バラエティ編が続きます。前回の完成映像が割と救いのないものだったのに対し、今回は筋運びこそハードですが映像的にはライトな感触を受けます。
メンバーの相克、狙撃という物騒な題材、頭脳と体力で制する一戦...といった具合に、往年の刑事モノらしい要素が並んでおり、その切迫度はこれまでのエピソード中でも随一でしょう。しかし、そこはかとなくハートフルな雰囲気が漂い、コミカルな描写も良いインパクトを放っていて、読後感の爽やかさも随一となっていました。
メインはレオとタスク。「生き残り」も二人に絞られていくので、より濃度の高い二人のやり取りを堪能出来ます。
ハンタジイ
ベテラン狙撃手といった風情が格好良いハンタジイ。狙った獲物は確実に仕留め、命中させた者を可愛い人形に変えてしまうという能力の持ち主です。この「可愛い人形」というのがミソで、正に今回の雰囲気を象徴していると言えます。楽しいのは、例えマネキン人形であっても小さい人形に変えてしまうことで、この能力が人間に限定されていれば、あるいはタスクの作戦は失敗していたかも知れません。
狙撃手系の怪人といえば、私などは古いので真っ先に「デンジマン」のダートラーが思い付いたりするのですが、このダートラーの話はグリーンが撃たれて死ぬ振りをし(しかもその「死後」の描写が結構シビア)、敵を罠にかけるというシリアスなもので、ダートラーの使う弾も実弾という遠慮のなさ。この辺りは刑事モノの影響が色濃く残っていた、当時の戦隊らしい雰囲気だと言えます。その他、思いつくところでは幹部級ではありますが、「ジェットマン」のグレイがいますね。彼のアクションにはリアリティがあり、スーツアクター兼キャラクターボイスを務めた日下秀昭さんのベストアクトと言っても過言ではありません。
さて、ハンタジイは前回のドロボーズと同様に、リーダーの座を狙っているという設定でしたが、残念ながらそこまでの器ではなかったようです。まだデスガリアンは組織構造に揺らぎがないので、ダイナミズムには欠けるきらいがありますけど、現在はジュウオウジャー側の変遷をダイナミックに描くことに注力しているように見受けられるので、悪側が安定している状況は必要だろうなと思っています。
等身大戦のクライマックスや巨大戦では、全身から炸裂弾を発射する猛者振りを発揮。銃に頼らずとも、単体での戦闘力が高いことを示しました。まあ、残念ながらそれは必然的に「最後の抵抗」として描写されてしまうので、あまり印象には残りませんでしたが...。
レオとタスク
レオはとにかくやってみるタイプ。タスクはとにかく考えてから行動するタイプ。この両者の相克が今回の見所の一つです。
レオの後先を考えない性格は、目前の獲物のみを徹底して狙う、ネコ科の猛獣の性質をよく反映しています。まずは一点に全力集中。レオの場合、それが女の子であろうと敵であろうと一緒なんですね(今回は軟派な面を封印してますが)。ただ、ライオンに限らずトラやイエネコなども含めて、狩りは結構慎重に行われるものなので、レオのあまりの猪突猛進振りは、かなりデフォルメされたものと言えそうです。駆け抜ける「サバンナの王者」というイメージに則した「らしさ」が追求されているわけですね。今回は、この性格が仇になったり役に立ったりと、楽しい展開が待っていました。
一方、慎重派のタスクは、ゾウ由来の雄大さをイメージソースとしたキャラクター付けがなされているものと思われますが、最近は彼のキャラ崩しも奮っていて、やはり近年の戦隊では完全なるクールキャラが成立し得ないことを、如実に示しているような気がします。今回はコミカルな面をあまり見せていないものの、レオに対する「キレ芸」が凄まじく、そこには既に「冷静さ」などなくて「(少々面倒な)生真面目さ」があるのみ(笑)。ただし、その「キレ芸」の中に、天気予報を勘案するといった慎重さがきちんと垣間見られるようになっていて、さすがはキャラ職人たる荒川さんのホンですよね。今回は、慎重であるが故の失敗と成功を描くことにより、レオとのコントラストを鮮やかに浮かび上がらせていました。
劇中では、ハンタジイがもたらす危機的状況を二人でどう打開するかに主眼が置かれます。面白いのは、前半戦ではタスクの方に正当性があるように見え、後半戦ではレオの方に正当性があるように見える「仕掛け」です。
前半では、見えざる敵に対抗する為には、慎重な作戦立案こそが必要であるとするタスクと、そんなことをしていたら被害が拡大する一方だと逸るレオの姿が描かれます。レオは全く考えることなく、一方的にタスクを詰り続ける(しかもダメ押し的にアムはレオの意見に賛成する)ので、「浅はかなレオ」というイメージで画面を観ることになります。確かにレオの言うように、待っている間に被害は拡大していくのですが、人形になった大和とセラに対しては「何とか助けられる」という姿勢で一貫しているため、その辺り、人々が人形になっていくことに対する切迫度は低めな印象。即ち、レオが結果よりも現状に重きを置いていて、それが結構自分勝手な言い分であるという感覚で描かれることになり、この時点で視聴者はタスクへの感情移入を促されてしまうわけです。
逆に後半では、決断の遅さ(≒完璧ではない作戦)でアムまで人形にされてしまい、後悔の念にとらわれるタスクと、それを詰るレオが描かれることになるわけですが、前半と同様の構図でありながらも、タスクのネガティヴな面を前面に出すことによって、視聴者は今度はレオの言い分に感情移入するよう導かれてしまいます。これがすこぶる巧いところ。レオのタスクに対する理解の深さ、そしてその熱さがタスクの心に再び火を点けるという、燃える展開が待っているわけです。
結果、レオとマネキン人形の衣装を入れ替えてダミーのレオを撃たせ、しかもタスク自らが犠牲となることでレオがハンタジイに接近する充分な隙を作り出し、レオの類い稀なる身体能力でまんまとハンタジイの銃を破壊することに成功します。計算され尽くしたカットの積み重ねが作戦の緻密さを大胆に表現し、実に爽快なシーンを生み出していました。タスクとレオの格好良さ、ここに極まれりといった感じでしたね。
ちなみに、今回は素面アクションでも見るべきシーンがあり、特にレオのパルクールを取り入れた追跡シーンが素晴らしいものでした。南羽翔平さんの身体能力の高さを存分に生かして、レオのキャラクターにリアリティを付加していましたね。あのシーンがあったからこそ、ジューマン態での壁登りシーンに至っても人物の連続性が失われなかったのではないかと思います。
真理夫さん
今回の真理夫さんは、人形になった大和の脚が短すぎるとしてハサミで切ろうとしたり(「短足」を連呼して阻止しようとするレオ達と、それにヘコむ大和自身が可笑しい)、アトリエに「避難」させていた人形が一斉に元の人間の姿に戻り、すし詰め状態となって焦ったりと、コミカルな面を惜しみなく披露。出番が確実に増えましたが、次回のメインを張るにあたっての助走ではないかと思われます。
次回が楽しみで仕方ありません。
巨大戦
地味ではありますが、今回はジュウオウキングとジュウオウワイルドの合体パターンが変則的なものになりました。ジュウオウキングは1-5-4、ジュウオウワイルドは6-2-3。ここ数話は1-2-3と6-5-4に固定されつつあったので新鮮に映りました。結局はワイルドジュウオウキングに合体してしまいましたが、まあ売り時なので仕方ないですかね(笑)。
合体自体を筋書き上の必然的なものとしてとらえていた初期に比べると、ややぞんざいになってきている感はありますねぇ...。
次回
真理夫さんの項で書いてしまいましたが、多忙な寺島さんをどれだけフィーチュアしたのか、その成果が実に楽しみです。例年の展開から見れば、そろそろ大きな転換期が来るものと思われるので、その前哨戦たるバラエティ編をどう締めて印象付けてくれるのか、注目したいと思います!
竜門 剛
前回に引き続き、妙に昭和感のある展開でした。ハンタジイは、実に老獪という表現がぴったりなキャラクターでしたね。それにしても、相変わらずヤラレ役怪人のキャストが無駄に豪華(褒め言葉)。
戦隊シリーズでは、時折ロボ戦がないほうが綺麗にまとまる話があって、どうしても付け足しになってしまう時がありますねぇ・・・。大人の事情なので仕方がないところもあるのですが。
そうすると、ロボの出番が全体的に少なかったダイレンジャーって、本当にかなりの挑戦作だったんですね。
天地人
劇中でも触れられましたが、おそらく最もハンタジイに対抗出来る大和とセラが序盤で倒された(?)事が危機感をあおってましたね。
前半でのレオとタスクのそれぞれの気性による対立と、後半でのそれぞれの特徴を活かした反撃は、ベタでしたけど、ベタだけに納得の展開でした。
惜しむらくは、人形のパンチラというか、セラかアムの人形を○×△するとかの展開が無かったのが残念です(おいおい)
しかし、これまでの内容を観ると、ジュウオウジャーって妙に昭和の臭いを感じる戦隊ですね。
それではまた