第41話「最初で最後のチャンス」

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 クバルが仕掛ける打倒ジニスの策。その罠に対してジュウオウジャーは、そしてジニスはどう反応しどう動くのか。そのあたりをクールな視点で描く一編となりました。

 大和が冷静さを欠いてしまう一幕はあるものの、基本的には感情移入などをほぼ廃して描かれており、スリリングなシチュエーションの移り変わりを楽しむことができます。そういう意味では、Blu-rayのCMが今週初オンエアされて衝撃の高画質に期待が高まる「ゴレンジャー」のストーリーテリングによく似ていたのではないかと。

クバル

 今回のメインはクバル。冒頭では感情移入を廃しているとしましたが、それはヒーロー側の話で、いつ企みがジニスにバレるか戦々恐々としつつ戦意を高揚させているクバルこそが、感情移入の対象になっているとも言えるでしょう。ドラマのテクニックとして、悪巧みをしているキャラクターの心情に視聴者を乗っからせるという手法がありますけど、今回は正にそれですね。

 バングレイの右手を駆使して、ジュウオウジャーとデスガリアン双方の「駒」を作り出し、それを繊細に動かすことでジニス打倒のチャンスを作り出していく様子は、頭脳派としての描写があまりにも不足していたクバルにとって、それこそキャラクター性を発揮する「最初で最後のチャンス」だったと思います。そしてそれは、高クォリティで達成されました。ナリアの記憶からアザルドを作り出してジニスを欺き(実際に欺かれていたか否かは不明確)、私も予想だにしなかった操のニセモノをも創出し、その巧者振りを見せつけてくれます。

 また、ジュウオウジャーを密室に誘い、追い詰めることで感情の爆発を引き出すといった、人間心理を研究した上での作戦も良く、危機感を煽る画面作りを横溢させた素晴らしいプロットでしたね。

 ただし、クバルの思惑すらもジニスにとっては愉しみの一つでしかなかったようで。一つ二つの「誤算」が逆にクバルを追い詰めていくことになります。自身たっぷりだったクバルが一気に敗者へと叩き落とされるあたり、見事な作劇でした。

ジニス

 その思惑を全く表に出さないジニス。今回も騙されているのか騙されたふりをしたのかよく分からない感じでしたが、結果としては騙されたふりをしていたと言っても差し支えないでしょう。私としては、この分かり難さがジニスの魅力をスポイルしているようにも思えるわけですが...。

 今回判明したトピックは、ジニスはサジタリアークのエネルギーを利用しているというもの。つまり、サジタリアークから切り離された時、エネルギー供給が絶たれるために活動時間に限界が訪れるということらしい。ただし、これに関しては、キューブホエールの解析データによって地上から直接エネルギーを得ることができるようになったため、クバルの作戦を補強するエクスキューズに過ぎなくなってしまいました。ちょっと勿体ないですよね。常に自らが優位であるというアピールも素晴らしく格好良いですけど、もう少しクバルも視聴者も欺いて欲しかった気が。やはりジニス周りの描写はあっさりし過ぎているように思います。

 それにしても、ノーマルなジニスが動き回る描写は凄いですよね。よく見るとちゃんと二足歩行していますし、合成とかではなくスーツによる「演技」です。上下二段で演者が入っていることになり、そのインパクトはなかなかのもの。左右二人で入るペスター方式や、前後で入るドドンゴ形式に続き、上下で入るジニス形式がついに誕生したと。私の記憶にはこの方式の前例がないのですが...前例ありましたかね?

 そして、地上の力を得たジニスは、シン・ジニスと名付けられた第二形態に。ネーミングが大ヒット映画を思わせるのはご愛敬ですが、一気にライトウェイトになって派手な装飾が付いたことで、禍々しさもアップしています。空中に浮遊する描写の安定度は素晴らしく、ワイヤーアクションの練度の高さには驚嘆の一言です。その強さも絶望的に描かれ、ボスキャラの風格を見せつける形になりました。しかし、ここまでとんでもない強さを見せつけつつも、ジニス自身の目的は地球侵略ではなくゲームを愉しむことなので、一気にジュウオウジャーを滅ぼしにかかったりはしません。このあたりのバランスが巧いところで、ジュウオウジャーもジニスにとってはゲームの駒であって、あくまで邪魔な存在とはしていないということが、よく分かる流れとなっていました。

操と大和

 今回は操が非常に気の毒な役回りに。

 操のジニスに対するトラウマの深さは予想を遙かに超えていたようで、姿を見ただけで一瞬のうちに怯んでしまい、類い稀なる恐怖との裏返しで自暴自棄の攻撃を繰り出し始めるという行動が、リアリティを高めています。しかもこのジニスは、クバルが作り出したコピーだったというオチまで付いていて、実に救いのない状況でした。さらには、大和たちに助けられる操もクバルによるコピーで、本人は人里離れた川にて、吊された状態で放置されているという、どこまでも気の毒な状態...。次回、どうやって操は色々な意味で「救われる」のか、楽しみなところです。

 そして大和は、その操の痛みが分かっているために、声をかけなかった自分の行動を悔やみ、その後悔の深さから我を忘れることになります。その場を取り繕う役回りの多い「空気を読みすぎる」大和が、真理夫の放つボケにニコリともせず去って行くシーンは、鬼気迫るものがありました。語弊はありますが、ここで大和にとっての「ヒロイン」的なポジションにある人物は、操だったことが分かります。

 恐らくは、次回が大和をメインとした話になると思われるため、ここで大和の「感情」を見せておく必要があったものと思われますが、それは概ね成功していますね。

利害の一致

 今回はジニス打倒という目的のために、ジュウオウジャーとクバルが共闘することになりますが、このあたりにもクールな視点が現れています。操のこともあって、心情的には共闘などしたくないけれども、ジニスを倒す千載一遇のチャンスであることを重視するプロセスが実にクール。カラフルな敵味方のキャラクターが入り乱れてジニスを攻撃するアクションも目まぐるしく、何が起こっているか一度では把握出来ない充実度でした。

 利害の一致というシチュエーションは私の好物で、「トランスフォーマー2010」の最終編(最後にコンボイとガルバトロンが握手!!)や、特撮では「仮面ライダースーパー1」の一編、戦隊でも「ジェットマン」などで印象的に描かれました。丁々発止、腹を探り合いながらも共に目的を果たし、そしてその関係が直ちに瓦解するというスリルがたまりませんよね。今回は、ジニスが圧倒的すぎてクバルの一方的な敗走という結果になり、共闘自体はアクションのシーンのみ(!)になりましたが、それもまた一つの派生型として面白いですよね。

バド VS アザルド

 メインの流れから外れて、邂逅するバドとアザルドの姿が描写されました。アザルドがキューブからできていることに、ようやく疑問を持った人物が登場したということでも記念すべきシーンです。こちらの展開の方がメインより楽しみだったりして...(笑)。

次回

 次回は遂に大和の父が登場か。我々の世代的には「トミー」なベテラン名優・国広富之さんをキャスティングするという、まさかの展開に興奮を禁じ得ません。