第31駅「ハイパーレッシャターミナル」

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 レインボーライン最重要駅に停車しながら、メインはシャドーライン側という驚異の回。

 あまりにシャドーライン関連の描写(特にアクション)が素晴らしい上に、烈車の洗浄もこの回の内に終了してしまうので、どういう事かと思っていたら、次回までこの状況を引っ張るんですね。最後の最後で「解散」を持ち出す引きの良さも光ります。

 まず目を見張るのは、ミニチュアによる「基地特撮」の真骨頂を見せてくれるハイパーレッシャターミナルの描写でしょう。

 近年では「ゴーバスターズ」の発進シーンが見事な完成度を見せてくれていましたが、「ジュウレンジャー」以降はどこからか巨大メカがやって来るというパターンも増えた為に、基地の描写自体が少ないのが現状。「トッキュウジャー」も基本的に走り続ける烈車がメインとなる為、実景との合成や実景そのものをミニチュア特撮で描写したシーンが多いのですが、それはそれで工夫に満ちた素晴らしい画作りだと思います。

 今回は大規模に組まれたミニチュアステージがまさかの登場を果たし、機能性に溢れた軌道設計や洗浄マシーン等、充実の「基地描写」が横溢。大規模故にオープンステージではなく、また大規模セットを強いインパクトで見せる意図なのか俯瞰アングルを多用している為、ややスケール感に欠けるきらいはありますが、一つ一つ丁寧に作り込まれたカットの数々にはため息が洩れます。

 戦隊における基地描写の歴史は、分析してみると結構面白いものがあります。初期だけ見ても、「ゴレンジャー」は、地下格納庫がかなり現実感のあるものになっているのに対し、発進時はいきなり新宿からブォーンと上昇するマンガチックなもの。「ジャッカー」はそれをよりリアルな雰囲気に寄せた感じとなり、ロボ初登場となる「バトルフィーバー」は、陸海空の活動が自在な戦艦そのものが荒唐無稽でありながら、海底基地からの発進シーンは思わず海に潜って探したくなる素晴らしさ。続く「デンジマン」、「サンバルカン」前半はそれを継承・発展させたリアル系、「サンバルカン」後半は往年のロボットアニメを彷彿とさせる基地が登場し、度肝を抜きました。「ゴーグルファイブ」に至っては、後楽園球場がせり上がって戦艦が発進するという、それまでのリアル系の描写を継承しつつ、日常にスッと入り込む「ゴレンジャー」型の進化発展系を見せてくれました。「ダイナマン」の非常にリアルなダム発進もこのパターンに属します。

 「バイオマン」以降は、基地自体の所在が曖昧になるパターンも登場し、前述のように「ジュウレンジャー」がその決定版となります。やがてCGによる描写が多用されるにつれ、ミニチュアによる基地描写は影を潜めるわけですが、たまには玩具化を前提とした基地も登場し、その際には現実感を重視するのか、ミニチュアによる特撮が盛り込まれるパターンが多かったように思います。

 このパターンに則ると、ハイパーレッシャターミナルも商品化前提という事になります(本編外のCM等でフライングしてますね・笑)。本編を見るに、トイも基地ギミックが楽しそうな感じがしますねぇ。

 さて、メインとなるシャドーライン側の事情ですが、ゼットを中心に、第三勢力化したシュバルツ、グリッタ復活を画策するノア夫人、今の処ゼットに取り入る事を第一義としているネロ男爵、過保護なまでにゼットに付きまとうモルク侯爵といった面々で大乱戦を繰り広げます。そこにライトが絡んでくる辺り、まだシリーズの主役が誰であるかという点を押さえていて良心を感じますが、戦いに加わりつつも完全に蚊帳の外扱いになっているのが凄い。

 ゼットは、レインボーラインの総本山とも言うべきハイパーレッシャターミナルを、キラキラの象徴と捉えて興味津々。他の面々が抱いている策謀は何のその、自分の好奇心のみで動くのがゼット流なわけで、今回もそれを存分に発揮していました。乱戦の中にあってもライトとの対決のみに興味を示し、対決に邪魔な者達を排除する事にのみ、その強大な力を使うという徹底振りが異色な魅力を放っていました。ライトとのすれ違い様に怪人態へと瞬時に変わるカットが特に素晴らしく、ゼットを単なる悪ボスではなく、アンチヒーローとして描写している事が分かります。

 シュバルツは、明確にゼットを狙うリベンジャーとして登場。前々回で見せた狡猾な策士としての貌よりも、武闘派の正々堂々とした態度が強調されており、ややキャラクターにブレを感じはするものの(一応ゼットのクライナーを奇襲していましたが)、ゼットの中にグリッタの息吹を感じる際の微妙な芝居の素晴らしさは、仮面劇の真骨頂を見る思いでした。

 ネロ男爵は、ギャグ要員のテーブルシャドー&チェアシャドー(二人のキャラクターボイス担当がやけに豪華な組み合わせ)を指揮する役割で登場しましたが、明との対決シーンに多くの尺を割いていて、それがまた見応えたっぷり。他の面々の大乱戦をよそに、黒とオレンジの二者がパワフルな技の応酬を見せるシーンの満足度は非常に高いです。

 ノア夫人は、様子見に現れつつも乱戦に参加。ゼットを庇う事でグリッタを守り、さらにはゼット自身に心中を悟られないようにする、また、目の上の瘤状態になっているモルク侯爵に誤射を浴びせる等、その狡猾な振る舞いが印象的です。

 モルク侯爵は、ゼットの庇護に尽力するのみ。例えゼットに邪魔者扱いされようとその意志を曲げない辺り、乳母以上の感情を抱いているのは間違いない処。しかも、あの見た目が重量級な造形でありながら、華麗に舞って高い戦闘力と防御力を見せつけるという意外性が良く、スピーディな大乱戦の中にあっても全く遜色がないどころか、実際は主導権を握っているのではないかと思わせる構成になっており、その実力を遺憾なく描写していました。

 この乱戦、一度見ただけでは把握出来ない程複雑なアクションでありながら、誰と誰が敵対しているのか、そして誰が優勢なのかといった状況描写を、きちんと盛り込んでいるのが凄い。それは即ち、アクションの中に芝居が入っているという事であり、やはりこれも仮面劇の極みといった処でしょう。そして、あの目まぐるしいカットに確実に声を当てていく技術も物凄いですね...。

 ライトは、遂にゼットの好奇心が自分のものとは全く違う事を悟り、「許さない」というテーゼを発露。前回のカグラと同様、個人的感情をきっかけに戦況を変えていく事となります。ギャグ調のライトもちゃんと描写されていましたから、このシーンの力強さが際立っていました。これから、ライトの精神性も変わっていくものと思われますが、そのきっかけとなるポイントとして印象に残るものとなりました。

 このように、シャドーライン側が中心となっていた為、なんとなく殺伐としていたのですが、レインボーライン総裁が明らかに被り物をしているとか、バスの運転手を明が務めていて、そのバスに愛着を持っていた事が分かるとか、チェアシャドーの巨大戦が完全にギャグとして処理される(特に超トッキュウオーによる耐荷重オーバーが素晴らしい)等、雰囲気を相殺するシーン設計も随所に見られました。スリリングに引き込みつつ、クスッと笑わせるバランス感覚が秀逸ですね。

 次回は「決意」の二文字と、サブタイトルからして重要回である事は明らか。様々な面で「転」となりそうですね。