トランスフォーマーならではの、事態に対処する主人公達の模様を実況中継しているかのような、臨場感が最高の一本。
アニメイテッドの特徴である、アメリカン・カートゥーンの悪役っぽいキャラクターが、先のメルトダウンに続いてメインを張る形で登場。「スピードキング」なんていうディープ・パープルなネーミングが冴えてますが、実は日本語版だけのネーミングだそうで、アメリカ版では「Nanosec」という名前が付いています。
この「Nanosec」の名前、かなり重要な意味を持っているのですが、「スピードキング」になったことで、ややこの辺りの意味合いが薄れてしまい、何で彼が老化していくのか、よく分からなくなっています。
要は、「Nanosec」がナノ秒を意味していて、彼が高速移動している最中に彼が過ごしている時間は、実はその移動に要する時間分を経過しているものの、他の者にとってその時間は極めて短いので、スピードキングが高速移動しているように感じられるわけです。つまり、あのスーツは周囲と異なる時間の流れを作り出す能力があるということですね。
しかしながら、これは作画ミスかも知れませんが、スピードキングは場面によって老いたり若返ったりしているので、単に高速移動能力が彼自身の時間をエネルギー化したものを消費し、しばらくするとチャージされて消費された時間のエネルギーが元に戻るのかも知れませんけど。
さて、小難しい話はこれくらいにして、スピードキング役は、待ってましたの子安武人さん。
勿論、子安さんと言えばターンエーのお兄さん…ではなく、「ビーストウォーズ」のコンボイなわけです。当時は珍しかった子安さんのコミカルキャラを体現する(いや、結構真面目なキャラではあったのですが、バナナが云々という演出が強烈でね)存在として、インパクトがありましたね。
今回は、岩浪監督慣れした感じの流暢なアドリブと存在感のあるセリフ回しで楽しませていただきました。口調はクルル曹長っぽいけど(笑)。
では、ストーリーを追いつつ、注目ポイントを押さえていきましょう。
今回の主役とも言うべき人物が、このニノ(=スピードキング)。
いかにもという感じの面構えが秀逸な泥棒です。泥棒ということで、日本で最も有名な泥棒ヒーローであるルパン三世のセリフがわんさか。彼を逮捕しようとするロボットは「ゼニガータ」と名乗ったように聞こえましたが…。
ニノは、たまたま置いてあった黄色い車に乗って逃走しようとするのですが、黄色い車と言えば当然バンブルビー。為す術も無く捕まってしまいます。
バンブルビーからして、「狙った獲物は必ず奪う神出鬼没の大泥棒」なんていうセリフを発してますが、これは緑ジャケットの旧ルパンのオープニングでのセリフ。いやはや、素晴らしいの一言です(?)。
結局、ニノはバンブルビーから逃走しようとし(ここでバンブルビーがニノを「遅い」とバカにしているのが重要。アニメイテッドでは、こうした立場の逆転という展開がよく登場します)、すったもんだあってアイアンハイドが加勢するも、アイアンハイドがまた勢い余って桟橋を破壊してしまい、結局オプティマスのご登場に。
オプティマスに地球のルールを説かれ、ニノはお縄となります。
さて一方で、最近のサムダック博士はスピードに関する研究に勤しんでおり、その成果物がこの黄色いターボブースター。いかにもバンブルビーに着けろと主張しているようなカラーリングが笑えます。
バンブルビーはご機嫌ですが、オプティマスやラチェットは装着を反対。まだテストも不十分ということで、ラチェットなんかは完全に信用していない様子。これにはサリも少々不機嫌になりましたが、考えてみればダイノボットが暴走したりと、あんまりいい目にあってないですもんね、オートボットの皆さんは。
その不安どおり、サムダック博士の実験は失敗気味に推移。メガトロンの技術を導入した新開発のスーツに、スピード実験の成功を託すのですが…。
このスーツ、妙な既視感があると思ったら、「勇者指令ダグオン」のターボカイに似てる!そうか、だから子安さんなんですね。って、深読みしすぎというか殆ど邪推ですけど。
その頃、オートボット達はハイウェイで隠密行動の訓練中。バンブルビーは飛ばし過ぎで逆に目立ち、プロールは人が乗っていない事で、もっと目立つとツっこまれていました。が、プロールはホログラムで自分によく似た警官をライド。
実写映画版では、ブラックアウトやバリケードが同じようにダミーの人物をホログラムで見せていましたが、実はG1初代アニメにおいて、既にハウンドが同様の能力を見せていたんですねぇ。先見の明がありました。
メガトロンの策略によって保釈され、スーツを届けられたニノはスピードキングとなり、早速高速移動能力を使って銀行から大金を盗みだします。残像が光の筋になって街を飛び交う様が秀逸。
このちょっとダサめな感じも素晴らしい!
全て順調に見えましたが、彼の見た目に変化が。
急激に年とってます。
動きが鈍くなってきた処を、プロールに捕まえられますが、足のホイールで痛烈な蹴りを放って逃亡。
逃亡中、スーツの通信機能を用いたと思しき、メガトロンのメッセージが。いや、もしかしたら予めスーツにメッセージを入れ込んでいたのかも知れません。
メガトロンは、自らの復活に必要な「デストロニウム」を入手してくるよう、スピードキングに「依頼」します。代金はサムダック博士の口座をハックして与えており、いよいよもってその狡猾振りが顕になります。
なお、「デストロニウム」は非常に不安定なので、盗み出したら速やかにメガトロンの元へ届ける必要があるらしく、その為にニノを利用したわけです。
にしても、「デストロン」が「ディセプティコン」になった今、「デストロニウム」とはなんて素敵なネーミングでしょう。この物質の出所は一切不明なのですが、サイバトロニアンが関与したかどうかは定かではありません。
スピードキングは、まんまと金をせしめ、なおかつデストロニウムを手際よく盗み出します。あれっ?若返ってる…。
そうなんです。ここで若返ってるので、時間の圧縮と老化の作用が、可逆性を持っているのではないかと考えられてしまうのです。
単なる編集ミスとは思えませんし、何か意図があってこうなってるのでしょう。日本語版はカットされたシーンが結構あるらしいので、もしかするとその辺りに何か描かれているのかも。詳しい方、教えてください。
さて、デストロニウム奪回の為に出動するオートボット。オプティマス達に置いてけぼりにされたバンブルビーは、サリの提案でターボブースターを装着。サリのキーによって超高速移動能力を身につけます。
その後は、スピードキングに翻弄されるオプティマス達を描きますが、これが結構早いテンポで描かれていて、なかなか凄いのです。しかも、ちょっとドタバタな感覚が導入されていて、往年のカートゥーンを彷彿させます。
一方、バンブルビーは現場に到着するも、ターボブースターの制御が出来なくなり、サリのキーでも制御出来なくなってしまいます。今回、サリの表情がかなり豊かで、しか怖い(笑)。でも音仏家のたつやくんの絵の方がもっと怖い。
哀れ、オプティマスはバンブルビーの下敷きに…。
画像だけ見ると、物凄く危機的な状況に見えてしまいますが、これはギャグシーンの中の1カットですよ。
で、スピードキングの速度がみるみる落ちてきていることに気付くバンブルビー。オプティマスの禁を破って、再びターボブースターを始動。スピードキングを煽ってその速度を上げさせます。速度の逆転の逆転を描いて繋げてきているのが実に見事。
バンブルビーが気付いた事、それは、スピードキングが高速で移動する度に、老化していく事です。バンブルビーは、もっとスピードを上げさせることで、老化を早めてその動きを制止しようと考えたわけです。割と残酷な仕打ちですな(笑)。
結局、デストロニウムは奪回したものの、その爆発は止められず。地球(!)への被害を防ぐには宇宙で処理するしかないという結論に達した時、バンブルビーがターボブースターの使用を提案します。
アイアンハイドがレッキングボールでプロールに抱えられたバンブルビーを打ち上げ、成層圏離脱前に飛行能力を持つプロールがバンブルビーを投げ上げ、バンブルビーがターボブースターで大気圏を離脱。デストロニウムを宇宙の彼方に投げつけて爆発させます。
この多段階ロケットを思わせるシークェンスが非常に合理的で、カッコいいのです。
初代アニメのランボルのジェットパックを思い出します。
デストロニウム爆破の余波に飲まれつつ、そのまま大気圏再突入したバンブルビーは、ラチェットのマグネットパワーで減速し、オプティマスのウルトラスプレーで冷却されます。これまた合理的なシークェンスが泣かせますね。
色が変わっちゃって、トランスフォーマーにとって縁起の悪い色になってしまいましたが、バンブルビーは全くの無事でした。めでたしめでたし。
よく見ると、バンブルビーのマスクオンモードって、初代バンブルのトイの顔面がモチーフになっているんですね。今まで気付きませんでした。最近の初代バンブルの復刻版は、新規造形でアニメの顔になってますが、元々は結構無機質な感じでした。
今回も面白かったですね。一つ一つのエピソードに高い独立性を持たせながら、水面下でメガトロンの策略が徐々に動いていく感じが堪りません。
次回はいよいよお待ちかね、ブラックアラクニアがメインです。
この回は、トランスフォーマー アニメイテッド VOL.3 [DVD]に収録。
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