第3話「帰りたいけど帰れない」

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 3話目にヒロイン編を持ってくる意義を感じさせてくれた一編。

 アムと大和をペアにして描く事で、アムのステレオタイプではないキャラクターを浮き彫りにし、印象付ける事に成功しています。一方で、大和の方にもまた一歩ジューマン達に歩み寄る様が用意され、話数を重ねる過程で徐々にジュウオウジャーの一体感が増していく様子を見る事が出来ます。

 それにしても、アムの描写の「あざとさ」が素晴らしい(笑)!

ボウガンス

 デスガリアン、徹底的に悪役を突き詰めているので、やっぱりまだ印象が薄い。しかし、今回のボウガンスはなかなかのインパクトです。

 得体の知れない巨顔デザインには、「宇宙刑事シャイダー」の不思議獣に通ずるセンスも。また、ノリの良いコミカルなセリフ回しには、愉快犯的な空恐ろしさを感じさせて造形との良いマッチングを見せています。

 そして、その活動が正に悪逆非道。車両を次々とボウガンで爆破するという、珍しく直接的な破壊シーンに彩られ、明らかに人命も失われているように見えます。俯瞰にて高速で移動しつつ、走行中の車両に爆破エフェクトが付加されるというシーン作りは、さながら映画のワンシーンのようで、非常にサスペンスフルな雰囲気でした。主人公側のドラマが割とライトな作風になっていたので、破壊シーンはより鮮烈に映っていましたね。

 そのボウガンは戦闘能力としても遺憾なく発揮されるわけですが、その早撃ちを大和が見破るというくだりによって、その能力の覚醒を鮮やかに描く構成の巧さが秀逸で、逆転劇もまた鮮やかでした。

アム

 前回までは、いわゆる天然キャラの片鱗だけ見せていて、戦いとなると勇猛果敢になるという、かなり典型例に倣った感のあるヒロイン造形だったアム。今回はそれを良い意味で裏切る知性を垣間見せていて、実に魅力的でした。

 冒頭では、あらゆる立方体(に近いもの)を「王者の資格」と称して、ショッピングに勤しむアムの姿が描かれます。会計に、荷物持ちにと振り回される大和の姿が実にノスタルジックかつ滑稽に描かれていて微笑ましいです。「ウルトラマンA」のアリブンタの回や、「ジャッカー電撃隊VSゴレンジャー」なんかでもお馴染みの光景(笑)。その楽しい雰囲気が、敵の襲撃や事件で一気に崩れ去るのもお馴染みのシチュエーションであり、今回はやや形を変えつつも概ね伝統パターンを踏襲しています。

 実はこのシーン、アムが考えている「郷に入れば郷に従え」に沿った行動だったのですが、良い具合に小悪魔演出が効いており、アムのルックスから逆算したかのようなその演出で魅力がググッと上昇。恐らくは、全国の大きなお友達諸兄諸氏が見事に術中にハマったのではないかと思われます(笑)。

 それだけに、アムが告白する「真意」が、一気にその知性の程を印象付ける役割を果たすことになりました。アム自身は、王者の資格探しは重要だと考えてはいるものの、それを探し出すのは不可能に近いと感じており、それならば人間界に適応出来るよう努力(?)する方が得策だと考えていたわけです。一見ふんわりしているように見せて、実はかなり現実的。ジューマンという御伽噺的な設定を持ちながら、実の処、リアリズムを伴ったポジティヴな感性の持ち主だという事が判明するのです。

 その姿勢は今回のエピローグでも発揮され、掃除機に興味を示して家事を楽しく会得しようとする様子が描かれました。セラ達が「家事」という言葉に難色を示す中、嬉々として掃除を行うアムの女子力の高さが本当にあざとくて素晴らしいです。何となくですが、セラの方が天然系っぽいキャラを隠し持っていそうなので、第一印象と中身の、逆転の面白さを狙っているのではないかと思いますね。

大和

 今回の大和は、前回と同様に世話役を演じつつ、王者の資格探しの手助けを行う事で、よりジューマン達に歩み寄るポジションを獲得しています。そしてアムとペアで行動をするシチュエーションは、若干のくすぐったさを匂わせつつとても爽やかに描かれており、その振り回されっぷりも堂に入っていました。

 一方で、アムが味覚、タスクが嗅覚、セラが聴覚に優れるという設定に続いて、遂に大和も優れた視覚を手に入れる事になります。

 これについては、あくまで人間の域を出ない男として描写され続けていくと私は予想していたので驚きでした。王者の資格を所持する事で、ジューマンの特質を獲得していくという事なんでしょうけど、何となく「仮面ライダークウガ」のベルトのような怖さをも内包しているような気がします。恐らくは、大和の動物に対する感情や態度が、よりジューマン側へと肉薄していく事のメタファーとしても機能しているのでしょう。これから先、大和はジューマンになってしまうのか、はたまた大和自身は本当に人間なのだろうかという疑問すらも提起が可能となり、表層的な賑やかさの裏に秘匿されたドラマを充分に予想させる設定になりそうですね。

 そして、真理夫の疑念を前に取り繕うギャグ描写は、今回も健在。異なる両種の間で右往左往するコミカルな大和は、しばらく見られそうで楽しみです。

アクション

 初回より、動物アクションという典型にとらわれない、自由な発想が魅力のアクションを展開していますが、今回は王道かつ近年ではやや珍しくなった車上アクションが展開されます。

 バスの屋根の上でジュウオウイーグル VS ボウガンスのバトルが展開され、その完成度の高さに思わず唸ってしまいました。ただ格闘戦を繰り広げるだけでなく、空中戦へとシームレスに移行する特撮との連携シーンの巧さや、アムが大和に構わず天井に向かって銃弾を撃ち込むという、コミカルでサスペンスフルなカットといった具合に、硬軟取り混ぜた素晴らしい流れを堪能する事が出来ます。

 また、バスから飛び降りるアムがジューマン態になっている事で、スタンドインではなくあくまで「本人」のスタントとして扱われる等、舌を巻くような演出の巧さが光ります。

 クライマックスのバトルでは、ボウガンの使い手の向こうを張って、文字通り矢継ぎ早のアクションつるべ打ち。このめまぐるしさは近年でも最高潮かと。まばたきの暇を許す事なく、巨大戦へともつれ込むスピード感は、恐らくドラマパートの尺を稼ぎ、今回のように巨大戦の尺を稼ぐ為の措置だったのかも知れませんが、淀みない流れは様式美とも形容出来るものでした。

ジュウオウキリン

 王者の資格より一回り小さいキューブを大和が発見し、これがジュウオウキューブウエポンと呼ばれるものである事が今回判明します。

 登場したのはジュウオウキリン。ネーミングルールでは「ジラフ」になる筈が、何故和名なのかは不明。簡素な変形ながらダイナミックな変化を魅せる秀逸なギミックを有しています。

 今回の巨大戦は、一度123で合体し、脚を封じられるという状況に際して、再度154で合体するというサービス精神旺盛なものとなりました。ただ組み替えを披露するのではなく、必要なシチュエーションをちゃんと盛り込んでいる処が見事。これが段々数が増えてくると、脈絡のない宣伝合体が横行する事になるのですが...。今シーズンではなるべく今回のようなエクスキューズを入れて欲しい処ですね。

次回

 次回のメインはセラとレオ。大和があまり関わらなさそうなだけに、人間界のルールにとらわれない自由さが期待出来そうです。もう一人のヒロイン、セラはどんなキャラを秘めているのか、そして今の処、声の大きさばかりフィーチュアされているレオは、どんな繊細な部分を隠し持っているのか...興味は尽きません!