第四十五幕「影武者」

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

 志葉家の殿の存在が、あまりにも侍達の間で周知されていなかったこと。

 「嘘つき」と指摘された際の動揺振りが、異様だったこと。

 十臓に「いびつさ」を指摘されたこと。

 命を預け、預けられる関係に、なかなか踏み込むことが出来なかったこと。

 テンゲン寺で、志葉家の墓だとされる場所で複雑な表情をしていたこと。

 志葉家十八代目当主として、全てを飲み込む覚悟を諭されたこと。

 丈瑠の父が、あくまで「丈瑠の父」であり、「先代シンケンレッド」とクレジットされていなかったこと。

 そして、血祭ドウコクを封印する為の文字を、いつまで経っても習得しようとしなかったこと。


 ああ、何と言う伏線。このどんでん返し(スタッフの皆さんの間では「がんどう返し」)は、周到に用意されたものだったわけです。見事にやられました。

 私はサラリと見てしまっていたのか、これらの伏線を「引っ掛かり」だと感じることなく、丈瑠が抱える、侍の時代性と現代性に横たわるギャップ故の苦悩だと思っていました。特に「嘘つき」なんかはそうです。制作側としては、深淵で影武者であることの苦悩を踏まえつつ、前述の現代性とのギャップにミスリードすることにより、伏線とどんでん返しの整合性を保つと共に、より深い驚きを提供する狙いがあったのではないでしょうか。私は見事にやられたクチです。

 中には賢明な方もおられるようで、「嘘つき」あたりから、はたまた冒頭からこの展開を予想していた方も。私なんか、深読みだと笑い飛ばしていたようなヤツですから、ここに来て感服しきりです。


 丈瑠をはじめとするレギュラー陣の表情がとにかく素晴らしい今回。勿論、薫姫も素晴らしいですよ。

 それでは、本編の驚きをプレイバック。

 前回からの続き。傷ついた丈瑠が屋敷に搬送されて来ます。心配そうに駆け寄る彦馬が印象的で、この後の展開を見ると、本当に丈瑠を殿と見做して生きる覚悟を決めていたのだと分かります。

彦馬と丈瑠

 直後、流ノ介達も帰還。早速彦馬に「姫」のことを問い質します。次々に疑問を口にする彼等の中でも、ことはの、


「彦馬さん、殿様は、殿様ですよね」


という言葉が強い印象を与えます。このシンプルで核心を突いた質問に、思わず黙ってしまう彦馬。そこに茉子が、さらに切り込んで来ます。


「丈瑠は、あの女の子の影武者ですか...?」

茉子

 これを茉子に言わせるところが勘所。シリーズ内で一貫して「気付き」を担当し、ストーリーを核心に至らせるスピードを上げてくれます。この質問にも彦馬は沈黙。あからさまに動揺する流ノ介達が、何故か気の毒に映ります。


「とにかく落ち着け。お前達の動揺は分かる。だがわしも、急なことでどう説明して良いのか...」


 彦馬はこう言い聞かせて一旦話を切ります。彦馬自身、突然の姫登場に動揺していた上、丈瑠の身体の心配が重なり、気持ちの整理がつかない状態なのだと想像出来ます。このセリフ、自分自身に言い聞かせているようで、さすが伊吹さんといった処でしょう。

 そこへ、歳三と共に薫が現れます。

薫

 薫お付の黒子が、座布団をわざわざ取り替えるあたり芸が細かく、また丈瑠との格の違いを無理なく印象付けます。ただし、ある程度ユーモラスな視点が盛り込まれていて、そのあたりが緩衝材になっているようです。

 ここで、唖然としていてなかなか座らない流ノ介達を怒鳴りつける歳三。すかさず薫が、


「丹波。声が大きい」


とピシャリ。このテンポ感が小気味良いです。このやり取りは数回繰り返されますが、これによって薫と歳三の関係を浮き彫りにし、歳三に「憎まれ役」を担当させて薫の存在を「敵対者」に置かない配慮が為されています。

 ここで彦馬は、


「お前達、とにかく座れ」


と一同を諭し、落ち着いて話を聞く雰囲気を作り出します。さすがです。

千明、源太、ことは、流ノ介、茉子、彦馬


 一方丈瑠は、父と共に飛ばした紙飛行機の事を思い出していました。この丈瑠の父については、今回を経ても未だに解明されていない事項があります。これについては後述。


 ここでオープニングに突入。何と、オープニングの丈瑠のクレジットに「シンケンレッド」の文字が無いのです!

志葉丈瑠 松坂桃李

 源太も「シンケンゴールド」のクレジットはなく、「梅盛源太」のみ。徹底して薫を頂点とする「侍の家系だけのシンケンジャー」が作り上げられています。


 さて、CM明けからは先代シンケンジャーの回想です。先代が最後に血祭ドウコクと決戦を挑んだのは、薫が誕生する前ですから、少なくとも15年くらいは前の話になります。


 先代シンケンジャーは、血祭ドウコクとの長い戦いの中疲弊しており、外道衆は志葉家の一族を執拗に狙っていました。やがて防戦に徹するようになって行くと共に、志葉家の弱体化は激しくなり、もはや風前の灯火という処まで追い詰められていました。

 先代シンケンレッドは松風雅也さん。

先代シンケンレッド

 戦隊ファンならば、「メガレンジャー」のメガブルー・並木瞬役として記憶に残るでしょう。また、戦隊においては「ゴーオンジャー」等に声優としても出演なさっています。初代といい先代といい、過去の戦隊でブルーを担当していらしたのが面白いところですね。さぁここで要注意。津田寛治さんが先代シンケンレッドであることは完全に否定されました。これまで、「先代シンケンレッド」と「丈瑠の父」の回想シーンがまるっきり繋がらなくて疑問に思った方々も多いことでしょう。これが、その答えでした。


 先代シンケンレッドは、封印の文字を会得するまで隠れていた方が良いとまで提案されます。しかし、先代シンケンレッドは戦い抜き、望みを次の世代に託すことを決意していました。つまり、自分が封印の文字を会得するには、あまりにも状況が切羽詰っている為、ここで自らを犠牲とし、次代までの時間稼ぎとすることを覚悟したのです。先代シンケンレッドのみならず、当時の家臣達も断腸の思いだったのではないでしょうか。重いですね。

 更に、影武者を立てることでより多くの時間を稼ぐ事も検討され、かねてより下準備がされて来たようです。その準備は、どうも彦馬が担当していたようであり、結果、丈瑠に仕えるという形でその任務を遂行していたようです。

 その後、先代シンケンレッドは命と引き換えに不完全ながらも封印の文字を使い、血祭ドウコクを撃退することで、我が子を身籠る妻を秘密裏に逃がしました。そして、外道衆の目を欺くべく、侍の家系ではないがモヂカラの才能に優れる者、つまり丈瑠を影武者に選抜したのです。先代シンケンレッドの子が姫だったのは、目眩ましにかえって好都合でした。姫は人目を避け、人知れず暮らしてきたのです。

 この回想シーンでは、他の先代シンケンジャー達も次々と討ち取られていますが、これまではっきりとこの戦いに参加した事が判明しているのは、先代シンケンピンク=白石響子のみ。流ノ介の父・池波流三郎や、千明の父・谷蔵人が先代だったかどうかは定かではありません。


 いきさつが説明されている最中、薫に仕える黒子が、丈瑠の元からインロウマル等を持ち去りました。普通に見れば、丈瑠達が努力して得たこれらのアイテムを、薫が「座りしままに食う」のは納得行かないものです。しかし、丈瑠は元より自らの役割を自覚していたので、逆にホッとしていたのではないでしょうか。それは、後の丈瑠の空虚振りを見ても分かります。


 一方六門船では、骨のシタリがこぼしていました。


「やられたよ。まさか目の前に居るシンケンレッドが偽物だったなんてねぇ。いつまで経っても封印の文字を使わない理由がやっと分かったよ」


 薄皮太夫も、


「とんだ茶番だったな。ドウコクが知ったら、それだけで三途の川が溢れ返るかも知れん」


とそれに応えていました。

骨のシタリ、薄皮太夫

 骨のシタリにしてみれば、「封印の文字を使う前に」という言葉が何度か彼の口から出ているように、封印の文字を恐れていましたから、ちょっと気が抜けてしまったのではないでしょうか。


 一方十臓も、


「なるほど。ヤツのいびつさの理由はそこか。...戦えればどうでもいいがな」


と自らの感じ方に対する解答を見出していました。

十臓

 殿という立場、封印の文字の使い手という切り札的な立場でありつつ、自ら命を投げ打って来るいびつさ。いや、もっと言えば侍の頂点にあらざる強さへの希求の異様さから来るいびつさ。十臓は丈瑠に、自らの在り方と重なる部分を見ていたのでしょうか。


 シーンは戻って志葉家へ。

 インロウマル等を真のシンケンレッドとして受け継ぐよう薫に進言する歳三の姿がありました。しかし、そこで彦馬が異を唱えます。


「お待ちを。影武者を立てたのは、封印の文字の件は勿論、シンケンジャーの柱である志葉家の、正に最後の一人を隠し、十九代二十代と、次への柱が太く育つのを待つ為だった筈」


 これに対し歳三は、


「その通り!」


と全面肯定します。


「では何故、今姫がお出ましに...。この一策に命を懸け、血のにじむ決意をしたのは、先代殿だけではございませぬぞ!」


 彦馬の口調は強く、丈瑠や一緒に戦ってきた家臣の思いを大事にしている様子が手に取るように分かります。そして彦馬が最も気にかけたのは、丈瑠の父に対してでした。


「忘れるな!今日からお前がシンケンレッドだ!決して逃げるな!外道衆から、この世を守れ!」

丈瑠の父と幼い丈瑠

 丈瑠の父は死に瀕した際、影武者に選ばれた丈瑠に獅子折神を託しました。影武者に選抜されてからこの時まで、獅子折神を託さなかった丈瑠の父の思いは、いかばかりだったか...。


「落ちずに飛び続けろ」


と丈瑠を励まし続けた父でしたが、内心は、影武者という立場を背負わされた息子が不憫だったに違いありません。丈瑠の家系は侍ではなく、牛折神の封印を守ってきた榊原家に似た一族だった筈ですから、いきなり殿の影武者になるという話は、青天の霹靂だったに違いありません。それでも、丈瑠の父は「血のにじむ決意」をしたのです。

 何故、侍でもない丈瑠の父は討たれてしまったのか、そこはまだ謎として残っています。


「影とは言え、シンケンレッドとしてこの世を守り、十八代当主を全うする!殿も私もその覚悟で...」


と彦馬。


「黙れ!黙れ黙れ!全ては姫のご意志。お前達の都合など!」


と声を荒げる歳三は、


「丹波!声が大きい」


と、またも薫に制止されます。

薫、歳三

 しかし、なおも彦馬に説教を垂れる歳三。遂に薫は扇子をひょいと投げつけ、


「うるさい」


と一蹴するのでした。重い話の連続を、ちょっとしたユーモアで軽減してみせるのは、戦隊シリーズの美点かも知れません。続いて薫が、衝撃の告白をします。


「日下部、許せ。丹波が申した通り、私が決めたことだ。影武者の影に隠れて生きるのは侍として卑怯。だから、死に物狂いで習得した。封印の文字を」

薫

 結構サラリとした流れなので、一応ここでひと説明入れさせて頂くと、丈瑠は影武者として、ずっと志葉家十八代目当主を貫き通すつもりであり、薫の登場は完全に想定外。つまり、丈瑠は血祭ドウコクとの戦いを何とか長引かせることにより、真の十八代目当主に連なる家系を守り、同時に、あわよくば血祭ドウコクをも倒せる強さを手に入れたかったのです。だからこそ以前、十臓に指摘され、血祭ドウコクに叩きのめされた際、強さへの希求が増したのではないでしょうか。

 しかし、薫の侍としての血が、父の果たせなかった血祭ドウコク封印という目的に向かって沸き上がり、こうして薫のごく周辺以外、誰も意図していなかった表舞台への登場へと相成ったわけです。薫もまた、血のにじむ努力と覚悟を持って出て来たのです。


 歳三は薫が封印の文字を習得したことについて、


「これこそ奇跡!もはや血祭ドウコクなど恐るるに足らず。家臣一同!姫を守り、姫と共に外道衆を叩くぞ!」


と息巻くのですが、それに真っ向から異を唱えたのは千明でした。


「勝手に決めんなよ!お姫様だか何だか知らねぇけどさ、俺が家臣になってやってもいいって思ったのは、丈瑠だけだ!」

千明

「馬鹿な。あれは本当の当主ではない」

「関係ねぇよ!」

「何ぃ?」


 丈瑠を「あれ」呼ばわりされて、追い詰められる家臣達。遂に茉子とことはも発言します。


「私達、今まで丈瑠と一緒に戦ってきたんです。急にお姫様と一緒にって言われても、無理です...」

「うちも、殿様は、殿様としか...」


 この二人に対しても、歳三は手を緩めることはありません。


「お前達は侍だ!家臣として、当主をお守りするのが務め」


 もっともな物言いだけに、流ノ介は、


「それは、そうです...しかし!」


と言葉に詰まります。しびれを切らした源太は、


「あいにくだな。俺んち侍じゃねぇし」


と虚空を睨みます。


「そうだ、違う。先程から言おうと思っていた。寿司屋と聞いたが、そのような身分の者がいる場ではない。下がれ!」

「何?」

「寿司屋は寿司を握っておれ!」


 丈瑠が何となく排そうとしていた、侍とそうでない者の垣根を、歳三は重視しているかに見えます。丈瑠の姿勢に共感していた千明は、当然声を荒げ、


「おい、源ちゃんはな!」


と歳三に詰め寄りますが、ここで突如ダイゴヨウが飛び出して、秘伝ディスクを乱射し始めます。あまりの立腹にタガが外れたのか、源太は、


「よしダイゴヨウ。あの偉そうなヤツを狙っとけ」


とダイゴヨウに指示。さすがに一同はそれを制止しますが、喧騒状態に。

源太、ダイゴヨウ、茉子

 そこに丈瑠が現れ、騒ぎを止めます。直ちにひざまずく丈瑠。

ひざまずく丈瑠

 千明はそんな丈瑠の態度に我慢出来ない様子でしたが、丈瑠は強く静かに、


「俺はお前達を騙してた!ずっと騙し続けるつもりだった!預けなくてもいい命を預けさせて...。お前達が危険な目に逢っても、それでも黙ってた。そんな人間が、これ以上一緒に戦えるわけがない。侍なら、この世を守る為に、姫と...」


と言うのでした。

丈瑠

 丈瑠の苦悩の正体は、影武者として外道衆の前で殿様を演じることより、仲間達に自分が殿ではないということを隠していたことなのでした。この「土下座」は、薫に対してのものではなく、侍でない者が侍である家臣達に向けたもの...という一種の切なさが印象的です。

 両手を着いて礼する丈瑠の姿に、ことはは一瞬顔を背けてしまいます。ことはが向き直り、何か声を掛けようとするも、丈瑠は立ち上がり、薫に一礼して去って行きました。これを見た歳三は、


「影武者とは言え、なかなか見事。侍でなくとも、長年振りをしていればそれらしくなるものだなぁ。ハハハ...」


と高笑い。ここで薫がまたも、


「丹波、黙れ」


と制止します。歳三は思いっきり憎まれ役担当になっていますが、完全に「嫌なヤツ」になっていないのは、こうしたユーモラスなやり取りがあるからこそです。


「お前らはタケちゃんの言う事聞いてやれよ。でも俺は我慢出来ねぇ」


 丈瑠や彦馬に対するシンパシィこそあれど、薫や本当の志葉家に対して基本的に何も持ち合わせない源太は、そのまま去って行くのでした。

源太、ことは、千明、流ノ介、茉子


 その頃、丈瑠は街を彷徨っていました。


「終わったんだ。これで...」


 丈瑠の足元に流れ着く紙飛行機の幻。そして、見上げる青空は限りなく高い。

 そしてその夜、千明はやるせなさに声を上げる...。

 丈瑠の虚しさと家臣達のやるせなさが、イメージシーン的に演出され、すこぶる高いレベルでまとまっています。これは凄い。思わず引き込まれます。後半からはバトル中心になりますが、ここまでは正に静の魅力全開です。


 さて、後半はスキマセンサーに反応がある処から始まります。彦馬に促され、とにかく外道衆を迎撃する為に出陣する流ノ介達。その表情が、やるせなさを抱えたまま赴く兵士といった感じで、重厚なのです。

 そしていよいよ、薫を中心とするシンケンジャーが、外道衆の前に立ちはだかります。

出陣

 薫の「一筆奏上!」が初登場!

一筆奏上!

 他のメンバーの変身バンクを踏襲した薫バージョンも披露。

薫

 名乗りも統一バージョンで披露し、まるで元から薫がシンケンレッドだったかのよう。

シンケンジャー

 ここまで「お約束」が丈瑠を排除していると、寂しさが増幅されます。なお、薫の場合、秘伝ディスクの取り出しやシンケンマルの差し出し等を黒子が担当していて、特別扱いの感が強くなっています。上手い演出ですね。


 薫版シンケンレッドの殺陣は、往年の時代劇スターを思わせる緩急取り混ぜたもの。ゆっくりと敵との間合いを詰め、一気に斬り捨てるという、松平健さんの暴れん坊将軍を彷彿とさせるものです。暴れん坊将軍は基本的に峰打ちですが。

 また、烈火大斬刀を軽く扱えないながらも、ぶん回す姿に姫ならではのリアリティがあります。スーツアクターは男性の蜂須賀さんですが、さすがは「世界一の女形」と称されるだけあって、姫そのものです。特に、烈火大斬刀の面を蹴って上段に持ち上げていくアクションは、目から鱗といった趣です。

シンケンレッド


 その頃、川縁にたたずんでいた丈瑠の元に、源太がやって来ます。丈瑠は完全に空疎な目をしており、一見「全てを失った者」のように見えてしまいます。

丈瑠と源太

「タケちゃん、俺は寿司屋だから、タケちゃんが殿様じゃなくたって関係ねぇよ。全然、前とおんなじ!」

「そうか。俺は殿様じゃない自分は初めて見た。...びっくりするほど何も無いな」


 この短いやり取りの中に、丈瑠が影武者でありながらも「殿様」であることにアイデンティティを確立していたことが分かります。源太の方には殿様という存在にこだわらない姿勢を見ることが出来ますが、そもそも源太は「殿様である丈瑠」の傍に居るべく、居合いや電子モヂカラの稽古をしてきた人間であるからして、実は源太も微妙な喪失感を味わっていたのではないかと思います。


 一方、スーパーシンケンレッドとなった薫は、スーパーモウギュウバズーカの「外道覆滅」で一気にケリを付けます。

スーパーシンケンレッド

 大ナナシ連中にはシンケンオーで立ち向かい、順調に敵の数を減らしていきました。

シンケンオー VS 大ナナシ連中


 丈瑠を心配した源太は、ゴールド寿司の屋台を引いて走ります。ダイゴヨウは、


「親分!殿様に寿司握らせるって本気ですかい」


と源太に問います。そう、源太は何の覇気も感じられない丈瑠に、何かさせなければと考え、


「何でもいいから何かやらせんだよ!あんなタケちゃん、見たことねぇ!」


と自分に出来る事を咄嗟に思いついたというわけです。しかし、源太が先程の川縁に到着した時、既に丈瑠はいなくなっていました。


 巨大戦は継続中。トラシンケンオーで大ナナシ第一陣を一掃するも、背後よりノサカマタの砲撃を受けます。


「サムライハオーとやらで行く!」


 薫の号令でサムライハオーを完成させたシンケンジャーは、瞬く間に大ナナシ連中とノサカマタを一気に殲滅します。シンケンゴールド不在のサムライハオーが何となく寂寥感を感じさせます。薫が一件落着を宣するも、一同は納得出来ません。続くモノローグにおける表情が、皆一様に秀逸です。


「確かにホントのシンケンレッドかも知れねぇけど...でも、俺が超えたいシンケンレッドは、別に居る」

千明

「丈瑠...こんなこと抱えて、ずっと...」

茉子

「侍としては、姫に従うべき...しかし!」

流ノ介

「違う...こんなん違う!殿様!」

ことは


 一様に薫という本当のシンケンレッドに対する違和感を抱え、丈瑠を慮りつつも、それぞれのポジションに則したセリフ回しが実に素晴らしい。これを見ると、丈瑠に対する各人の思いは、それぞれ異なるものだったことに改めて気付かされるのです。


 そして丈瑠はテンゲン寺に。ひっそりと佇む父親の墓。

丈瑠

 そう、テンゲン寺で丈瑠が複雑な表情を浮かべて眺めていた、あの小さな墓です。影武者らしく、菩提寺では辺縁に建立されていたわけです。

 そこに、


「シンケンレッド...いや、違うらしいな。が、そんなことはどうでもいい。俺と戦う、お前はそれだけで、充分だ」


と十臓が出現。シンケンレッドの呪縛を解かれたかのような丈瑠に、改めて斬り合いを申し込みに来たのです。

十臓

「それだけ...」


 丈瑠は呟きます。この呟き、本当に「それだけ」しか残っていない自分を嘲笑したのか、それとも、全てを失ったと思っていた自分に、アイデンティティとなるものが残されていたことに気付いたのか...。

 源太は、彦馬に丈瑠が行方不明だと伝え、探し回っています。が、丈瑠は知る由もありません。


「何も無いよりかはマシか」


 ニヤリと笑ってシンケンマルを握る丈瑠。

丈瑠

 やはり、「それだけ...」という呟きの真意は、「全てを失ったと思っていた自分に、アイデンティティとなるものが残されていたことに気付いた」だったようです。

丈瑠

 さぁ、次回はいよいよ丈瑠と十臓二度目の対決!

 丈瑠にとって、シンケンジャーとしてのしがらみが霧散した後の対決となりますから、正に心置きなくといった感じになるでしょう。予告では騎馬戦を披露していましたが、仕上がりが非常に楽しみです。