第四十六幕「激突大勝負」

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 サブタイトルからすると、丈瑠 VS 十臓だけでなく、他の面々にもそういった局面が訪れるように感じられますが、今回は丈瑠と十臓の対決がメインであり、そこに彦馬の思いを絡めて描いています。

 むしろ、この彦馬こそメインだと思わせる部分が多々あり、幼い丈瑠を預かってから、薫が現れるまでの彦馬の決意や覚悟、事の推移といったことが、一通り判明することとなります。そこには、丈瑠と同様に「嘘をついていた」事に対する葛藤と共に、「嘘から出た真」とも言うべき丈瑠の殿としての成長に、喜びを感じる様子が盛り込まれ、複雑な感情を鮮やかに浮き彫りにして見せます。


 勿論、動的な面では丈瑠と十臓の対決が大充実で描かれます。これまで以上に斬り合いは激しさを増し、不意打ち的な体術も織り交ぜられて、戦いに夢中になる二人の危険な匂いが漂ってくるかのようです。最終的には、馬に騎乗してのアクションまで登場。戦隊シリーズで馬のアクションが初登場したのは、「バトルフィーバーJ」だったと記憶してますが、「仮面ライダー」でも乗馬アクションの披露がありましたから、割と歴史のあるアクション手法です。最近では、世界観との兼ね合いもあって珍しくなりましたが。


 流ノ介達家臣は、侍としての道義や使命感から、薫と共に戦うことになります。凄いのは、薫に一切不満を抱く要素がないこと。「不満」の部分は完全に歳三が担っており、薫を無視して丈瑠の元に走ることが出来ない流ノ介達の葛藤は、感動を呼びます。

 侍とは一線を画している源太の行動にも注目。侍としての道義や使命感に疎い源太は、薫と共に戦っている流ノ介達の行動が理解出来ません。源太にとっては、丈瑠こそが侍のシンボルであり、この辺りが流ノ介達と決定的にズレているわけです。勿論、流ノ介達の感覚と重なっている部分も多々ありますが、重なっているからこその葛藤もまた、見応えがあります。


 今回のシリーズにおけるポジションとしては、はっきり言えば、最終決戦を延期する為の挿話なのですが、精神面の細かい要素や、伏線の回収等が丁寧に行われている為、非常に見応えがあります。

 その辺りを、通常の倍のキャプ画を交えて(笑)、確認してみようと思います。

 まずは前回ラストの反復から。そして、その直後が描かれます。


「これだ、存在するのはただ剣のみ。するべきことは、ただ戦いのみ。後は一切の無。お前ならここまで来ると思ってた」

十臓

丈瑠

 こういったイマジネーションに溢れたシーン作りが割と多いのも、今回の特徴です。このあたりは、かなりアニメ的な画面作りが意識されており、ともすれば平坦になりやすい「決闘」に、豊潤な印象を与えています。

 十臓はモノローグにて、


「裏正、喜べ!これから味わうものこそ最高の...」


と、この上ない喜びに浸っており、今回は狂気とも呼べそうな笑みを終始浮かべて、丈瑠と対峙しています。

 そして遂に、丈瑠と十臓の一騎打ちが、再び開始されるのです。

丈瑠 VS 十臓

 このアクション、冒頭にも書きましたが、剣だけではなく、ダーティな殴り合いも含めた決闘となっており、正に「戦うことのみ」を意識した演出です。吹き替えだけでなく、本人によるアクションもたっぷりあります。

 更に、変身して激闘は継続します。

腑破十臓 VS シンケンレッド

 勿論、変身してからもファイトスタイルは同じ。より激しさを増していきます。アクションに驚きが盛り込まれているので、見る者を全く飽きさせません。


 その頃、源太は必死に丈瑠を探していました。源太の思いを敏感に察知するダイゴヨウは、かなり張り切りモードになっています。

源太とダイゴヨウ

 この直後、張り切り過ぎたダイゴヨウに、源太は派手に引きずられて大騒ぎになってしまいます。前半においては、源太はまだコメディ要員として機能しています。ダイゴヨウに振り回されるシーンが、全て貼り絵的合成で処理されているので、余計にスラップスティックに見えます。


 さて、いよいよ彦馬も、


「殿が行かれるとしたら、あそこしか...」


と丈瑠を探しに行こうとします。勿論、あそことは「テンゲン寺」です。そこに、流ノ介達も帰還。一緒に丈瑠を探しに行こうとします。

流ノ介、茉子、千明、ことは、彦馬

 しかし、


「すまん!外道衆を倒す為にも、お前達を欺き通せと殿を叱咤してきたのはワシだ。詫びて済むことではない。しかし、ここは殿が言うように...」


と、あくまで侍の本分を守って、薫と共に戦うよう告げるのでした。また、丈瑠だけでなく、彦馬も流ノ介達に嘘をついていた、いや、彦馬こそが丈瑠に嘘をつき通すよう言い続けたのだという、懺悔の気持ちも吐露しました。

彦馬

 そこに、歳三がやって来ます。


「日下部!いつまで殿殿と言っておる。今侍達が守り、共に戦うべきは、志葉薫様のみ!」


 歳三の言う事は、一応納得出来る内容なのですが、如何せん、丈瑠の存在をあっさり否定してしまうのが、一同の怒りを買う原因なのです。

彦馬、歳三

「確かに、侍達は姫のお傍にあるべき。しかし、この日下部彦馬、殿をお預かりした時より17年、まことの殿と心に決めて、お育てしお仕えして参りました。そう決めなければ、私も殿も...」


 彦馬は、こう言って屋敷を出て行きます。このセリフにより、具体的な17年という年数が語られ、いよいよ「シンケンジャー」の暦も鮮明になってきました。こういうのって、クライマックスに近付いている感じがするんですよね。また、彦馬の「嘘」は、深い決意によって支えられていたことも分かります。状況的に、もう「殿」と呼ぶ必要がなくなったにも関わらず、なおも彦馬が丈瑠を「殿」と呼び続けるのは、既に彦馬の中で「丈瑠=殿」の図式が、嘘ではなくなっているからなのです。

 しかし、そんな事情が全く分からない歳三は、


「まことの殿とは、何事!」


と声を荒げるのでした。そこに突如、扇子が飛んできて歳三の頭に炸裂。扇子が飛んで来るシーンは、「八百八町夢日記」を彷彿とさせ(?)、往年の時代劇ファンには嬉しいものとなっています(って、分かる人居るのか?)。

 扇子を投げたのは勿論薫です。


「丹波、影が居てくれたからこそ、私は無事で居られ、封印の文字を習得する時間が稼げた...ということを忘れるな」


 厳しい口調で歳三を叱るのですが、


「しかし、影も役目を終え、ホッとしているのでは。偽りの暮らしも楽ではございますまい。何もかも全部、嘘ですからなぁ」


と、更に調子付いて行きます。このお調子者な感じが、歳三の軽率さを高め、薫を至極真っ当なお姫様として際立たせているんですね。実に巧いと思います。ことはは、この歳三の言い草に、


「全部、嘘...」


と沈痛な面持ちに。

ことは

 ことはの様子を敏感に察知したか、薫はすぐさま、


「丹波、お前はしばらく口を閉じろ!」


と命じます。弱冠14歳(多分、丈瑠の時間経過を鑑みるに、設定は17歳くらいだと思われます)にしてこの凛々しい感じ、素晴らしいキャスティングですよ。

薫

 この薫の命令により、黒子達が歳三の口に...。

歳三

 こんなものにまで志葉家の家紋が入っているのが、実に可笑しいです。テンポ、ギャグのバランス、シーンに則した内容、どれをとっても上質だと思います。


 一方、丈瑠と十臓の決闘は継続中。既に「いつ果てるともない」といった雰囲気が漂っており、この決闘が全く建設的でないことが、ビシビシと伝わってくるのが凄い。

腑破十臓 VS シンケンレッド

 しかし、丈瑠はこの決戦に心なしか満足しているのでした。それは、


「確かに、これだけは本物だ。一切嘘が無い」


という呟きに現れています。17年間、虚偽の身分を装って苦闘してきた丈瑠にとって、数百年の間鍔迫り合いに飢えてきた十臓との対決は、何もかもを忘却させる程の魅惑があったのかも知れません。


 さてその頃、六門船では、今回のアヤカシであるオボロジメが、骨のシタリにパワーを貰っていました。

オボロジメと骨のシタリ

「オボロジメ、その力で何でもいいから、人間共を苦しめてもらいたいのさ」


と骨のシタリ。既に策を練るとか、そういったレベルではなく、「何でもいいから」という力技に訴えているあたり、かなり切羽詰っている様子が伺えます。知性派の骨のシタリが、このような行動に出たのには、理由があります。それは薄皮太夫の、


「結局、ドウコクを戻すには、人の苦しみか」


という言葉で説明されますが、真意はそのさらに奥にありました。


「私にゃそれしか思いつかないよ。本物の志葉の当主が現れたんだ。今度は私だって無事で済むかどうか...」


 がっくりと力が抜けてしまいながらも、声を絞り出すように、骨のシタリは語ります。


「私は生きていたいんだよ。その為なら、命を半分ぐらいなくすのも、しょうがないさ!」


 外道衆の生への希求。これは衝撃でした。かつて、ここまで「命」に執着した敵が居たでしょうか。「サンバルカン」終盤のヘドリアン女王は、命への執着から疑心暗鬼になるという、とても子供向けとは思えないシチュエーションで強い印象を残しましたが、この骨のシタリも、行き着く先こそ違えど、強い印象を残しそうです。


 その頃、流ノ介達は丈瑠を探しに行くことも叶わず、屋敷に待機していました。千明は、


「ったく、丈瑠もジイさんも、この世を守る為って言えば、俺達が動けないと思って!」


と不満と葛藤の程を露にします。同じ葛藤を抱えつつも、流ノ介は、


「実際その通りだ!我々は、その一点だけはどうあっても揺るがせるわけには行かない」


とより侍としての意識を感じさせています。しかし、実のところ流ノ介は、千明以上の葛藤を抱えているのです。

流ノ介

「でも、このままでいいのかよ!?本物は姫だからって、姫を守ってればいいのか?」

「侍としてはそれが...そう出来ればどんなに!」


 いつもの流ノ介と千明の口論とは多少趣が異なり、同じ葛藤を抱えている者同士の虚しい心情の吐露といった感じになっています。茉子は、葛藤とは違う側面から丈瑠への思いを語ります。


「丈瑠はさ、ずっとこうやって抱えてきたんだよね。私達に嘘ついてるから、わざと距離を置こうとして...。もっと早く気付けてたら...」


 洞察力に優れるキャラクターとして、丁寧に描写されて来た茉子。この茉子が気付けなかったからこそ、丈瑠の覚悟の程が浮き彫りになるのです。


「言ってくれりゃあ良かったんだよ」


と千明。実際は、言ってしまうと現在のような関係性を築けなかったでしょう。特に千明は影武者と知りつつ付き合うことに、納得出来なかったに違いありません。この千明の発言は、殿が丈瑠以外有り得ないと認めていることの裏返しなのです。


「殿様、しんどかったやろうな...うちが殿様殿様って呼ぶたんびに、辛い思いしたはったんかな...」


 ことはの場合、「あんまり俺を絶対だと思うな」と丈瑠に釘を刺された事がありました。これも、今思えば、丈瑠の隠れた苦悩が滲み出たものだったようですが、それでも、ことはにとって殿様は殿様。丈瑠が殿であることにかわりはないのです。例え影武者だったとしても、ことはが憧れる殿様は丈瑠なんですから。


 さて、彦馬はテンゲン寺で丈瑠の包帯を見つけます。十臓との対決前に、決意の表れとして外した、頭の包帯です。彦馬は、近くから響く決闘の音を頼りに、丈瑠の元に辿り着きます。


「殿!おやめ下さい!このような戦い、まるで外道衆のような!」


 そう、侍と外道衆は紙一重。以前こんなテーマを扱ったことがありましたが、丈瑠は正に、紙一重の上を歩いている状態なのです。


「これ以上はさせん!」


と彦馬、丈瑠の前に仁王立ち!

彦馬とシンケンレッド

 当然十臓は、彦馬の行動に怯むことはありません。容赦なく斬りかかってきます。彦馬は、丈瑠を庇うことをしながら、実は丈瑠を止めたかったのでしょう。丈瑠は、辛うじて十臓の太刀を受け止めます。まだ、外道衆の側へ堕ちる程、全てを失っていたわけではありませんでした。説明台詞が何もなくとも、丈瑠の内面が分かるシーン作り、いいですね。

シンケンレッドと彦馬

 十臓は容赦なく攻撃を続け、とうとう丈瑠は、彦馬もろとも崖下へ転落してしまいます。この時、必死に彦馬を庇っている丈瑠(シンケンレッド)がいい。思わず、「ルパン三世・カリオストロの城」のラストあたりを思い出してしまいました。


 一方、家臣達の丈瑠談義は続いており、ことはは半ば捨て鉢に、


「嘘だったら、全部嘘なんかな...今までの事、殿様と一緒に居た間の事、全部...」


と呟きます。

流ノ介、茉子、ことは、千明

 いたたまれなくなった茉子が、そっとことはの手を包むあたりが、非常に情感たっぷりです。細切れにシーンを切り取っても、凄く良く出来てるんです。今回は。


「嘘かも知れないな...。そう思えば、迷う事はない」


と搾り出すように賛同する(本心ではない)流ノ介。千明がそんな流ノ介を見て心配そうにしているのも素晴らしいです。皆、キャラ立ちまくってます...。静かながら、鬼気迫る感じですね。


 その頃、オボロジメが街に出てきて、人々を襲っていました。すぐには殺さず、苦しむ時間を長くするという、外道衆の中でも一際外道なヤツで、その上骨のシタリにパワーをもらっている割には、印象が薄い。やはりバトルシーンのメインは丈瑠と十臓の対決であり、割を食ってしまった感があります。

オボロジメ

 居合わせた源太が、オボロジメ"を迎撃します。この時、ダイゴヨウに引き摺られた影響で、街のあちこちにあるものを纏ってしまっており、わざわざ変身シーンを新規撮りしてます。ここまでするか!といった感じでした。

一貫献上!


 一方で、スキマセンサーにも反応があります。薫が奥の部屋から出てきて、


「皆思うところはあるだろうが、私と一緒に戦って欲しい。頼む」


と流ノ介達に告げます。

薫

 若い姫ながら、思慮、配慮共に卓抜しています。後に言及されますが、だからこそ流ノ介達家臣は苦悩するのです。


 骨のシタリのパワーを受けたオボロジメは強力無比で、源太は大苦戦を強いられ、変身解除にまで追い込まれます。サカナマルの高速な太刀筋でも、オボロジメの自在な触手攻撃を防御出来ません。


 そこに、薫を筆頭とするシンケンジャーが登場。

一筆奏上!

 姫版の変身、シンケンレッド名乗りも、二回目とあって堂に入った印象です。


 戦闘開始直後、千明に助け起こされる源太。

シンケングリーンと源太

 源太は、薫と共に外道衆を迎え撃つ流ノ介達を見遣り、


「お前ら...本当に、あのお姫様と一緒に...」


と千明に問います。丈瑠のあまりの空虚振りを目の当たりにした源太は、流ノ介達に「お前らの殿はタケちゃんじゃなかったのかよ」と言いたいのでしょう。それをはっきり言わないのは、千明に配慮してのことかも。千明は、


「もっと憎たらしいお姫様なら、簡単だったのにな」


と源太に応じます。千明達にとって、殿なる存在は丈瑠だけ。しかし、薫自身も丈瑠の事を考え、血のにじむような努力をしてきた人間であるからして、非難する要素は何もなく、それだけに義務感より使命感が上回ってしまい、葛藤もより深いものになっているのです。極端に言えば、現在の丈瑠や薫に苦悩はありません。それぞれの生き方を体現しているだけです。流ノ介、茉子、千明、ことはは、そんな二人に振り回されているのだと言っても、過言ではないでしょう。


 その頃、崖下に転落した丈瑠と彦馬は、とりあえず無事でした。足を痛めた彦馬が動けなくなってしまった為、丈瑠は黒子に救助を求めます。彦馬の傍に座った丈瑠。その手は、彦馬の手によってしっかりと握られます。ここからは涙々のシーン続出なので、涙腺の緩い方にとっては試練になりますよ。伊吹さん渾身の重厚なお芝居をとくと堪能しましょう。


「殿、お許しを...」


 悔恨の念を搾り出すように告げる彦馬。

彦馬

 突然の彦馬の詫びに、驚く丈瑠。

丈瑠


 そんな丈瑠を探す十臓。


「どこだ。この程度、まだほんの序の口!まだ終わらん!どこだ...!」


 その口元は軽く笑みを浮かべているようでもあり、正に斬り合いに取り付かれた悪鬼の様相。

十臓


 シーンは頻繁に切り替わり、一つ一つの局面が間延びしないようになっています。ここでは、シーンの繋がりを整理せず、わざとそのままの空気を再現してみます。


 スーパーシンケンレッドとなってオボロジメを怯ませる薫。

スーパーシンケンレッド

 流ノ介達四人は、「シンケンマル・四重の太刀」でオボロジメを牽制します。すぐさま薫は、スーパーモウギュウバズーカで「外道覆滅」を放ち、一の目を撃破します。

シンケンジャー

 二の目は、テンクウシンケンオーで迎撃。

 源太は、薫の指示に的確に動く流ノ介達を見て、歯噛みします。やはり、何と言われようと、志葉家そのものに対してシンパシィを抱いていない源太は、納得出来ないのです。丈瑠の「ビックリするほど何も無いな...」の呟きを思い出し、源太の丈瑠に対する思いと、流ノ介達に対する歯痒さは募るばかりです。


 巨大戦は、オープンセットが大迫力。

オボロジメ VS テンクウシンケンオー

 「シンケンジャー」ではたまにオープンセットによる巨大戦が見られましたが、やはり空気感や巨大間、量感といった要素がグッと上昇しますね。日本の気候事情だと、常にオープンはなかなか難しくはあるし、いつもオープンだとピーカン一辺倒になって変化が出ないとか、色々オープンにも難しい面があるようです。私は好きですけどね。「ウルトラマンG」の画面作りとか。

 で、「天空唐竹割り」が炸裂して、オボロジメの二の目は撃破されます。


 ところが、ここからが骨のシタリパワーの真骨頂。何と、「三の目」が現れるのです。

オボロジメ VS テンクウシンケンオー

 オボロジメ自体に寄生していた骨のシタリのパワーの塊、そんな印象ですが、フルCGとは言え、なかなかのライブ感があります。仕事が丁寧ですねぇ。


「私の命を半分やったんだからね...そう簡単にやられやしないよ」


と骨のシタリ。薄皮太夫は、


「...無茶をする...!」


と呟きます。そう、薄皮太夫の三味線の為に無茶をした血祭ドウコク。生きる為に命を削る骨のシタリ。薄皮太夫の周囲は、執着故に命を削る者ばかり。薄皮太夫の心中は、こうして揺さ振られて行くのです。

 強力無比な三の目に対抗すべく、シンケンジャーはサムライハオーを出します。


 ここで、再び丈瑠と彦馬のシーンへ。


「ジイは、殿が幼い頃より、ただひたすら、志葉家十八代目を背負うことのみを厳しく...当主としてお育てし、血のにじむ努力で、火のモヂカラも覚えて頂きました。全ては、あの日の約束を守る為に...」


 彦馬の脳裏に、幼い丈瑠が泣きながらモヂカラの練習をしていた姿が...。

幼い丈瑠

 そして、「あの日の約束」の思い出。


「日下部殿!この子はまだこんなに小さいが、きっと!」

幼い丈瑠と丈瑠の父

「安心してくれ。今日より、命を賭けて支え続ける。落ちぬように、我が殿として!」


 丈瑠が影武者になるということは、丈瑠を手放すと同時に、もう会えなくなるということでもあるでしょう。正に、断腸の思いです。私自身も男の子二人の父親ですが、それだけに余計に心に響くものがあります。なお、丈瑠の父が「日下部殿」と呼んでいることから、一応丈瑠の家系は、侍ではないが、志葉家に関係のある一族だったと思われます。


 そして、何らかの理由により、丈瑠の父は、丈瑠に獅子折神を手渡して亡くなりました。積極的に救命する事も叶わず、ただ陰より父の死を見つめなければならなかった幼い丈瑠と彦馬の心情は、いかばかりだったか...。

彦馬と幼い丈瑠

丈瑠の父

 ちなみに、この丈瑠の父が、何故襲撃を受けたのかは、まだ明かされていません。


「殿は、当主としては完璧に成長された!しかしそれが、このような局面で仇となるとは...!」

「ジイ...」


 薫さえ登場しなければ、丈瑠は志葉家当主として人生を全うしたかも知れない。彦馬はそう思っているのでしょう。しかし、薫が現れなければ、丈瑠は虚偽の世界に生き続けなければならなかったとも言えます。彦馬もまた、どちらが望ましいとも言い切れない状況において葛藤し、丈瑠にただ謝るしかないのです。

 そこに、十臓が辿り着きます。


「来い!お前がするべき事は、戦いのみ。あるのは、剣のみだ!」

十臓

「なりません!殿には、それだけではない筈!」

彦馬と丈瑠

 頭上ではオボロジメとサムライハオーが戦っています。ここで見事に場面が繋がる、この演出のキレが抜群です。


 巨大戦は、「モヂカラ大弾円」で三の目撃破となり、結構あっさり片付いてしまいます。勿論これは、残りの尺で丈瑠と十臓の対決を存分に描き出す為です。


 流ノ介達が屋敷に戻ってくると、源太が収容され、介抱されていました。源太は突如、流ノ介にすがりつき、


「なぁ、お前ら、頼む!タケちゃんが、何もない...何もないって言うんだよ。そんなことねぇよな!」

源太と流ノ介

 源太の切実な訴えに呆然とする一同。そこに、丈瑠の危難を叫びつつ、彦馬も帰って来ます。


 一方、丈瑠は十臓との戦いを再開。今度は騎馬戦です。モヂカラによって馬を出せる丈瑠はいいとして、十臓は...というツッコミはなしの方向で。


 千明は、率先して丈瑠の元へ行こうとします。それに続く一同でしたが、流ノ介だけ留まっています。


「私は、侍として!」

流ノ介、源太

 拳に力を込め、必死に行きたい気持ちを抑える流ノ介。茉子がそっと流ノ介の肩に手を載せるあたり、これまた演出のキレが抜群!もう、微塵も隙がありません。

流ノ介と茉子

 茉子、千明、ことははすぐさま屋敷を飛び出して行きます。ここからは、決闘シーンに彦馬のセリフが被っていきます。


「殿、ジイはずっと、嬉しく思っておりましたぞ!偽りの殿と家臣ではあっても、流ノ介達と心を通じ合っていく様子が。それは嘘だけでは無い筈。嘘だけでは!」


 そう、嘘から出た真は、確実に丈瑠と仲間たちの絆を形成していました。ベースが偽りであっても、そのベースが破壊されたとしても、その絆はしっかりと形として残っているのです。

 それでも丈瑠は十臓との戦いに...。

十臓 VS 丈瑠

 丈瑠、十臓共に変身して騎馬戦は続行。

一筆奏上!

 流ノ介は一人、


「殿ぉぉぉぉっ!」


と絶叫。


 なおも続く、激突大勝負!

シンケンレッド VS 腑破十臓

 獅子と死神の激突やいかに!?

シンケンレッド VS 腑破十臓