第20話「世界の王者」

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 どうなることかと思いましたが、ちゃんと「ジュウオウジャー」らしい落とし処を見せてくれましたね。

 ザワールドこと門藤操が、ジュウオウザワールドとして大和達に合流するエピソードということで、その過程をシンプルに見せてはいますが、ディテールが一筋縄ではいかない辺り、さすがといったところです。

 追加戦士が既にルーティンになっている戦隊シリーズ。毎年「違うもの」を見せるのは並大抵ではない努力が必要だと思いますが、今回は「特殊なキャラ付け」という方向性で見せてくれました。この方向性自体は、前作「ニンニンジャー」でもヘンな日本語を喋る人物といった具合に、シリーズ中頻々と現れるものです。ただ、今回は表面的に「ヘンな人」ではなく、内面的なものを追いかけているので、より笑いが深化している気がします。

門藤操

 レオに「面倒臭い男」と評されるだけあって、かなりの偏屈振り。ザワールドとしてジュウオウジャーを痛めつけていた際の、悪辣かつ颯爽とした物言いとはまるで異なるパーソナリティが衝撃的です。

 デスガリアンに操られ、三人のジューマンの力を強制的に宿した操は、「罪の意識」に苛まれている...と言えば格好は良いですが、その絵面は徹底的にコミカルに描かれます。妄想癖も相俟って、三人のジューマンの恨みのイメージにとらわれ、頻繁に自分の殻へと閉じこもってしまう姿は、大和達の絶妙なズッコケと共に今回の「陽」の面を担っています。

 罪の意識と本能的な部分の折り合いが全く付いていないところもコミカル。「食べ物をもらう資格がない」、「衣服を借りる資格がない」、「仲間になる資格がない」といった具合に、「資格がない」ことを殊更強調する一方で、大和にはすぐに懐柔されてしまい、本心では救い(あるいは理解)を求めているのが分かります。振る舞いや描写は非常にコミカルですが、彼の孤独の深さが巧く伝わるよう工夫されていました。ちなみに、「資格がない」というセリフは、そのまま王者の資格を持たずに変身する者であることを象徴していますね。

 前回も触れましたが、何となく「ゴーカイジャー」の追加戦士である伊狩鎧(池田純矢さん)に風貌が似ています。そこで、ちょっと無理矢理ではありますが、伊狩鎧ことゴーカイシルバーと比較してみましょう。

 ゴーカイシルバーは、歴代追加戦士の力を主に用いる戦士でした。ドラゴンレンジャー、タイムファイアー、アバレキラーといった「敵として登場し、最終的に死を以て退場した追加戦士」の力を得て誕生した経緯を持ちます。また、鎧自体には孤独な幼少期を過ごした経験があり、その経験が「お調子者」という人格を形成したことになっています。

 こうして伊狩鎧の設定を列挙してみると、操とかなり相似を成していることが分かります。三人の囚われのジューマンから力を受け継いでいるという点は、三人の死した追加戦士を想起させますし(操の妄想で三角頭巾を被っている辺り、コメディシーンではありますがイメージが重なります)、孤独という点でも重なります。鎧の場合は、孤独がお調子者を形成しましたが、操の場合は、孤独が内向的な性格を育ててしまったようです。タイプはまるで違いますが、両者とも極端な性格という点では共通しています。なお、鎧も操も妄想力にも長けていますね(笑)。操の場合は、被害妄想ですが...。

 戦力的な面では、ゴーカイシルバーは複数のレンジャーキーを融合させるという特殊能力を要しており、ジュウオウザワールドの野生大解放に通ずる部分がありますね。

罪を背負って戦うヒーロー!?

 何だか70年代的なテイストですが、そこにあまりネガティヴな要素が介在しないのは、現代ならではというところでしょうか。原因は、操が「罪」だと思っている大部分に彼自身の妄想が関わっているからですね。

 三人のジューマンからパワーを奪ったのは、あくまでジニスであって操ではない。しかしながら、操は三人のジューマンパワーを使うことに後ろめたさを感じており、その後ろめたさの根拠を妄想に求めているという...やっぱり面倒臭い人でした(笑)。結果的に、妄想内で三人のジューマンから諭される形で自己解決、ジュウオウザワールドを名乗ることになりますが、この時、単なる妄想ではなく三人のジューマンが本当に語りかけてきたのではないか...と思わせる構成が巧いところ。ここで少し、操は「救われた」のかも知れません。

 よくよく考えると、70年代でも「宿命」を背負って戦うヒーローは沢山いましたが、「罪」を背負っているヒーローは思い浮かびませんねぇ。ライダーマンくらいでしょうか。むしろ、先に挙げたドラゴンレンジャーやガオシルバーといった、戦隊の追加戦士がそのテに該当します。要するに、ヒーローのメインストリームには成り得ないということです。これが成立しているのは、「必殺」シリーズのような時代劇くらいかと思います。

ジュウオウザワールド

 操は「世界の王者」の異名を(自ら)取り、ジュウオウザワールドを名乗ることになりました。今回のOPでもジュウオウザワールドのクレジットがありましたが、まだ六人目としての映像は挿入されていませんでしたね。本編とのリンクに配慮が行き届いていて良いです。

 基本的に「名前を変えただけ」なので、能力自体はザワールドと同一です。しかし、自身を奪回すべくアザルドとクバルが仕掛けた人質作戦に飛び込んでいく勇姿は、替え難いカタルシス。捕縛されているセラ達が痛々しく描かれているので、「最強の戦士が助けに来た」という、グレートマジンガー以来の爽快感を高いレベルで再現することになりました。

 大和ともに、アザルドとクバルを一時撤退させるほどの強さを発揮し、さらにその爽快感をあおり立てます。改めてヒーローとして三つのジューマンパワーを丹念に見せる辺りも素晴らしいところ。変身後だと自信満々の最強戦士なのに、ある琴線に触れると突如殻に閉じこもるギャップが、正に「萌え」の体現になっていて面白いですね。

ボウリンゲン

 今回は操が「エクストラプレイヤー」ではなくなった為、ボウリンゲンがエクストラ扱いでした。巨大戦の為だけにひょいと出て来て、ヒロイックなトウサイジュウオーの初陣で華麗に散っていきました(笑)。

 トウサイジュウオーは各キューブアニマル状態でも活躍が存分にフィーチュアされ、ザワールド時でも披露済みに関わらず、新たな魅力を振りまいていました。やはり「特撮」ですよね! 重量感と実在感に溢れるミニチュア特撮が大事にされていて、感慨深いものがあります。

餌付け

 大和が当初 、セラ達と食べ物を用いて仲良くなろうとしたように、今回も操を食事に誘うという行動を見せました。つまりは「餌付け」です。孤独でニヒルな男になることが全く以てできない操は、この誘いに食いつくこととなりました。

 「あだ名で呼ばれたこともない」という孤独ぶりを聞いていた大和は、操を「みっちゃん」と呼び、餌付けにつらなる効果をプラス。さすがは大和といったところでしょうか。天然なのでしょうが、ある意味非常に狡猾な男でもありますよね...(笑)。

販促!

 操の方はと言うと、手土産として持参すべく手縫いでジューマンのぬいぐるみを作るという、これまた強いインパクトを放つ行動を見せました。このぬいぐるみは実際に商品のラインナップに上がっているものなので、いわば販促なのですが、操の訳のわからなさに拍車をかけることになり、効果的だったと思います。

 私は、今ではこういったぬいぐるみが突如劇中に出てくること自体に抵抗もなくなりましたが、さすがに「ファイブマン」の時には卒倒しそうになり(しかもしばらく戦隊から離れていた時期に、たまたま見たのが「5くん人形」)、「ジェットマン」まで立ち直れませんでした(笑)。今こういうのって、小学校高学年とか中学生の多感な時期に戦隊ファンをやっているような子達には、どう映っているのでしょうか...?

次回

 今回は徹頭徹尾、大和と操の交流話として仕立てられましたが、次回は他の面々とも少しずつ関わっていくようです。まずはタスクという辺りがニクいところ。また一週ほど放送休止になるので、焦らした分の面白さを期待したいところです。