第12話「はなのみじかいゾウ」

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

 正真正銘タスク編。大型連休という事もあってか、全体的なストーリーの流れにあまり触らない、徹底したバラエティ編の体裁をとっていますが、ベテラン俳優を迎えたコメディ編ということで、キャスト陣にとっては非常に重要な回になったのではないでしょうか。

 タスクのキャラクターは、冷静沈着な頭脳派として設定されていますが、演じる渡邉さんの雰囲気に引っ張られてか、また象というモチーフに牽引されてか、幾分柔和なものになっています。今回はそれをより一層推し進めた感がありますね。

 バラエティ編らしく、敵側の繰り出すゲームも割とコミカルな描写に終始していて、「痛み」を伴うような殺伐さは殆ど皆無でした。

ハッテナー

 不死身で、実は帽子の方が本体という、特撮伝統のレトリックに彩られた、バラエティ編に相応しいオーソドックスな怪人です。しかしながら、CGのテクニックがごくごく自然に利用出来るようになった現代だからこその、「文字を奪う」という能力描写が秀逸そのもので、それは現状においてこれ以上ないほどの素晴らしさで映像化されました。

 今回の重要なアイテムである本のみならず、あらゆる標識や看板といったものからすべての文字が浮遊していく描写は、映像化する際の手間を考えるとゾッとしますが、ついでに劇中の人物が発する言葉すらも文字化して浮遊させるという描写のアプローチに、それこそ絶句せざるを得ない説得力がありました。非常に漫画的な画作りですが、ある意味リアリティの極致とも言えるでしょう。

 ハッテナーの声を担当したのは、飛田展男さん。定期的に戦隊怪人の声として登場されていますが、やはりコミカルな演技は抜群ですよね。カミーユ・ビダンと同じ声なんだと、なかなか信じ難いものがあります。いつものことながら(笑)。

 帽子の方が本体だという件については、タスクに先んじて交戦した四人があっさり見破っており、「不死身の敵の攻略」というくだりがメインになっているわけではないと分かります。しかし、決戦時にタスクがクリアすべきハードルとしては厳然と存在しています。にも関わらず、そこにコミカルなくだりが入り込む隙が生まれており、この流れ組み立て方の巧さは特筆モノでしょう。

大岩源九郎

 「ひねくれ堂」なる古書店の店主。もう店名自体が浦沢義雄先生の世界観で何とも(笑)。劇中での言動を見ていると、ひねくれているというよりは、こだわりが強すぎて愛想を振りまけないといった印象の方が強いです。それでもまあ、商売としては成り立たないでしょうけど。

 このコミカルなキャラクターを演ずるは、堀内正美さん。「仮面ライダードライブ」の途中に登場する大ボス役が最近では最も印象が強いですが、私の中では堀内さんは「円谷の人」。特に「ウルトラマンネクサス」の松永管理官役がレギュラー出演という事もあって、どこで見かけても松永管理官というイメージで見てしまいます。勿論、キャラクターが固定化するような役者さんではなく、今回のようにコミカルな役が物凄く巧い俳優さんなのですが、やはり松永管理官が強烈だったんでしょうね。ちなみに、ウルトラ、ライダー、戦隊でグランドスラム達成だそうです!

 さて、この源九郎さん、もう定番中の定番と言っても良いくらいの言動でタスクを翻弄しまくるのが面白い。被害をでっち上げて店番をさせるといったものから、嬉々として本の魅力を語るといったシーンまで、実に生き生きとしています。店に客を呼び込もうとするタスクに声を荒げたりするのも定番。しかしながら、そういった言動がいちいち厭味にならない辺りが堀内さんの巧さ。奥に本を愛してやまないといった、微笑ましい偏愛の光が垣間見えるんですよね。不特定多数の客を呼び込むということは、それだけ有象無象を呼び込むリスクも上がるわけで、店主の言い分としては、あながち外れてはいないような気がします。

 最終的には、タスクがジューマンであることを目撃して自分の網羅する世界の外にあるものを見知り、有象無象のリスクを受け入れることになります。遊びに来た子供達を優しく迎え入れる様子は実に微笑ましく、子供達こそが、本当に本の良さを伝えるべき「客」なのだと悟ったように見えます。

 そして、そういった市井の描写のみならず、ジュウオウジャーの戦闘にも飛び込んでくるのがこの人の凄いところ。大和達のジェスチャーを理解できないタスクに、鋭いアシストを放つ! タスクのクールさをさらに打ち砕いた名シーンでした。

タスク

 今回メインのタスクは、かつてレオが人間と交流した経験以上のものを得たのではないでしょうか。

 まずそれ以前に、人間界に来て間もないにも関わらず、既にかなりのジャンルの書物を読み下せる出来るようになっており、彼の卓抜した頭脳のほどを感じ取ることが出来ます。しかし、そこに「人間との直接の交流」は介在しておらず、いわば情報先行の状態にあったわけです。

 純粋に書物への興味から始まり、大和に図書館という場所を教えられるも、運命の悪戯で源九郎氏に出会ってしまうタスク。理不尽な源九郎の言動に振り回されながらも、今回のサブタイトルにもなっている「はなのみじかいゾウ」という絵本に出会います。この絵本の絵柄が実に可愛らしくて良い感じですね。

 前述の通り、「ひねくれ堂」に全く客が寄りつかないことを憂慮したタスクは、この「はなのみじかいゾウ」を使って子供達を呼び込もうとします。しかし、語り口の堅さで子供達からは無視されてしまう始末。この辺りが、タスクの弱点と言えるでしょう。この「弱点」は後のハッテナーとの単独戦でも露呈し、大和達のジェスチャーを巧く理解できず、その頭の固さを源九郎から揶揄されてしまう始末(笑)。絵本読み聞かせのくだりで成長を遂げたのかと思いきや、実はそうでもない...という辺りが面白いです。

 演者の渡邉さんにとっては、戦隊ジャンル独自の演技とは少し離れたところを要求されるエピソードでしたから、難しくもやり甲斐があったのではないかと想像します。見事にこなしていたのはさすがですね。演出、演者の密なコミュニケーションが感じられます。

大和、セラ、レオ、そしてアム

 まずはセラ。鳥男の似顔絵を描くというシーンで、とんでもなく写実的な似顔絵を描出。その画力の確かさもさることながら、卓抜した記憶力もなければダメなわけで、セラの意外な能力が明らかになりました。やはり彼女は只者ではない!

 続いてレオ。セラとは逆に、非常に稚拙な似顔絵を描出。しかしながら、構図と迫力と色遣いが素晴らしく、芸術家=真理夫が絶賛していました。真理夫も徐々に各キャラクターとの交流の度合いを深めていて、その後がとても楽しみなキャラクターになってきました。それにしても数時間後の「真田丸」とのギャップが...(笑)。

 アムは、タスクの読み聞かせの様子を見て、瞬時に名案を思いつくという活躍。それぞれの動物をモチーフとした着ぐるみでタスクを賑やかにサポートし、子供達の目を引きます。ジューマンの正体を敢えて隠さずにギミックとして利用することにより、タスクを「はなのみじかいゾウ」から「鼻の長い象」へ瞬時に変化させてさらに子供達の驚きを喚起するという、秀逸なアイディアが光ります。勿論、これらを実現するには、事前に「はなのみじかいゾウ」を読んでおかなければならないわけで...。やはり「アム無双」は確実になり得るのかも知れません。

 この動物コスプレには大和も勿論参加していますが、とても可愛らしくていいですね。セラの被り物は凝っていますし、猫にしか見えないアムというのも巧いです。

 タスク単独戦におけるジェスチャーは、四人ともノリノリで演じていますが、明確なコメディの演技をまとめて要求されるのは初めてでしょうから、相応の苦労が伴ったものと推測されます。テンポが悪ければ一瞬で失笑ものになってしまうようなシーンでしたから、完成作品の完成度の高さが分かろうというものです。

次回

 次回もバラエティ編ですね。よくは存じ上げませんが、戦隊大ファンを公言する乃木坂46のメンバーが登場とのこと。よい感じに男性陣を振り回して欲しいですね。