第33話「猫だましの恩返し」

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 珍しい「ネコ科コンビ」で繰り広げられる一大コメディ編。

 筋運びやシュールな演出のキレなど、クライマックスのバトルがなければ殆ど「不思議コメディシリーズ」のノリで、戦隊においては新鮮、東映特撮TVドラマを俯瞰した上ではノスタルジック。「カーレンジャー」や「ゴーオンジャー」辺りの不条理な感覚も想起されます。

 多分汗臭い世界が苦手であろうアムは、一歩引くことになるので、メインアクターとしてはレオとなり、実際にそうなったのではありますが、最終的にアムが逆転をものにするという、結構なインパクトを伴う流れになりました。このあたりの演出のキレも素晴らしく、前回と併せて傑作たり得る感じでしたね。

スモートロン

 前回のオモテウリャーと同様、実に分かり易いデザインで、「ジュウオウジャー」における怪人コンセプトの変化を感じられるものとなっています(デザイン自体は初期よりストックされていたとも聞きましたが)。名前は何だか「トランスフォーマー」に出て来そうな感じですが、デスガリアンのプレイヤーの中でも群を抜いて分かり易いネーミングだと思います。

 アザルドの意図したブラッドゲームは、スモートロンを横綱まで昇進させるというものなのか、はたまた相撲を取らせることで街を混乱させることなのか、よく分かりませんが、その辺はどうでもいい感じなのが素晴らしい(笑)。それ以前に、宇宙共通で相撲が嗜まれているらしいこと、これがもう不思議コメディの世界です。

 能力としては、地面に土俵を創成し、相手にまわしを強制的に締めさせて相撲を取り、勝てば昇進するというシンプルなもの。恐らくは昇進する度にパワーアップを遂げているものと思われますが、そのあたりは割と曖昧な感じです。あと、昇進するためには、その段に見合ったそれなりの実力者に勝たなければならないという縛りがあり、妙に律儀なのが笑えます。結局は、アザルドがわざと負けることで横綱昇進を決めており、最後の最後で卑怯な手段を用いることで悪役のメンツを保っているあたりが、さらに可笑しさを醸し出しています。

レオとアムのネコ科コンビ

 レオは、武闘派絡みということなのか、セラとのコンビ、あるいは小競り合いが多く描写されており、アムとはあまり絡まないキャラクターでした。一方のアムは、大和と絡むことが多いので、レオと二人で居るシーンはあまり印象に残っていません。

 今回は、まず買物当番であったと思しきシーンから開始され、この二人が同じフレームに収まるシチュエーションを巧く作り出していたと思います。そこから大学相撲の稽古風景に出くわすという、瞬時のテーマ導入が正に神懸かりのテンポ感。さらに、「猫だまし」を練習しているというところからネコ科の連想がレオとアムをグッと引き寄せるという、ドラマ牽引力の高さが素晴らしい。そして、スモートロン攻略の鍵をここでの関わりから得るという、ご都合主義が非常に素晴らしいです。これ、褒め言葉ですよ。このくらい素早くシーンが連続していかないとダメなんです。

 さて、冒頭にも示した通り、アムはあからさまにまわしを締めるといった行為を嫌がったので、ここからはレオが孤軍奮闘し、アムがそれを応援するという構図になっていきます。まわしに関しては、単純に恥ずかしいとかそういったことではなく、美的センスにそぐわないという、いかにもアムらしい理由になっていて、なかなか切れ味鋭いギャグになっていると思います。

 レオの奮闘振りは、半裸を惜しみなく披露しつつ、結構本格的な稽古シーンを体当たりで演じているというシーン作りの丁寧さもあって、非常に説得力のある面白さになっています。不思議コメディシリーズは、細かい部分のリアリティを結構大事にしていて、それが例えば料理であったり他愛のない喧嘩であったりということなのですが、そのあたりが充実することでナンセンスコメディの部分がより引き立つという手法が、繰り返し用いられてきました。今回は正にその手法を選択していて、レオ役の南羽さんの熱演が光っていました。あのヘアスタイルに尻尾付きという出で立ちで、相撲という裸の世界においてシュールな存在感を発揮しつつ、その体術で熱さをも併せて描写する。稽古場のシーンは今回の白眉と言っても良いでしょう。

 スモートロンとの決戦では、当初は「猫だまし」の会得を目的としていた稽古の中で摑んだ正攻法で挑むことに。ところが、レオも単純明快なだけの男ではなく、最初の一発目に「猫だまし」を繰り出し、スモートロンも同じ手で来るという、意外な幕開け。それをアムがたまたま目撃していて、後の展開に繋がってくるという仕掛けも巧いです。

 実際、レオがこのままスモートロンに土を付けてしまっても、何の違和感もなかったですし、むしろその流れの方がスタンダードな気がします。そこに一捻り加えてきたのが、今回の凄いところです。

 アムは当然正攻法では手も足も出ず、巨体を誇るスモートロンに可愛い攻撃を仕掛ける猫のような動きに終始。これが実に魅力的で、スーツアクターさんの技量をまざまざと見せつけられました。適わないと見たアムは、色仕掛けでスモートロンを翻弄するという「小悪魔攻撃」で隙を作り、鼻の穴に指を突っ込み、さらに華麗な空中殺法からの引っ掻き攻撃を利用した投げという禁じ手の嵐を繰り出して勝ってしまうのでした。「怒らせると怖い」の典型に類似した流れではありますが、恐らくアムは至極冷静にこれらの攻撃を繰り出しており、その実力のほどと、本音増幅セラが言うところの「腹黒キャラ」が全開になって魅力を振りまくあたり、実に格好良いですね。

 この一連の禁じ手攻撃は、レオが正攻法のみに頼らなかったのを見たから...という理由付けもされていて、無駄を徹底的に廃したドラマ作りに驚きます。また、スモートロンが、土俵の外や手をつくといった基本的なルールには厳然たる対処をとるくせに、「禁じ手」に関しては緩いあたりも悪役らしく、アムがその盲点を突いたという見方もできて面白いです。

 この大一番の後の、クライマックスのアクションと巨大戦は、完全に取って付けたような感覚になっていますが、多分狙ってやっているのではないかと思われる節があります(笑)。それでも、肉弾戦にこだわるアクション演出がドラマとの連続性を保っていて、見応えあるものでした。

ネコ科以外の皆さん

 スモートロンに負けると、自分の意志に反して稽古を続けさせられるというペナルティを負うことになります。大和達四人は四股を踏んだり張り手をしたりと、非常にシュールなシーンを彩るハメに。中でもセラの四股は必見でした(笑)。

 操は、高校時分での相撲のトラウマ(まわしが取れて笑い物にされてしまう...)を抱えていて、彼の悲惨な過去を垣間見る事ができました。ただし、こちらは本筋とは関係ないギャグとして処理されていましたが...。

 真理夫さんは、相撲繋がりで熊のコスプレ。今回はいつもの優しいトーン、あるいは高めの鳴き真似トーンとは異なる、「真田丸」での出浦昌相のようなトーンでのセリフも披露してくれました。このトーンの迫力はやはり他の追随を許しませんね。コスプレとのギャップも物凄い事になっていました。

デスガリアンの皆さん

 スモートロンの負け試合を見ていたアザルドとナリアのシーン。かしこまってお茶をすすって観戦しているというもので、これが実にシュール。これも不思議コメディの感覚ですね。何度も言っていますが、少々面白味に欠ける悪役達なので、こういったシーンがたまに来るとドカンと笑いを起こせるようです。

次回

 食傷気味のバングレイ様が再登場。グッと話が進んでくれれば良いですが、再生怪人で停滞するのだけはちょっと勘弁して頂きたいところです...。