一言で言うと、マスターソンのおかげでオプティマスとセンチネルが仲直りするお話。
マスターソンはメルトダウン等と同じく再登場のゲストキャラですが、本シリーズはこういった再登場ゲストを使うのが実に巧い。
まず、マスターソンの再登場に関するお膳立てが巧い。一応、犯罪者として拘留あるいは服役中だった筈のマスターソン。彼を釈放させたのは、サムダック社を乗っ取ったパウエルであり、パウエルは自らが掲げる「戦争の道具としてのロボットで商売する」というポリシーの為に、マスターソンに目をつけたわけです。実に合理的で、そこに心配やシンパシィといったメンタル面は欠片もありません。パウエルはマスターソンの技術を欲しているし、マスターソンは潤沢な資金と豪勢な設備で研究出来るようになるという、互いの利害が一致したからこその、釈放でした。
次に、事実上ディセプティコンが動けない状態にあって、このマスターソンを引っ張り出してくる処が巧い。マスターソンなら、ヘッドマスターとしてボディを乗っ取るという能力によって、ロボット同士のバトルを展開出来ます。トランスフォーマーの魅力は、ロボットキャラが人間のように動きまわり、喋りまくる処にありますが、同様に人間のようにバトルをする処にもあります。今回は、正に遠慮なしの殴り合いが展開されます。
そして、マスターソンの最大の功績は、オプティマスとセンチネルを殴り合いさせて、仲直りまで持っていった処です。劇中、ボディを奪われてあたふたするセンチネルを見遣り、ニヤニヤするオプティマスが頻繁に描かれます。これはつまり、オプティマスにとってはセンチネルに対して優位に立てる絶好の機会であり、ヘッドマスターに乗っ取られたのをいいことに、そのボディを遠慮無く叩きのめしたり、腕を引きちぎったりとやりたい放題。いわば、オプティマスの鬱憤を晴らす機会でもあったわけです。
まぁ、最後にウルトラマグナスに虚偽(?)の報告をすることで、センチネルの面目を保ってやるあたりは、オプティマスの良い所が出ており、逆にセンチネルは痛めつけられた事をそれで相殺(決して、弱みを握られているというネガティヴな感情ではない)するという、「やっぱりイイヤツ」な面を見せ、めでたしめでたしとなるのでした。
では、詳しい事は続きにて。
今回から主題歌が2番になりましたね。ミックスが間に合わなかったのか、あのけたたましい効果音が全くなくなってましたけど。あれはあれで無くなると寂しいですねぇ。
さて、サリはサムダック社から追い出される羽目になります。勿論、サムダックの名の付く人間は邪魔者以外の何者でもないと考えるパウエルによって、です。
そして何と、サリの部屋に代わりに住むことになったのは、マスターソン。
サリはマスターソンの所業を知っていますから、その危険性をパウエルに訴えるのですが、パウエルにとってそんな事は百も承知であり、アイザック・サムダックとの理念の違いに過ぎない事をサラリと語って、さっさとサリを追い出してしまうのでした。
このやりとりで感じとれるのは、子供に対する大人の理不尽な要求ではなく、完全に、去りゆく元経営者とのし上がった経営者のやりとりになっている事です。この辺り、資本主義的で合理的な匂いが強く、日本における大人と子供の断絶に基づく精神論とは、かなり違った方向性である事が分かります。これが海外アニメの魅力でもあります。
一方、オプティマスとセンチネルは、市民を前に会見を開いていました。
市民の中には、オートボットとディセプティコンの戦いが様々な被害をもたらす事に不満を抱く者もおり、その辺りについての質問も飛び出します。巧いのは、報道ロボットに質問させている事で、人間が直接このような質問を行わないことによって、ウェットな厭味が出ないようにしています。
センチネルは人間の習慣に従う気は露ほどもないので、いわゆる失言の連続。オプティマスがその都度慌ててフォローするという描写が、両者の関係性まで浮き彫りにしているようで、なかなか微笑ましいのです。
最後に、センチネルは市長との握手にイヤイヤ応じます。イヤイヤなのは、有機生命体に対する嫌悪感があるから。なお、嫌がっているセンチネルを見て、オプティマスは密かにニヤリとしています。なかなか意地悪で宜しい(笑)。
ところで、サムダック社を追い出されたサリは、バンブルビーとアイアンハイドの元にやって来ます。二人は、サリを歓迎しますが、元気づけたいあまりの大げさな歓待振りには、サリもさすがに辟易している様子。
こんな感じでバンブルビー達はサリにかかりっきりになるので、今回センチネルやヘッドマスターの一件には殆ど関わりません。これも巧い処理。
一方、戦争用ロボット・ヘッドマスターを売り込むという、パウエルの企みは静かに進行しており、マスターソンは、次なるボディのターゲットとしてセンチネルを選択します。
ドォォーン!てな感じで喪黒福造みたい。
マスターソンはなかなか奸智に長けており、声色を変えてファンゾーン警部に電話し、「ディセプティコンに襲われている」という虚偽の通報を行います。これにより、割と自然な形でディセプティコン出現の情報がオートボットにもたらされるわけで、まんまとセンチネルを出動させる事が出来ました。
とりあえず、案内役としてオプティマスを伴なうセンチネルでしたが、その移動に際しては、他の車や交通ルールなどお構いなし。
郷に入って郷に従ったオプティマスに対し、センチネルには一向にそのような気配がなく、市民の批判も何のその。人間を頭ごなしに足手まといとしたり、オプティマスをお掃除プライム呼ばわりしたりと、エリートという肩書きが彼を狂わせているという事実を端的に表しています。まぁ、一様にコミカルな描写なので、エスプリな感じはしませんけど。
さて、ディセプティコン出現などというのは端から虚偽なので、その捜索は日没に至ってしまいました。
油断した処でヘッドマスターの奇襲に遭遇するセンチネル!
哀れ、ボディを奪われてしまいます。
この失態を、センチネルは何とか隠蔽したい。そこで、オプティマスだけを呼んでこの失態を内密とし、事件を何とかオプティマス単独で解決してもらおうとします。オプティマスを散々バカにしているだけに、バツが悪そうなセンチネルですが、心の底ではオプティマスを「頼れる友人」だと見做しているわけですね。
オプティマスにしても、この状況を楽しんでいるかのような表情をしており、この二人、意外と似たもの同士なのかも知れません。
しばらくキャプ画がありませんが、この後、オプティマスは事のいきさつを質そうと、パウエルの元を訪れます。パウエルはかつてのサムダック社とは違うことを強調し、オートボットの進入を拒否。また、今回の件とは無関係である事を装います。オプティマスは一旦引き下がりますが、通信の傍受によってマスターソンの仕業であることの裏を取り、ボディがサムダック社の所有する船の中にあることを突き止めます。
ところが、船への侵入を妨害すべく、マスターソンは、スパークプラグと勉強ロボットを差し向けてきます。サリの友達ロボットが突如牙を剥く衝撃!
全くの蛇足ですが、アイキャッチでセンチネルの英名が「SENTINEL PRIME」になってますね。確かに原語版では「SENTINEL PRIME」なのですが、日本語版のアイキャッチは本来「BULKHEAD」であるアイアンハイドに、ちゃんと「IRONHIDE」というロゴが当てられていたので、不可解です。日本語版では、通称センチネル、本名センチネル・プライムということなのでしょうか。
さて、何とか船内に侵入できたオプティマスとセンチネルの頭部。しかし、既にそこにはボディはなく…と思ったのも束の間、センチネルのボディを持ったヘッドマスターの襲撃が開始!
短時間で、センチネルの盾をアップグレードする程の技術力を持つマスターソンも凄い。しかし、オプティマスは個人的な鬱憤を晴らすかのように猛攻(時々密かに微笑んでいる!)。
その凄まじい気迫とパワーに圧倒され、さしものヘッドマスターも行動不能になってしまいます。腕を引きちぎって盾を奪うなど、ダーティな戦い振りが凄い迫力です。
奇しくも、迷いがなければ、オプティマスは物凄く強いということが証明されました。
で、またも分離・変形して逃げおおせるヘッドマスター。ここでオプティマス、とどめとばかりにセンチネルの頭部をサッカーボールの如く蹴り飛ばす!
またも、ヘッドマスターは「頭」にやられてしまいました。
ようやく、これでマスターソンを再び警察送り。と思いきや、物損被害はサムダックの船のみ、ロボット相手に暴行罪は適用出来ない、どこの国でもない海の上で起きた事件…パウエルにこれらの屁理屈を並べ立てられ、結局、ファンゾーン警部はマスターソンを釈放せざるを得ない状況に。
屁理屈とは言え、こういうロジカルな展開にはワクワクしますねぇ。
一方、引きこもってしまったサリを、何とか元気付けようとするバンブルビーとアイアンハイドでしたが、プロールはサリをそっとしておけと言います。
しかし、それでも放っておけないバンブルビーは、サリの部屋に入り、混乱して泣きじゃくるサリをそっと抱えます。
「話し相手になる」というバンブルビー。今のサリには、何でも吐き出せる相手が必要だということでしょう。
どのシリーズでも、人間の良き友達であるバンブルビー。今回もやっぱり、人間側主人公の一番の友人です。ロジカルな展開の中に、ホロリとメンタルな展開の良さを織り交ぜる処など、職人芸的ですよ。
その頃、ウルトラマグナスに事件の報告をするオプティマスとセンチネルの姿がありました。
ここでオプティマスは、センチネルがヘッドマスターをおびき出す囮になり、事件の早期解決につながったと報告します。これにより、オプティマスはセンチネルに貸しを作りつつ、センチネルの恥を隠蔽して見せました。貸しを作ったというよりは、エリータ1の件の罪滅しをして見せたのかも。
今回の件で互いのわだかまりを解消した二人は、固く握手を交わします。
「ありがと」
「じゃあ、また友達だな」
「よろしく頼むよ」
短いやりとりですが、抜群です!
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