今回はいきなり火災現場よりお送りします。
「レスキューファイアー呼んだ方が良くない?」
「それ違う番組だよ」
なんていう声も聞こえてきますが、このギャグは、スポンサーが同じタカラトミーだからということで。
ま、それはさておき、今回も極限までシンプルに削ぎ落とされたプロットで動いています。しかし、初代アニメのように政宗一成さんの詳細なナレーションがあるわけではないので、ちゃんと画面を注視していないと、流れを見失ってしまいます。それだけ高密度。
簡単にプロットをまとめると、スタースクリームがいよいよ行動を開始。スタースクリームの狙いはオールスパークであり、オールスパークをめぐってオートボット達との駆け引きと争奪戦が展開されるというものです。
途中、バンブルビーがサリのキーで回復したり、最後、一度スパークの消えたオプティマスをサリが蘇らせたりと、スパークとオールスパークの関わりをチラッと見せているのですが、基本的にサブタイトルには偽りありで、「オールスパークの秘密」は提示されたような提示されないような、何とも曖昧な感じです。もっとも、このサブタイトルをつけたのは日本側なので、こんな指摘はナンセンスですけど。
とにかく、今回は構図や絵の動かし方、演出が素晴らしい!
実写映画版へのアプローチが随所に感じられ、いかにもカートゥーンな絵でありながら、非常に実写的な迫力を醸し出しているのです。引き込まれますねぇ。
では、今回も気になるシーンをピックアップ。
自分が主役だと主張するスタースクリームさん。
メガトロン不在だと、急激に元気に、そして横柄になるのは、初代アニメからの伝統です。
スタースクリームは「ザ・ムービー」でガルバトロンによって処刑されますが、結局「ビースト」にまで亡霊となって登場するしぶとさを見せたキャラクター。人気の高さが伺い知れるというものです。
例の如く、戦闘機をスキャンします。スキャンするまでは、ロボットモードでしか飛び回っていないのがちょっと残念。サイバトロンモードでのビークルが見たかったですね。
「メーデーじゃねぇよ。スタースクリームだ。覚えとけ」
のセリフもいい感じ。
この直後、サムダック・システムズが開発した、時速480kmで自走する自動高速輸送システムの完成式典に出現し、オートボットにオールスパークの譲渡を要求。応じないオートボットに対し、スタースクリームは人間を攻撃することで脅迫を開始します。
スタースクリームのように空中を高速移動出来るキャラクターが相手だと、このような立体的なカットが登場し、迫力が増します。高層ビルを巧く利用するのは、実写映画版の感覚に似てますね。今回は、この高層ビルの利用が特に効果的です。
サリを庇ってバンブルビーが負傷!
というより、ほぼ機能停止状態に陥っています。割と負傷者が多いのは、アニメイテッドの特徴なのかな?
バンブルビー負傷と共に、自動高速輸送システムに乗り込んだサムダック博士達がスタースクリームによって拉致されてしまいます。プロールが、
「ロボットは力をあわせてこそ強くなるのだ」
と手を差し伸べており、プロールもオートボットの一員としてチームワークの重要さを認識した様子。
ここでサリは、オプティマス達が陽動している隙に、プロールの飛行能力を利用して自分が父親達を助けに行くという作戦を提案。しかし危険だとして聞き入れられず、サリは泣き始めます。
今回のメインタームの一つに涙があります。特にアイアンハイドが涙に関心を示すのですが、サリは様々な要因で涙を流します。結局、サリの提案は聞き入れられたので、このシーンでは、
「涙はね、望みどおりにしたい時にも役に立つのよ」
と言ってます。なかなかドライな感覚を持つキャラですな。
今回も、オプティマスの「私にいい考えがある」が登場。
「スタースクリームをおびき寄せる必要があるな」
と言って、オールスパークの実物をエサにする作戦に出るのですが、基本的に「私にいい考えがある」は苦難の前兆なので、例に漏れず苦難が待ち受けているわけです。
作戦通り、サリはプロールと共に父親達の救出に。
そして、バンブルビーをキーで復活させます。これは、いきなり復活して頭をぶつけたバンブルビーの図。
サリが居たら、ラチェットの立場は…てな感じになってしまいますが、ラチェットの本分は経験の豊富さと、磁力による物体浮遊能力にあるので、キャラクターの意義はいささかも揺らがないのです。
この後、すったもんだあって、
「落ちろ!カトンボ!」
とまたもバンブルビーがガンダムな語を発したりするのですが、今度はサリの乗った自動高速輸送システムが落下。バンブルビーがサリを助ける番に。ここでは、
「さぁ、こっちへ!君を盗みに来た」
と、カリオストロの城のようなことを言ってます。岩浪監督の方針が段々と顕在化してますよ(笑)。
そして、オールスパークを次々とパスしてスタースクリームを撹乱するオートボット達。
「走るよりボールのほうが速い!ボールは友達!ゴールが見えればシュートは打てる!プロールくん!」
という、今度は翼くん的なバンブルビーのセリフが聞こえてきます。今回、アドリブ凄いな。
これに怒ったスタースクリーム。全力でビームを発射するという、「手持ちの破壊兵器を有するディセプティコン」ならではのオトナ気ない行動に。
とうとうオールスパークを奪って街を破壊し始めます。一応、オールスパークの不思議その1ということで。
初代アニメでも、祖たるコンピュータベクターシグマは、オートボットにもディセプティコンにも、等しくその力を発現していましたが、オールスパークもそんな感じなのでしょう。
これは実に西洋的な世界観だと思います。
日本の場合、誤解を恐れずに言えば、その総意は「神は穢れの方向に力を発生しない」即ち、絶対者に比定されるものは正しい者の祈りに応えるという感覚にベクトルを向けていると思います。唯一神の宗教を信仰する世界では、本当は絶対者の意志を現象でしか推定出来ない。オールスパークは、正にそんな印象なのです。
ファン的な視点では、次の図もオールスパークの不思議その2として挙げていいでしょう。
初代アニメの「マトリクス」そっくり!
これはオプティマスがオールスパークに必死にしがみつき、スタースクリームとの力ずくでの奪い合いに至った時、突如開いたシーンです。
で、結局オールスパークの凄まじい閃光にスタースクリームは飲み込まれ、オプティマスはそのまま致命傷を負って高空から落下の憂き目に。
命尽くオプティマスのシーンは、「ザ・ムービー」でのコンボイの死のシーンにそっくり!
涙を流すサリを見て、アイアンハイドが、
「それを流しても君の望みどおりにはならないと思うよ」
と言うのですが、このセリフが素晴らしすぎます。こういう気の利いたセリフ、最近のアニメからはあまり聞かれませんよ。ホント凄い。
そして、サリがキーを用いてオプティマスを蘇らせようとすると、サリの思いに応じてか否か、オールスパークからオプティマスへとスパークが戻ります。
これが、オールスパークの不思議その3といったところですね。
オールスパークは、全てのスパーク(トランスフォーマーの魂のようなもの)の出発点であり回帰点であるという、輪環構造の極点に位置することが、これで分かります。
ま、この深遠な感覚も、音仏家で吹っ飛んでしまうわけですが(笑)。
オプティマスも無事復活。最後のサリの涙は嬉し涙という、美しき幕切れでした。
次回はサウンドウェーブ登場ですな。
この回は、トランスフォーマー アニメイテッド Vol.1 [DVD] に収録。
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