出ました!ブラックアラクニア。
「ビーストウォーズ(日本語版)」では「ブラックウィドーちゃん」と自称してましたが、アニメイテッドでは、原語版を踏襲してブラックアラクニアとされています。
そのデザインは、ビーストウォーズ+ビーストウォーズ・メタルス+ビーストウォーズ・リターンズ。とっても巧い具合に融合していて、感心しました。具体的には、スタイリングが無印、カラーリングがメタルス、4つ目等のディテールにリターンズの影響が感じられます。
そして、その出自が凄い。
何と、G1ではオプティマスの恋人だったエリータ1(G1では「エリータワン」)がその正体。センチネルと緩い三角関係にあったことまで示されて、充実度が非常に高いストーリーとなっています。
「ビースト」シリーズで示されている半有機体のロボットというコンセプトは、このブラックアラクニアにも反映されていますが、あくまでこの時代のサイバトロニアンは無機物であり、スパークが無機物に生命をもたらしていることになっています。というわけで、ブラックアラクニアの半有機体構造は、「命の星」と呼ばれる場所で、巨大なクモ型生物に毒を注入されたことによる変化という設定になっています。この処理も巧妙であり、G1を継承する世界観に、ビースト系の世界観を違和感なく導入することに成功しています(ビースト系も元々G1とは地続きなんですけど、要はマクシマルやプレダコンといった概念がないということ)。
さて、ストーリーは現在と過去が錯綜する物語になっていて、クモというキーワードがオプティマスのフラッシュバックを喚起するという構成で、テンポ良く2つの時代を見せています。
現代編は、サリのキーが自らの有機体(「生き物の部分」という分り易い表現)を除去出来るガジェットであると認識したブラックアラクニアが、ハロウィンに浮かれているサリを狙うというもの。
一方過去編は、前述の命の星で、オプティマス、センチネル、エリータ1の三人に振りかかる危機を描きます。
それぞれがリンクし、オプティマスとブラックアラクニアの邂逅が二人の過去への心情を痛烈にえぐるという、何とも暗い話なのですが、バンブルビーとアイアンハイドのコンビが明るく振舞う為、それ程暗さを感じさせないのがいいですね。
サブタイトルは、「ビーストウォーズ」の「クモ女のキック」を思わせて感慨深いものがあります。劇中、しっかりキックを披露してますしね。
では、この前置きで一切触れていないゆずちゃんの事も含めて、後半出発。
今回は、放送時の時系列ではなく、過去編と現代編を完全に分けて整理してみます。その方が書きやすいからです(笑)。
まずは過去編から。
「命の星」と呼ばれる場所、多分惑星なんでしょうけど、そこにディセプティコンの破棄された戦艦があり、その中に沢山のエネルゴンキューブが存在するということで…。
この3人が、探索にやってきます。左より、エリータ1、センチネル、オプティマスです。オプティマスはちゃんとサイバトロンモードになっています。
ちょっと生真面目なオプティマスは、近寄る事を禁じられているこの場所に立ち入る事を躊躇し、センチネルは調子良くそれを焚き付けています。オプティマスの性格はあまり変わっていないようですが、センチネルに関しては、高慢さを感じさせる現在の姿とは、ちょっと異なるフランクな感じが魅力的です。まぁ、現在は仲が悪い故にあんな態度をとっていると考えられますが。
探索の途中、三人はこの惑星に群生しているクモ状の生物に遭遇。
オプティマスやセンチネルが精彩を欠く中、エリータ1は「パワー」によってクモに対抗しようとします。
この「パワー」、G1では時間を逆行させるというアメイジング・パワーでしたが、今回はややスケールダウンして、触れた者の能力をコピーするというパワーになっています。ただし、有機生命体(劇中は単に「生き物」と呼称)には適用出来ません。
結局、センチネルの能力をコピーして、クモを撃退するエリータ1。彼女が優秀な戦術家の一面を持つことも示されていますね。
オプティマスとエリータ1は、いよいよディセプティコンの廃艦に侵入。そこに大量のエネルゴンキューブを発見します。
ところが、エネルゴンキューブに交じってクモの卵も大量に存在しており、次々と孵化。映画「エイリアン」の雰囲気を感じさせますが、こちらはクモという身近な存在がモチーフになっている為、かなり気色悪いのです。
ここからはクモ達との壮絶バトル。オプティマスやエリータ1のタクティカルな戦い振りが充実していて、地形を利用した戦術や、エリータ1のコピー能力をフル活用した脱出等、色々と見所が満載です。
しかし、脱出もあと少しというところで、エリータ1のコピー能力がタイムアウトしてしまい、彼女はクモの群れの中へと落下。
助けに戻ろうとしたオプティマスでしたが、船が大爆発寸前ということで、センチネルと共に避難。その後、エリータ1のシグナルを捕捉しようとしますが、結局シグナルはキャッチ出来ず、「こうなったのは皆お前の所為だ!」とセンチネルに責められつつも、オプティマスは諦める道を選ぶのでした。
しかしその頃、エリータ1には恐ろしい出来事が待っていました。
大量のクモに囲まれ、体内に毒を注入されていたのです。
みるみるうちに毒が作用し、身体に変調をきたすエリータ1。その姿は、半有機体のロボット生命体・ブラックアラクニアに…。
と、ここまでが過去編です。
この過去編の見所は、なんと言ってもホラーテイストでスリリングな演出と、オートボット三人のキャラクターがそれぞれ完璧に立っていること。
中でも、エリータ1の柚木涼香さんは秀逸。やっぱり、無印ビーストからすると、物凄く声優さんとして大成された感じですね。エリータ1のキャラクターは、G1にて小宮和枝さんが確立した感がありますが、この柚木版エリータも素晴らしい。ブラックアラクニアがビースト系の正統リメイクなのに対し、エリータ1はちゃんとオートボットしていて、しかもオプティマスとセンチネルを手玉に取る強い女としての一面もしっかり描出されています。
更には、ブラックアラクニアが虚勢を張っている雰囲気を醸し出しているのに対して、エリータ1が根拠ある自信家というキャラ付けで描かれているのも秀逸。
ちなみに、エリータ、ブラックアラクニア双方、今回はアドリブ少なめです(オープニングでは盛大なネタバレが爆笑モノでしたが)。
さて、今度は現代編。今回はメガトロンが一切関わっておらず、ブラックアラクニアの単独行動だと思われます。
サリに促されてハロウィンの支度をしているバンブルビーとアイアンハイド。ハロウィンネタは全く以て放送時期とズレていますが、そのあたりにも「輸入アニメ」的な雰囲気が感じられていいのです。
バンブルビーはドラキュラ?
サリのコスチュームは、オプティマスです。
オプティマスの口真似をして、おどけて見せるサリがいい感じ。ただし、オプティマスは自分に似てないと言い張ります。この辺はお約束ですね。
このハロウィンの準備中、サリがキーを使ってオプティマスを驚かすのですが、この時オプティマスを驚かせたのが、クモのぬいぐるみ。オプティマスは、命の星でのトラウマがフラッシュバックし、そのぬいぐるみを斧でバラバラに切り裂いてしまいます。
サリに、「キーを遊びで使うものではない」と説くオプティマスでしたが、逆にサリはオプティマスの取り乱しっぷりを指摘。当然、このキーが、ブラックアラクニアとの一件に強く関係してきますから、その印象付けですね。
そして、サリのキーを入手したいブラックアラクニアは、情報を事前に得ているらしく、サリの前に現れます。バンブルビーとアイアンハイドの攻撃を華麗に回避し、「生命体の毒」を注入するブラックアラクニア。「生命体」は「有機体」と換言した方がいいかも知れません。一応、オートボット達もスパーク由来の生命体ですからね。
サリは早速キーを用いてバンブルビー達を助けようとしますが、キーを差し込んでも反応がない。「オールスパークは生き物には効かない」とブラックアラクニアは言い放ちます。ここでも、「生き物」を「有機体」と換言すべきでしょうね。つまり、有機体の毒を注入されたオートボットに、キーによる解毒は不可能ということ。
ブラックアラクニアは言葉巧みにキーを渡すよう、サリに近づきます。
が、そこにオプティマスが参上。
しかし、アイアンハイドのパワーをコピーし、怪力の持ち主となったブラックアラクニアは、オプティマスを軽くあしらうのです。
アメリカのTV番組の放送コードとして、女性キャラを男性キャラが殴ったりしないというルールがあったように記憶してますが、正にそれを反映させた場面となっていて、オプティマスは為す術もありません。
さらに、「クモ女のキック」が炸裂!
その正体がエリータ1だと知り、あからさまに動揺するオプティマス。
エリータ1は半有機体の醜怪なロボットと化した為、オートボットであることを捨て、ディセプティコンの一員となりました。
ちなみに、ビーストのシリーズでは、マクシマル(正義側)のプロトフォームがプレダコン(悪側)の増員に利用され、元々正義側だったブラックアラクニアが、悪側として起動したという経緯になっています。メタルスで正義側に寝返り、リターンズでは完全にマクシマルの一員になっています。
今回は、その経緯を巧くアレンジして、「寝返る」という行為を他のキャラクターへの怨嗟と絡めている辺りがヘヴィです。
その後、サリからまんまとキーを奪ったブラックアラクニアは、そのキーを自らに差し込むことで、解毒を図ります。
「オールスパークは生き物には効かない」というのはウソということらしいのですが、先程、バンブルビー達に効果がなかったのは何ででしょう?
ここはちょっと説明不足な気がします。
そして、キーの作用はブラックアラクニアの解毒に働くどころか、その波動が周囲の生命体の生命力をたちどころに奪ってしまい、サリもこんな姿に。
いつの間にか回復したバンブルビーが、落下するサリを間一髪キャッチという素晴らしくカッコいいシーンを挟み、オプティマスが「君は毒なしでは生きられない」という言葉を放ちつつ、キーを抜くまでに至ります。
「また友達になれる」というオプティマス。結構いい雰囲気に。柚木さんの色気のあるセリフ回しは、無印ビーストの頃と比べると、格段にレベルアップしていて、かな~りゾクゾクしますな。
ここで再びエリータ1としての彼女に戻るかと思いきや…。
シャァァッ!
特徴的な気合と共に毒を注入!
そらにゾクゾクですわ。
「オートボットとは友達になれないわ。あなたとは特にね、オプティマス」
捨て台詞を吐いて去るブラックアラクニア。カッコいい~!
怨みの深さが活写されてます。
事件後、アイアンハイドに「あのクモ女何だったんだい?」と尋ねられ、オプティマスは、「置き去りにすべきでなかった、友達さ」と答えます。この余韻が素晴らしいと思っていると、何と、「オプティマス…あなたの事…」と打ち震えるブラックアラクニアの姿が!
もう素晴らしいの一言。これに尽きますな。
G1のライトな作風からすると、こういったウェットなドラマは正に「ビースト的」なのですが、こういう展開が挿入されていても全く違和感なく、先のラチェットの過去話同様、重要なエピソードとして強く印象に残ります。また、G1キャラクターのリメイクキャラと絡めることによって、その印象をより強くしているあたりがニクいですねぇ。
この回は、トランスフォーマー アニメイテッド VOL.3 [DVD]に収録。
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