丈瑠と十臓の決着、丈瑠と「仲間」の絆の確認、源太による薫の評価などなど。
静かに色々な物事が推移していく雰囲気なのですが、血祭ドウコクとの最終決戦に向けて、一気に物語の糸をまとめ、それぞれを見応えある決着としています。
今回のメインとして描かれるのは、勿論丈瑠と十臓の決着。以前繰り広げられた一騎打ちでも、十臓は丈瑠に敗れており、丈瑠の実力が十臓の実力を上回っているのは確たるものとされました。しかし、以前の一騎打ちの結果が、裏正を折られるという象徴的な描写になっていたのに対し、今回は、復活したその裏正に、正に「足元をとられる」という結果を提示しており、必ずしも丈瑠の実力だけの勝利でないところが素晴らしいのです。
もし、裏正が十臓を止めなかったら、もし、茉子達の叫びが丈瑠に届かなかったら、丈瑠は十臓の思惑通りに外道に堕ち、十臓の欲望に引き摺られるまま、「なかなか死ねない身体」になって永劫の斬り合いに巻かれていったかも知れません。
丈瑠の「勝利」は、人の絆を信じる人々によってもたらされた...というのが、今回のテーマだったように思います。
また、十臓も「実は嘘をついていた」ように見えます。心の奥底まで外道に染まっていた十臓にとって、十臓を止めようとするも、裏正に化身させられた妻こそが、嘘のほころびだったのでは。厭世感にとらわれた十臓は、外道に身をやつすことで人斬りの快楽を正当化していたわけですが、そもそも厭世感こそが人である証左。そこを隠蔽して身も心も外道になった十臓もまた、「嘘から出た真」に知らぬ間に支配されていたのでしょう。
丈瑠の嘘の上に積み重ねられた絆が真実となった一方、十臓の嘘の上に積み重ねられた外道としての所業もまた、真実たり得ました。しかし、丈瑠は人としての真実を構築したのに対し、十臓は外道としての真実を構築したのです。そして、かつて人であった十臓は、契りを結んだ(つまり絆を紡いだ)妻によって、嘘=土台を崩され、人として死んでいったのです。これは、根底にある嘘が暴かれても、人の絆で繋ぎとめられていた丈瑠の真実とは、対照的だと言えます。
このくだりは、十臓というキャラクターの着地点として見ても、一級の完成度でした。
一方、朔太郎というキャラクターを再登場させ、流ノ介に「侍のなんたるか」を再確認させるのも見事です。朔太郎は流ノ介としか関わりのないキャラクターでしたから、流ノ介と絡ませるにはうってつけです。また、黒子に戻ったことを流ノ介が知らないという点も重要で、この時点で登場するインパクトは非常に強いものがあります。朔太郎が黒子に戻ったきっかけは、かつて流ノ介が与えました。今度は逆に、丈瑠に命を預けた侍としての自分を、流ノ介を再認識させたのです。ここにもまた、絆があったわけです。
逆に、「絆」を完全に否定したのは薄皮太夫。いや、求めたのは血祭ドウコクとの「絆」だったのかも...?
絆という言葉は似つかわしくないですが、とりあえず人の世と外道の間を、三味線=新左が繋いでいたわけで、その三味線を捨てることにより、薄皮太夫は真の外道となりました。
では、見所たっぷりの本編に移ります。キャプも大盤振る舞いで。
丈瑠と十臓の激しい戦いが繰り広げられている様子は、六門船にも何となく伝わっていました。薄皮太夫は、
「ざわついているな...」
と呟き、遠くに視線を投げかけているように見えます(そう見える演技が凄い)。
骨のシタリは、
「ドウコクの水切れもそろそろ戻りかけてるんだよ。ま、まだ決め手に欠けるがね」
と、「ざわつき」の原因を血祭ドウコク復活の予兆として捉えています。
「このざわつき、それだけではないらしいが...」
薄皮太夫は、丈瑠と十臓の決戦、そして血祭ドウコクの復活を感じつつ、恐らく自分自身の中にも「ざわつき」を感じていたものと思われます。
ざわつきの原因の一つである、丈瑠と十臓の決戦は、なおも続いています。
彦馬の「決して嘘ではなかった筈」という言葉が、丈瑠の脳裏に去来するものの、丈瑠は確かな実感を伴う剣の手応えと、受けた傷の痛みに「真」を見出すのでした。
「それでも、嘘は嘘だ。俺には、これが...」
丈瑠は、丈瑠という人物が嘘を土台に形作られたものであると、自ら悲しく深い誤解をしているのです。そんな丈瑠の戦いを止めるべく、茉子、千明、ことはの三人は丈瑠の元に急ぎます。
ここでオープニングへ。
CM明けのサブタイトルには、通常のBGMが乗らないという、イレギュラーな処置。静かな雰囲気が逆に荘厳な雰囲気を作り出しています。
志葉家の屋敷に一人残る流ノ介。
「結局私は、答えも出さずにこのまま...」
流ノ介は「丈瑠を放棄してでも姫を守る」という答えを出した筈。なのに、流ノ介の呟きはその「答え」を否定しています。つまり、流ノ介の答えはほぼ「丈瑠が自分にとっての殿であること」。しかし、侍の建前を重んじる流ノ介にとって、薫の存在もまた重いのです。
ここで一人の黒子が流ノ介の前に座ります。黒子は、
「今行かなければ、後悔の苦しさは今以上の物に」
と言い、その顔を流ノ介に見せるのでした。
小松朔太郎再登場!
第七幕で黒子として顔を覆ったラストシーンと、今回は対になっています。黒子もまた、我を覆いつつも侍達と絆を紡いできた仲間であり、ここでプライバシーを明かすことにより、それを強調していると言えます。さらには、黒子といえど、侍のセオリーだけで動いているのではないという、確たる「意志」を感じさせています。
さて、丈瑠と十臓の斬り合いは、いよいよ力任せに互いの身体に刀を滑らせるという、凄絶なものにシフトしていきます。
「最高だな!これこそ、究極の快楽!外道に生きるものだけが味わえる!」
この局面では、やや十臓が有利になっており、快楽を存分に味わう余裕を見せています。
「外道...のみ...」
丈瑠はここで、自分が斬り合いの中に確かな「実感」を覚え、その実感の中に自分の存在意義を感じていたことを想起したのでしょう。快楽とはまた別物ではありますが、自らを十臓の生き様に重ねた瞬間です。
その悟りに似た心理(ここではまだ、丈瑠はギリギリ「人」です)は丈瑠の剣を研ぎ澄まし、十臓との間合いを一気に詰めます。そして、裏正を弾き飛ばし、上段より十臓を一刀両断!
弾き飛ばされた裏正は、立ち尽くす十臓の足元に突き刺さります。スローモーションで印象を強めていますが、それは勿論、後の「ある仕掛け」の為です。
一方、朔太郎が黒子だと知らなかった流ノ介は、驚きつつも会話を交わしています。
「まさかあなたが...」
「あんたのおかげで、また戦う気になったんだ。侍達や殿と一緒にな」
「でも、その殿は...」
「ああ。で、動くに動けないんだろう。あんたらしいな」
「侍として守るべきは姫です。これは間違ってない!ただ、ただ私は」
「あの殿なら命を預けて一緒に戦える!...あんたが言ったんだ」
侍の影で働き、礼を尽くす黒子達。しかし、ひとたび素顔をみせれば、そこには侍に関わる人生の先輩と後輩の姿が浮かび上がります。朔太郎は、非常にシンプルで、かつ含蓄ある語りにより、流ノ介の心の矛盾を突いていきます。
流ノ介は、舵木折神を釣り上げた際、朔太郎に言った「あの殿なら命を預けて一緒に戦える」という言葉を思い出しました。
更に朔太郎は畳み掛けます。
「あんたが命を預けた殿というのは、志葉家当主という器か?それとも中身か!?...勿論、姫は守らなければならない、当然だ。が、人は犬じゃない。主は自分で決められる」
これは、一度侍に仕える身から離れた、朔太郎ならではの言葉かも知れません。昔の侍は家に厳しく縛られていた為、主を自分で決めることは、よほどのことがない限り難しかったのではないかと思います。が、今は現代。「姫を守る」という侍の形を重んじつつも、侍個人の精神性も尊重する。朔太郎の示す侍像は、「シンケンジャー」のテーマそのものではないでしょうか。
「どうか、侍として、悔いのなきよう」
再び顔を覆い、朔太郎は流ノ介に一礼します。黒子もまた、「主を自分で決めている」ということです。
その様子を物陰から見て、沈鬱な面持ちの薫。
いきなりやって来て、圧倒的な力を見せる薫もまた、姫、侍である以前に、一人の思い悩む少女なのです。
そして、再び丈瑠と十臓の決戦に場面を移します。十臓に確かな一太刀を浴びせた丈瑠は、その場に座り込み、
「やった...」
と、その勝利に安堵します。ところが、倒れこんだ十臓はニヤリと笑い、目を開いて首を起こすのでした。いわば、「まだ死んでない」ということなのですが、このシーンが実に不気味でカッコいい。
「それこそが、快楽!」
「まさか!手応えはあった!」
おもむろに起き上がる十臓。激しい斬り合いの末、勝利を手にした後の安堵感を「快楽」と表現され、丈瑠は戸惑いを隠せません。
「なかなか死ねない身体でな。手でなくば足、でなくば口、剣を持てる限り、この快楽は続く...所詮、人の世の事は全て、命さえも幻。が、この手応えだけは真実!お前も感じてる筈。何が、お前の真実か!」
「真実...俺の...」
十臓は、剣にとり憑かれた男。だから、十臓が見ている「真実」は、剣の魔力が見せているものです。その意味で、十臓が誘う世界は、虚構と言えるかも知れません。しかし、丈瑠はその虚構へと引き込まれていくのです。十臓の言に飲まれそうになった途端、丈瑠は「外道の赤」に染まり始めます。
なかなか空恐ろしい描写です。侍と外道は紙一重。丈瑠は嘘をついているという罪悪感に苛まれつつ、侍と外道の境界を綱渡りして来たのかも知れません。
そこに、
「ダメぇぇぇぇっ!」
という茉子の叫びが。
その声を聴き、丈瑠は寸での処で人に引き戻されます。
「丈瑠!」
「そんな話、聞いたらあかん!」
「お前には、剣だけじゃないだろ!」
必死に丈瑠を外道から救い出そうとする三人ですが、炎に阻まれ、丈瑠に近付けません。
「お前達、どうして!?」
丈瑠は、茉子、千明、ことはがまだ自分の元に現れてくれることに、驚きを禁じえません。
「余所見をするな!まだ、終わってない」
自らの快楽を永劫に継続させるべく、丈瑠を外道に引きずり込もうとする十臓は、地面に突き刺さった裏正を支えにして立ち上がります。一歩、丈瑠に近付こうとする十臓。
と、その時、十臓の妻がその足を掴み、その動きを制止するのでした。
その妻の姿は、幻。しかし、その妻の化身である裏正は、十臓の足に突き立っており、実際に十臓の足を止めていたのでした。
「裏正...ここに来て!...いや、この時を待ってか!裏正ぁぁぁぁぁっ!」
裏正を引き抜こうと絶叫する十臓。素手で刃の部分を握る様子が、とてつもなく怖いです!
十臓の妻は、裏正に身をやつしつつ、ずっと機会をうかがっていたのでした。確かに絆を紡いだ夫・十臓を、無間地獄から救う機会を。裏正となって嘆きつつ、十臓の人斬りに使われてきた妻は、丈瑠の刀に弾き飛ばされた時、丈瑠の根底にある「人」に共鳴することで嘆きから解き放たれ、その愛を以って十臓と心中するのでした。
人の世に帰還した丈瑠も、その裏正の声にならない叫びを確かに聞き取ったのか、
「それは、お前の、真実なんじゃないのか?」
と十臓を諭すように言い放ちます。
「いや、全て幻だ!この、快楽こそぉっ!」
状況を否定したその瞬間、十臓の身体に、丈瑠の太刀筋が浮かび上がります。
「お前の、剣...、骨の、髄まで...」
十臓はこう言い残し、大爆発。それと共に、丈瑠はたちまち炎に包まれます。このまま丈瑠も炎の中に消え行くのか、と思いきや、炎の縁を切り裂いて流ノ介が出現!
この流ノ介、「殿ぉぉっ!」などと声を上げて尻尾を振る家臣の姿はどこにもなく、ただ弱々しく座り込んでいる丈瑠を見据える目を備えており、反則なくらいカッコいいです。
炎の切れ目から突入した茉子達が、素早く丈瑠を抱え、炎に包まれる十臓から離れます。
刹那、絶叫と共に崩れ、塵と化していく十臓...。
その様子をスキマから見ていた骨のシタリは、
「死んだよ...腑破十臓」
と虚しい感想を漏らします。
「そうか...二百年の欲望、満たされたのかどうか」
薄皮太夫は、そう言って三味線を見つめます。骨のシタリに、血祭ドウコクが修復した三味線を、何故弾かないのかと問われる薄皮太夫。骨のシタリは、三味線の音色が血祭ドウコク復活の一助となるのではと考えているようです。
「この、音色か...」
薄皮太夫は、三味線を弾かない理由について、思う所があったようです。
この薄皮太夫が言うように、果たして十臓の二百年の欲望は満たされたのでしょうか。
その答えは明確ではありませんが、恐らく満たされないままだと思います。というより、斬り合う快楽の無間地獄に堕ちていた十臓に、満たされる瞬間など訪れる筈はなかったのです。妻によって無間地獄の輪回から解き放たれたが故に、十臓は人に戻り、二百年の時の流れが一気に十臓の身に押し寄せ、その身を滅ぼしたと考えるのが自然でしょう。ただ、妻と共に、筋殻アクマロが見ようとしていた地獄に落ちた十臓は、安堵したのではないでしょうか。丈瑠の「人としての一太刀」が、十臓の骨の髄まで響きつつ...。
さて、夜が明け、丈瑠を遠巻きに囲む侍達の姿がありました。丈瑠は、不意に立ち上がります。
「殿様...」
声をかけることは。しかし、ことはは「殿様」という、「言ってはいけない言葉」を言ってしまったかのような表情をしています。緊張感のある演出に引き込まれます。
「俺の所為で悪かった。早く帰って...」
と丈瑠。その言葉を遮るかの如く、ことはは堰を切った様に、
「嘘じゃないと思います!ずっと一緒に戦ってきた事も、お屋敷で楽しかったことも全部。ほんまのことやから、そやから...」
と丈瑠に訴えるのでした。
「俺が騙してたこともホントだ」
この丈瑠の言葉に思わず黙り込むことは。さらに、
「ただの嘘じゃない。俺を守る為に、お前達が無駄に死ぬかも知れなかったんだ。そんな嘘の上で何をしたって本当にはならない。早く姫の元へ帰れ」
と、丈瑠は冷徹なまでに自分に対する関わりを否定するのでした。茉子は思わず、
「丈瑠...」
と、やるせなさを伴う呼び掛けを。しかし、丈瑠は聴こえなかったかのように通り過ぎます。しびれを切らした千明は、
「ったく...」
と丈瑠を追いかけ、突如丈瑠の顔面めがけて拳を振るいます。咄嗟にかわす丈瑠。
「避けんなよ馬鹿!」
と千明。今度は丈瑠の頬に千明の拳がヒットします。
茉子は、突破口を開いた千明の行動に、思わず微笑を。
「今ので、嘘はチャラにしてやる。だからもう言うな...何もないなんて言うなよ!何もなかったら、俺達がここに来るわけねぇだろ!」
千明は声を震わせながら、丈瑠にそう訴えました。そして、沈黙を保っていた流ノ介も丈瑠の前に立ちます。
「志葉...丈瑠...。私が命を預けたのはあなただ。それをどう使われようと文句はない!姫を守ると言うなら守る。ただし!...侍として一旦預けた命、責任をとってもらう!この池波流之介、殿と見込んだのはただ一人!これからもずっと!」
ひざまずく流ノ介。しかし、言い回しからは、以前の流ノ介とはポジションを異にしているのが伺えます。丈瑠に対する過剰な丁寧語が特徴だった流ノ介。しかし今は、対等より少しだけ上の立場に丈瑠を置いている感覚になっているのです。
「俺も、同じくってとこ。ただ、前に立っててもらわなきゃ、困んだよ」
と千明。
「うちも、うちも同じくです。それに、源さんや彦馬さんも」
ことはも流ノ介の隣にひざまずきます。不在の源太や彦馬を代弁するあたりも、気が利いています。流ノ介が、
「黒子の皆さんもだ」
と付け加えるあたりも抜群です。
「丈瑠、志葉家の当主じゃなくても、丈瑠自身に積み重なって来たものは、ちゃんとあるよ」
茉子の包み込むような言葉に、丈瑠の凍てついた心は一気に氷解していきます。
「俺に...俺にも...」
仲間との触れ合いを次々と思い出し、丈瑠は殿として流ノ介達の前に現れてから、初めて涙を流します。
幼い頃は、泣き虫だったという丈瑠。影武者という理不尽で重い使命を背負わされ、自分を押し殺してクールに振舞ってきた丈瑠は、殿を名乗ることによって忘れていた涙を、ようやく取り戻した...のかも知れません。
おい、朝っぱらから泣かしてくれるなよ...。困ったもんです。
そして、丈瑠の涙を見届けて安堵したかのように、裏正も昇天します。
一方、志葉家の屋敷では、丈瑠の元に行った家臣達に、歳三が立腹してわめいていました。源太は思わず歳三に突っかかろうとするのですが、物陰で彦馬に止められます。
「姫!これはもはや謀反、謀反でござりますぞ!」
と息巻く歳三の頭を、扇子でピシャリと叩く薫。
「馬鹿を申すな。影とは言え、家臣との絆は結ばれているのだ」
物陰から聞いていた源太と彦馬は、この薫の言葉に思わず目を見合わせます。
「私は自分の使命だけに夢中で、私が出る事で、彼等を苦しめることにまで思い至らなかった」
薫は影武者である丈瑠を、志葉家の延命の為の犠牲にしない為、努力してきたのですが、逆にその努力が裏目に出てしまったわけで、その苦悩の深さはかなりのもの。源太にも、その苦悩はしかと伝わったようです。
しかし、歳三はそんな薫の言に納得出来ません。
「何をおっしゃります!?姫は、血のにじむ努力で封印の文字を習得されたのです。有り難がりこそすれ、苦しむなどと!...これはやはり、力ずくでも連れ戻さねば!」
と、自ら流ノ介達を連れ戻すべく、屋敷を出ようとします。薫は、
「よせ!」
と扇子を投げるのですが、歳三はそれをヒョイと避けてみせます。
「丹波もまだまだ、衰えてはおりませんぞぉ!」
いやぁ、ここまで非常に重い展開だったので、かなりの清涼感があります。ギャグが物語と乖離しておらず、やり過ぎ感もなく爽やかなのがいいですね。
ここで、黒子がハリセンを持って参上。早速手に取った薫は、そのハリセンで歳三の頭をバシッと叩くのでした。
「うん、これはいい」
微笑む薫。ハリセンを渡したのは、朔太郎でした。
分別ある大人の、粋な計らいとは正にこういうことです。
「お姫様もやるねぇ」
と、源太はニヤリ。
いつもギャグ担当にされている感のある源太ですが、こういう江戸っ子的な粋な言動は、かなり大人な感じでカッコいいのです。
その時、突如スキマセンサーに反応があります。血祭ドウコク復活の狼煙か、大ナナシ連中が大挙して現れたのです。
「寿司屋で良ければ、お供するぜ」
と、家臣不在のまま出陣する薫の前に現れる源太。
「お前は侍では...!」
とツッコミを入れる歳三ですが、薫によるハリセンの一撃が炸裂します。
「頼む」
元々、薫は源太を「寿司屋」という器で見ていないということが、ここではっきりと分かります。薫もまた、立派な「姫」なのです。
流ノ介達も、連絡を受けて出陣します。
「急げ。俺はフォローに回る」
丈瑠は、表立って活躍すべきではないという自分のポジションをわきまえつつ、戦況が有利に働くよう配慮して出陣します。クゥッ!カッコ良過ぎる!
薫と源太という、ちょっと妙なコンビが、ダイカイシンケンオーで大ナナシを迎撃します。
巨大戦と共に、等身大戦も同時展開。街で人々を襲うナナシ連中を、懸け付けた流ノ介達が迎撃します。
同一の戦場に二人のシンケンレッドを存在させないという不文律を守っているのか、丈瑠は変身せずに参戦します。
こういうシーンに突然素面アクションが入ってくると、非常に燃えますね。
ナナシ連中と共に、薄皮太夫も出現します。薄皮太夫は、様々な思いを込めつつ、三味線を弾き始めます。
「わちきはずっと目をそらしていたのだ。何があったか、何をしたか。そして、わちきが何者なのか...」
薄皮太夫の胸中に去来するのは、血祭ドウコクや十臓が繰り返してきた「外道に堕ちる」という言葉。
「ドウコク、お前が最初から言っていたとおり、わちきは...」
突如、三味線を弾くのを止める薄皮太夫。そこに、茉子が登場。薄皮太夫との対面を果たします。
「ここで何を?」
「外道であれば知れた事。この世を苦しみ嘆きで満たす」
「だとしたら、私はあなたを斬る!」
「望むところ。...少しは知った者の方がいい」
「...?」
「少しは知った者」とは、薄皮太夫の過去である薄雪の悲劇を、茉子がそれとなく知ってしまったことを指します。茉子は薄皮太夫の発言に疑問を抱きつつも、それを払拭して激しい鍔迫り合いを展開します。
互いの牽制の後、隙を突いて、茉子が上段から一気に斬りかかります。と、その時、フッと気を抜く薄皮太夫。違和感を感じる茉子でしたが、躊躇なくシンケンマルを振り下ろします。
薄皮太夫は、三味線と共に斬られるに任せ...。
「あなた、まさか?」
「いつか、わちきがこの世の価値を手放したと言ったな。ようやく人であった過去を、手放せる...」
三味線を手放す薄皮太夫。
十臓が外道から解き放たれたのとは逆に、薄皮太夫は人としての執着を体現していた三味線を捨てることで、完全なる外道になったのです。
次の瞬間、刀傷の入った三味線から、おびただしい新左の嘆きが噴出!
その嘆きを受け、三途の川が突如増水し、遂に血祭ドウコクが復活します。
「戻ったぜ、太夫」
次回へつづく!
春分の日
シンケンジャー、実はずっとみていた。
子供なんて、暮れからもう全然着いて来ない。
ただ、自分は、シンケンを観ながら、確実に成長している殿にも全てを預けられずに、ただ、今のままでいたいが為に、「オレは・・・」と、やはり迷っていた。
もちろん、殿の全てが解るその時まで。
そしてやはり、殿には秘密があった。嘘があった。
嘘をつきながら日々暮らすのは、本当に、本当に、苦しい。
いや、“たかがスーパー戦隊の嘘”、その苦しさなんて、自分(もしかしたら、我々か?)の嘘に比べれば、その守らなければいけないものの重さも大した事など・・・、
でもそのとき、殿の気持ちが解った。
解りたかったのだ。
オレは、殿(=父親)になって良かったのだと確信した。
誰にでも、慕う“殿”があり、想う“家臣”がいる。
それがわかった。
オレは、“影武者”ではないと思ったのだ。
誰に何と言われようと、それだけは“嘘”ではない。