プロールにスポットを当てたお話。
アメリカン・カートゥーンならではの日本かぶれのキャラというか、和風を究極のエキゾチカと捉える姿勢の現れというか、とにかく日本人から見たこのテのキャラは、日本観のギャップを含めて実に魅力的なのです。
作風は、骨太な前回に比べてややライトなものとなっています。プロールとバンブルビーの性格の不一致による衝突に費やされる前半は、軽妙に描かれていますが、後半は新基地の攻防戦をスリリングに描いており、その盛り上がりにシンクロしてプロールとバンブルビーの関係に変化が訪れるあたり、見応えのあるドラマ性を有しています。
ストーリーをごく簡単に記しておくと、オートボットが宇宙船を離れて新基地を設えることとなり、その作業に勤しむオートボットを手伝うべく(本当は遊びに)サリがやって来ます。
ところが、サリのリュックサックには、メガトロンが秘密裏に作り出した「フンコロガシくん1号」が潜り込んでおり、オールスパークの在処を探し始めたのです。
しかしながら、オールスパークは見つからず。メガトロンは基地のセンサーと他の諸々のシステムをリンクさせ、オートボット殲滅を図るが…。
とまぁ、こんな感じ。これに、地球の自然への興味を募らせるプロールと、テンションの高いバンブルビーの衝突が盛り込まれるなど、短い放映時間内に盛り沢山の要素が織り込まれているわけです。
では、いつものように気になるシーンをピックアップ。
前々回に登場したプロフェッサー・プリンセスに続き、またも妙な犯罪者が登場。その名はアングリー・アーチャー。ロビン・フッドかぶれの雰囲気ですが、そのガジェットや身体能力たるや、007かルパン三世かといった感じ。
現金輸送車を襲撃するアングリー・アーチャーでしたが、何故かいわゆる「猪木口調」。顔の造形に引っ掛けた吹替版ならではのギャグということか。
多分喋ってないところでもアドリブを入れまくっていると思いますが、どうでしょう?
パトカーと共に駆けつけた消防車を使って逃亡しようと図るアングリー・アーチャーでしたが、その消防車はオプティマス。まんまと捕縛。
いわゆる保安官的な働きを見せるオートボットの姿は、人間の身近な味方という印象を強めていますね。この傾向はG1アニメよりも顕著であり、人間との相互理解に苦慮する実写映画版に対し、一つの理想像を提示しているかにも見えます。
一方プロールは、逆さにぶら下がって猫の行動を観察中。
静から動へと移り変わる猫の動きを、感心しながら見ていましたが、街中を飛び回っているカメラロボットに邪魔されてご立腹。
G1にも、ハウンドとかビーチコンバーとか、地球の自然や文化に深く興味を抱いた者達が居ましたが、プロールもそうしたキャラクターの一人です。
面白いのは、G1のキャラクターがあくまで「USAと似た文化を持つ移民達」の扱いだったのに対し、今回のアニメイテッドでは「USAとは文化の異なる移民達」が徹底されていて、プロール以外のキャラクターがロボットの語法でしか人間の行動や地球環境、文化を語らないようになっています(例えば涙を単なる液体と捉えたり)。なので、よりプロールの特殊性が浮き彫りになっているのが面白い処です。
プロールに非常に似た既存のキャラクターとしては、ビーストのタイガトロンが挙げられると思います。
さて、プロールは新基地における屋根が損壊している一画を、自分の部屋としています。この内部の飾り付けがアレなのです(笑)。
和風というか、何というか。鳥居のオブジェがあったり、日本刀っぽいものや、一見畳敷きにも見えたりして。
藤岡弘、さんか(笑)。
ここで自然の素晴らしさに対する感慨に耽っていると、バンブルビーがちょっかいを。
仲間から完全にそのポリシーが浮いてしまっていて、協調性に欠けるプロールにも問題はあるものの、今回のバンブルビーはプロールの気持ちを殆ど考えていないので、やっぱりバンブルビーが悪いですねぇ。
アドリブを交えてか、全般的に早口でまくし立てるあたりが愉快であり、プロールにとって迷惑な人物であることが強調されています。
さて、メガトロンが作り出した(というか、サムダック博士のミニロボットを改造した)「フンコロガシくん1号」がこれ。
実写映画版に登場するフレンジーとかパチンコ玉(?)に似た感じ。「フンコロガシ」を連呼するあたりは、ビーストで炸裂していた岩浪節健在って処ですね。
サリが遊びに来て、ゲームに興じるオートボット諸君。何て事もないシーンですが、ラストにてプロールとバンブルビーの和解を示す要素として使われているのだから、構成力の高さが伺えるというものです。
「パジャマ・パーティ」に付きものの怪談話に興じるサリとオートボット。
あんまり怖がらないオートボット達を怖がらすべく、サリは隠れてキーを使って作業アームを操作し、バンブルビーを恐怖の坩堝に…。
正に「万能ガジェット」なサリのキー。オートボットを治癒のみならず蘇生させたり、ロボットを進化させたりと、さながら実写映画版に登場したオールスパークの破片やマトリクスのような働きをします。サリの意思如何によって、その発動する能力が変化するようですから、サリ自身にも何かがあるようですな。
そして、オールスパーク探索に失敗したメガトロンは、オートボット達に牙を剥くのです。フンコロガシくん1号を使って、基地内の制御系を掌握し、被害をもたらします。
ラチェットが負傷!
アニメイテッドでは、結構「怪我」の描写が徹底している気がします。
状況を打破すべく、プロールがとった行動は、猫の動きに習い、静と動を繰り返すことでコントロールパネルに近付くというもの。
要は、危険な「ダルマさんが転んだ」というわけです。
「静」によって動体認識のセンサーをやり過ごし、「動」によって徐々に距離を詰めるという作戦。動物の動きに習うという精神はカンフーモノを思わせますし、感じることに重きを置く姿勢は、ブルース・リーを彷彿させます。
プロールは純和風かぶれではなく、東方かぶれなんですね。よく見ると、プロールのデザインは忍者的でもあり、ブルース・リーのようでもあり…。
しかし相手はメガトロン。センサーを騙せても、メガトロンは騙せません。プロールは捕縛されてしまいます。
ここで、プロールが自分のやろうとしていた事を託したのは、何とバンブルビー。オプティマスは電磁石に捕らわれ、アイアンハイドは圧搾機に抵抗中。動けるのはバンブルビーだけです。
しかし、状況がバンブルビーを選んだというよりは、プロールがバンブルビーの実力を認識しているという感じに捉えた方がしっくり来る。このあたりが構成と心情描写のマジック。隙がないとは正にこんなことを指して言うんですね。
そして、バンブルビーはしっかりプロールの期待に応える。
プロールとバンブルビーは、精神性こそ全く異なるキャラクターですけど、根本的には互いをオートボットとして信頼し合っているわけで、その辺を説教臭くせずにサラリと、本当にサラッと描く処が、トランスフォーマーの良い所なんです。
私が日本制作シリーズをあんまり好まない要素の一つとして、日本的な説教臭さがたまに顔を覗かせるから、というのがあります。信頼関係がいかに大切かということを、セリフで懇々と語っちゃう。一番イヤなのは、トランスフォームがイベントとして処理されるとこですけど(笑)。
そんなわけで、危機を脱したオートボットは、また遊びの続きを始めるという、爽やかなエンディング。
そう、今度はプロールが参加してて、更にバンブルビーが優勢なのでした。
今回は、アドリブの入る余地が結構あったようで、皆さん喋りまくってましたねぇ。岩浪監督は高度なアドリブ技術を要求することでも有名ですけど、多少暴走気味でも私は全然OKですので、声優の皆さん頑張って下さいね~!
この回は、トランスフォーマー アニメイテッド Vol.2 [DVD]に収録。
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