レオ単独編とも言うべき一編で、記念すべき「普通の人間」ゲスト初登場回でもあります。
お話自体は、これまでの東映特撮TVドラマの定番を凝縮したような、ある種ノスタルジックなものでしたが、これまたある種古風な個性の持ち主であるレオにピッタリハマっていました。
分かり易く、でも感情に訴えかけるという、子供向けドラマの醍醐味を存分に味わえます。そして、何よりレオさん格好良すぎです!
ヤバイカー
いわゆる「暴走族」をモチーフにした怪人で、かかとに装備した車輪で高速移動する様は、「エクシードラフト」のターボユニットのようです。暴走系デザインとしては、「デンジマン」のパンチローラー辺りも想起させます。パンチローラーの作戦はラジオによる洗脳が主体でしたので、騒音が人間(あるいはジューマン)を狂わせるという今回の作戦とは共通点も多いですね。「デンジマン」当時がヘッドホン(とローラースケート)を得体の知れない若者の象徴として描いていたのに対し、今回はむしろヘッドホンが危機を打開するアイテムになっている(既にその格好が市民権を得ている)辺り、面白いと思います。時代の変遷を感じる処です。
声は檜山修之さんで、かつてはほぼ同一モチーフと言える「ダイレンジャー」の神風大将も担当されました。神風大将はセミレギュラー格の怪人でしたから、その印象も強いですね。神風大将同様、今回もかなりコミカルに暴れてくれました。
このヤバイカーは、「パラリラノイズ」と呼ばれる音波を発する器官を持っており、この音波を聞いた者は、理性を失って闘争本能と破壊衝動に支配されます。ジュウオウジャーも最初にセラが、続いて大和、タスク、アムがこの術中にハマってしまい、ライトな作風ながらも意外な危機を迎えていたわけです。終始、レオだけがこの「パラリラノイズ」に支配されませんでしたが、最初は偶然防げたに過ぎませんから、この技がいかに危険であったかが分かろうというものです。
セラ
今回、意外な活躍を見せるのがセラ。敵側が音を主体とする作戦を繰り広げ、対抗するレオも大音量キャラなので、必然的に聴覚に優れるセラの反応が子細に描かれる事となります。
まず、聴覚に優れるが故に、他のメンバーのように耳をふさぐ程度では「パラリラノイズ」を防げなかった...というシチュエーション。スムーズに個性を描き、長所が弱点と化す瞬間を演出で印象付ける手腕の高さが素晴らしい。そして、狂わされた後の猛々しい「パラリラ!」なる叫びが、セラのクールな印象を覆すだけのインパクトを放ちます。
ヤバイカーがチューンナップされた後は、経験を生かして完全防御する姿を披露。耳どころか顔全体を覆い、さらに巨大なヘルメットを被って完全防備で対峙するという、コミカルな出で立ちがまたまたインパクト大。変身後はちゃんと目が見えているのかとアムにツッコまれるという一幕も。レオが到着しなければ危ない処でしたが、孤軍奮闘するセラはなかなか頼もしい印象でした。
エピローグでは、レオ歓喜の雄叫びを防ぐ事が出来ず、遂には昏倒してジューマン態で痙攣し始めるという、セラのイメージ破壊を意図したとしか思えないコミカルなシーンを提供しました。キャラクターの幅がグンと拡がったのは言うまでもありません。 他の面々が恒温動物モチーフだけに、セラにはやや冷たいイメージを持ってしまうきらいがありますけれど、今回のようなコミカルな描写を得て、表情の豊かさが開花していく事で、徐々に内面の温度が感じられるようになるのではないかと期待しています。
大輔
今回のメインゲスト。プロのギタリストを目指して重要なオーディションを控えていた処、レオに出会ってそのオリジナル曲を気に入られ、結果的にヤバイカーの襲撃に巻き込まれてしまう...という、典型的な巻き込まれ型ゲストです。ただ、今回はレオも大輔の存在から恩恵を受けており、守護者と被守護者の関係だけでない辺り、より現代的な味付けになっていると言って良いでしょう。
ヤバイカーによって理性を失い、ひたすら素手でコンクリートを殴り続けるという絵図は、ドタバタした印象のアクションの中、比較的目立たない感じで描写されていましたが、一旦ヤバイカーの襲撃が休止した時、その血に塗れた拳を見せるというエグさが鮮烈なイメージをもたらします。
「ジュウオウジャー」にはそういった痛みの描写に迷いがなく、逆に明確にする事で、テーマとしての「命」を印象付けているのではないかと思う部分がありますね。
その、ギタリストとしては致命的とも言える右手の怪我で一時はオーディションを諦めかけるも、レオの理屈抜きの熱い想いを受けて奮起する様子には、80年代の特撮TVドラマに頻繁に引用された「青春モノ」のエッセンスが感じられます。ただし、レオは理屈をこねる事を一切せずに、自分の感性を信じて疑わなかっただけなので、そこに説教臭さは皆無。そこには爽やかな感動しか残りません。
結果的に、オーディションには落選しつつも、次に繋がる人脈を獲得出来たという顛末になりましたが、そこに「頑張ってもどうにもならない事がある」という面と、「頑張れば何とかなる」という面が両方内包されているのは実に巧い処だと思います。後は、大輔の気持ち次第という道筋が示されたのも良く、意図せず大輔を導いたレオの格好良さが際立つ事になりました。
レオォォォォォォォォォォ!!
叫びの人、レオ。
他の面々が視覚や聴覚、嗅覚に味覚といった具合に、知覚系の特技・性質を持っている中、何故か彼だけが大声という、完全にオチ扱いに近い状態。しかしながら、今回のように吼え続ける事で成される事柄もあり、セラにとっては迷惑至極な性質でも、役に立つシチュエーションが必ずあるというわけです。最後の最後、ヤバイカーの「パラリラノイズ」に対抗する咆哮を上げる様は本当に格好良く、何となくイロモノ的なあんちゃんという(語弊ありまくりな)イメージを払拭して余りある見事な描写だったと思います。
とにかく、理屈抜きの熱さでグイグイ行動しまくるレオ。大輔の怪我の状態については考慮せず、自分の感性のみを信じてオーディションへの挑戦を勧める辺り、傍目には結構メチャクチャ。しかし、その熱さで視聴者も納得してしまい、挙句は大輔ではなくレオに感情移入してしまうのですから、いかにレオのキャラクター造形が繊細なのか、分かるというものです。
一方で、いきなりバック転を披露するなど、演者である南羽さんの身体能力の高さをサラリと見せるシーンもあり、全体的にレオの格好良さをプロモートしているような雰囲気も。そのプロモーションはバッチリ成功しており、その熱さに心揺さぶられ、そのアクションに感嘆し、その雄叫びがもたらす逆転劇にカタルシスを覚え...といった具合に、全てがプラスに働いています。これほど完璧なキャラクター紹介編も珍しいですし、ストーリーがオーソドックスな分、目を配る部分がしっかり見極められている感がありました。
ちなみに、レオのいい加減さもバッチリ描写されていて、冒頭では王者の資格探しに全く参加しません(同じネコ科のアムもすぐに離脱してしまいます...)。そして、大輔を説得(?)する場面では、ジューマン態を隠しもしない大胆さ(いい加減さ)を披露。一方で、自分の非を最初から認めていたり、大輔に自分を殴らせる事を厭わなかったりと、やや面倒臭くも「物凄くいいやつ」アピール全開なのでした。やっぱり格好良いなぁ...。
二大ロボタッグ!
基本的に三体のキューブで構成されるジュウオウキングとジュウオウワイルド。その制限を逆手にとって、両者が揃い踏みするという豪奢なシーンが登場。まだ10話にも満たない内に、ロボを並び立たせる惜しみなさ。まずは拍手ですね。
ヤバイカーに対する意外な苦戦を経ての登場でしたので違和感もなく、ヤバイカー自体も愉快犯そのものの振る舞いでしたから、多少のアンフェアな戦術も開き直ってしまおうという流れがコミカルに映り、良いタッグ戦デビューになりました。年末商戦の乱立状態をどう料理してくれるかが、俄然楽しみになりました(笑)。
次回
いわゆるループもののようですね。難しい題材をどう見せてくれるか、そしてどう戦隊流に分かり易くしてくれるか、楽しみです。今回も注目キャラだったセラが、またもキーパーソンになるようですね!
天地人
レオォォォォォォォォォォ!!チャチャチャチャチャ~ンチャンチャ~、エイーッ(って、それはウルトラマンレオ)
完全防護したセラの姿がサメにしか見えないというのは、イメージが定着したせいなんでしょうか(笑)
最新作なんですけど、根底に流れる作風が何となく初期戦隊物に感じられるジュウオージャーですが、見事に作品に合ってますね。
高速で移動する怪人というと、自分的には仮面ライダーのマッハアキレスなんですが、、ボトムズのATを連想させる車輪による高速移動、ヤバイカーというネーミングに騒音攻撃と毎回よく考えてるなと感心します。
ここ最近の戦隊に比べると、作品に登場人物がなじむのも早い感じがしますし、来週も難解なネタですが、期待できそうですね。
それではまた
竜門 剛
異種族の間を音楽が繋ぐというのは、私世代では、マクロスに通ずるところがあります。良いですよね、言葉は通じなくても、音楽があれば大丈夫という展開。今回はちょっと違いますが。
今回の怪人は、私も神風大将を連想しました。それにしても、檜山さん。戦隊では、他にボンバー・ザ・グレートやサンバッシュなど、チンピラ風の小物役が多いですねぇ・・・。ご本人は実に楽しそうですが。
レオはストレートに良いやつで、少年マンガなんかでは、主人公の兄貴分的な役回りですね。ジュウオウジャーの中では、タスクが弟分的な存在なのでしょうが・・・今のところはみんなのお目付け役になってますね。大和は、もう慣れてしまったのか、最近ツッコミが少ない(苦笑)。