第8話「ダイノボット誕生!」

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ダイノボット誕生!

 おお、G1初代アニメのダイノボット初登場編と同じサブタイトルですよ。プロットもかなり踏襲しているようです。

 G1のダイノボットは、オートボットの発明家・ホイルジャックが作り上げた恐竜ロボット。その恐竜ロボットは初めからトランスフォーマーとして作られましたが、モデルになった恐竜の知能の低さ故に暴走してしまうというお話。

 今回のダイノボットは、サムダックの作った恐竜テーマパークのロボットがアイアンハイドの不注意で破壊されてしまい、メガトロンの力を借りて高性能に再生させたものの、サリのキーの力が作用してトランスフォーマーへと進化したもの。

 両者は、出自的に全く違っています。ちなみに、ビーストウォーズでのダイノボットなるキャラは、出身がプレダコン(悪側)で、後からマクシマル(正義側)に寝返りましたが、今回のダイノボットは、これを踏襲しているとも言えそうです。

 アメリカ版にはあんまり関係ないですが、ビーストのダイノボットの声だった藤原啓治さんが、今回、グリムロックを演じてますし。

 この藤原さんの演技が、ビースト・ダイノボットの「ダー!」を踏襲してて、マニアックに嬉しい感じなんですけど、何から何までビースト・ダイノボットの模倣ではなく、G1グリムロックの片言としっかりミックスされていて、これまたマニアックに嬉しいのでした。

 ちなみに、スワープはビーストでもプテラノドンのテラザウラーだった、飛田展男さんが担当してますよ。

 さて、ストーリーは単純そうに見えても割と入り組んでおり、ダイノボット(特にグリムロック)の単純性故の論理性が無理なく発揮されるよう組み立てられていて、実に理知的。続きの方に、気付きと共にまとめてみました。

 サムダック博士が作り上げた恐竜のテーマパークに、オートボット達も招かれます。

 ジュラ紀の再現を試みたというロボット恐竜たちは、見た目こそなかなかの再現度ですが動きに乏しく、けしかけたアイアンハイドの不注意によってメチャクチャに破壊されてしまいました。

ダイノボット誕生!

 アイアンハイドは非常に強いパワーを有していますが、如何せん圧倒的に繊細さに欠ける為、ちょっとの不注意で周囲を壊滅状態にしてしまいます。これは大小の差はあれど、繰り返し描かれている要素です。あんまり悪びれない処が微笑ましい。

 なお、ここまでのシーンでラチェットが、自分達は「100億年以上生きちょる」と発言していますが、これはこれまでの数あるトランスフォーマーの世界でも、最も長命であると言えそう。ただし、冗談でなければ、ですが。

 さて、一部始終を見ていたのは、アナゴさん…もといメガトロン。今回も「フグ田くん」を発するなど舌好調です。

ダイノボット誕生!

 ここでサムダック博士と交わす会話がなかなかハイレベル。

 というのも、サムダック博士はメガトロンより供与される技術を用いることで、最先端のロボット工学の大家として身を立てており、メガトロンはメガトロンで身体を取り戻すべくサムダック博士を利用して暗躍しています。

 サムダック博士は、メガトロンがオートボットの仲間(まぁ一応、同じサイバトロニアンという種族ですわな)だと思っており、早くオートボット達に打ち明けたいと思っています。

 しかし、メガトロンにしてみれば、自分の存在がオートボットにバレてしまうのは避けたい処。けれども一方で、サムダック博士を利用した実験も継続したい。

 ここでメガトロンが持ち出すロジックが実に的を射ています。それは、「サムダック博士がサイバトロンの技術を勝手に使ったことを、オートボットに咎められる」というものです。これは云わば遠回しな脅迫なのですが、この言葉によってサムダック博士はメガトロンがオートボットの「友達」である事に納得し、しかもメガトロンの存在を隠蔽することに同意せざるを得なくなったのです。

 軽妙なやり取りになっているので、非常にサラッとしていますが、内実はメガトロンの奸智に長けた部分を程良く見せ付けているわけです。

 さてさて、アイアンハイドが己の大雑把な振る舞いを反省したか、はたまたプロールがアイアンハイドを心配したのか、プロールはアイアンハイドに武道の心得を説き始めます。

ダイノボット誕生!

 考えるな、感じろとか、蝶のように舞い、蜂のように刺すとか、いわゆるガンプラ・ファミコン直撃世代の私より上の年代に響く言葉目白押し。確かに、ブルース・リーやモハメド・アリといった東洋の神秘をまとった格闘家のイメージが、プロールにはピッタリです。

 そしてサムダック博士は、遂にメガトロンの協力を得て、恐竜ロボットを再生させます。

ダイノボット誕生!

 この時既に、メガトロンは「サイバトロンの記号」をこの恐竜ロボット達に仕込んでいた筈で、サリのキーが反応する事まで計算に入れていたと考えられます。G1も今も、狡猾なメガトロンと、信念で対抗するオプティマスの対決構図は不変ですね。

 一方、プロールによるアイアンハイドの特訓は継続中。場所を変え、自然の中での特訓ですが、葉っぱを繊細な動作で切断するプロールに対し、アイアンハイドは大木をなぎ倒してしまうという有様。

ダイノボット誕生!

 そして、サムダック博士は意気揚々と高性能化した恐竜ロボットを披露していましたが、途中から恐竜達が暴走を始めてしまい、恐竜パークは大混乱の坩堝に。オートボット達がそれを静止しますが、恐竜達にサリのキーが反応。ラチェットとバンブルビーの発するマグネットパワーとエナジースティンガーに作用して、恐竜ロボをダイノボットに進化(あるいは偽装皮膚を剥離)させます。

ダイノボット誕生!

 動きを止めたダイノボット達は、メガトロンの元へ運ばれて来ます。

 メガトロンはダイノボットをディセプティコンの兵士に仕立て上げ、自らに従わせようとするのですが、ダイノボット達の思考はそんな方向には働かず。

ダイノボット誕生!

 G1でも「リーダーはコンボイだ」という声に耳を貸さないグリムロックの姿が描かれ、仲間が手を焼くという描写がありましたが、今回はそのあたりが巧くスライドさせられて、メガトロンが手を焼くという構図に改められています。

 これにより、G1は単なる乱暴者としてのスタートだったダイノボット達が、それなりのポリシーを抱いた存在として印象づけられることとなりました。

 ここでも、割とハイレベルな会話が展開されます。

 グリムロックが自分に従わないと知ったメガトロンは、人間が化石燃料を消費していることを告げることによって、巧みに恐竜の存在と化石とを同一化し、グリムロックに人間に対する敵対心を抱かせるのです。さらには、化石燃料の消費の象徴である自動車を敵対する存在の代表とし、その上で、その自動車に変形するオートボット達をダイノボットの敵対者に仕立て上げたのでした。

 巧いねぇ、実に巧い。

 これまた軽妙にサラッとやっちゃうもんだから、テンポもいいんですよね。

 で、ダイノボット達は街に繰り出して、「敵対者」の破壊を開始。オートボット達が緊急出動して迎え撃つのですが、G1同様ダイノボット達は実に強力です。

 そんな中、プロールの教示にとらわれていて満足に動けないアイアンハイドは、「自分らしく」というプロールの言葉に解き放たれて、遂に本領発揮。

ダイノボット誕生!

 この「自分らしく」という言葉が、そのまま後のプロールの行動と、ダイノボットの今後に繋がってくるわけで、油断していると重要な部分を聞き逃しますぞ。

ダイノボット誕生!

 ダイノボットの火力に追い詰められるオートボット達でしたが。

ダイノボット誕生!

 最後は、ダイノボット達をタールに落とし込んで、ようやく制止。

ダイノボット誕生!

 騒ぎを詫び、ダイノボット達の処分を約束するサムダック博士と、その言葉に安堵するオプティマスでしたが、プロールはダイノボット達にシンパシィを抱いており、その処置に疑問を感じています。この感覚はビーストのタイガトロンに近い。

ダイノボット誕生!

 結局、ダイノボット達は処分前に脱出してしまいました。

ダイノボット誕生!

 その手引をしたのは、プロールとアイアンハイド。プロールがオプティマス達に内緒でアイアンハイドに頼んでいる処がいいですね。

ダイノボット誕生!

 とある自然豊かな島での暮らしを始めることになったダイノボット達。

 コアなファン向けの話題としては、ダイノボット・アイランドだ!とか、プロールのホログラムユニットがパーセプターのパワーユニットそっくりだ!とか。ここまで来たら、「俺、グリムロック、魚捕る!」を言って欲しかったとか(笑)。

ダイノボット誕生!

 ま、劇的にカッコいいグリムロックのロボットモードを見れば、コアなファン向けのサービスなんて霧散してしまいますな。音仏家のお姉ちゃんも持ってるグリムロックのおもちゃ、欲しいぞ(笑)!

 この回は、トランスフォーマー アニメイテッド Vol.2 [DVD]に収録。