5つの金庫を持つゴーシュの実験体を倒すべく、快盗と警察の共闘を画策するノエルの物語。
全体的にシリアスムードで、コミカルなシーンもほとんど見られないという、今シーズンとしては割と珍しい作風で、ここ最近の両チームの歩み寄りムードまで破壊するような、圭一郎の激しいイデオロギーの発露が鮮烈でした。
ただ、「決闘」に関しては少々ノれなかった面も。ノエルの策略家たる部分が皆無で、個人のポリシーを真っ正直にアピールしただけとなり、ちょっと彼らしくないなぁ…というのが私の感想でした。
実験体
前回から引き続いて登場しているギャングラーの怪人。モルモット、フランケンシュタインの怪物といった具合に、「実験」をモチーフとしています。しかも特定の名前がなく、いかにも「創り出された」感が漂う、不気味なヤツです。
故に、これといった目的意識もなく、ゴーシュの実験データを採取するためだけの存在。こういったド直球の「怪物」は、その「対処」を面白く描くにはうってつけの題材ですね。実際、今回はその攻略戦にのみ帰結するストーリーテリングが、シンプルで効果的でした。勿論、ラストにおいて、圭一郎は心中にノエルや快盗に対する引っかかりを抱えることになるわけですが、それはあくまでエピローグでの話であり、「結」の後に次回以降への仕掛けを見せたに過ぎません。
5つの金庫には贅沢にもルパンコレクションがそれぞれ収納されており、しかも5つのロックが連動する仕組みで、1つずつでは開けられないという設定になっています。
それぞれのコレクションが戦闘を有利に進められる能力を有しており、分かり易く「コレクション=戦力」として把握されているため、この実験体の殲滅に至るプロセスには、必ずコレクションの回収というフェーズが入るわけです。回収という快盗の領分、殲滅という警察の領分、双方が作用して初めて落着するというわけですね。
裏を返せば、両チームを共闘させるには、ここまで理詰めで行かなければならないということでもあります。なんとなくシンパシィで共闘してしまうとか、そういった「感情論」の排除を前提に、ところどころ双方のメンタリティの融解を入れ込むことで重厚なドラマを築いてきたわけで、32話にして両チームの関係がほとんど進展しないのも納得と言えます。
余裕のないノエル
今回の白眉であり、かつちょっとした瑕疵とも言えるのが、余裕のないノエルの存在。
「快盗」を名乗るのは最大4人。同時に開けなければならない金庫は5つ。数のアンマッチに、魁利はグッドストライカーでの分身を提案するものの、実験体がコレクション弱体化能力のあるアイテムを持っているため却下。そして初美花がコグレさんを何度も推薦し却下されるくだり、これが今回の数少ないギャグでした。
結局、ノエルは圭一郎に協力を申し出るという提案をしますが、絶対に協力してくれないことが予想されるため、快盗のクビ(ノエル含めて4人で自首)を賭けて決闘を申し込むという手段に出ます。
この短絡的な発想が今回のノエルの余裕のなさを端的に表しています。何故これほどまでに余裕がなかったのか。
実験体の恐るべき(コレクションの)パワーを見せつけられて焦ったという見方もありですが、何となく、5つのコレクションを一気に回収できるチャンスを見逃せないという焦りの方が妥当なように思います。圭一郎との決闘の際、コレクションのコンプリートによって果たされる自分の(そして快盗の)目的を、いつになく熱い口調で語っていたからです。決闘はルパンエックスで臨んでいましたしね。
そして、魁利の立場とも圭一郎の立場とも違う、独自の道を選択したとも言っていました。実はそこには、両チームの間で巧く立ち回ることに限界を覚えているノエルが居て、正直なポジションを圭一郎にまず吐露した…という解釈も成り立つのでは。あくまで妄想に過ぎませんが、面白いです。
圭一郎の主張
今回、圭一郎の口からも、安易な共闘路線を排除する発言がありました。咲也やつかさは、快盗の働きがギャングラー殲滅にも一役買っているという認識を持っていますが、全否定こそしないものの、快盗の行動(つまりは警察に対する妨害行為)によってギャングラーの被害が拡大するケースが後を絶たないという発言です。
我々視聴者ですら忘れかけていた(要するに描写を避けられていた)要素ですね。快盗はあくまでアウトローに立脚しており、市民の安全な生活を守る警察の行動とは相容れないのです。実にインパクトがありました。歩み寄りを突き放したわけですから。
そんな圭一郎ですから、当然ノエルの要請など聞き入れるはずもない。しかし、熱血漢である圭一郎は、「ノエルの全力」には応えざるを得ない。その流れは巧いと思いましたね。ただ、冒頭にも書いたとおり、圭一郎には「ノエルの策略」に嵌まって欲しかった…とも思います。
そして「決闘」そのものは、圭一郎が勝ちを譲って決着したかのように描写されました。圭一郎のポリシーは強固そのものですが、情を捨てきれない漢という感覚が強調されたわけです。ここで、圭一郎の下に、魁利とノエルが位置するような関係性が成立してしまいました。
巨大戦等の描写ではあくまで対等でしたが、メンタリティでは差がついてしまったような気がしますね。
携帯電話コレクション
実験体の持つ5つのコレクションは、すべて携帯電話型の変身アイテムでした。
ゴーカイジャーのモバイレーツ、シンケンジャーのショドウフォン、ゴーオンジャーのゴーフォン、ボウケンジャーのアクセルラー、マジレンジャーのマージフォンの5つ。こうして眺めると、携帯電話型の変身アイテムって多いですね!
一気に5つを回収というのは、カタルシスもありますが、やっぱり勿体ない気も…。
次回
次回は定番の子供化! それ自体を物語の核に据えた「トッキュウジャー」を挙げるまでもなく、戦隊では結構例がありますよね。予告でもつかさの行動がフィーチュアされてましたが、そういった点でも楽しみです(笑)。
なぜ今回の協力者に圭一郎を選んだか、しばらく考えましたが、実は妥当な結果だと思いました。
コレクションが5つという一見すごい数字も、実はあまり意味が意味がないからです。
ルパンコレクション(パトレンジャーの装備も含れてる)を全て集めなければならないルパンレンジャーにとって、コレクションをひとつでも破壊されてしまったらその時点でアウトという致命的な弱点を抱えてるルパンレンジャーにとって、もっともやっかいなのが圭一郎といえると思いました。
今回のラストで圭一郎がコレクションに対して関心を持ちましたが、万が一圭一郎がルパンコレクションが危険な存在と判断して自分の装備を破壊する可能性もあるわけです(物語的にはありえませんがw)。そうなるとたとえギャングラーを全て倒してコレクションを手に入れても意味がありません。
そういう意味でいえばルパンレンジャーにとって、ギャングラーではなくパトレンジャーこそが最後の難関ともいえるわけです。
今回の作戦は実験体を倒す、コレクションを5つ入手するという目的だけであるならばつかさやサクヤの方が妥当であったかもしれません。
しかし圭一郎の心を動かすということも含まれた場合、圭一郎に協力を頼んだ方がいいのではないでしょうか。ノエルだけでなく、ルパンレンジャーの中でもっとも狡猾なカイリも「頼むなら圭ちゃんがいいと思う」ということからそれが感じられました。
コミカルな描写のため忘れられがちですが、圭一郎は警察官として非常に優秀です。現在ノエルと手を組んでるのも、警察官として合理的な判断をしてるだけで、騙されたり懐柔されたりしてるわけではありません。だからこそ前々回の旅行の話があったわけで。
その圭一郎に狡猾な策やもっともな理屈など通用しません。ノエルもそれをわかってるからこそ敢えて策を捨てて、決闘という手段に持ち込んだのではないでしょうか。策を捨てることこそ、もっとも効果的な策だったのてはと思います。
話は変わりますが、今回の話で非常に気になるものがありました。それは圭一郎のデスクの後ろの
初志貫徹
勧善懲悪
という書です。圭一郎の信念を書いてるわけですが、それは圭一郎が自分自身に言い聞かせているように見え、逆に圭一郎の心情の揺れを描写してるように見えました。描写されてないだけなのか、自覚がないのか、圭一郎自身も変わりつつあるということなのではと思います。
しかしルパンレンジャーが間接的にとはいえギャングラーの被害を拡大させているという、決して曖昧にしてはならないシリーズの課題が提示されました。この課題をどのように解決していくか期待してます。
魁利とノエルが圭一郎に白羽の矢を立てたのは、裏方的な視点で行くと、これからの流れとして、最も高い壁として立ちはだかるのが圭一郎ですから、懐柔する仕掛けを打っておかないといけないわけですね。
ただ劇中から受ける印象からすると、一旦了解したら絶対に曲げない信頼の置ける人物として快盗側から評価されていたからという、単純な理由なのかなと思いました。
策を弄しても圭一郎は動かないというところには全く以て同意致しますが、それにしても頭脳派のノエルにしては乱暴な手段だな…というのが正直な、あくまで個人的な感想ですね。
ところで初志貫徹と勧善懲悪ですが、今シーズンの制作姿勢をも示しているようで興味深いですね。安易な共闘に持ち込まない、ギャングラーこそが絶対悪だという姿勢は、3クール終盤に至っても崩れていません。素晴らしいです。
ルパパトに自分がいまひとつ乗れない理由の一つが圭一郎です。彼がなぜルパンレンジャーを敵視しているのかがわからない。快盗の行動によってギャングラーの被害が拡大するケースが後を絶たないというセリフですが少なくとも画面上ではそんな描写は皆無。むしろルパンレンジャーの「協力」により事件が解決したケースばかり(これはルパンレンジャーに悪印象を与えないための製作者側の意図的なものでしょうが)。さらに言うと怪盗の助けは借りないと言いつつ「ルパン」コレクションは使用しているというダブルスタンダード。今回ノエルに「対抗策は」と聞かれて黙っちゃいましたが、5回ぐらい出撃させてその都度ボロボロにやられれば圭一郎の方から協力依頼してくるんじゃない。なんて考えちゃいました。
その辺りは理詰め展開が裏目に出ている部分ですかね。
理詰めだと、どうしてもセリフ等での状況説明になってしまい、ビジュアル面での説得力がスポイルされるという。
さすがに快盗をコレクション回収担当、警察をギャングラー打倒担当にするとカタルシスを失ってしまいますので(笑)、ギャングラー打倒においては色々バランスをとる苦労があるのだとは思います。
コレクションを警察が使っていることに関しては、一応、上からの支給品という設定なので、名称こそルパンコレクションですけど、あまり気にする必要はないのかなぁ…と思うのですが。
ご返信ありがとうございます。
作劇自体はすごくよく考えられていて自分も圭一郎の怪盗嫌いが強調されないときは楽しんで観ているのですが。
圭一郎をああいうキャラクターに設定した以上怪盗嫌いは仕方がないことなのかもしれませんが。かといってデカレンジャーのバンみたいにするとルパンレンジャーとの緊張感がなくなるし。難しいところです。
ルパンコレクションはギャングラーから奪還したものもそのまま使用しているところが気になります。
圭一郎のキャラクター造形が、アンチ快盗に立脚しているが故なのでしょうが、本来は正義感が溢れすぎて快盗の行為が許せないという設定なんですよね。しかし、描写の不足で「嫌い」に見えてしまっているという。
多分、その辺りが問題のような気がしますね。
ルパンコレクションに関しては、トイ展開の足枷をうまく捌いていく難しさを露呈しているということでしょうね。確かに、支給品以外も使用しちゃってますね…。
今回の余裕がないようなノエルの行動ですが、ゴーシュの取り出したゲリルモンドというコレクションが原因ではないのでしょうか?
あれを見てから、ノエルの行動が急に焦っているように見えたもので・・・
単純にコレクションの能力のためか、それともあのコレクションのせいで大切な誰かを失ってしまったのか(実は全然違うかも 汗)
そう考えると、決闘でのノエルのセリフも理解出来るんですけど。
あと、確かにルパンレンジャーのせいで、被害が拡大した事があるかもしれませんが、彼らがいたおかげで被害の拡大を抑える事があったのも事実です。
単純に考えれば、パトレンジャーの増員で対応出来る話ですけど、変身アイテムの数の問題があって難しいとなれば、そこら辺をどう考えるか。
まあ、警察の上層部は考えていても、圭一郎の気持ちの整理がついてないだけだったりもしますけど(苦笑)
とにかく今回はギャグを忘れてしまうくらい、充実した話でしたね。
それではまた。
スルーしてしまいましたが、確かにあるソウガンブレードなコレクションを見てからガラッと言動が変わりましたね。正にそうかも知れません。
被害拡大の話、劇中での描写が少ないので少々説得力に欠けるという点では、今回は賛否あるみたいですね。共闘する回が常に丸く収まっちゃってるというのも影響してますね(笑)。
何となくですが、咲也が穏健派、つかさが慎重派なので、今後圭一郎が騒動の火種になるような気がします。警察のスタンスは、結構ノエルが象徴しているのかも…。
今回についてですが、リアルタイムに観ながら思ったのが、
二人が決闘中にギャングラーと戦ってるけど、もう5人いるじゃん。咲也とつかさのほうが友好的だから協力して金庫開けれたんじゃねぇのかな?
圭ちゃんはバイクもクレーンも持ってるのに何でレッドがVSビーグル貸してるの?
なんだよ、ノエル!決闘の結果って勝ちを譲ってもらったの?これじゃあ圭ちゃんに借り一つかよ!!
です。
思慮深い大人目線ではそれぞれに理由を見つけるのかもしれませんが、子供目線ではシンプルにこんな感じかな?と思いました。
・・・私は半世紀生きてるおじさんですよ。念のため。笑
ノエルが言っていた、大切な人を取り戻す。しかし、ノエルの大切な人はまだ明かされていません。ルパン家に携わる誰かでしょうか。未だ謎のままで気になります。
そして今回最大の疑問が、コグレさん。
何故、ゴーカイチェンジャーとゴーフォンだけをコレクション本に戻して後は持ち去ったのでしょうか?何か思惑があるのでしょうか?
ノエルが圭ちゃんに借り一つかぁ。追加戦士の弱体化が始まってるのかなぁ。。。
冷静に見ると、いやむしろ単純に見ると、ツッコミどころが多数ありますよね。
私は5人で対処している際、ゴレンジャーのカラーがバッチリ揃っていたので、絵面が綺麗だな…と思いました(笑)。
ノエルのバックボーンは、未だ謎なのですが、あれだけ語気を強めていたということは、かなり親しい関係の人物を失ったんでしょうね。ルパン五世とかその辺が出てきたりして…。
コグレさんは、本に戻す手間を惜しんで次の行動を起こしたかっただけではないでしょうか?? それだけゴーシュの持つコレクションには重大な秘密があるということで。
視聴者目線で観るとノエルの理屈の方が正しく思えるのですが、圭一郎の危惧も間違いではない。すんなり行くとは限りませんし。
ノエルが真っ正直に決闘を申し込むのは、ノエルも本当は良い人なんだよと、子供たちに見せるのは、ストレートで良かったと思います。いい意味で胡散臭いところばかり目立ってましたから。
戦闘シーンは美しいの一言ですね。本当の意味での7人の共闘は初のハズですし。(映画ではノエルいなかったし···)。特に打ち合わせもなく、連携がとれるのは、敵味方共闘のお約束ですが、一斉に金庫を開ける場面では興奮しました。
今後気になるのは、やはりゴーシュの双眼鏡ですね。これまでもちょいちょい触れられていましたが、コグレさんも気にかけているようで。ただ、もう一人の幹部であるデストラの影が薄くなってしまうのが気になるところ。巨大化要員でもあるゴーシュは、ほぼ皆勤なので特に差が(汗)。
ノエルの良い意味での胡散臭さが消えていくのは、これからの展開上必要なことでしょうね。ちょっと寂しいんですけど(笑)。毎年恒例となる追加戦士の弱体化にリンクしているようでもあります。
7人が戦闘を展開するシーンは、何もかもが鮮烈でしたね。物凄く長く続いているシリーズなのに、まだ新しい引き出しを出してくるのが圧巻です。
ソウガンブレードのコレクション、これからの鍵になるアイテムっぽいですが、ノエルの過去に関わっているのかも…?? デストラは特に好きなキャラでもないので、まあこのままでもいいかと、個人的には思ってますが(笑)。