第27話「本物はどっちだ」

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 戦隊...というより特撮TVドラマでは恒例のニセモノ譚。

 本物と偽物を見分ける際に生じるドラマが主眼ではありますが、プチ総集編を兼ねている上、敵キャラはバングレイのみ、実際に変身して戦うのがセラとタスクのみという、実は結構な再利用回だったりします。やはり夏枯れ対応なのでしょうか。

ニセモノ譚

 ウルトラマンにはニセウルトラマン、仮面ライダーにはショッカーライダー、といった具合に、ニセモノ譚は黎明期から現在に至るまで連綿と制作されてきました。スーツを二着使用するニセモノ描写は、ウルトラマンと仮面ライダーのように外見を変えるなどして変化を付けたり、あるいは全く見分けの付かないものとして登場させたりと、色々なパターンがありますが、素顔の人物となるとなかなか難しい。

 「ダイレンジャー」や「ゲキレンジャー」のようにレギュラーの双子の兄弟を使ってしまうという離れ業も見られますが、大抵はそういうわけにはいかないので、合成やスタンドインによる巧みなカット割りで処理することになります。

 「ジュウオウジャー」の「発明」であるジューマン態は、この辺りを鮮やかに処理するのに打って付けでした。最初にバングレイが記憶から作り出したセラとタスクは、それぞれが二役で演じ、合成&スタンドイン&カット割りの素晴らしい職人芸によって表現されましたが、常に本物とニセモノが並んでいる状態となる「クイズ」のシーンでは、片方がジューマン態に戻ることで、「同一人物が二人ずつ同一フレームに収まる」という画面構成をごく自然に実現。まあ自然なのは当たり前なのですが、双方が自然に本物に見えること自体が驚嘆すべきことだと思うわけです。つまり、ジューマン態を演じているスーツアクターのお二人と、セラの柳さんもタスクの渡邉さんが非常に密な連携を実現しているということですね。しかも、ライブ録りとアフレコの両方で「声」を演じる必要もあるのですから、今回は、芝居の成長振りをつぶさに目撃する機会でもあったわけです。

イッテ~獣さまっ!!

 「イッテQ」は日テレ系、「Qさま」はテレ朝。自局としては「獣さま」だけにしたかったかも知れませんが、まあその辺りは置いておくとしましょう。

 このコーナーに関しては、大和、レオ、アム、操によるコスプレコーナーという側面もあるので、我々としては眼鏡アムに注目しておかなければなりません(笑)。完全にパーティグッズ系の派手な出で立ちで登場した男性陣とは異なり、アムは整然たるスーツ姿で魅せてくれました。正直なところ、服装のチョイスとしてはダサめだと思いますが、さすがはモデル出身だけあって、何でも着こなしちゃうという...。

 肝心のクイズの中身ですが、記憶の重箱の隅という表現が相応しいマニアックな問題に終始。途中で大和が策を思いついた辺りで、先の展開は読めてしまいましたが、それでもなかなかスリリングだったのは、演出、演技の素晴らしさ故でしょうね。ビジュアルとしてはコミカルですが、手は抜かないという心意気に惹かれます。

 結果的に、本物を見分けるポイントは、「記憶の確かさに溺れているか否か」という部分でした。誰も覚えていないような「ハナヤイダーが鉄塔を引っこ抜いたのはどちらの手か」という問題に淀みなく答えられる方がニセモノ...という着眼点の良さに拍手。それ以前にその誰も覚えていないような問題をどうやって出したのかというツッコミどころはありますが(笑)。

 さらに、ダメ押しとして、「昨日のアムとの約束は何か」という問題を繰り出します。正解は「約束などしていない」でしたが、こちらも淀みなく答えられるニセモノに対し、本物の方は、まず「約束していたかも」という可能性を探って悩む姿を見せるわけです。ここまで来ると、視聴者としてはもう本物がどちらなのか分かる仕掛け。より表情豊かな演技を要求される人間態の方を本物とする辺りが、心憎い演出となっていますね。

 この一連の流れは、いわゆる「総集編」として良くできていたかどうかはともかく、コミカルな中でいかに緊張感を維持するかという挑戦としては、見事な完成度を見せていました。タイムリミットものの要素が巧く効いていましたね。仲間との連帯感、信頼感といったメンタルな部分にスポットが当てられる流れも良いですし、何となくオマケ編のノリだったのがちょっと勿体ないくらいです。

ニセモノといえども...

 ここからが今回の白眉。

 ニセモノといえども、仲間の姿をしていれば倒せないだろうと目論むバングレイ。実際、大和たちは目論見通りの行動を取り、ギリギリまで対応策を案出しようと懸命になります。私はあっさり討ってしまうだろうと思っていたので、これには結構意表を突かれ、感動を覚えました。仲間意識を強調するにはこれ以上ないシチュエーションだったとも言えるわけで、この辺りは「ジュウオウジャー」として徹底されていますよね。

 そして、ニセモノといえども、本人たちの記憶から作り出された二人は、魂も二人のものを受け継いでいたのでした。大和の母親が正に魂の再現として描かれたように、ニセモノのセラとタスクも、仲間を救うためなら複製である自らの消滅を厭わないというロジック。途中までは悪役らしい発言をしていたので、ある程度はバングレイの影響下にあったものと考えられますが、それを超える仲間意識が発現したのだとすれば、前段の仲間意識への返歌として捉えられるわけで、正に「敵」との双方向の意思疎通が適ったと換言しても良いでしょう。

 今回は、マーチャンダイジングへの配慮を総集編の形で達成(?)しているので、ニセモノの消滅から直接エンディングとなり、非常に余韻のある幕引きとなりました。こういった叙情性もメインストリームとなる挿話ではあまり見られないので、良いものを見せて頂いたというのが素直な感想ですね。

次回

 戦隊シリーズ2000回記念ということで、海賊たちが帰ってくる!! 「ニンニンジャー」でも忍者絡みのゲストで盛り上がりましたが、まさかこのような企画が実現するとは。ある意味、戦隊の「何でもあり」を100歩くらい推し進めたのが「ゴーカイジャー」ですから、彼等が帰ってくることで、より一層盛り上がりを見せることは間違いないと思います。