快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー #34「伝説の銃」

 台風による停電がないかと恐れていましたが、幸いルパパトのオンエアには全く影響がなく、安堵した次第でございます。結局、土日とも停電はありませんでしたが、暴風はかなり恐ろしかったですね…。

 さて、今回は快盗のターン。パトレンジャーは戦闘に参加するものの、本筋には殆ど絡みませんでした。アルセーヌの意志を真に受け継ぐ者は誰か? というのがテーマとなっており、当然の如く魁利がその誉れを受けるわけですが、歴代レッドとは一味も二味も趣が異なり、本当に格好良かったですね。



ケルベーロ・ガンガン

 ケルベロスと銃のコラボレーションという今回のギャングラー怪人。凶悪無比の恐るべきヤツ…と言いたいところですが、ガンマニア、射撃マニアの域を出ない怪人で、戦慄すべきスナイパーの雰囲気をまとった歴代の銃撃系怪人とは、これまた一味も二味も趣を異にするキャラでした。

 今回は新ガジェット登場編ですから、その「当て馬」的な役割を担うのは当然のところ。ガンマニアという嗜好が巧く絡んで、その惨めさも見事に引き立ちましたね(笑)。

 また、地獄の番犬というモチーフのおぞましいデザインからは想像できない「犬」の性質が物凄く笑えます。とにかく犬の要素が可愛らしく、そのギャップで笑わせてくれました。巨大戦でも骨を追いかけて爆発するという、ゴレンジャーハリケーンもかくやと思わせる展開。全体的なテーマが重かったので、こういうライトな作風は大いにアリでした。

 しかも、声は稲田徹さん! 同じ地獄の番犬でこうも違うのかという名演をたっぷり魅せてくれました。

ルパンマグナム

 アルセーヌ秘蔵中の秘蔵のお宝。新ガジェットとしては最高の謳い文句であり、近年の戦隊では軽視される傾向のあった「ガジェット入手までの試練」が久々に丁寧な描写を得た一編だったように思います。

 ルパンレッド専用武器っぽい雰囲気も良く、その入手の流れまでもが「魁利でなければ扱えない」という感覚に説得力を持たせていますね。

 その威力のほどもド派手に描写され、反動に驚くルパンレッドの様子がちゃんと演じられていたりと、ぬかりはありません。巨大戦でもとどめの一撃に使用されるという、鮮烈なデビューでした。

 プロップには左右に割れるのが丸わかりな分割線が入っており、ちょっとトイ寄り過ぎる造形物だなぁ…と思ったりも。この辺りは仕方ないですかね。

足枷を外せ

 ルパンマグナムを譲る者を選定するためにアルセーヌが仕掛けた「オーディション」として、とらわれている過去と決別できるか…という試練が用意されていました。

 結果的に、透真と初美花はそれぞれの取り戻したい人物の幻を、幻と分かっていながら撃ち抜くことはできず。ノエルも詳細こそ描かれませんでしたが、そこまでクールにはなれなかった様子。ノエルのキャラクター性からすると、少し逡巡しつつもクリアしそうなものですが、彼はあくまでアルセーヌの助手を自認する立場ということなのでしょう。コレクションの扱いに手慣れた優秀な助手というポジションは、Dr.ワトソンを持ち出すまでもなく、スパイ映画などでもお馴染みの「美味しいポジション」ですから、今回の結果は的確だったと言えるかと思います。

 唯一、兄・勝利の幻を躊躇無く撃ち抜いたのは魁利。魁利にとって、兄は取り戻したい最も大事な人物ではあるものの、実は自分の道を制限する人物でもあったわけで、今回、兄の言うことを鵜呑みにしなかったのは、当然と言えば当然でした。

 以上のように、他の三人とは幻となって現れた人間との関わり方が違っていたというのも、魁利にとってラッキーだったのかも知れませんが、深掘りしていくと、魁利のみが肉親(ノエルについては不明ですが)であり、血縁という部分で本来は「撃つ」という行為がもっと赦されない関係性だったとも言えるわけです。そこを容赦なく自分のやり方で貫いた魁利は、やはり今シーズンのテーマのアイコンたる「レッドヒーロー」だと断定できるまでに昇華されました。

 いや、ホント、今回の魁利は究極に格好良いんです。

 親しい人の幻を撃てないというお約束は、破られる方が珍しいわけで、例えば「宇宙刑事ギャバン」の最終回でもナレーションによる補足まで付けてギャバンの優しさを強調していたり、ヒーローの人となりを表現する手段として頻繁に利用されました。ところが、今回は逆の意味でヒーローの人となりを見事に表現しました。勿論、従来どおりのパターンにハマった透真と初美花に関してもです。

 誤解を恐れずに極端なことを言えば、「ゴーカイジャー」のマーベラスをアウトロー気取りのツンデレとするならば、魁利は本物のアウトローとしての気骨を備えていると言えます。さすがは「快盗」です。

 ただ、この「足枷」は少々テーマとして破綻しているような気もします。

 魁利たちがルパンコレクションを命がけで集めている目的は、その幻となって現れた人物たちそのものなのであって、ルパンコレクションを集めるというゴールの先に勝利や彩、しほちんが居るわけではないのです。

 そうなると今回のアルセーヌの(そしてコグレさんの)意図は、完全なるルパンコレクションの収集者としての人格を完成させるものだったように見えるわけです。その結果、魁利に至っては「足枷となる人物を取り戻すために足枷を外す」という内部矛盾を抱えることになり、何だかよく分からないループ構造に陥っています。

 表面上の話としては、快盗の覚悟という面でとても分かり易い筋運びだったのですが、テーマを考えると悩ましい状態になってしまったように思うんですね。

 二回りくらい大きなオーラを纏った魁利が、これからどうこの矛盾に立ち向かっていくのか、あるいは巧く曖昧にしていくのか、楽しみですね。

ルパンコレクション

 ルパンマグナムでなければ打ち抜けない壁を創り出すという点で、今回のプロットに見事合致したコレクション。見た目はゴセイジャーの持つテンソウダーそのもので、殆どヒネリもありませんでした。

 ところで、今更ですがルパンコレクションの名称って、歌の題名からとられているみたいですね。私がすぐに思いつくだけでも、レッド・ツェッペリンの「胸いっぱいの愛を」とか、プレスリーの「監獄ロック」、プラターズの「煙が目にしみる」、プリンスの「パープル・レイン(紫色の雨)」、エディット・ピアフの「ばら色の人生」等々。さすがに全部の元ネタは分かりませんが、調べてみると面白そうです。

 今回の「これらの壁」…。ピンク・フロイドの「ザ・ウォール」くらいしか思いつきません。やっぱりよく分からない(笑)。

次回

 次回は三人のコグレさんが登場するカオス回の予感。「欽ドン」世代直撃のサブタイトルが怪しすぎて楽しみです(笑)。

 



投稿者: SirMiles

【マー 🏃 SirMiles / Masafumi Fujimura / https://sirmiles.com / maruzoku】 Run、音楽、プラモ。趣味は広く浅く。生業はIT系。

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10件のコメント

  1. 透真とうみかが快盗を「手段」とするならば、カイリは快盗「そのもの」であるという違いが現れましたね。

    例えばの話ですが、「もし一般人を人質にされ、コレクションとどちらを選ぶのか?」という選択肢を迫られたら、間違いなくコレクションを選ぶような気がします。子供番組としてそんなことはないと思いたいですが、、、。

    ちなみにルパン三世のとっつぁんはなぜルパンを執拗に追いかけるのかと理由について

    さしたる事情があるわけでもないのに、優れた才能を悪事に使う愉快犯だから

    と記述されてます。カイリの場合は事情があるわけですが、今回の話でなぜか上記のことが思い浮かびました。

    ところで5話の回想が描かれましたが、圭一郎がいなかったらマグナムを手に入れられなかったのではないかなと思います。

    その圭一郎は同じ5話の回想で快盗に対する気持ちが揺らいでいるのが対照的ですね。

    幻とはいえ兄を撃ったカイリは、今後圭一郎に対する甘さや迷いがなくなったともいえるわけですので今後のカイリと圭一郎の絡みが楽しみです。

    話がずれますが、今YOUTUBEで「ギンガマン」が配信されてますが、今週配信の「怒りの風」が似たようなテーマが扱われてますね。過去話だとリョウマが勇太の幻を躊躇なく攻撃してました。目的は違えど、自らの信念を貫けるかどうかというのが「幻」という材料に対する裏のテーマなんだなと感じました。

    1. 一般人を人質にされた時は、恐らく二兎を追うんじゃないでしょうか。魁利にはその頭脳があると思いますし、さすがに戦隊シリーズですから(笑)。

      5話の回想は効果的でしたね。何となく圭一郎を絡めてくるのがニクいです。それでいて、安易に融和路線に走らないのが良いですね。

      ギンガマンはあまり覚えていない(見ていない回も多い)のですが、似たような話があったんですね。「試練」として料理しがいのある題材なので、それぞれの作品のカラーが出ますよね。

  2. 透真と初美花にとって幻として現れた人物は「失いたくない人物」なので撃てないのは当然なのですが、魁利にとって兄はもちろん失いたくはないのですが、超えるべき壁でもあるということがポイントかと。あとこれがギャングラーの作り出した幻ならどんな罠があるかわかりませんが、ルパンが作った罠(というより試練)だからなおさらだと思います。
    それにしてもアウトロー気取りのツンデレって(笑)

    1. 魁利の場合、兄の存在は正に仰るとおりですね。関わり方が全然違います。
      そして、「試練」として実に分かり易く見事だったと思います。

      すみません。「アウトロー気取りのツンデレ」は「VSギャバン」で烈に褒められて可愛い笑みを浮かべている印象がどうしても頭から離れないもので…(笑)。

  3. ケルベーロ・ガンガンの銃ですが、ケルサーP-38って言うそうですね。
    (ケルサ~ピ~サンジュハチ~♪その手のなか~に~)
    地獄の番犬ネタといい、知ってるとより面白く感じますね。
    地獄の番犬は監督の指示だそうですが、壁ドーン!ネタは稲田さんのアドリブで、自身が演じたニンニンジャーの妖怪カマイタチでやった壁ドンのオマージュだそうですが、見てる最中は気付きませんでした(汗)
    それにしても、最近圭一郎に気後れした感のある魁利でしたが、今回の一件でひとつ壁を乗り越えたようですね。
    もっとも、圭一郎と対した時にどうなるのか・・・
    あと、最後のコグレさんのセリフが怪しすぎます。でも、こうして見せておいて、次週はあれですか(苦笑)

    最後に今回の「これらの壁」ですが、ビリー・オーシャンの「TEAR DOWN THESE WALLS」の可能性もあるかと。
    最近のですとケンドリック・ラマーの「These Walls」もありますね。
    それではまた。

    1. チャーリー・コーセーの名曲ですね(笑)。
      あと、ワルサーP38といえば破壊大帝メガトロン様でもあります。

      稲田さんのアドリブは相当気をつけていないと分かりませんよね…。とにかくドギー愛が強すぎることは分かりました。

      コグレさん、ラストであんな意味深なことを言っておいて、次回はアレですからね。高低差の激しいシリーズです。

      「これらの壁」、Twitterでもケンドリック・ラマーの説を教えて頂きましたが、ビリー・オーシャンの線もなるほどと膝を打ちました。今回のテーマに合ってますよね。

  4. 今回は切ない話でした。

    最初こそ、稲田さん+地獄の番犬=BOSS なんて懐かしく想像していましたが、話の展開が読めてきた辺りから涙腺が。。。えぇ、年は取りたくないものです。泣

    ところでノエルの大切な人、って誰なんでしょう。って先週も同じコメントしてましたね。汗

    「大切な人」という設定がフェイクでないことを願うばかりです。

    次回はコグレさん。予告では分身?までしていましたが、パトレン側はコグレさんの存在を未だに知らないんですよね?

    存在を知った時、パトレンジャーはルパンレンジャーをどう思うのでしょうか。

    ルパパトの信頼関係(無いかもしれません)が崩壊し始めるようなことになるのでしょうか。

    1. 全体的にライトな作風でありながら、試練による魁利たちの内面描写はめちゃくちゃ重かったですね。私は透真のシーンが切なすぎてヤバかったです。一番クールに見えて、実は一番引き摺っているんじゃないでしょうか。

      ノエルの大切な人がフェイクだったら、それはそれで物凄く面白いとは思いますけど、多分その辺はさすがに避けてくるかと(笑)。

      コグレさん、パトレンジャーと面識がないんでしたっけ?? どうもそういう細かいところを忘れてしまうんですよね。年は取りたく(以下略)

  5. この手の試練では、撃たないことや、第三の道を選択するというのが、お約束だったりするのですが、ズバリど真ん中を撃ち抜くのがルパンレンジャーらしいですね。
    個人的にはガジェットを増やすことには反対なのですが、まあ大人の事情もありますし、今回のようなテーマを背負ったような専用武器っぽい物なら歓迎です。CMで思いっきりネタバレしているのは安定のバンダイクオリティですなぁ(苦笑)。
    ただ、やっぱりルパンレンジャー側がメインのドラマ造りにはなっているようですね。それで、パトレンを脇に追いやるようなことは無いでしょうが、どう両立するか···ですね。

    1. 「第三の道」、甘いと思いつつ結構燃えるから困るんですよね(笑)。ウルトラでは割と多いような気がしますね。

      私もガジェットまみれがあんまり好きではないのですが、昨今の事情ではそうもいかないので、その辺りは制作側の腕の見せ所ですよね。今回はなかなかのお手並みでしたね。

      ここに来て、急激にルパン主体になってきましたが、まだなんとかバランスをとっていると思います。さて、どうなりますか…。

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