主演・チョーさん、てな具合にチョーさん独壇場。ブリッツウィングって、トリプルチェンジャーという恵まれたキャラクターでありながら、G1では割と地味な役割に甘んじていましたが、さすがはアニメイテッド。それぞれのキャラクターを立たせるのは一流ですね。そこにチョーさんの怪演が入るんですから、もうこれは無敵と言って差し支えないでしょう。
チョーさんのトランスフォーマーへの関わりは、最も有名なものでは「ビースト」シリーズのタランチュラス(日本名・タランス)。「ウヒャヒャグモ」という異名の通り、事ある毎に奇妙な笑い声をあげ、常に怪しげな雰囲気を醸し出す特異なキャラを見事に作り上げていました。アドリブの達者なメンバーの中でもアドリブ巧者であり、マニアックな話題からお子様向けのギャグまでカバー、時には静かな笑いをも提供。その持ち味は、「スーパーリンク」のアルファQに継承されましたが、スーパーリンクは日本制作だった為か、吹き替えのようにアドリブの自由度は高くなく、暴走気味の「ビースト」と比べるとやや物足りない感がありました。
今回のブリッツウィングは、トリプルチェンジャーであることに引っ掛けてか、顔が三面に変化するという特徴があります。前述のアルファQのキャスティングもあって、チョーさんが起用されたのではないかとも推測可能です。アルファQも多面キャラでしたからね。
「ビースト」以来、トランスフォーマーにおけるチョーさんの役割は別格とも言える扱いであり、例えば今回もアドリブ連発なのはもとより、何と予告、提供、「またみてね」を全てチョーさんの「ブリッツウィングの歌」が乗っ取るという快挙を成し遂げています。もう、凄過ぎますね。
で、チョーさん讃歌(すみません、チョーさん大好きなもので)はこのくらいにして、今回のストーリーを。
どこからともなく地球圏に飛来したブリッツウィングとラグナッツ。メガトロンに忠実なラグナッツはメガトロンの生存を確信し、ブリッツウィングを伴って探索を始めるわけですが、腹黒いブリッツウィングと愚直なラグナッツのコンビは、全く噛みあわないながらもオートボットを追い詰めていくのです。
メガトロンは、忠実な部下であるラグナッツだけにオールスパークの入手を命じ、ブリッツウィングは事実上ディセプティコンのナンバー2であるが故に、ラグナッツの行動に同伴しつつ、オートボット殲滅に動いていきます。
一方、オプティマスは、オールスパークを所持しているが故に地球が危険にさらされることを危惧し、早急に船を修理して地球を離れる決意をします。
サリはそれに反発。友達を失うという結果が待っている事への寂しさから、キーによる船の修理という形での協力を固辞するわけです。ここに、説教臭いラチェットへの反発が入り交じり、サリの気持ちが掻き乱されていく様子を描いていきます。
心情描写とアクションが絶妙なバランスで成立していて、今回も充実度はすこぶる高いのですが、チョーさんの怪演が楽しすぎるので、その辺りを見失わないようにしなければなりません(笑)。
では、今回も見所をチェック。
サリがへそを曲げる発端は、冒頭のホッケーのシーンにあります。
サリとバンブルビー、そしてアイアンハイドがホッケーに参加。サリはキーを使ってキーパーのアイアンハイドをアシスト(反則でしたが)しており、また遊びの為にキーを使ったということで、ラチェットに咎められるのです。
今回の大のお気に入りカットがこのラチェットお座りポーズ。トランスフォーマーの人間臭さ、ここに極まれりといった雰囲気で、アニメイテッドのキャラクターデザインだからこその描写だとも言えそうです。
なお、このホッケーのシーンでは、「ドライブシュート!」、「ナイスセーブ楢崎くん」、「真実はいつも一つ!」といったアドリブが披露されます。ある年代には懐かしすぎる言い回しから、現役アニメネタ、時事ネタに至るまで何でもあり。オートボット声優陣も、チョーさんのアドリブに対する並々ならぬ気合に応えた?
そして、ブリッツウィングとラグナッツが月面に続いて遂に地球に飛来。重機をオートボットと誤認して襲撃するシーン。ここに、見覚えのある人達が。
初代G1アニメの人間側の主役であるスパイクの、職場(アルバイト先?)の作業着に酷似!
というか、スパイクはヘルメットをたまに被る以外はいつもこの格好だったので、実質スパイクとその親父・スパークプラグの「衣装のカメオ出演」なわけですな。こういう小ネタは嬉しいですねぇ。
続いての印象的なカットは、アイアンハイドとラグナッツの激突!
体型も似ていて、はっきりとライバルキャラ認定出来そうな両者です。巨躯の持ち主同士が取っ組み合いをするのって、往年の怪獣映画よろしく興奮しますね。実写映画版でも、「リベンジ」より第一作目の方に迫力を感じられるのは、やっぱり取っ組み合いのシーンが多いからでしょう。
なお、アイアンハイドは上手投げで軽く投げ飛ばされてしまっており、ラグナッツの強大さが遺憾なく描写されています。
その上、「ラグナッツ・メガトンパンチ」が地面に炸裂すると、その場に居た全員がノックアウトされるという驚異が。
これって、オートボットにとってはこの上ない危機的状況なんですけど、あんまりそういった雰囲気が漂っていないのは、海外製トランスフォーマーの美点といったところでしょう。
これだけ強いラグナッツですが、ブリッツウィングと比べるとやや知性が足りない様子。しかしながら、メガトロンの信頼は絶対らしく、ラグナッツだけにメガトロンの通信が届きます。
チップに直接映像となって現れるあたり、メガトロンの超常的な能力を垣間見ることが出来ますな。
ラグナッツは、「今、会いに行きま~す」とか、「世界の中心で、メガトロン様の名前を叫ぶッツ」とか、どこかの映画のタイトルみたいな発言。チョーさんの本格登場で、皆テンションが上がってるのかも知れませんねぇ。いつもよりアドリブが5割増くらいになってる気がします。
さて、冒頭での紹介したとおり、オプティマスは地球を離れる算段を始めるわけですが、オートボット達と親友と形容出来る関係にあるサリにとって、それは歓迎すべき事態ではなかったのです。
こんな感じの不機嫌なサリの表情を、今回は頻繁に見ることが出来ます。
一方、ブリッツウィングとラグナッツは、地球での本格的活動を開始するにあたり、それぞれ地球製のマシンをスキャン。
ラグナッツは爆撃機をスキャンしました。
ブリッツウィングは、第一の顔と第二の顔が、それぞれスキャン対象に戦闘機と戦車を推挙して言い争いになった為、第三の顔が両方スキャンすればいいじゃん、てなことになります。
トリプルチェンジャー万歳。G1の時、既にトリプルチェンジャーだったブリッツウィングの完成度は、もはや神話レベルですけど、実はそれから遡ること数年前に、トランスフォーマーの元となったダイアクロンで商品化されてるわけで、当時の変形ロボットに対する世間の熱気の凄さが感じられます。
上の画像は、とりあえず二人の全身図。細部において、サイバトロンモードと若干の差異が確認出来ます。
結局、ラチェットの強い押しもあって、船の修理を手伝うことになったサリですが、オートボット達の前では生意気に振舞っていても、影ではこの通り。
この絶妙な性格設定が、サリのキャラクターに豊かさを与えています。等身大の女の子といった感覚に優れているのは、アメリカン・カートゥーンならではではないでしょうか。
あ、この時既にサブタイトルにある「湖底の激戦」は始まっていますよ。
オートボットの船は湖底にあり、ラチェットとサリは船の修理を、その他のメンバーはブリッツウィングとラグナッツの襲撃に対抗しています。ブリッツウィングとラグナッツのお目当ては、当然オールスパークですよ。
途中、ラチェットに反発したサリは、オールスパークの元にやってくるのですが、オールスパークが激しく反応。
そして、メガトロンの幻影が…。
恐れおののき、思わず船のハッチを開けてしまったサリは、流入してくる水に巻き込まれてしまいます。しかし、間一髪ラチェットが登場。ハッチを閉じてサリを救出。
このラチェットとサリの構図が抜群。今回はラチェット関連のカットが素晴らしい味を出していますね。
サリは、キーの持つ恐ろしい一面を垣間見たことで、ラチェットの言う事を理解し、かつて軍艦から修理船に変えられた船の武器を、キーのパワーによって復活させることにより、オートボットの危機を救う決心をします。
ここからは、船の武器の発射プロセスが非常に詳細まで言及されていて素晴らしいので、再掲します。
「セーフティロック解除」
「ターゲットスコープ・オープン」
「電影クロスゲージ明度20」
「エネルギー充填120%」
「対ショック、対閃光防御」
「最終セーフティ解除」
「波動砲、発射!」
…って、ヤマトそのままかい。と思ったのも束の間、この武器の直撃を受けたブリッツウィングとラグナッツの二人も、
「ヤマトぉぉぉ!?」
と叫びつつバラバラに。
最後の最後でとんでもないアドリブをかましてくれましたよ。しかしこれは、明らかに一定以上の年代向けですな。ラチェットがおっさんキャラなのも納得です(?)。
エピローグには、負傷したバンブルビーの治癒の為に、サリがキーを用いるシーンが。
パワーアップさせて欲しいというバンブルビーに、サリはラチェットの受け売りで戒めの言葉を投げかけるのでした。
キーを用いても、まだ船は完全に治らないとの事で、しばらく地球に留まるという説明が付加されます。一応、サリの欲求もある程度は満たされたということで。めでたしめでたし。
この回は、トランスフォーマー アニメイテッド VOL.3 [DVD]に収録。
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