G1旧アニメにも、殆ど同じサブタイトルがありました。「対決!!ダイノボット PART I」、「対決!!ダイノボット PART II」という前後編。どうも、ダイノボット系の話はG1のサブタイトルを拝借する傾向があるみたいで、興味深いですね。
今回、G1と同様にオートボットとダイノボット大激突編かというと、そうでもなく。むしろメルトダウンが主役といった感じになっていて、ダイノボットは痛みを恐れてメルトダウンに服従しているという、実に可愛らしい役どころなのです。
アニメイテッドのダイノボットは、G1のそれと同様に知性に乏しいキャラクターとされていますが、G1がとにかく短絡的で乱暴な一団という性格で登場し、徐々に愛らしいキャラクターに変化したのに対し、アニメイテッドの場合は、どちらかというと幼児的な知能の持ち主として描写されている感じです。
ふと気付いたのは、ダイノボット以外が喋らないという事が、意外と良い処理なのではないかということ。G1の場合は、全員が喋れるものの、結局グリムロックが殆どダイノボット軍団の意思の代表者になっていました。アニメイテッドでは、グリムロックしか喋れる者がいないので、はっきりとグリムロックが代表者たる事が出来る上、他のメンバーの可愛らしさも倍増。藤原さんが「お母様方」と呼びかけるのに納得してしまいます(笑)。
今回は、ファンゾーン警部の見せ場が多く、キャプ画も多めになったので、ここで大まかな粗筋を照会するのではなく、続きにてストーリーを追ってみようと思います。
今回はサリも大活躍。まずは、前回からの流れを受けてか、キーを所持するサリに危険が及ぶことを懸念するオートボット側から開始。
プロールは、「私達が守ってやれない時もある」と言い、サリに護身術として飛び蹴りを伝授していました。
このくだりは、相手が主にディセプティコンであるという観点からすれば、かなり無理があるのですが、今回のクライマックスには直接ダメージを与える事が信条ではないという提示があるので、プロールは隙のない心構えとしての武道をサリに教えようとしたのだと解釈出来ます。
その夜、そんなサリの元にスワープが突如姿を現し、サリを連れ去っていってしまいます。
サリはスワープを見て「カッコいい」と言ってました。彼女はやっぱり只者ではないわけです。
この一件はいわゆる「誘拐事件」として通報され、ファンゾーン警部の登場となります。
「君達と一緒にいるだけで危険なんだぞ」とオートボット達に告げるファンゾーン警部の言動には、明確にロボット達への嫌悪が見て取れます。ただし、オートボットに人格の存在を認めてはいるらしく、ファンゾーン警部の機械との相性の悪さから来る「機械への嫌悪」とは若干趣が異なるようです。街を守ってもらっているという立場からして、彼の中に葛藤があった事は否めないでしょう。
オプティマスが監視カメラのビデオにふと映ったスワープを発見し、この件がダイノボットと関係あるのではということになります。
かつてプロールと共にダイノボットの逃亡を手助けしたアイアンハイドは大慌て。一方のプロールは、冷静に「この件は、私の責任である。島へ行ってみる」とアイアンハイドに耳打ちします。
この内緒話を鋭敏な感覚で捉えるファンゾーン警部。
この表情と構図、抜群です。ポップなキャラクターながらも、時折「オッ?」と惹きつけられる演出を持ってくるあたりが、このシリーズの凄さです。
さて、プロールとアイアンハイドはダイノボットをかくまっている島へと船で(!)渡り、ファンゾーン警部はその後を小型潜水艇で追跡します。ここから、ファンゾーン警部の機械との相性の悪さ(及び多少ドジなところ)がコミカルな描写によって連発されます。
まずは、潜水艇のハッチが開いてしまうというハプニング。これは潜水艇の不具合というより、ファンゾーン警部の操作ミスな気もしますが、それも含めてファンゾーン警部と機械に相性は最悪なのです。
それでも、しっかり岸に上がってくるあたり、この人物のポテンシャルの高さ、有能さが窺い知れるというもの。G1と同様、人間の能力を侮れないというテーマ性を感じることが出来ます。
ところで、この一件の裏で糸を引いていたのは、実はメルトダウンでした。
ロードスもちゃんと居て、単発キャラではなかった事に驚きます。
サリはレーザーの檻を備える牢に閉じ込められて居ます。しかし、ロードスに毒づくあたりが彼女らしい。
メルトダウンの目的は、一応サリを新しい生命体創出の実験台とする事なのですが、サムダック博士への復讐という面も当然あるでしょう。
それにしても、ロードス共々、あの状況からよくこの島へ逃れてきたものですな。
一方、ファンゾーン警部の災難は続きます。アイアンハイドがつまずいた大木が坂の上から転がり落ちて来て、慌てて逃走。
それでも何とか難を逃れたものの、今度は流砂に巻き込まれてしまいます。
悲鳴を上げた為にとうとうプロール達に尾行を気付かれ、助けてもらうことに。
助けてもらった礼もそこそこに、「ここはエリー湖の真ん中の、研究施設しかない無人島だぞ」とプロール達を追求するファンゾーン警部。職務に一切の妥協を持ち込まない姿勢は、彼の有能さをより効果的に示すとともに、オートボットへのちょっとした嫌悪を感じさせます。
しかしながら、飛田さんの声質と少し柔らかめの演技によって、全くもってイヤなヤツになっていないのが感心。原語版はどうなんでしょうね。
なかなか口を割らないアイアンハイドとプロールでしたが、彼等の目前にダイノボットが出現した事により、彼等の隠し事がバレてしまいます。
この構図が映画的でホントにカッコいい!
ここからしばらくは、「対決!ダイノボット」になっていくワケですが、この辺のテンポが実に小気味よい。テンポの良さに関しては、毎回「小気味良い」と書いてしまってますが、本当なので仕方ないですな。
バトル自体は、巨躯が入り乱れて凄い迫力。地上あり、空中ありの立体戦になっていて、非常に充実度高いです。
バトルのさなか、プロールはスワープの脚部に溶解の痕跡があることに気付きます。
メルトダウン、溶解の痕跡とビジュアルで見せられ、視聴者の認識している点と点がサッと線で結ばれるのです。
当然、プロールも溶解というキーワードからメルトダウンを連想。劇中人物との一体感がダイナミックでいいですね。
さらに、プロールはファンゾーン警部をバイクとなった自分にライドさせることで救出します。カーチェイスの要素も入れてしまうとは、いやはや恐れ入ります。
ダイノボット達の攻撃を巧みに回避したのも束の間、今度は黒幕のメルトダウンが、「呼ばれて飛び出てメルトダウン」と堂々登場(笑)。だれもクシャミしてないけど。
さらに、「ここで一旦CMで~す」なんていうお茶目なアドリブをかましてくれます。
言葉通りCMに入り、CM開けはオートボット達の連続危機。アイアンハイドはメルトダウンの溶解液の餌食に!
プロールとファンゾーン警部は、落とし穴に落とされてしまいます。
地下牢で、プロールとファンゾーン警部は、メルトダウンの目的を耳にします。それは、「私は自由に変身出来る人間を作りたいのだよ」という事。ロードスのように機械的なユニットによって変身する人間ではなく、生物工学的に生体構造を随意で変換出来るという事ですね。もしかすると、メルトダウンの根底には、トランスフォーム出来るサイバトロニアンへの憧れや妬みといった感情が存在するのかも知れません。
なお、実験は「大人を実験台にして失敗した」らしく、それで子供であるサリを新たな実験台とする事になったようです。
プロールとファンゾーン警部に、「失敗作」が襲いかかってきます。
SF映画でよくある「密室バトル」が展開!
ファンゾーン警部の強烈パンチが披露され、またもや彼の能力の高さに驚かされます。
人間は無能ではない(ロボットと対比した時に皮肉の対象とならない)という視点は、トランスフォーマーにおける美点の一つですね。
その頃、サリはトイレを偽ってまんまとロードスを出し抜き、脱出していました。プロールとファンゾーン警部が、サリの恐怖に震える姿を想像して案じているのとは対照的な、サリの言動が笑いを誘います。ロードスをトイレに足止めにしたり、プロール達が閉じ込められている地下牢のレーザーを切ったりと、キーも効果的に使っており、前回を経て成長している事を実感させるのもいいですね。
サリが「いい?プロール。私が守ってやれない時もあるのよ」と、冒頭のシーンの「お返し」をしているのもいいですね。毎度の事ながら、立場の逆転を巧く使って両者の優劣をつけないように配慮されています。
直後、プロール達は脱出を図るのですが、エマージェンシーのブザーが鳴り響き、今にも扉が閉ざされようとするわけです。危機の連続がクライマックスへの助走として効いています。
プロールは「加速装置!」と叫び、サリとファンゾーン警部を抱えてハイスピードで脱出。このセリフ、島村ジョーを意識したアドリブですよね?小さいお友達置いてけぼりですよ~(笑)。
脱出の際、ファンゾーン警部は防護服を「何かの役に立つかも」と持ち出していて、それが見事にメルトダウン捕獲に役立っています。
この大捕物は、サリの飛び蹴りがハズレて、メルトダウンが気をとられている間に行われており、ちゃんとサリの飛び蹴りが役に立っています。ここですよ。この使い方が巧いんです。
これまでのファンゾーン警部は、機械嫌いで皮肉屋の「ちょっとイヤな保安官」の典型でしたけど、今回で、実に有能でお茶目な面もある魅力的な人物に変身を遂げました。あんまり目立つことりなかったキャラクターが、パッと目立つ瞬間は、素晴らしいものがありますよね。
メルトダウンの「鞭」が無効化され、意気揚々とトランスフォームしてその巨躯を誇示するダイノボット!
それぞれの武器から炎が上がるという演出がカッコ良すぎますねぇ。
これにはメルトダウン親衛隊もタジタジ…。
アイアンハイドも間一髪、サリのキーで回復し、一件落着。帰りの船上で談笑するプロールとファンゾーン警部の会話がいい感じ。
「島でも色々助かったである」
「ああ。俺達はいいコンビだった。なかなか乗り心地も良かったし。君は、イイヤツだな」
「あなたこそ、いい人だ」
ファンゾーン警部が、機械であるオートボットの一員・プロールにシンパシィを感じ、一方のプロールも、一度はダイノボットの処分を声高に叫んだファンゾーン警部に、シンパシィを感じた瞬間。この「分かり合う感覚」は多くのエピソードに織り込まれていて、一つのテーマとなっています。
プロールの、
「今のサリなら、十分に自分の身を守れるでしょう。彼女は、成長しました」
という呟きで締められるエンディングには、心地よい余韻がありました。
この回は、トランスフォーマー アニメイテッド VOL.3 [DVD]に収録。
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