人の演技もアクションシーン(リュウソウピンクの強竜装が秀逸)も全てよかったです。

    心臓にマイナソーのしっぽが絡みついている点は確かにスケール的にもおかしいのですが
    特撮番組として許容範囲内でしょう。自分が気になったのは肺の中のセットでした。ウルトラセブン第31話「悪魔の住む花」の体内表現は今見ると確かにチープなんですが、見たこともないものを映像化しようという意識が感じられるのです(上から垂れ下がっているピラピラとか赤い照明とかスモークとか)。それに比べるとリュウソウジャーの方が(グロにならないよう簡略化しているとはいえ)安っぽくみえる…というのはオヤジの思い出補正でしょうか。

    心臓への攻撃方法、練習では一度も成功していないのにぶっつけ本番にかけるくだりは「結局気合頼みか」と思ったのですが実行までのアスナとメルトとの絡みが非常によくできていて気になりませんでした。

    最後に自分はネタバレ情報は一切見ない主義なので想像で書きますがナダはガイゾーグの鎧を奪って7人目になるんじゃないでしょうかね。で、初代マスターパープルを名乗るとか。
    ではまた。

    1. 今回は文句なしな出来でしたね。デフォルメ加減も巧みでしたし。

      ディテールの少ない体内描写は、現在の感覚にはそこそこマッチしていると思います。CTやMRIという「可視化」が進んでいるので、こんな感じが丁度良いんでしょうね。とは言え、私もセブンや80に出てきたの体内描写も大好きですが。

      ネタバレですが、私も見ないようにしてます。昔はかなり追いかけてましたが、正直、そこまで先取りする情熱もないです(笑)。

  2. ナダって第一印象がちょっと怪しい関西弁の男、でしたがコウに特訓つけて良い人っぽかったり、裏では腹黒かったり、掴みどころを見せてないことがストーリー展開に上手く作用しているみたいですね。
    本当に腹黒いやつが「アスナの命にもう一度は無いんやぞ!」っていうかなぁ。でも自分がレッドになれた時のメンバーとして必要だからかなぁ。などと探ってしまいますが。笑

    最近のアクションシーンで、剣を空中で持ちかえる、というシーンが印象に残るようになりました。最初はスーツアクターさんだけでしたのに今回はナダもしていて、スマートなアクションに見えるのがカッコいいと思います。

    ドッシンソウルを使うときにコウが自己主張しましたが、以前の凶暴なコウがアスナを守るために優しさを持ち出した、というくだりも上手く活きて納得の展開でした。

    私もネタバレ情報は見ない主義です。自分の世界でアレコレと妄想するのが楽しいので。汗

    1. ナダは少なくとも敵側の人物でないであろうことは間違いないのですが、味方内部を引っ掻き回す人物であることは確実ですね。掴みどころのなさは今のところ良い方向に作用していますね。

      持ち替えアクション、私も印象に残っていて好きなシーンです。明確に最初に見たのは「M:I II」でイーサン・ハントが銃を空中で持ち替えるシーンでした。正にジョン・ウーならではのアクションという感じで、ファンタジーとリアリティの止揚でした。

      ネタバレの件、確かに妄想や予想が楽しいですよね。凄ーく分かります!

  3. すごく身も蓋もないことを言ってしまうと、新登場のドッシンソウル活躍回、と言えるものでしたね(苦笑)。その点では、ドッシンソウルの特性をもうちょっと説明してもらえたらよかったのですが。いきなりドッシンソウルを使おう!って展開でしたし。
    何より、漢らしすぎるアスナの魅力爆発で、幼馴染三人の関係性が見事でした。多人数が魅力の戦隊で、今さらかもしれませんが、リュウソウジャーでは、コウたち三人とプラス三人という作劇に割り切っての演出なのかなと、ふと思ったり。
    体内でのミクロの戦いといえば、特撮界では、どうしてもウルトラセブンになってしまいますね。基本、巨大化ヒーローであるウルトラシリーズにあって、セブンは等身大戦闘も多くて、単純なヒーロー物というより、SF作品なんですよね。
    やっぱり腹に一物系だったナダ。嫉妬とか悪意というより、暴走した正義・使命感や、手段と目的が入れ替わってしまった、という流れだと思われますが・・・。

    1. ドッシンソウル登場回、身も蓋もないどころかそのものでしたね(笑)。よーく見ると、確かにドッシンソウル本来の能力そのものとアスナを救う作戦との繋がり自体は希薄なんですよね。何でそうなるねんっていう。

      コウたち3人プラス他の3人という構図は、狙ってやっているんじゃないでしょうか。キュウレンジャーでの試みを大胆に王道戦隊へと流用した…という雰囲気が見られます。

      セブンのダリーの回は、後半戦で予算の削減が厳しい時期なので、特に文芸で勝負している印象があります。SFやったろうじゃないのという先鋭的な感覚が見て取れますね。

  4. アスナを救うため、ナダの考案した特訓をするが失敗が続くコウ。
    ナダ
    「その顔は何だ、その目は何だ、その涙は何だ。」
    「お前がやらずして誰がやる!お前の涙で、奴が倒せるか?このアスナを救えるのかっ」
    コウ
    「いや~~~~っ」

    ・・・それはレオ(汗)
    いや、あの特訓シーンと、成功しないまま途中で投げ出すカットを見たら、思わず連想してしまいました。
    それにしても、ハートの形をした心臓って・・・確かに分かりやすいんですけど、何だかなーって思いました(笑)
    戦隊らしいっていえば、確かにそうなんですけど。
    それにしても美人が苦しみもだえる姿(おいっ)って、何でこんなに惹かれるんでしょうか。
    いつも元気一杯な姿のアスナを見慣れていると、こういうシーンにドキットしますね。
    それと、いよいよ覚悟を決めたようなナダのセリフも、今後どうなっていくのはドキドキします。
    それではまた

    1. その流れだと、コウをジープで追い回すナダが見たかったような(笑)。たまに見たくなるんですよね、初期のレオ。それで疲れた後は、ウルトラマンキングがハンマーを振る回を見たりするんですが。

      ハートの形をした心臓は、リュウソウ族の長命を支えているらしいですよ…すみません、嘘です(爆)。

      アスナの苦しむ姿、何人かのいたいけな視聴者の何かを目覚めさせていなければいいんですけどね…。既に目覚めている我々は、ただ楽しむだけですけど!

  5. 愚兄です。
    苦しむ姿で何かが目覚めるといえば志穂美悦子さん、森永奈緒美さん…。はっ、すいません。忘れてください。

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