いきなりG1の話になりますが、スィンドルって、ブルーティカスに合体するコンバッティコン(日本では「コンバットロン」)の一員で、トイの見地に立つと、これが実に地味なキャラだったわけです。ところが、何故かアニメでは気に入られてて、リーダーであるオンスロートより明らかに印象が強い。何しろ、他のコンバッティコンを差し置いて、彼が単独で主役を張る話があるくらいで、しかも、仲間の部品を売り払うという、調子のいい悪漢として描かれていました。
その後も、バイナルテック化されたり、コンバッティコンの中では優遇されまくっているスィンドルですが、とうとうアニメイテッドにまで進出。しかも、合体ロボの一部とかではなく、単独デビューです。
やっぱり、前述のG1における「仲間の部品を売ってしまう」というエピソードが強烈だったのか、アニメイテッドでもしっかり「武器商人」という肩書きが。スィンドルのイメージにピッタリですね。ただ、一応フォローしておきますが、コンバッティコン勢揃いの際にはちゃんと優秀な兵士として働いていたので、決して「裏切り者」というわけではないです。そのあたりの絶妙なキャラクター設定は、アニメイテッドでもちゃんと踏襲されていて、彼はディセプティコンのエンブレムを着けている身として、メガトロンとしか商談していません。まぁ、ボスと商談するってのはどうかと思いますけど(笑)。
今回は、これまで登場した人間側の悪役ゲストが一部を除いて勢揃いするというサービスもあって、画面が賑やか。ストーリーも割と単純なので、ここではあえてまとめたりせず、続きの方でじっくりと。
冒頭は、スピードキングを追うオートボット達のシーン。久々登場のスピードキングは、若返って登場。この若返りの理由は、後ほど判明します。
バンブルビーに怪光線が照射されていますが、これはスピードキングの意図するものではなく、別の者による仕業。この光線により、バンブルビーは一時的に機能を停止してしまいました。
実は、スピードキング確保の為にオプティマスは挟み討ち作戦を指示していたのですが、バンブルビーはそれを無視して突進してしまったんですね。エリートガードが登場したあたりから、アメリカにおける第二シーズンにあたっていますが、第二シーズンは結構個々の主張が激しい印象。今回のバンブルビーもかなり「過信キャラ」に寄っています。
逆に、当代わがままキャラ最右翼の筈のサリが、「あなた達はチームでしょ?」とバンブルビーを諌めたり。
バンブルビーは停止の原因をラチェットに探ってもらうよう指示されていましが、引き続き単独でスピードキング追跡を続行します。
「一人ひとりが強くなきゃさ、いいチームにはならないんだよね」とバンブルビー。他に、チームにはスターが必要だという発言もありましたね。
警察無線を傍受したバンブルビーは、スピードキングの居場所を突き止めたとばかりに、スピードを上げます。しかし、そこに居たのはスピードキングではなくアングリー・アーチャー。
相変わらずの猪木節が冴えています。
が、ここでもバンブルビーは怪光線により停止…。
そして、今度はプロフェッサー・プリンセスが登場。
同時に、サリのキーがオールスパークの欠片に反応しはじめます。
プロフェッサー・プリンセスを捕まえようとしたバンブルビーは、またもや怪光線の餌食に。
声の回転数を落とす演出と、残像を生じつつ徐々にグレーに変わっていく様子の丁寧な作画が見事。一時的な停止なので、次々現れる犯罪者達を追いかけ、その度に停止させられるバンブルビーが小気味よいテンポで描かれることになっています。
怪光線を発射したのは、このスロー・モー。
スロー・モーションからネーミングされたのは明らかですが、どうもハズブロ社の常務さんがモデルらしいですね。遊び心とオマージュに溢れています。
スロー・モーの狙いは、スピードキング、アングリー・アーチャー、プロフェッサー・プリンセスと共に犯罪チームを結成すること。その為に、自らが操る怪光線の威力をアピールしつつ、オートボットの追手を阻んだわけです。
チームの名前が劇中に出ていなかった気がするのですが、一応S.U.V.という名前が付いています。スポーツ・ユーティリティ・ビークルの略称に引っ掛けていて、G1におけるスィンドルのビークルモードを意識しているのではないでしょうか。センスが抜群。
さて、スロー・モーの操る怪光線は、この時計から発射されていました。
よく見なくても、時計の針の部分がオールスパークの欠片になっているのが分かりますよね。サリのキーはこれに反応したわけです。
スロー・モーは、時計工場で時計の組み立てを担当しており、偶然、オールスパークの欠片を発見。これが自分にとって好機になると感じて、S.U.V.の結成を思い立ったということらしい。しかも、元々スピードキングのファンだったので、時計の力を用いて彼を若返らせたとのことです。この時計、対象物を停止させるだけでなく、対象物の経過時間を無効化することも出来るようです。凄い。
なお、機械の停止に関しては、対象物の時間が止まるのではなく、あくまで機能が停止する能力であるらしく、それは停止させられたバンブルビーが、周囲の経過を認識していた事から推測出来ます。
S.U.V.への加入に際しては、プロフェッサー・プリンセスが「この世から、子どもに良くないものを無くしたい」だけで、自分は泥棒ではないと主張し、難色を示していました。が、「敵の敵は味方」というスロー・モーの言で納得し、加入します。敵の敵、つまりオートボットの敵となるS.U.V.は味方だという論理です。
さて、早速S.U.V.は、それぞれが有する特殊技能をフルに活用し、少しスケールアップした窃盗行為に勤しみます。
そこに、丁度いい車が到着。勿論、この車はスィンドルです。
これ幸いとばかりに乗り込むS.U.V.でしたが、警察の追手が追跡してきます。そこで、スィンドルは巨大な砲塔を展開。
これにより、パトカーは大破。S.U.V.は難を逃れます。
この砲塔は、やっぱりG1スィンドルがビークルモードで装備していた砲塔をイメージしてますよね、絶対。
で、スィンドルはS.U.V.にデカイ儲け話をもちかけます。ある武器を作り上げると、それが高く売れるというものです。
スロー・モーは自分がチームのリーダーであると釘を刺した上で、この「儲け話」に乗ります。
部品集めに走り始めるS.U.V.の面々。一瞬で衛星アンテナを盗んでくるスピードキングに、スロー・モーはウットリ。「仕事の早い男って好きよ」とアピールします。元々ファンだったというのがミソですね。
逆に、迫ってくる警邏ロボットを停止させるスロー・モーに対し、「時間を止める女、好きだぜ」と応じるスピードキングがいい。格好は派手ですが、ちょっとだけ大人な香りがする、粋なシーンでしたよ。
ここでようやくスィンドルがロボットモードに。
おお~!スタイル、カラーリング共にG1っぽくて、ちゃんと目が紫ですね。
G1の時代から、例外はあるものの、大体オートボットが青い目、ディセプティコンが赤い目をしていて、実写映画版までもがそれを踏襲しているのですが、中にはこのスィンドルのように変わった目の色を持つ者が居ます。スィンドルが目立っていたのは、大きな目とその目の色にも要因がありそうですね。
ここでディセプティコンのエンブレムを見て、プロフェッサー・プリンセスが「悪いロボットだったの?」と訊くくだりがありますけど、これがプロフェッサー・プリンセスの特殊性(自分が犯罪者だとは露程も思っていない)を表すと共に、ディセプティコンのエンブレムが世間に認知されている事を物語っています。
スィンドルは、完成したマシンにスロー・モーの時計をセットするよう強要します。
当然、スロー・モーは拒否しますが、さすがはディセプティコンのスィンドル。武器を用いてS.U.V.を威嚇し、時計を奪ってしまいます。
新武器を完成させたスィンドルは、早速メガトロンに連絡。まずはデモンストレーションと称して、オートボットを始めとする街中の機械の機能を停止させてしまいました。
名づけて「なんでもストップくん」。全ての機械を停止させるという恐るべき武器です。
G1に似たような武器が登場したことがあります。「イモビライザー」と呼ばれる武器で、オートボットのホイルジャックの発明。ディセプティコンに奪われて騒動になるというお話でした。イモビライザーといえば、現在では多くの自動車が装備している盗難防止装置の名称であり、ネーミングセンスの素晴らしさが光ります。
「なんでもストップくん」、原語版では何と呼ばれているのでしょうか?
とにかく、「なんでもストップくん」のデモンストレーションは大成功。メガトロンは商談に応じます。
一方、動けなくなったバンブルビーを何とかすべく、サリはサムダックタワー(現在はパウエルタワーと呼ばれている…)に彼を運び込もうとします。
サリの力だけではどうにもならず、途方にくれていると、S.U.V.の面々が加勢に登場。勿論、スィンドルに対する仕返しの好機を得るためです。
バリアに守られているタワー内では、「なんでもストップくん」が影響しない為、バンブルビーは動けるように。しかも、サリはバンブルビーをバリアで覆う事を思いつきます。S.U.V.の面々の持つ装備にもバリアが施され、いざ、即席チームの出動です。
これですよ、これ。利害関係の一致で、敵味方が一時的に同じベクトルに動く展開。しかも、プロフェッサー・プリンセスが「敵の敵は味方」と言って説得するのが、またクールです。
なんでもストップくんをものともせず、スィンドルに近づく一同。そして、サリはキーでマシンを無効化してしまいます。
ここで一気に反撃開始!それぞれの特技がスィンドルを追い詰めていく様は、犯罪者チームという肩書きを忘れさせるくらいカッコいいですな。
スロー・モーの時計は、スピードキングの手に。あくまでスロー・モーの為の行動なのがクール。
色々あって、結局スィンドルが時計を手にし、オートボットを停止させようとするも、バンブルビーのバリアが光線を弾き返し、スィンドルの機能が停止…。
結局、S.U.V.はお縄に。バンブルビーは意地悪にもスィンドルをパンクさせたりして、自らの有能をアピールしまくります。
一気に4人も逮捕出来て上機嫌のファンゾーン警部は、スィンドルをバラバラにして警察のオークションに出すと宣言。
「ですよね~」という決まり文句で情けない退場を嘆くスィンドルでした…。
今回はチームワークがテーマになっていますが、バンブルビーはオートボットのチームワークを乱しまくっておきつつ、自分はちゃっかり犯罪者達と即席チームを創り、結局事件を解決してしまいました。
結果的にはメデタシメデタシになっていますが、実際にはバンブルビーは独善的な行動をとったわけで、これはちょっとしたオプティマス部隊の亀裂だと言えます。要するに、バンブルビーは自分がチームの要になり得る人材だと自負しており、それはオプティマスのチームであろうがなかろうが、常に成立する事を、図らずも実証してしまったわけです。
多分、このあたりの要素は引きずられないでしょうけど、意外と重いテーマだったことが分かると、ちょっと後味の悪いエピソードになってしまうんですよね。勿論これも魅力の一つですけど。
まぁ、日本語版の方では、音仏家が何故か他局の「朝ズバッ」をパロってくれたので、そんな余韻は霧散しちゃいましたが(笑)。
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