第13話「山頂の目撃者」

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 乃木坂46の井上小百合さんをゲストに迎えたバラエティ編。

 井上さんは特撮、特に戦隊ファンを公言しているそうで、今回は正に念願の「参加」となったようです。業界内で戦隊などの影響を受けたゲストが出演すると、何となくその熱が画面を活性化して、面白い反応が現れてくるような気がします。

 一応レオがメインとしてフィーチュアされましたが、大和も巧く話に絡んでおり、他の面々は「体当たり」という表現が相応しい活躍だったと思います。

ノボリゾン

 今回の怪人は、山のエネルギーをコツコツ吸い取るという、何とも地道なゲームを展開するノボリゾン。ゲーム色の強いデスガリアンの中にあって、何故か往年の地球征服作戦っぽい気の長さを発揮していて可笑しい限り。しかしながら、こうしたコツコツ系のゲームはドラクエ4のトルネコ章のように実際に存在するので、強ちゲーム色が薄いとも言えないですね。

 さらには、この「作業」を邪魔されないよう、アザルドがサポートするというくだりを設けて、登山や罠といったタームを散りばめるためのエクスキューズをちゃんと用意しているんですよね。こういった細かい部分での律儀さが面白い処です。

 ノボリゾン自体にも登山のモチーフが投影されていて、「ゴレンジャー」の仮面怪人のような洒落を効かせたセリフ回しがいちいち楽しいものになっていました。レオを痛めつける辺りの悪辣さと、コミカルな言動のギャップに恐ろしさを感じますが、この辺は正に仮面怪人の雰囲気だと思います。

五十嵐百合

 今回のメインゲスト。冒頭に書いたとおり、乃木坂46の井上小百合さんの出演です。

 鳥男を目撃した山ガール(今でもこの言葉使います??)という役どころで、前回セラが描いた似顔絵が活用されており、段取りの良さを感じます。鳥男の目撃談を話の端緒に持ってくるという手法は、唐突なゲストとの出会いを回避すると共に、ジュウオウジャー全員の動機まで与えているわけです。見事ですね。

 さて、百合ですが、レオが一目惚れするというありがちな展開の渦中にありながら、あざとさ皆無なのが凄いのです。大和にキラキラした視線を向けるという、これまたありがちな展開にあっても、やはりあざとさが感じられない。この独特の雰囲気の理由は、実は大和に恋愛感情なんか抱いてなかったという壮絶なオチによる処が大きいのですが、それを逆算してちゃんと演じている処に凄さがあります。井上さんの演者としてのキャリアは存じ上げませんが、ナチュラルな立ち振る舞いの中に、ちゃんと本を読み込んでいる感じがありますよね。勿論、演出の巧さが大いに効いているというのもあるでしょうけれど、その演出に対してレスポンスがちゃんと返せるかどうかはセンスの問題だと思うので、やっぱり井上さんは巧いのではないかと思います。

 特撮ならではのシーンもありました。逆さ吊りの目に遭うというシーンがそれです。東映特撮界隈は、割とアイドル系に凄いことをやらせる伝統があって、例えば「シャリバン」ではレギュラーの中川みどりさん(当時、演歌系アイドルでした)を、ご本人の希望ではありますが、ビルの屋上から吊ったりしてます(笑)。今回もシーンとしては一瞬ですが、リハとかスタート前の準備とかカット後とかを含めると、吊られている時間は意外と長いので、大変だったのではないかと思います。レオ共々片足吊りになっていましたから、余計に大変ですよね。お疲れ様でした。

 結局、目撃した場所に辿り着いても鳥男には遭遇出来ずというオチは、これまた定番であり、バラエティ編ならではと言えるでしょう。本流と絡ませながら、あくまで一挿話として扱う構成に巧みさを覚えます。

レオと大和

 レオが女の子大好きという設定は、より強化されて描かれることになり、特に冒頭から中盤にかけては、レオの好感度を下げかねない場面が続出(笑)。街を歩く女性に声をかけまくる姿はスマートとは程遠いもので、セラが鬱陶しがるのも無理はありません。以前、「女を守るのがポリシー」としていたレオですが、どうも結構な勘違いをなさっているご様子...。

 百合に一目惚れしてからは、何かと「頼りになるところを見せる」という行動に走りがちとなります。特に百合を背負って頂上までのショートカットを行くというくだりは、山ガールにとっては迷惑な話。ただし、その辺りを登山スタイルの好みの問題とせず、劇中ではもっと直接的な害を描いていて、理性的なものを感じます。その害とは、妙な近道を登ってきたので、リカバリーが効かなくなるというもの。途中でアザルドの仕掛けた罠に遭遇し、レオは百合に下山するよう勧めるのですが、道が全く分からないので下山も出来ないわけです。

 ここまでのレオは、わざと大和の対極を描いているように見えます。大和からは「分け隔てなく動物と接する」という設定故なのか、フェミニストの雰囲気すらも漂ってくるのですが、ナンパしまくるレオの行動はそれとは対極ですし、百合をちゃんと安全な場所に誘導してみせる大和は、レオが導いた危険からの脱却を担っています。とにかく、今回のレオは大和の格好良さの引き立て役!

 しかし、ここで終わらないのが良いところ。レオはその猪突猛進振りを発揮して、罠を強引にくぐり抜けてノボリゾンの元へ辿り着きます。この役目、近年ではレッドが担うことが多かったように思いますが、今回はそれをイエローにやらせてレッドはスマートにやって来るという、絶妙なズラシになっています。ここでも大和はやっぱり格好良いのですが、レオが居たからこそというシチュエーションが丁寧に語られているので、レオの好感度が一気に持ち直すわけです。

 各場面を眺めても、崖を物凄い勢いで登っていったり、その勢いを保ったまま戦闘に突入したりと、素晴らしい迫力に満ちています。大声だけではない、レオの身体能力の高さを如実に表現したシーン作りは抜群の説得力と格好良さですね。

 結局、レオの女性に対する悪い癖は直ることなくエンディングを迎えます。百合が大和に興味を持っていると知ってショックを受けるも、実際は百合が大和とインコが似ていて感激していたという衝撃のオチだったので、笑い飛ばして終わってしまったからです。まあ、まだ1クールも過ぎた辺りなので、レオから楽しい要素を奪うのは勿体ないですからね。この処置で正解だと思います。

体当たり! セラとタスク

 割とクールなキャラである二人のイメージをぶっ壊すようなシーンが続出! 正に体当たりコメディとなっています。

 タスクは何度も罠にかかってセラも呆れる始末。タスク今回の白眉は、何と言っても「トラバサミ」にかかるシーンでしょう。思いっきり寄り目で絶叫する、普段のイメージからは程遠いタスクの姿を拝むことが出来ます。タスクに関しては、早いうちからキャラ崩しが始まっていましたが、既にここまで許容されるようになったんですね(笑)。

 セラもタスクと共に網にかかったりしていますが、彼女の白眉は何と言っても泥に顔を突っ込むという体当たりシーンでしょう。うら若きモデルさんの容姿が汚されるという背徳美(?)。もう一人のヒロインであるアムは回避していましたから、その体当たりたるや凄味すら感じられます。公式サイトでは、撮影にココアが使われたと書かれていましたが、材料が何であれ汚れるのは一緒ですからね。凄いことです。

恐るべきアム

 泥への顔付けをすんでの処で回避するという凄技を見せたアム(「危なかった!」というセリフが可笑しい)。その後も罠にかかりまくるセラとタスク達を尻目に、メーバ相手に孤軍奮闘! フワッとしているようで結構な危機回避能力を持っている辺り、さすがという感じです。

 今回は酷い目に遭ってませんが、まだまだこれから3クールもあるので、事務所的にNGでなければ何が起こるか分かりませんね(笑)。

 他にも、百合の視線が大和に向いているのを人知れず察知していたりと、観察眼の高さも披露。まあ今回の場合、恋心ではなかったというのを見抜けませんでしたが...。それでも百合が大和に興味を持っていたのは間違いないので、眼力の高さは確かでしょう。

キューブクマ

 バラエティ編に新ガジェットの登場を盛り込んでくるから侮れない...。熊と斧ということで、金太郎のイメージ?

 神出鬼没の鳥男が何故あの場所にいたのかというエクスキューズを、このキューブクマに絡ませているのも巧みで、もしかしたらこれからの展開(いわゆるキューブ連発)に鳥男が関わってくるのではないかという予感に繋がります。

 キューブクマのフォルムは実に可愛らしく、打撃系の武器というギャップも良い感じです。巨大戦は足早に展開していましたが、一応打撃系が必要になるようなシチュエーションが意識され、その登場が極力不自然にならないように配慮されていました。市街でない戦闘も迫力たっぷりに描写されていましたね。

次回

 次はアムの番。ちょっとハートウォームな話になるのか、それともギャグ編なのか、予告では判断付きかねますが、いずれにせよアムの活躍がメインとなるのは間違いなさそうです。

 アム無双に期待したいですね。