新年、明けましておめでとうございます。本年もどうぞ宜しくお願い致します。
さて、前代未聞、驚天動地。思わず四字熟語を並べたくなる、驚愕の展開。
新年初エピソードは、クライマックスシリーズの第一弾となりました。戦隊シリーズ初の女性レッド、戦隊シリーズ最年少レッド、戦隊シリーズ初の数話限定レッドという、初物尽しによって、視聴者を混乱と期待の坩堝に落としていきます。
折に触れて描かれてきた丈瑠の苦悩やその伏線が、クライマックスでようやく解明されると予想され、シリーズ全体で非常に洗練された高い構成力を垣間見ることが出来ます。丈瑠の苦悩に関する本当の処は、まだ触れられていないので詳しくは述べられませんが、今回の内容と予告編を合わせると、大体の予想が付くでしょう。ほぉ...そういうことだったのか、と。
ということで、丈瑠に関するミスリード、ミスディレクションについては次回以降に譲ります。まずは、怒涛の序章を堪能!
新年とあって、冒頭では志葉家のお正月が描かれます。レギュラー陣揃っての新年の挨拶に続き、お正月ならではのご馳走が振舞われます。
男衆が全員落ち着いた和装、女性陣が麗らかな着物である中、源太だけは妙に派手な宴会仕様の格好になっており、そのセンスが笑いを誘います。
やがて、新年会の様相を呈し始め、流ノ介と源太は成年ということもあって、酒を飲んで踊り出すという盛況振り。続いて、かくし芸大会に移行。茉子とことはのペアはマジック、千明は下手な和傘回し、流ノ介と源太は漫才を披露します。丈瑠は、無理矢理彦馬の物真似をさせられ、ご本人(彦馬)のウケは良かったものの、他の反応はイマイチという結果に。
丈瑠もここまで来たか、という印象付けが、もはや壮絶の域ですね(笑)。
続いてかるた取りも催され、
「この屋敷で何度も正月を迎えましたが、今年程賑やかなのは、初めてですな!」
と彦馬は終始嬉しそうなのでした。この楽しげな風景と、この後のシリアスな展開とのギャップが凄まじいのです。
盛り上がりもひと段落したところで、丈瑠よりお年玉と称して筆が配られます。
意外なお年玉について突っ込まれる丈瑠。彦馬が選んだのだと、自らの関与を否定するあたりが可愛らしいです。
「戦いも厳しくなっておる。浮かれるばかりでなく、初稽古で気持ちを引き締めねばな」
と彦馬が締めた所で、そこに正装した黒子が突如書状を持って来ます。
ふと、険しい表情に変わる丈瑠と彦馬。彦馬が書状を手に取り、
「これは...」
と呟きます。賑やかな新年会と、この緊迫感あるシーンの間に、初稽古の話を持ってきて推移を平滑にする措置、ここに職人芸を感じました。
さて、六門船の新年は寂しいもの。骨のシタリは、
「ドウコク、この船もガラーンとしちまったよ。早く戻ってきてもらわなきゃ...」
と一人呟いている始末。
そこに、薄皮太夫が突如戻って来ます。
「相変わらず変わり映えしないな」
と少々の皮肉により、自分が六門船に戻って来たという行為にまつわるネガティヴな感情をぼかしています。
薄皮太夫がもう戻って来ないかと思っていた骨のシタリは大喜び。血祭ドウコクの話題に及び、薄皮太夫の三味線を修復した際、無茶をし過ぎた為、ずっと三途の川に沈んでいることが、改めて語られます。
「戻せるのか?」
と薄皮太夫。
「戻すさ。アヤカシと同じ水切れには、嘆きや苦しみで染まった三途の川の水に限る。ただねぇ、ドウコクの底なしの器は並大抵じゃ埋まらない」
「だろうな」
骨のシタリの答えの中には、血祭ドウコクのダメージの大きさや、彼そのものの強大さが、ごく自然に盛り込まれています。
「ま、考えるよ。それより、お前さんが戻って、何かヤル気が湧いてきたよ」
六門船も新年とあってか、やや明るくなってきたようです。今回の骨のシタリは、少々浮かれ気味でライトな語り口を特徴としています。骨のシタリは、今のうちに志葉の当主を片付ける為に「アレを試す」と言って、今回のアヤカシであるヨモツガリを呼びます。
レアな女性型アヤカシ。新年早々出してくるとは大胆ですが、女性版シンケンレッドが登場する今回にあっては、インパクトが薄くなるのも致し方ないところか。
そのヨモツガリ、登場早々に薄皮太夫をからかいます。
「おや?誰かと思えば、はぐれもんの太夫さん。三途の川なんかお気に召さないだろうに、何で戻ってきたのやら...」
今更ですが、アヤカシはレギュラー幹部クラスと基本的に優劣がなく、割と顔見知りが多いので、こんな会話を楽しめます。シリーズ中、一貫していましたね。薄皮太夫は、素早く仕込刀を抜き、ヨモツガリの喉元に突き付けます。
「はぐれだろうと外道は外道。好んで堕ちたここが、わちきの居場所。よろしく頼む、ご同輩」
この迫力!素晴らしいです。敵側レギュラー陣の満足度の高さは、やはり声優陣の充実に左右されると断言できそうな気がしますね。
その頃、十臓は、
「ようやくだな。また斬り合うことだけに生きられる。命の最後の一滴まで」
と呟きつつ、裏正を眺めていました。
昨年末にうんと活躍したので、今回の出番は至って少なめですが、やはり存在感は抜群。ちなみに十臓は、このシーンと、最後の最後の1カットに登場します。
一方、志葉家では新年初稽古の一環として、まず書き初めを。恐らく、先程の「お年玉」を使用して、ということでしょう。各々の書初めは、流ノ介が「鍛錬」、茉子が「謹賀新年」。茉子の高梨さんは段持ちなので、さすがに字に繊細さがあります。というわけで茉子のだけキャプ(笑)。
なお、千明は「勝つ!」、ことはは「和」をしたためました。源太は、何やら書きまくっており、意外に上手い字で「海老」、「鮑」、「鰯」、「鮃」、「鯛」、「鯖」、「玉子」と寿司ネタの漢字知識を続々披露します。ダイゴヨウに、
「お品書きじゃねぇですぜ、親分」
と秘伝ディスクをぶつけられるオチで終了。
そんなこんなで仲間達が楽しんでいる間、例の書状を受けた丈瑠と彦馬は、深刻な談義をしていました。
「にわかには信じられませぬ。本当であれば喜ぶべきことでありますが、といってここへ来て全てを明らかにするのは、とても...」
「とにかく、こっちで動けることは何もない。今まで通りにしてるだけだ」
「はぁ...」
「ジイ...。もし、その時になったら、その時の事か...」
この会話は非常に巧妙であり、二人の会話として不自然にならない程度に、今後の展開を隠しつつ匂わせるという、高度なテクニックの産物になっています。彦馬の言う「喜ぶべきこと」というのは、恐らくクライマックスに突如登場する「姫」の出陣準備が整ったということでしょう。丈瑠の「こっちで動けることは何もない」というのは、その「姫」登場に際して、何か丈瑠自身が特別な動きをする必要もなければ、そのような要求もされないということであり、丈瑠の口調も相俟って、極めて自虐的にも聞こえます。また、彦馬にしても、「姫」の登場を素直に喜べない節があるようです。
外では、続いて剣の稽古。千明は、今年こそ丈瑠を追い越す気合で、鮮やかな竹刀さばきを見せています。なお、稽古相手はダイゴヨウ。ここでようやく、丈瑠も稽古に参加します。外に出てきた丈瑠を呼び止めようと、茉子は声を掛けますが、丈瑠はそれを聞かぬ振りをしてすぐに竹刀をとり、ダイゴヨウ相手に稽古を始めます。
千明のアクロバティックな剣さばきとは異なる、安定した太刀筋が印象的です。そんな丈瑠を、やや怪訝な表情で見る茉子...。彼女の直感や気付きが、この局面でも遺憾なく発揮されるのは、嬉しい処です。
さて、ここから徐々に戦闘モードに切り替わります。
骨のシタリが人の世に出張り、シンケンレッドを狙うようヨモツガリに指示を与えています。骨のシタリは、ヨモツガリにとっておきの「鬼火玉」なるアイテムを手渡します。
「ほら、シンケンレッドのモヂカラは火だろ。目には目を、火には火をってね。この三途の川の鬼火で練った玉で撃てば、火が火を呼んでヤツを燃やし尽くす。身体の中まで。今日で志葉家も終わりさね」
丈瑠最大の武器である火のモヂカラが、最大の命取りになるという、いわば燃える定石展開なのですが、そこに一捻り加わり、「丈瑠がまともに食らう」、「でも燃やし尽くされない」という仕掛けを施しています。普通ならば、何とかこの危機を脱するべく奮闘する様子が描かれるのですが、丈瑠はむしろこの鬼火玉を積極的に受けてしまうのです。さらに、まともに受けたにもかかわらず、丈瑠自身死ぬには至らないという展開を用意することで、今後への布石ともしています。
そんな折、志葉家では稽古後のおしるこが振る舞われますが、そこに丈瑠と茉子は居ません。痺れを切らした千明が様子を見に行くと、二人が何やら話しています。
「やっとチャンス作れた」
と茉子。先程、丈瑠に声をかけたのは、丈瑠と話をする為だったわけです。
「何だ?話って」
「そんなに警戒しないでよ。まぁ、確かに突っ込む気だけど」
「何を」
「ずっと引っ掛かってること。丈瑠が何を抱えているのか」
茉子が引っ掛かっていたのは、常に丈瑠が何かをひた隠している様子についてでした。そして、その引っ掛かりが完全に顕在化したのは、丈瑠が茉子に言い放った、
「俺は、違う!」
というセリフなのでした。
「殿様としてなのか、丈瑠としてなのか、全然分からないけど、それ、私達も一緒に抱えられないのかな」
と茉子。彼女の洞察力を以ってしても、これから起こる驚天動地の展開は予想出来ませんでした。ただ、「殿様としての苦悩」と断言するには違和感があると感じているあたり、さすがです。
公式サイトによると、「俺は、違う!」のセリフのシーンを撮るにあたり、丈瑠役の松坂さんには今後の展開と等を説明したそうですが、この時点で茉子役の高梨さんには説明していなかったそうです。あのシーンの妙な齟齬感のリアルさの裏側にこんなエピソードがあったとは。納得です。ちなみに、「姫」の展開についても、当初の予定通りだそうです。凄いですね...。
物陰から見ていた千明は、
「何だ?丈瑠がどうかしたのかよ」
と心の中で呟きます。丈瑠をライバル視するキャラクターである千明を、ここに絡ませてくるとは、なかなか巧妙です。志葉家十八代目当主が丈瑠じゃないとすれば、千明と同列の侍に過ぎないということになりますからね。
ここでスキマセンサーに反応が。余計な付加シーンもなく、直ちに出陣して行き、ヨモツガリを前に口上を披露します。
直後、定番のナナシ連中との斬り合いに突入。丈瑠も含め、ややスポーツ的なノリなのが今回の特徴で、油断とまではいかないものの、かなり軽いノリになっています。
その間、ヨモツガリはつむじ風になって移動して虚を突き、丈瑠に鬼火玉を撃ち込みます。鬼火玉自体の衝撃はさほどではないものの、すぐさま青白い炎が丈瑠に大きなダメージを与えていきます。他の面々が鬼火玉を受けても、大したダメージを受けないというカットが積み重ねられ、鬼火玉の特殊性が印象付けられていきます。鬼火玉は火のモヂカラに反応し、火のモジカラが高ければ高いほど、攻撃力が上がると説明されます。
これを聞き、一同は丈瑠を囲んで身を呈して守る陣形に。しかし、丈瑠はままならぬ身体でそれを制止しようとします。丈瑠は、気合と共にスーパーシンケンレッドに変身。
「待て!余計なことしてないで、さっさと俺を倒したらどうだ!」
と単身ヨモツガリに向かっていきます。千明は、
「あいつ、何でいつもあんな簡単に自分を...」
と歯噛みしつつ、丈瑠の後を追います。ああ、丈瑠が捨て身だったりそうならなかったりを、シリーズ中で繰り返していたのは、このシーンに繋げる為だったわけですね。丈瑠が徐々にくだけてきて、仲間に命を預ける双方向の関係を強調し出したかと思いきや、不意に捨て身を思わせるエピソードを入れてくる。ややしつこい感じもしたシリーズ構成は、実は結構巧妙な計算によるものだったんですね。
丈瑠は、肉を切らせて骨を断つ戦法で、ヨモツガリにわざと鬼火玉を撃たせ、変身解除と共にスーパーモウギュウバズーカをぶっ放すという戦法に出ます。
素晴らしいカット割と合成です。
「まさか、志葉の当主が相打ちを狙うとはね!」
意外な丈瑠の戦法に驚きつつ、ヨモツガリの一の目は四散します。物陰で様子を伺っていた骨のシタリは、
「やったよ!さすがに志葉の当主。火の大きさは申し分なかった!まぁ、身体が燃え残ったのは意外だったけどね」
と喜びを露わにします。薄皮太夫は、
「十臓ががっかりするな」
と、ここでも皮肉屋の一面を見せています。薄皮太夫の言葉どおり、丈瑠はなかなか目を開けません。
その間、ヨモツガリは二の目で巨大化。その時、丈瑠が意識を取り戻します。が、当然の如く動くこともままなりません。丈瑠は、流ノ介にインロウマルを託し、ヨモツガリを迎撃するよう指示します。
そんな丈瑠の様子を見た薄皮太夫は、
「どうした?火が火を呼んで燃やし尽くすのではなかったのか?」
と、骨のシタリの誤算を指摘。
「おかしいねぇ。志葉の当主なら身体の隅々まで火のモヂカラが染込んでいる筈なんだが...」
この、ちょっと何気ない感じの展開が、後でグサリと効いて来るんですよ!
志葉の当主なら...?ということは?
で、とにかく巨大戦。流ノ介達は、ダイカイシンケンオーで二の目を迎撃します。
二の目でもヨモツガリのつむじ風移動は健在。変幻自在の攻撃に、ダイカイシンケンオーは大苦戦を強いられます。ここ最近、アヤカシも割と強力ですね。とうとう合体解除の憂き目に遭ってしまいます。
と、その時、動けない丈瑠の前に現れる袴姿の少女。その少女は、何とショドウフォンを取り出します。驚く丈瑠の前で変身音が...。
直後、動けない折神達を尻目に、獅子折神が孤軍奮闘、獅子奮迅の活躍を開始します。しかし、丈瑠はまだ動けない状態。一体誰が!?
視聴者(劇中人物もですが)の興味を引き付けておいたところで、獅子折神を操縦するシンケンレッドの声が、少女のものであるというサプライズ!このテンポとテンションの高さは特筆モノです。更に、ヨモツガリにとって「気持ち悪い炎」が獅子折神から放たれ、ヨモツガリは動けなくなってしまいます。火炎攻撃だけでこの威力。丈瑠の操る獅子折神とは一味違うということを、巧く印象付けています。そして、「五角大火炎」でヨモツガリを撃破。
何と、獅子折神単体でアヤカシの二の目を撃破してしまいました。何と言うグレートマジンガー(笑)!
当然、一同呆然です...。
予想外の展開に遭遇しつつも、何とか戦いを終えた流ノ介達は、動けないままの丈瑠を志葉家へ連れ帰ろうと迎えにいきます。その時、一同の前に降り立つシンケンレッド!
女性体型がこれでもかと強調されるアングルが何だかエロティックですが、スーツアクターは蜂須賀さんだという話です(笑)。さすがは蜂須賀さん。
そこに、黒子と共に頑固そうな壮年男性が現れます。この人、名を丹波歳三と言います。
「無礼者!この御方をどなたと心得る!この御方こそ、志葉家十八代目当主・志葉薫様にあらせられるぞ!姫の御前である。ひかえおろう!」
彦馬が第一幕で言おうとして制止された口上。丈瑠は早々に制止しましたが、それも今に繋がる伏線だったのか...?
シンケンレッドが変身を解くと、そこには先程丈瑠の前に現れた少女・薫が。
突如の「姫」登場に動揺しまくる一同の表情を一人一人捉え、遂に来たかといった表情を浮かべる丈瑠を最後に捉えます。
物陰からは十臓がその様子を伺っています。十臓の狙いはあくまで丈瑠との斬り合いにあるようです。従って、深手を負った丈瑠に手出しはしません。
この薫役は、夏居瑠奈さんで、何と現在14歳!ことは役の森田さんより年下ですよ。
非常に凛とした表情もさることながら、アフレコ時のセリフのキレも抜群。驚愕の展開に説得力を付加しています。
戦隊の次作品スポットも入るようになり、いよいよクライマックスの雰囲気が盛り上がってきた「シンケンジャー」。どのような展開が待っているのか、最後まで興味は尽きませんね。
シンケンジャー最高!
いつも楽しみに読ませていただいています。
第六幕の「悪口王」で猛が言われた「嘘つき」とはこの事を指していたんですね!鳥肌ものです!