第10話「最も危険なゲーム」

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 ジニス参戦!

 と言いつつ、ジニスはあくまでゲームの仕掛け人としての参戦であり、その実力を直接ジュウオウジャーにぶつけてくるわけではない辺りが、実に「らしい」処。殺戮ロボットにギフトというネーミングを施すといったセンスも抜群で、敵側への感情移入の余地を徹底的に排除し、無機質にジュウオウジャーを追い詰めていく展開が衝撃的です。

 そして、遂に「あの人」が登場...!

恐怖のドーム

 展開のメインとなるのは、触れた生物を消滅させてしまうという恐怖のドーム。これが徐々に縮小し、直接的な恐怖が存分に描かれる趣向です。

 まず始めに、ドームに接触した猫が消滅するというカットが挿入され、恐怖を煽ります。直接的にモブキャラの生命が消滅する様子を描くのは、近年の戦隊では非常に珍しい事で、それだけに衝撃度も高く、「ジュウオウジャー」の「生命の描写」に対する一定の姿勢が伺えます。その後、人間が消滅するというシーンこそ皆無でしたが、結構な速度で縮小するドームから逃れる為に逃げ惑う人々が執拗に描かれ、その被害を容易に想像出来てしまう処に、今回の恐ろしさがあります。ギフトの市街破壊描写と相俟って、多くの被害が出たものと考えられます。

 その他、ドームの内外で離ればなれになってしまった親子が登場したり、その逼迫度の高さを煽る描写には事欠きません。一方でこの親子が、セラ達に押し寄せているネガティヴな感情の奔流の中に、一筋の光明をもたらす事となります。この辺りの丁寧な連鎖も巧い処ですね。

解除スイッチを探せ!

 いかにも「ゲーム」らしく、大和達には、ドームの解除スイッチを探さなければならないというミッションが課せられます。

 スイッチ探しは、そのまま王者の資格探しと対になるイメージを抱かせ、セラ達を不安にさせました。それぞれが戦いの中で人間界に対するシンパシーを育てて来た裏で、およそ不可能に近い王者の資格探しに疲弊し始めていたという流れが重く、もっともっと緊急度が高くストレスフルなスイッチ探しが、そんな疲弊状態を刺激してしまったわけです。セラは前回見せた郷愁が増して苛立ちすら覚えており、レオは生来の豪快な性格故に繊細な作業を苦痛に感じ、タスクはその思慮深さがネガティヴな思考に陥る原因となりました。それぞれのキャラクター性に合致した重苦しさが見事。特にレオのような楽天家が「キレる」という言動によってその苛立ちを表現したのは素晴らしいとしか言いようがありません。

 そしてここで凄いのはアム。もう「アム力(りょく)」と言って良いのではないかというくらいの凄さです。

 諦めムードが漂いまくる中、大和すらもそれに巻き込まれそうになりますが、アムがセラ達を半ば冷たく突き放し、大和の手を引いてスイッチ探しに誘うという淀みない流れを見せます。アムがそのフワフワした雰囲気の中で実は色々と思索を巡らせている...という事が分かる秀逸な場面でしたが、これが完全に功を奏し、セラ達は頭を冷やす事が出来て被害者誘導へと奔走し始め、大和はジューマン達の不安に配慮が及ばなかった自身を反省し、そのジューマンの力(優れた視覚)でスイッチを発見するに至ります。「ニンニンジャー」でも「霞無双」とも言える優秀なヒロイン像が散見されましたが、今シーズンは「アム力」で決まりでしょうか(笑)。霞とは全く違う方向性ですが、メンバーの結束力を緩く、かつ強固に繋ぎ止める能力はすこぶる優秀と言えます。

 ここからは一気呵成。アムの「気付き力」のアドバイスを受け、大和が「視覚」で見付けたスイッチの在処を、その近くに居合わせたセラの「聴力」を頼って大声で知らせ、レオの類い稀なる「木登り」の能力で取りに行かせ、落下するスイッチをタスクの「長い鼻」(あれって伸びるんですね・笑)でキャッチする! もう見事としか言い様がありません。戦隊の原点たる「五人の力を一つに合わせて」がテンポ良く美しい形で披露されており、高揚感に満ちています。

ギフト

 解除スイッチは実は罠で、スイッチ自体が変形して殺戮ロボットに...というのが「ジニスの贈りもの」。ジュウオウジャー最大のピンチを描く為の仕掛けですが、ドームの解除スイッチを見付けるまでの流れがあまりにも秀逸なので、何となく付け足しの印象は否めない処です。「強力すぎてゲームが面白くなくなるから封印していた → ジュウオウジャーに封印を解かせた」という理屈も今一つな感があり、ここから後の危機的描写は今シーズン随一で凄まじいのですが、何となく乗れない印象もありました。ギフト自体の描写よりも、ドームの描写の方がかなり恐ろしかったというのもあるかと思います。

 しかし、そのバトル描写は素晴らしいもので、やはりピンチに陥った時はアクションの幅が増すというか、様々な工夫を凝らして危機を描き切っています。それぞれが持てる能力の全てを打ち込んでいく事になる為、自ずと得意技のオンパレードとなって派手な画面になり、今度はそれらが全く効果を発揮しない故に、追い詰められていく感じが真に迫ってくるわけです。

 巨大戦(ギフトが勝手に巨大化!)に持ち込まれてからの破壊描写は、特撮班の力量の高さを存分に感じる事が出来ます。直接的な構造物の破壊を迫力のオープンセットで丁寧に見せ、大規模な破壊描写を鳥瞰での合成メインで見せるという、一つ一つは定番カットながら、その繋がりの自然さでリアリティを積み重ねていく段取りの良さが光ります。

 ロボ戦ではいきなり二大ロボを登場させ、尺を節約しつつピンチのテンションを維持。戦い方を工夫する余裕すらなく、完膚なきまでに叩きのめされるというシチュエーションを見せる事で、次回に登場するであろう強化型への引きを存分に作り出していますね。

謎の男

 ラストに「謎の男」として登場するのは、我らが村上幸平さん。

 「仮面ライダー555」で草加雅人役を演じ、純粋であるが故に利己的に過ちを繰り返してしまうアンチヒーローの姿が話題となりましたが、その「悪役」としてのイメージが強い為か、今回も果たして味方なのか敵なのか判別不能という、村上さんならではの存在感が素晴らしい。かつて「ウルトラマンメビウス」でも別部隊の隊長役でゲスト出演されましたが、この時もノリの軽い爽やかな自信家といった感じながら、当初は主人公に対してどういうポジションで接するのか分からない印象でしたね。

 「ジュウオウジャー」では、既に鳥男の声として出演されているので、鳥男の人間態である可能性は大なのですが、やっぱり実際の処どうなのかよく分かりません(笑)。次回まで油断は出来ないと思いますよー。

 というわけで、次回は村上さんが大暴れ...する筈なので楽しみです。