怒涛の後編。前編がメガトロン復活に至る経緯を粛々と、しかしテンション高く描写していたのに対し、後編はメガトロン率いるディセプティコンから、オールスパークをいかに守るかというオートボット達の奮闘を、これまたテンション高めで描きます。
結局、最もテンションが高いのはメガトロン役の若本さん(笑)。ノリにノッているというか、若本さんの勢いはチョーさんや柚ちゃんのアドリブを押さえつけているかのようでした。
話の内容自体は、妙に日本的。アメリカらしく、オートボットが知力を搾り出してディセプティコンの猛攻に対抗する姿も見られますが、基本的に「最高のチーム」というスローガンで仲間を鼓舞して、メンタルな面を強調します。
ただし、勝てない戦を「ウォォォォッ!」と気合で突破して奇跡が起きるなんていう、陳腐なシナリオではなく、あくまで理知的に、あくまで合理的に構成されているので、私としては非常に満足です。サリのキーが、土壇場になって巧妙に働いていくあたりは、トランスフォーマーシリーズにて散見される「神の力」の存在を感じさせます。
それにしても、メガトロンが強い。
G1におけるオプティマスとメガトロンのパワーは基本的に拮抗していて、それは「ビースト」に至っても変わりませんでした。
「アニメイテッド」では、この両者のパワーのみならず、地位のバランスも変更されています。G1では互いに陣営のトップ、「ビースト」では陣営のトップではないものの、あくまで探査チームのリーダーと反乱分子のリーダーという設定(日本語版は微妙に改変されてますけど)。今回は、オプティマスが単なる1チームのリーダーなのに対し、メガトロンはディセプティコンの本当のリーダーであり、両者のパワーの差は歴然としています。
しかしながら、偶然を味方につけたにしろ、そのメガトロンを何とか撃退するオプティマス達の奮闘は、パワー差が歴然だからこそエキサイティングだとも言えるでしょう。
今回は見所が多すぎるので、キャプがやや偏っているかも。
復活したメガトロンは、オートボット達を次々と危機に陥れます。
特に、このプロールのカットが凄い。
あのクールなプロールが、命乞いに似たセリフを連発し、その恐怖を表現するあたりが、何とも凄絶なのです。
結局、プロールは難を逃れたのですが、オプティマスに至っても、軽々と蹴り飛ばされてしまう有様!
ここでいきなりデザイン面に触れてしまいますが、今回の復活したメガトロン、頭部や胸部の意匠がG1をかなり意識しています。個人的にはG2の戦車メガトロンのエッセンスも入っていると思いますが、ビークルモードは戦車じゃないんですよね。
なお、復活前のサイバトロンモードは、多分に実写映画版を意識していると思しき痕跡が見られるので、面白い処ですねぇ。
メガトロン復活に伴い、ディセプティコンの動きも一気に活発化。逃亡を図るサムダックをブリッツウィングが制止するなど、抜け目がありません。
今回、ブリッツウィングは割と露出が多いのですが、チョーさんのアドリブはやや控え目。やっぱりメガトロンが主役ですから、ちょっと抑えられたのかな。
一方、メガトロンはいよいよオールスパーク探索に乗り出します。探索には、サリのキーを利用。このように、常に指に着けた状態で所持しており、それが今後の展開における「偶然」を担っています。ただし、その「偶然」もキー(いわばオールスパーク)の意思だと思わせる演出になっているのが巧み。
メガトロンの企みを何とか阻止したいオプティマス達ですが、各人のテクニックとパワーを駆使しての対抗も、ことごとく打破されていまい、この有様に…。
スタースクリームは、メガトロン完全復活に不満を顕にしつつ、メガトロンの前では慇懃無礼に振る舞います。イメージ通りのスタースクリームが嬉しい処。が、メガトロンは50年間の恨みと称してスタースクリームを粛清するのです。
ここでキーがスタースクリームの身体に接触。
これは絶対今後の展開への伏線でしょうね。
それにしても、今回のメガトロンは、破壊大帝の名に相応しい恐怖の独裁者です。
G1ではスタースクリームの頻繁な裏切りを寛大に許容していましたし、その後の多くの「メガトロン」と名の付くキャラクターも同様でした。今回のメガトロンは、むしろG1のガルバトロンに似ています。ガルバトロンは、粛清と称してスタースクリームを一瞬のうちに灰燼と化しましたから、容赦の無さは今回に酷似していますよね(これには、映画だから放送コードに引っかからないという事情もあったようですが)。
そして、いよいよメガトロンがビークルモードにトランスフォーム!
「メェガトルルルロン、トルランスフォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーームッ!」
って、長ぇよ(笑)。変形バンク(?)の間中、声を出し続けたトランスフォーマー声優さんは初めてじゃなかろうか。笑わせて頂きました。
ビークルモードはツインローターの爆撃ヘリということで、メガトロンのモチーフとしては非常に珍しいものになりました。ローターが二刀流のブレードになるアイディアもいいですね。戦車モチーフには、正直個人的に違和感を感じ続けていたので、嬉しいです。
メガトロンがオールスパーク探索を開始したことで、辛くも難を逃れたオートボット。サムダックは、自らの過ちを彼等に詫びるのでした。
メガトロンからは、「弱った姿を仲間に見せたくない」というもっともらしい理由を吹き込まれていたとはいえ、メガトロンを研究材料に利用して、今の地位を築き上げたのは事実。このメガトロン復活の責任の一端がサムダックにあるとされても、否定は出来ません。
オートボット達がサムダックを責める事はありませんでしたが、その辺りに楽天的なトランスフォーマーの世界観を垣間見る気がします。
一方サリは、これまたオールスパークを狙っているブラックアラクニアに捕まっており、その在処に案内させられていました。
しかし、一筋縄ではいかないのがサリ。同じ所をグルグルと歩かせた上、生意気な言い草でブラックアラクニアを挑発。オールスパークの在処が海底だと示して、ブラックアラクニアを狼狽させるのです。
怒りに任せてサリを痛い目に合わせようなどと考えないのが、ブラックアラクニアというキャラクターの面白い処であり、出自がオートボットであるが故なのかも、と思わせる辺りが巧いですね。
一方、サリのキーが手元に無く、オートボット達は戦力を回復することが出来ません。サムダックは、研究室に少量ながらエネルギーが残っている事を告げ、それをオートボット達に提供する手筈を整えます。サムダックなりの罪滅しでしょう。
完全とは言えないまでも、とりあえず戦える状態になったオプティマスは、オールスパークを積んだ船でディセプティコンを宇宙におびき出す作戦を立案。まず、一足先に船に到着したラチェットに、発進を指示します。オートボット達は、何としても地球に被害が及ばないように、そしてメガトロンにオールスパークを渡さないようにと、結束を固めます。
その後、ラチェットは船をサムダックタワーに横付けし、船の発進時に合流したサリと共に、仲間の元を訪れます。ブラックアラクニアは、哀れ船から振り落とされてしまう結果に。
サムダックは責任を強く感じていて、どうしてもオートボット達と行動を共にしたいと訴えます。
オートボット達は当然危険だとして固辞。両者譲らぬまま、ディセプティコンの襲撃に遭ってそのまま発進せざるを得なくなり、有耶無耶のまま行動を共にすることになる辺りが巧妙です。
ディセプティコンの襲撃は執拗で、とうとう船は故障し、ディセプティコンを宇宙へ誘導する事は出来なくなってしまいます。
この、岩壁への刺さり方が、G1のアーク(アイアコーン)に似ていて、ちょっとニヤリ。
そして、本格的な攻防戦が開始されます。
「もし負ければ、皆一緒に死ぬことになる。私たちは最高のチームだ。共に戦える事を誇りに思う!」とオプティマスが言えば、「宇宙一カッコいいチームってこと?だよね。ディセプティコンなんか怖くないぜ!」とバンブルビーが応える。ここでいきなり、主題歌がかかり始めてヒートアップ!テンションはMAXです。
オプティマスのマスクオンがカッコ良すぎ。
ビークルモードを使い分けて襲撃してくるブリッツウィングに手を焼くプロール達。プロールは、ブリッツウィングが人格交代すると、ビークルモードも釣られて変わってしまうという弱点に着目し、バンブルビーに得意技でその弱点を突くよう提案します。
その「得意技」とは、何と「むかつかせる事」!
武器で対抗出来ないなら、知力を尽くすという展開が非常に素晴らしいと思います。この作戦は大成功。バンブルビーに馬鹿にされ、空中でいきなり戦車に変形してしまったブリッツウィングは、氷原に真っ逆さま。
一方、サムダックはサリに、「私達は助からないかも知れない。その前に大事な事を話したいんだ」と言います。重大な前フリですよ、これは。しかし、サリは聞き流してオールスパークの元へ…。
サリを前に、オールスパークはいきなりDNAの螺旋構造をビジョンとして見せたりしますが、これも壮大な前フリなんでしょうね。
サリは懸命に訴えますが、オールスパークは答えず。結局、メガトロンの侵入を許してしまい、またもや手も足も出ないオプティマスの姿を目にすることに…。
とうとうオールスパークを入手したメガトロンは、自らのスパークに接触させ、膨大なパワーを手に入れようと画策。
メガトロンを研究し尽くしたというサムダックは、弱点である足を攻撃して動きを制しますが…。
メガトロンはスパークが何たるかを人間は理解出来ないと嘯き、サムダックを踏み潰そうとします。
割り込んでサムダックを救ったオプティマスは、オールスパークの光の奔流の餌食に…!
しかし、メガトロンがサムダックに足を攻撃された際に落としてしまったキーを、サリが拾い、オプティマスにパス。オプティマスは、キーをオールスパークに接触させて、オールスパークのパワーをメガトロンの体内に解放してしまいます。
結局、パワーの本流にメガトロンは自壊。オートボット達は、辛くもディセプティコンを退けたものの、オールスパークは塵になってしまいました。
手元に残ったのは、地球で最も強力なパワーを持つガジェットとなった、サリのキー。オプティマスは、サリにキーを返すのでした。
「オールスパークが君を選んだ。何か理由がある筈だ」とオプティマス。
この、選ばれた者という感覚は、G1ならば「ザ・リバース」におけるスパイク、実写映画版ならばサムが該当するでしょう。いずれも、惑星サイバトロンに宿る高次元の意識が人間の力を必要としているという感じがあり、それはビーストシリーズが辿り着いた、有機体との融合を渇望するサイバトロン星の姿にも重なります。
この時、歴代オプティマスは道筋を示す役割がありながらも、その流れの中心に在する事は出来ません。非常に狂言回しに近い主演キャラクターなのです。
一方、サムダック博士は行方不明に。実は、メガトロンによって囚われの身となっていました。
「サムダックよ。我々は今一度、運命を共にするようだな」
このメガトロン、G1「ザ・ムービー」でのヒビ割れメガトロンを彷彿とさせますね。
ただでは死なぬメガトロン。ディセプティコンの逆襲は近い!?
この回は、トランスフォーマー アニメイテッド VOL.4 [DVD]に収録。テレビ未放送の幻のエピソード「死を呼ぶ宇宙怪物!」も収録!
コメント