第33駅「カラテ大一番」

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 重要回直後のバラエティ編の趣ですが、何者であるかを悟った後のライト達を存分に堪能出来るエピソードとして、意外な重要回でもありました。

 今回のメインは、ライトとヒカリのアクションという事になりますが、メインにフィーチュアされただけあって素晴らしい出来映え! 当初より折に触れて描かれて来た、ライトとヒカリの戦闘力の高さを裏付けるという意味でも大成功のアクション編だったと思います。

 3クール半ばで「記憶を取り戻す」という一大テーマを達成してしまった事で、次なる展開をどう持ってくるのかと思っていましたが、まずは順当なバラエティ編を持ってくるというのは、定番かつ良い選択だったと思います。しかし、今シーズンの巧さは、そこに「記憶を取り戻したからこその展開」を込めてくる事にあり、今回はそれを明確に表現したものとして評価出来ます。

 思い出した事柄も、ライトとヒカリが空手の同門だったという事に加え、師がライトの祖父だったというのが面白い処で、堰を切ったように回想上に肉親が登場してくる辺り、出し惜しみのなさを感じます。祖父役には、井上高志さん。特撮ファンには「仮面ライダークウガ」の先生役として印象に残る役者さんですが、その誠実そうな雰囲気が今回もピッタリハマっていました。「相棒」の前シーズン最終話にも出演されていましたが、超法規的な正義の在り方を静かに語る姿に感動しましたね。

 この空手の同門という設定は、ライト役の志尊さんが格闘技経験者であり、ヒカリ役の横浜さんが中学生の頃空手の世界チャンピオンになったという、素晴らしい経歴から来たものだそうで、そのポテンシャルは遺憾なく発揮されていました。劇中の設定では、彼等は小学校低学年くらいの年齢なので、あそこまで達人級にはならないだろうというツッコミが成立してしまいますが、問答無用の迫力の前には霧散してしまいますね。好意的な解釈をするならば、それだけ彼等は成長しているという事になり、劇中の流れとシンクロしているとも言えると思います。

 もう一つ面白いと思ったのは、ミオがいかにも武道経験者として扱われていたにも関わらず、あまりフィーチュアされなくなった事(今回も「ちょっとだけ」剣道をやってたという発言あり)。逆に何だかよく分からないが強いライトと、頭脳派としての描写が前面に出ていたヒカリが、ここに来て急激に格闘方面へと方向転換していく辺り、シリーズが生き物であると感じられます。昔で言えば、「ゴーグルファイブ」でゴーグルブラックが将棋部キャプテンの頭脳派という設定でありながら、演じたのが春田純一さんという事もあって、設定からは想像も付かない超絶アクションを見せたりしていましたね。「バイオマン」のイエローフォー両名なんかもそうです。

 シリーズが進行していく過程でのこうした変化はむしろ歓迎すべき事で、志尊さんと横浜さんの更なる魅力を引き出す事に繋がっているし、梨里杏さんの雰囲気がミオを男勝りではない方向性にシフトさせているのも実に魅力的です。勿論、シリーズ構成として予め織り込まれていたのかも知れませんが、ガチガチでない部分にこそ命が宿るという事がままあるので、なかなか難しい処です。

 さて、もう一人のゲストは春日太平なる人物で、こちらはロッキー刑事こと木之元亮さんが担当。これまた特撮ファンには「ウルトラマンダイナ」の熱血隊長としてお馴染みですが、そのヒビキ隊長の「その後」がそのまんま出て来たかのようなキャラクター性に笑ってしまいました。実質、豪傑親父とチュウシャキシャドー変身体の二役だったわけですが、どちらも楽しそうに演じられているのが分かりますね。

 そのチュウシャキシャドーですが、シャドー怪人の中でも随一の悪辣さを持っていて、それだけに倒し甲斐があるキャラクターでした。明確に死をゴールとした作戦は実に恐ろしく、コミカルな言動が目立つ割には憎々しさが強調されていました。

 攻略戦に関しては、ヒカリの名探偵振りが織り込まれる等、以前の要素をちゃんとくみ取っている辺りが凄い。推理モノの定番である種明かしが挿入されたりと説明の巧さも抜群で、アクションだけでない知能的な逆転劇によって、その爽快感が増しています。

 また、格闘技と言えば...という事なのか、「燃えよドラゴン」を彷彿させる突入パターンが燃えます。倒したクローズの数を数えながら進んでいくシーンは、もう手数が凄い事になっていて、純粋な格闘モノの映画もかくやの出来映え。ヒカリは途中で数えるのをやめてしまっていた一方、ライトは自分の数のみならずヒカリの方も数えていたという執心っぷりが面白く、結果的にヒカリが僅差で勝ってはいたわけですが、両者の違いを如実に表す事項であったのに加え、やはりライトの方が「強い」のではないかと思わせられるのが巧い処ですね。ヒカリが余裕を失っていった一方、ライトは無駄な事を考える余裕があったと。

 それから、印象面で言うと、彼等のアクションはより実践的なベクトルに向いていたように見えます。これは映像的なアクションを見せるという意味では、まだこなれていないという事なのかも知れませんが、最近の世界的な(というよりハリウッド的な)トレンドとしては、ワイヤーアクションを盛り込むといった派手な荒唐無稽さが求められる一方で、よりリアルにコンタクトを見せるという方向性も重視されているようなので、そのトレンドを踏襲したという見方が出来るかと。当然、戦隊は子供向けのコンテンツですから、フルコンタクトに近い殺陣は導入しておらず(これはある意味東映の伝統芸でもある)、軽快さが前面に出ていますが、それでも格闘技経験者による一挙手一投足にはやはりリアリティがあると感じました。

 そして、逆転された後に、全く手も足も出ないままライトに瞬殺されるチュウシャキシャドーの哀れさに、カタルシスがありました。高層ビルから落下しながらダイカイテンキャノンをぶっ放す映像の素晴らしさは、それまでのリアリティある格闘シーンとは対極にあるヒロイックな描写で引き込まれざるを得ません。

 これらのくだりが実に素晴らしかった為に、巨大戦は蛇足になってしまう危険性がありましたが、意外な能力を発揮して超超トッキュウダイオーを無力化してしまう等、見所を創出。ハイパーレッシャテイオーを登場させる為のエクスキューズだったわけですが、流れは概ね自然でした。何より、夕景で繰り広げられる巨大戦の美しさよ! ハイパーレッシャテイオーの金色が、見事に夕陽を表現する照明に映えていて良いシーンになっていましたね。

 最後に、車掌さんの印象的なシーンにスポットを。

 ライト達を見て「子供ではなくなっていく」と感慨深げに呟くシーンがありましたが、あれこそが車掌さんのポジションですよね。それこそ「銀河鉄道999」の頃から。関根さんという「子供っぽい感覚を持ち合わせた明確な大人」が演じている意味を、今回ほど強く感じられた事はありませんでしたね。正に神懸かったキャスティングだと思います。

 次回は「子供じゃなくなっていく」事を更に強調するコメディ編になりそうですね。ミオと明、そしてトカッチという素晴らしい組み合わせには、期待せざるを得ません(笑)。