大和の父・景幸とバドの関係が遂に明らかになり、逆に大和の苦悩が深くなるという、意外な展開を見せた一編。
一方で、まさかのアザルド・レガシー退場まで一気に描き切る怒濤のバトルも見せてくれましたが、最終編前に意欲的な演出を盛り込むなど、一筋縄ではいかない素晴らしいビジュアルで彩られていました。
アザルド・レガシー
えっ、これで終わり...!?
これが正直な感想でした(笑)。
一応は命の恩人であるジニスに対し、上に立つことは遠慮しつつ対等の立場を主張するアザルド。私としては、ジニスとの対決なんかを(そして一向に煮え切らないジニス様をこの際倒して欲しいとかを・笑)期待していたのですが、残念ながらそんなことにはなりませんでしたね。古代地球を危機に陥れた巨敵という肩書を有する割には、扱いの軽さが目についてしまいました。
要するに、デスガリアンにドラマが生じることは有り得ない。徹底して「現象」としての悪として描かれ、動機はゲーム、結果は破壊というシンプルさを追求しているわけで、それを象徴するのが、感情が露ほども描写されない(「楽しむ」という口癖にもインプレッションが殆どない。ここは井上和彦さんの演技の類い稀な巧さが光る)ジニスという人物なんですね。何度も言及していることですが、ドラマの比重が完全に主人公側に置かれたシリーズ、それも極端な形であり、これが敵側の魅力をスポイルしてしまった面は否めないところです。
その方針には抗えるはずもなく、すぐに退場の憂き目に会った「不死身の破壊神」。ただし、その能力や戦力に関しては、今回一回分でも存分に描かれたのではないでしょうか。
青いキューブで構成されていたアザルドも、バラバラの状態から甦る怪物でしたが、それはキューブの集合体故の能力というわけではなく、元々アザルド・レガシーの能力だったことが分かります。今回は、その再生能力をいかにして攻略するか...という点で、実はかなりオーソドックスな戦略モノとなっていました。
アザルド・レガシーには本体と思しき「コア」があり、それを破壊すれば復活しないという、これまたオーソドックスな攻略戦でしたが、ネタがシンプルなだけに凝った演出が続出する充実のバトルアクションが展開。まずは「復活」を誘発するための「打倒」が必要とのことで、矢継ぎ早に技を繰り出して何とか倒さなければならないという、凄絶なバトルが繰り広げられることになります。前回、アザルド・レガシーの恐るべき強さは存分に描かれましたから、これを超える強さ、速さ、気合い等を画面上に横溢させ、ギリギリのところでアザルド・レガシーの上を行くという、スリリングな展開を見せる必要がありました。手に汗握るとは、正にこのことですね。
なお、カメラが敵味方含めた様々な視点に立ち、各人の視線を模したアングルとしてシーンを捉えるという、非常に意欲的なアクション演出が冴え渡っていました。横軸だけでなく、俯瞰からアオリまで縦軸にも視点が展開するという、度肝を抜かれるカメラワークには唸らされました。もしかして、次なる戦隊への試金石なのかも知れませんね。ジュウオウイーグルのアクションに大和の素面アクションカットが挿入されるという演出も、緊張感を高めていました。あらゆる仕掛けすべてが素晴らしいです。
諦めずに怒濤の攻撃を繰り出して、ようやくコアの破壊に漕ぎ着けたジュウオウジャーでしたが、刹那、ナリアの投げたコインがコアに到達。そのまま巨大戦へと突入していきます。ジニスの方が何枚もウワテだったというロジックがクールではありますが、ややルーティン化しすぎなきらいもありますね。
巨大戦は、完全に消化試合の様相を呈してしまい、アザルド・レガシーの虚しさもピークに達してしまいましたが、その後、ジューマンの誇りをかけてコアに直接肉弾戦で挑むタスクたち四人の熱さ、そしてビルとアザルドの破片の上を駆け抜ける鮮烈なビジュアルが、その虚しさを払拭してくれました。実に素晴らしいバトルでしたね。最終編で、これ以上のものを望めるのか...!?
戦略家・タスク
アザルド・レガシーとのバトルでは大和不在のシーンも多く、戦略家としてのタスクがリーダーシップを取るという、納得のポジショニングも見られました。慎重派のタスクが恐るべき速さで状況を把握して戦略を立てる様子に、彼の完成形を見る事ができます。レオに代表されるような、とにかく攻撃を叩き込んでいくという、力任せな戦い方をも戦略に組み入れ、その中で敵の弱点を冷静に見抜いていく様子には、「知恵」を司る人物たる風格が備わっていました。
タスクが名乗りの代表を務めるという、意外なシチュエーションも嬉しいところ。ケタスを超えていくという気概が人一倍溢れていたのもタスクであり、彼の秘めたる熱さを存分に感じ取ることができました。
アム、大和の本心の代弁者
折に触れ、大和の心の闇に気付いてきたアム。遂に今回、大和に対して声を荒げることになります。敵に対してすらも、それほど強い口調を披露してこなかったアムが、大和に対して強く言い放つ様子は衝撃でした。
景幸の勤務する病院が危機に瀕していることを知りながら、アムたちの戦いに加わろうとする大和。それは、景幸と関わる術を持たない大和の逃げ口上でした。アムはそれを痛烈に非難し、大和に帰る家を取り戻させようとするのです。ここまでなら、まあ普通。ここからがアムの本領発揮。
曰く、自分たちの目前でそんな選択をしないで欲しい。
換言すれば、景幸に何かあったら自分たちの所為になる。それはイヤだと。
こんなセリフ、よく考えつくな...と。ちょっと勝手気ままな彼女、そしてこんな風に言えば、利他主義の大和ならばきっと景幸のところへ行くという計算の働かせ方まで含めて、物凄くアムらしいですよね。鳥肌が立ちました。
当然、大和はアムの術中にはまり、景幸の元へ行くことになります。勿論、大和も本心ではそうしたかったに違いないのですが、彼は代弁者にここまで言われないと動けない程度には、自身を凝り固まらせていたわけですね。そして間一髪、景幸の危機に間に合った大和ですが、落下する瓦礫から逃げるだけの余裕はない。そこへバドが現れ...というスリリングなつなぎが見事な再会シーン。そこで大和は驚きの事実を知ることになります。
命のやり取り
今回、遂にバドと景幸の間に何があったのか語られました。概ね予想どおりというか、極めてシンプルな理由です。
大和の母の臨終に景幸が現れなかったのは、バドの命を救っていたからでした。バドは人間に襲われて負傷し、ジューマンと人間が相容れないことを改めて認識し絶望していました。そこに現れた景幸は、種の垣根を越えてまで、命を助けることに対して愚直であろうとする人間でした。妻の死に目に会えないことをグッと心の奥底に隠してバドを救う姿は、完全に大和の利他主義へと重なります。
そして、事情を知ったバドは、景幸の息子である大和を影ながら見守り、命を救い続けて来ました。ここでは、景幸がバドの命を救ったからこそ、大和の命が保たれているというロジックが組み立てられており、さながら命のリレーといった連鎖が表現されています。「ジュウオウジャー」のテーマとして掲げられている、「あまねく命はどこかで繋がっている」という一文を、主人公の境遇へと落とし込んだ見事な構成でした。
すべてを悟った大和でしたが、それでも積年の闇の凝固は簡単に解消されません。アザルド・レガシーを打ち破った後、大和はあらゆる感情の噴出に晒され、ただ叫ぶことしかできませんでした。
一方で、母の死を経験している大和は、「死なない生き物はいない」という、至極真っ当ながら忌避されているテーマにも触れました。アザルド・レガシーも生き物である以上、不死身など有り得ないという、「ヒーローが敵を倒せる可能性」を示すに留めたライトな言及でしたが、そこには繋げてきた命の一方で、失われた命もあるのだという対比を、少しでも見せておこうという気概が感じられました。
そんなわけで、もう本作の命に関するテーマは出尽くした感もあります。残り数話では、種の垣根や、命を軽視するものが陥る先などを見せてくれるのでしょうか...。
次回
いよいよジニス自らが...って、本当に最後の最後まで引っ張っただけあるような結果に期待したいですね(笑)。
天地人
個人的にはアザルド・レガシーとジニスの対決も見たかったですが、やっぱりこうなりましたね。
ただ、巨大化は余計だったのではないでしょうか。
ここは等身大での戦闘にとどめ、巨大ロボ戦は別の相手とするやり方もあったのかも・・・
いよいよジニスとの最終決戦となるんでしょうけど、最後はタイムレンジャー以来のレッドと他の4人との別れになるんでしょうか。
えっ、操は?どうでもいいや(おいおい)
それではまた
竜門 剛
アムのセリフについて、私は「帰りたくても帰れない」自分たちの前で「あえて帰る場所を捨てようとする」大和に対する言葉だと解釈しました。確か大和には帰れる家がある~みたいなセリフが前にあったような気がするので。
アザルドとの決着がほぼジューマンだけで着くのは、先祖を超えるという点で、良い展開でした。ただ、もうちょっと過去のアザルドとジューマンの因縁みたいなものが伏線として描かれていたら、もっと盛り上がったのになーとは、思いますね。
振り返って見ると、シンケンジャーやトッキュウジャーの敵味方のドラマのバランスって絶妙だったんですね。やっぱ靖子にゃんはすげえな・・・。
全然関係ないんですが、キュウレンジャーを見た時から何故かデジャヴを感じていたのですが、最近よーやく気がつきました。「バンキッド」でした。