第45話「解けた封印」

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 失礼ながら、ノーマークな敵キャラ最右翼だったアザルドが、まさかの巨敵だった!

 ああ、予告でネタバレしてなければ、もっとインパクトが大きかったのに(笑)...という具合に、衝撃度もなかなかの高さを誇る一編でした。

大和とアム

 アザルドの一件とは別に、大和とその父・景幸の関係にもスポットを当てており、そこに触れるきっかけをアムが作り出すという流れになっていました。

 大和が、職業柄家庭に不在気味だった父親を許せないと語る最たる原因は、母の臨終の瞬間にも不在だったということであり、非常にオーソドックスな理由でした。

 この件は、子供にとっては感情移入しやすいものであり、逆に大人にとっては景幸の言い知れない辛さがジワジワと胸に突き刺さるものです。故に、私などは大和の意固地な姿勢に子供っぽさを感じてノれない部分もありました。ですが、そこを巧く解きほぐす存在をアムが担っていたわけです。

 アムは大和の機微を密かに観察し、大和の抱える心の闇を見抜いています。このあたり、アムのキャラクター性がよく活きていると思います。自由奔放でありながら、実は周囲にいつも気を配っているという「緩衝役」。それがアムですね。

 アムは大和の性格も熟知しているので、大和の長所と短所を見事に突いて見せることで、頑なな大和を自分の方へ一気に引き寄せます。そして、自分の境遇と大和の境遇を重ねてみせるテクニックで、大和の固着した恨みやこだわりの一端を破壊してみせました。これは、カウンセラーとしても一流の手法だと思います。デスガリアンの襲撃によって、一旦その「カウンセリング」が中断してしまうのもいいですね。その時のアムのもどかしげな表情がさらに素晴らしい!

 次回、この件に関する進展が見えてくるものと思われますが、そのきっかけをアムが作り出したことについては、しっかりと記憶に留めておかなければなりません。レッドのメンタルに接近するヒロインの座を、アムは獲得したことに他ならないからです。また恐らくは、「景幸不在の事情」に関しては、もう一歩踏み込んだ理由があるように思います。そこが大和、バド、景幸の三者にまつわる最後の謎となるのではないでしょうか。

バドとラリー

 この先輩ジューマンたちの動きに冴えが見られます。

 バドはジュウオウバードへの変身によって次第に消耗していく身でありながら、自らのやるべきことを果たすために奔走しており、ただならぬ悲壮感を発散しています。適宜人間態となって苦悩の表情を披露してくれるため、村上さんの眼力を堪能できるのもいいですね。また、以前アザルドを蹴散らした時に比べ、今回はやや劣勢気味に描かれており、その力がやや減退しているのではないかと思わせるところが細かい配慮。イレギュラーな戦士であるジュウオウバードが、黄昏の戦士として描かれるのは寂しいことですが、逆に限りなくヒロイックでもあります。

 一方でラリーは、バドに託されたアザルドのキューブを持って、操と共に堂々とアトリエにやって来るなど、かつて人間と距離を置かざるを得ない状態だった彼からすると、格段の進展を見せています。勿論それには、大和たちとの出会いと交流、そしてバドとの再会が影響しているのは間違いないところですが、初対面の真理夫に対して割とフランクな態度で接している様子には、相応のインパクトがありました。

 その真理夫との対面シーン、見事に計算されていましたね。デスガリアンの気配を感じて飛び出すセラたち。一人アトリエに残されるラリー。飛び出していくセラたちを見て既に事情を知っている真理夫は力強いエールを送り、振り返るとラリーが居て驚く。しかし真理夫はジューマンの存在を知っているので、恐る恐るながらコミュニケーションを取ろうとバナナを差し出す。ラリーはそれを受けて陽気な挨拶をする。あの短いシーンの間に多くの要素を詰め込んで、テンポ良く人間とジューマンの距離の縮まり方を描いて見せたわけです。実に素晴らしいですね!

アザルド・レガシー

 東京五輪の件で「レガシー」というタームが踊りましたが...(笑)。「遺産」とか「遺物」といった意味を持っていますけど、アザルドの古い姿といった意味合いで良いでしょうか。

 まあネーミングの是非は置いておくとして、「デンジマン」におけるバンリキ魔王や、「サンバルカン」でのイナズマギンガー、「ダイナマン」のダークナイト、そして「ターボレンジャー」の流れ暴魔といった具合に、敵ボスに匹敵しうる第三勢力に近いポジションを担うのではないかと予想されるアザルド・レガシー。そうなれば、当然最終局面を引っ掻き回す役割が任されることになります。当初から居る単純粗暴な敵キャラが、実は...という展開は燃えに燃えますね。

 圧倒的な強さの描写も奮っています。足踏みをしただけで方々から火柱が上がり、いかなる攻撃も寄せ付けない凄まじさ。シン・ジニスも強力無比に描かれていましたが、それを凌駕し得る絶望感の漂う強さが存分に描かれました。これは単純に格好良かったですね。

 このアザルド・レガシーに関する経緯は以下のとおり。

 まず、大昔にケタスによってこのアザルド・レガシーが封印されます。その際にケタスは、地球のパワーを用いて封印しました。その証がアザルドを構成している青いキューブです。

 ジニスは、アザルドを封印されたままの姿で動けるように「助けた」ことになります。その際に記憶を消したかどうかは定かではありません。その際、恐らくジニスは、その青いキューブを研究して様々なテクノロジーを見出したものと思われます。その成果がザワールドでした。

 そして今回、バドがホエールチェンジガンのジュウオウファイナルを放ったことで、遂に本来の記憶を取り戻し、アザルド・レガシーとして甦った...と。

 4クールにわたる長丁場であるシリーズは正に生き物であり、もしかするとアザルドの秘密はこのような形に結実しなかったかも知れません。かなり巧みな形で諸要素を統合していますが、細かい部分では強引な調整も行われているように見受けられるので、アザルド・レガシーは非常に微妙なバランスの上で成立した希有なキャラクターということになるかと思います。

 さて、どう動いてくれるのでしょうか...!?

次回

 アザルド・レガシーの本領発揮を拝めそうですね。いよいよ謎解きも最終段階に入り、残り話数を意識せざるを得ない雰囲気になってきました!