第43話「クリスマスの目撃者」

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 12月25日にオンエアするという、最高のタイミングでのクリスマス編。戦隊のクリスマス編というと、総集編だったりロボ総登場編だったりと、その企画意図が分かり易いパターンも多かったりするのですが、今回は純粋に季節ネタをストーリーの主軸に据え、正当派として完成していました。

 ジューランドにない風俗習慣に対する、各々の反応を楽しむもよし、年明けからの展開に含みを持たせる大和の微妙な表情作りを堪能するもよし、あまり空回りしなくなった操に驚くもよし。色々な楽しみ方ができる好編でしたが、真理夫の件やアザルドの謎といった重要なネタも盛り込まれていて、サラッと素通りできない重要なエピソードとしての風格も備えていました。

ガッカリゼ

 ネーミングは恐らく「画家」「がっかり」あたりからでしょう。絵の具を印象的に配した、分かり易いデザインの怪人でした。瞬時に壁や地面をキャンバスとし、描いたものを実体化させるという能力の持ち主で、人の顔面に珍妙なマスクを描いて被せるといった小さい悪戯レベルから、大仏を描いて自動車事故を引き起こすという凄惨なレベルまで、多彩なアクシデントを生み出します。こうした愉快犯的な振る舞いは、今回のような季節ネタに合致していますね。

 ジュウオウジャーに差し向けるべく実体化させた鎧武者、虚無僧、ピエロは思いのほか強力な戦闘力を備えていて、意外な危機の場面を創出。絵面としても楽しいものとなっていました。しかし、この三体のチョイス、何となく昔の戦隊を思い出しますね。敵味方関係なく、七変化モノでは頻出ネタだったように思います。特に鎧武者とピエロは「デンジマン」の最終編にてヘドラー将軍が化けたこともあって、印象が強いです。

 巨大戦では、ビルをキャンバスに仕立て、巨大なメーバを出現させるというお約束が。このメーバもまた意外に強く、ロボの危機と活躍を彩っています。やはり年末商戦向けの映像はこうでなくては(笑)。メーバとの乱闘という意味では大味な巨大戦なのですが、ミニチュアのクローズアップなどカットが意外と凝っていて、特撮の醍醐味を忘れないあたり、粋ですよね。

クリスマスへの反応あれこれ

 操が急激に粋な人になっていました。正に生まれ変わったというか、ポジティヴな人に変化していて、見ていて気持ちが良い人物像です。そんな彼は、いつもお世話になっている真理夫に彫刻刀の砥石をプレゼント。このチョイスが粋でありながら操らしい配慮というか、ありきたりでない彼のキャラクター性をも表現していたように思います。

 セラやアムは女の子らしい反応を随所に盛り込んで可愛らしさを強調。特にセラのはしゃぐ気持ちを抑えられない感じは良かったですね。タスクは冷静にクリスマスを分析するかと思いきや、そこまで小難しいことを考えてはいません(笑)。レオはお祭り男の本領を発揮していた印象で、やはりムードメーカーとしてのポジションには欠かせない男ですよね。

 セラ、レオ、タスク、アムの四人は、真理夫にプレゼントを渡そうと買い物に出かけ、そこで彼らの経済観念を垣間見せるという、実に興味深いシーンが織り込まれました。セラは堅実派、レオは宵越しの銭は持たぬ派(これはこれで格好良い)、タスクは欲しいものがあれば使ってしまう(多分、書籍購入)派、アムは食い気(笑)。もう素晴らしいの一言でした。お金が足りずとも、援助を申し出た大和を一度は拒むあたりに、思いの強さも感じられて高得点。その後、大和も同じ立場だと理解して受け入れる笑顔の四人は、さらに高得点。とにかく、一連のプレゼント購入シーンは今回の白眉でしたね。

 話は前後しますが、プレゼント購入のためにケーキ販売のアルバイトをするシーンも素晴らしいものでした。ガッカリゼによってケーキ屋の外観が年季の入った文房具店(?)に変えられてしまい、ケーキが全く売れないというエクスキューズもまた見事で、季節イベント編でありながら、どこまでも理屈を突き詰めていくストーリーテリングが巧みですね。ここでアムが巧みな交渉術を発揮して、アルバイトの契約を取り付けるという流れが非常に素晴らしい! さらに、そのアルバイト自体の描写も秀逸そのものでした。どうにも売れない状況を打破するために、ジューマン態で売り始めたところ、大ヒットするという流れ。ここで終わっても充分素晴らしいのですが、大和がその様子を見て、人間とジューマンの幸せな交流(人間態に偽装せずとも済む社会)を夢想するシーンが用意されており、ぐっと強調したいテーマに踏み込んで来るわけです。恐らくは、そのあたりのテーマが最終編にてフィーチュアされるのではないかと思います。親子ですら分かり合えていない大和が、異種族の相互理解を夢想するという構造にこそ、その「夢の距離感」が込められている気がします。

アザルドとキューブホエール

 大和の思いや真理夫の件といったメインの引っかかりのほかに、アザルドの謎が改めて強調されました。

 今回は、キューブホエールがアザルドを見るや、我を忘れて攻撃し始めるという場面で表現されました。アザルド自身に心当たりはないようですが、キューブホエールのただならぬ様子から察するに、かつてキューブホエールが撃退した巨悪と関係があるのでは...?? または、ジューランドにかつては住んでいた人物か?? とにかく色々と想像できる謎を残してくれました。バドとの絡みも楽しみです。

目撃者、真理夫

 恐らく、大多数の方が感じたのではないかと思いますが、「真理夫さん、本当に大和たちの正体に気付いてなかった!!」という衝撃(笑)。もっと純粋に、可愛い甥っ子とその友達を見守っていただけでした。何だか、逆に好感が持てましたよ。

 「そういえば...」と回想する場面が、それなりの総集編っぽさも兼ねるあたり、職人技。しかし、こうしてみると、意外と真理夫は変身後のジュウオウジャー、あるいはジューマン態との交流がなかったんですね。後見人のポジションでありながら、基本的に傍観者の位置に立っているというのは、「ゴセイジャー」でも見られましたが、寺島さんというベテランを得たからか、更にその特性の強化が推し進められていたように思います。そして次回はここまで引っ張っただけの結果が見られる...か!?

 それにしても、真理夫の反応にはリアリティがありましたね。その鋭い眼光を生かした一筋縄では行かない役が多い中、非常にマイルドなキャラクター・真理夫を成立させてきた寺島さんの、作り込まれた芝居が遺憾なく発揮されていました。目の前で考えてもみなかったことが起こると、あのような滑った驚きしか出て来ないのかも知れないわけです。大袈裟なものではなく、呆然と単純な感想が繰り返し出てくる演技、凄味すら感じられましたね。

次回

 驚愕のジュウオウヒューマン! 年明けから、かっ飛ばしてくれますね。

 本年も当ブログをご覧下さり、ありがとうございました。来年も何卒よろしくお願い申し上げます。