第四十幕「御大将出陣」

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 前回で再び苦悩を抱え込んでしまった丈瑠。彼の心情に何らかの決着を付けるのかと思いきや、何と、血祭ドウコクと薄皮太夫の因縁をメインに据えて、外道衆の内乱描写を行うという、思い切った構成になりました。

 実際、丈瑠をあのような状態に追い込んだ事で、今回のようなストーリーを展開出来ることになったとも言え、逆に言えば、このストーリーを展開する為に丈瑠を沈黙させたとも言えるわけで、ややマニアックではありますが、敵側の描写を深めた意義は大きいものがあります。ちなみに、私は「デンジマン」あたりから繰り返された、「敵側内紛描写」が大好物です(笑)。


 薄皮太夫の、外道に堕ちる前の姿である「薄雪」も回想の中で再登場。朴さん自らの出演により、回想シーンの説得力を高めています。この薄雪が実に妖艶であり、特徴的な三味線の旋律が薄雪時代から変わっていないことと相俟って、現世における話でありながら非常に幻想的です。スキマから漏れ聞こえるその音色を、血祭ドウコクが聞いていたという「因縁」は至極単純過ぎるものではありますが、それだけに分かり易く、それだけに血祭ドウコクの奥底に眠る情念を感じさせ、単なる粗暴な御大将というイメージから脱却しています。その血祭ドウコクに付き従い心配する骨のシタリの姿には、丈瑠を心配する彦馬の姿が重なり、最終クール突入に際して、外道衆側のドラマやキャラクター性を強化しておく意図も垣間見られます。


 一方で、筋殻アクマロの本性も明確に。十臓そのものと、薄皮太夫の三味線こそが筋殻アクマロの欲するものであり、薄皮太夫自身には一切興味がないという、かなりの悪党振りが鮮烈です。しかも、血祭ドウコクの現世へと出現理由は、この筋殻アクマロに求められ、シンケンジャー達はおよそおまけ扱いという凄さ。まだまだ血祭ドウコクの実力には、シンケンジャーは肉薄すらしていないという、凄絶な扱いにシビれます。当初より露出しているボスキャラで、これほど強力なキャラクターは珍しいのではないでしょうか。


 シンケンジャー側の描写は控えめながら、丈瑠の心情を彦馬が把握し諭すといったシーンや、茉子のみならず、ことはも丈瑠の異変に気付くなど、要点を押さえた描写が盛り込まれ、外道衆偏重にならないようバランスをとっています。源太のゴールド寿司が情報誌に掲載されたというくだりも、源太の今後に関わってきそうで、気になります。

 丈瑠に関しては、一応6人での戦いに違和感なく入って行きはするものの、終始寡黙であり、心情の解決には至っていないことが匂わされます。また、クライマックスでことはのシンケンマルを取り上げ、一人で血祭ドウコクに向かっていく様子は、当初の「仲間を必要としない丈瑠」を想起させ、丈瑠に危険な匂いを感じさせることに。


 というわけで、色々と見逃せないシーンがありすぎる今回。当然ながら、外道衆側をメインにまとめることになってしまいましたが、ご覧下さい。

 まずは、いつもの稽古風景より開始。丈瑠と千明が手合わせを、他の面々は素振りをしています。千明は竹刀を縦横無尽に振り回すという素早い動きを披露。

丈瑠と千明

 その千明の攻撃に翻弄される丈瑠でしたが、十臓の「弱くなった」という言葉を思い出し、つい殺気立って千明を追い詰めてしまいます。流ノ介が「それまで!」と叫んで止めなければ、千明はしたたかに打ち付けられていたでしょう。千明もこれには正直萎縮してしまったようです。丈瑠はさっさと稽古を切り上げてしまいました。


「茉子ちゃん、やっぱ殿様、こないだから何か...」


と茉子に気付きを話すことは。茉子は、


「立入禁止か...」


と丈瑠の言動を振り返って、そう呟きます。


「へ?」


 ことはは勿論、そんな茉子の言葉の意図が分かりません。

ことはと茉子

 立入禁止。なかなか的を射た言葉だと思います。今はとりあえずそっとしておくのが賢明だと、茉子は判断したのでしょう。


 さて、六門船にはいつものように、薄皮太夫の三味線を真似た、ススコダマの口三味線が響いていました。


「シタリよ、そろそろこいつらの口三味線にも飽きた。そう思わねぇか」

「そうかい、太夫を連れ戻すんだね」

血祭ドウコクと骨のシタリ

 血祭ドウコクがよくススコダマを潰していたのは、彼の苛立ちの表れだったのでしょう。遂に、薄皮太夫奪還に乗り出すのでした。ただし、血祭ドウコクは人間の世に出た途端に水切れを起こしてしまう為、自らが出張るのではなく、骨のシタリに指示したわけです。言葉は圧倒的に少ないながらも、ツーカー的な通じ方に二人の関係性を見ることが出来ます。


 その頃、薄皮太夫は薄雪時代の三味線を思い出していました。

薄皮太夫

 回想シーンにおける薄雪は、勿論朴さんが演じています。顔をハッキリ映さないという手法により、薄雪の深い負の感情が感じられるものに仕上がっています。


 早速、骨のシタリは筋殻アクマロに、薄皮太夫の三味線を出せと迫ります。筋殻アクマロは悟られぬ加減でやや渋りつつも、ある場所に隠してあることを打ち明け、取りに行って来ると言って出掛けます。しかし、


「お待ち。お前さんが素直に渡すかどうか怪しいからね。あたしが一緒に行って受け取ろうじゃないか」


と骨のシタリ。全く信用していないことが窺い知れます。


「...お好きに」


 この時から、筋殻アクマロは何とか三味線を渡さずに済まないかを考えていたものと思われます。

 三味線が戻ってくるものと少々安堵したか、血祭ドウコクは薄雪の三味線を思い出しています。


「思えば、これほど長く三味を弾かなかったのは、初めてだ」


 血祭ドウコクの思いが伝わったかのように、手元にない三味線を欲し始める薄皮太夫。傍らの十臓が、


「そろそろアクマロに催促せねばな。直す手間賃にしては高すぎる」


と筋殻アクマロの元へ向かいます。しかし、十臓にとっては三味線よりも裏正でしょう。実際、筋殻アクマロに薄皮太夫が痛めつけられるに及んでも、十臓が助けに現れるといった場面はありませんでした。


 一方、三味線の隠し場所である海岸にやって来た、筋殻アクマロと骨のシタリ。


「ドウコクさんは余程太夫さんが大切と見えまする。わざわざ太夫さんの三味線を取り戻そうとは」


と、血祭ドウコクを少しばかり皮肉る筋殻アクマロでしたが、骨のシタリは、


「人間みたいな事言うじゃないか。あたし等外道衆がどういうものか分かってんだろ」


と至って冷静です。「大切」等といった言葉は、外道衆に似つかわしくないということでしょう。後に、骨のシタリは「大切」に代わる似つかわしい言葉を選びますが、こういった「個人的な考え」を説明するセリフが外道衆側に出ること自体、今回は異色だと言えるでしょう。


「それはもう...。三途の川に生まれた我等。生きて人の世にも行けず、さりとてあの世へも行けず。そのもどかしさ、辛さに、人にまとわりつくもの。特に苦しみや悲しみに惹かれること、この上なし。つまりドウコクさんも、それでござりまするか」


 筋殻アクマロの口からは、外道衆の本質や成立のそもそもが語られます。外道衆はスキマから現れますが、正に人の世とあの世のスキマに蠢く集団なのです。仏教的な寓話の観念ですが、外道衆はいわゆる「悪魔」ではなく、「鬼」であり、人間の外(正に外道)にあり、仏敵であると定義されていることが分かります。誤解なきよう、決して仏教を推挙しているわけではなく、民話レベルで根付く日本の仏教観を引用しているということを付記しておきたいと思います。


「そこまでは訊いちゃいない」


 喋りすぎた筋殻アクマロを牽制する骨のシタリでしたが、口振りからは、筋殻アクマロの言葉が血祭ドウコクの本質を突いていたように見えます。これも後で骨のシタリの独白によって補強されることになります。


 骨のシタリの催促を受け、筋殻アクマロは、三味線を隠しているという岩の隙間に歩み寄り、三味線を取り出すべく呪文を唱えはじめます。


 同じ頃、志葉家に源太が意気揚々とやって来ます。終始重苦しい雰囲気に包まれた今回ですが、源太のシーンに関してはライトでコミカルになっており、改めて源太の役割について気付かされます。

 源太が嬉しそうに報告しに来たのは、遂に源太のゴールド寿司が「本業」でグルメ雑誌に載ったということでした。

源太

 この表情、素晴らしい!しかも、「本業」という言葉が、例のカレー騒動を踏まえていて嬉しいです。

 源太は、丈瑠や彦馬がいつもの所に居ないことに気付き、勝手に奥の間へ入って行きます。普段の源太ならばそのようなことはしないかも知れませんが、とにかく有頂天になっている様子が確認出来ますね。

 なお、掲載されたゴールド寿司の評価は、味より珍しさの方が圧倒的に上。

ゴールド寿司がグルメ雑誌に

 つまり、屋台という営業形態の突飛さと、ユニークな大将である源太のキャラクターが評価されたということであり、肝心の味は...ということ。流ノ介もその評価に納得しています。どうも、世間的にはやはり源太の寿司は「並」ということらしい。


 丈瑠は、十臓に「弱くなった」と言われたことを、彦馬に打ち明けていました。

彦馬と丈瑠

「当たってる...俺は十臓に後れを取った」


と丈瑠。彼の心に、十臓の指摘はかなり響いたようです。丈瑠は最近他の面々とかなり打ち解けた様子を見せていましたが、深層心理ではそれに違和感を抱いていたということになります。何となく匂わされていた感もあるので、決して唐突ではないのが巧いですね。


「で、その原因が、流ノ介達と近付き過ぎた事にあると?...ジイはそうは思いませんな。家臣と心を通じ一致団結せねば、今日まで外道衆と戦っては来れなかった」

「でも俺は!」

「志葉家十八代目を背負うとは、その全てを飲み込んでこそ」

彦馬

 静かなる彦馬の「指導」に、返す言葉もない丈瑠。

丈瑠

 彦馬の言葉に込められた真意は明確ではありませんが、「家臣と心を通じ一致団結」することこそが、志葉家当主に求められる資質だということかも知れません。丈瑠は確かに素晴らしい侍ですが、自分の周囲に壁を作っていたという点で、歴代の当主と違うように見受けられます(逆に先代、志葉烈堂共に家臣との関係が密接だったのではと思わせる雰囲気があります)。これはそのままテーマにもなっていて、後の骨のシタリのセリフを引用すれば、「執着」で関係性を築いている外道衆に対しては、シンケンジャーが「信頼」や「絆」といった要素で関係性を築かなければ勝てないということになるのではないでしょうか。


 そこに、何も知らない源太がやって来ます。源太は懸命にグルメ雑誌の件を話そうとしますが、彦馬に追い出されてしまいます。源太を制止しようと付いて来た茉子は、沈黙する丈瑠を心配そうな表情で見詰めていました。

茉子

 すみません。この表情にやられました(笑)。


 シーンは替わり、ここからは骨のシタリによる独白が続きます。この独白、チョーさんの深い芝居と相俟って実に素晴らしい説得力があります。長い説明セリフは途中で飽きてしまいますが、ここでの雰囲気はあくまで思い出話を語るというものに徹しており、その雰囲気に惹き付けられます。


「苦しみや悲しみねぇ。そんな言葉じゃ到底言い表せないものがあったね、昔聞いたあの三味には。ドウコクの生まれ持った底抜けの苛立ち。そいつが紛れるぐらい、人の世の涙を掻き集めたような音色だった...」


 血祭ドウコクの本質が「苛立ち」という説明は、至極納得出来るものであり、単純明快でありながら実に奥深いものとして印象に残ります。この独白に導かれ、回想シーンに入って行きます。


 スキマから漏れ聞こえる薄雪の三味線...。


「あと、どれ程待てば...いや、もう少し...きっと、明日にも...」


 薄雪はこう呟きます。思いを寄せる新佐に永らく待たされ続けており、その三味線の音色には深い情念と悲しみ、虚無感、諦念といったものが凝縮されていたのでしょう。そういった深い負の感情は、血祭ドウコクの格好の酒の肴になり、その音色に耳を傾けている間は、底なしの苛立ちも緩和されたものと思われます。


「毎日毎日、一年、二年、三年...ドウコクが耳を傾けない日はなかった。そして...」


 骨のシタリの説明によれば、薄雪の三味線の音色は毎日のように漏れ聞こえ、そして同じく毎日のようにその音色に耳を傾ける血祭ドウコクの姿が、六門船にて見られたようです。


「新佐...」

薄雪

 遂に待つことも適わぬ程のどん底に突き当たった薄雪は、二筋の涙を流します。そして、三味線の弦が一本切れた瞬間、薄雪の中である決意が芽生えます。花嫁衣装に身を包む薄雪は、恨み節を携えて新佐の祝言に火を放ったのでした。

 薄皮太夫へと姿を変え、三途の川へ現れた薄雪は、そこで血祭ドウコクに出会います。血祭ドウコクの姿を見て恐れる姿が、外道に堕ちて間もないという事を表していてリアルです。


「手前ぇは外道に堕ちた...もう二度と戻れねぇ」


 その言葉は、有り体に言えば「優しげ」に放たれました。が、血祭ドウコクに優しいという言葉はない筈。血祭ドウコクは傍らで三味線の音色が響くことに、ある種の悦を見出しており、その悦を由来とする包容とでも言えばいいでしょうか。


「あれは、人で言うなら、執着かねぇ」


 この骨のシタリの言葉が、血祭ドウコクの薄皮太夫に対する包容の全てを言い表しています。「人で言うなら」という言葉も絶妙で、裏返せば「執着」は外道衆にとってあまりにも当たり前でありふれた概念であり、それこそが外道衆の関係性の一端を担っていると言えるでしょう。


 物思う骨のシタリでしたが、背後には筋殻アクマロが迫っていました。突如笏を振り下ろす筋殻アクマロ!

骨のシタリと筋殻アクマロ

 気配に気付いて回避する骨のシタリ。丁々発止のやり取りがスピーディです。


「先程からこれを渡さぬ言い訳を考えましたが、思いつきませぬ故、ドウコクさん達を欺くのもこれまでと」


 筋殻アクマロは、「どうしてもやりたい事」があり、その為に三味線が必要だと言います。


「やっぱりお前さん、最初っから...そんな勝手をドウコクが許すものかい!後悔するよ!」


 さすがの骨のシタリも形勢は不利と見て、捨て台詞を吐きつつスキマから六門船に帰って行きます。ここで、骨のシタリがスキマを通ったことによりスキマセンサーが反応、シンケンジャーは出陣します。骨のシタリと筋筋殻アクマロが出てきた時には、何故反応しなかったのかという疑問もありますが、これまでも幹部衆が出て来た際に反応が見られなかったような気がするので、もしかすると幹部衆のレベルになると、スキマセンサーが設置されていないスキマを知っているのかも知れません。


 同時に、三味線の中に封じ込められた新佐の呻きが、薄皮太夫に届きます。筋殻アクマロが何か企んでいると睨んだ薄皮太夫は、怒りの声を上げながら筋殻アクマロの元へ急ぎます。十臓はその様子をじっと物陰から見ていましたが、特に協力する様子もなく、静観しているようです。


 クロイワ海岸にて、筋殻アクマロは三味線に封じ込められた新佐の苦痛を吐き出させ、何かのクサビに仕立てようとしています。クサビを打つということは、何かをこじ開け、開けたままの状態にしておくということ。一体何があるというのか、今後の展開に繋がる重要な謎です。何となくシンケンジャー、血祭ドウコク双方に禍をもたらすもののような気がします。


 筋殻アクマロの前に現れるシンケンジャー。何もしていないという開き直る筋殻アクマロに、問答無用で立ち向かいます。

一筆奏上!一貫献上!

 ナナシ連中を激しいチャンバラで斬り倒しつつ、名乗りを上げる所が実にカッコいい仕上がり。尺の短縮にも役立っているようです。


 シンケンジャーがナナシ連中の相手をしている間、「作業」の続きを行おうとしていた筋殻アクマロですが、そこに薄皮太夫が突如斬りかかって来ます。

薄皮太夫

「アクマロ!貴様何のつもりだ。わちきの三味を直すのではなかったのか!?」

「実は我が欲しかったのは十臓さんと、極上の苦しみが詰まったこの三味だけでござります。あんたさんのおかげでうまく行きました。ありがとう」


 遂に筋殻アクマロの真意が露呈しました。十臓はともかく、薄皮太夫自身はお荷物だったわけです。ただ、それなりに戦力としての利用価値はあると判断していたのではないでしょうか。また、血祭ドウコクの怒りを買わないよう、生かしておいたという面もあります。

 外道衆同士の討ち合いに動揺するシンケンジャーを尻目に、筋殻アクマロに果敢に斬りかかって行く薄皮太夫でしたが、手練の筋殻アクマロにかなう筈もなく...。筋殻アクマロは、容赦なく薄皮太夫をなぶり者にします。

薄皮太夫 VS 筋殻アクマロ

「わちきは馬鹿だ...また、裏切られるとは」


 このセリフがまた素晴らしい。薄皮太夫もこれまで...というその時、血祭ドウコクの怒りが、遂に頂点に達します。その怒りの叫びは、六門船、そしてこの世を震わせます。凄まじい迫力です。三途の川を出た途端に水切れを起こしてしまう血祭ドウコクを案じ、必死に止める骨のシタリ。敵側ながら感情移入させる演出の組み立てが振るっています。しかし、血祭ドウコクは、骨のシタリを斬り倒してまで六門船を出て行くのでした。骨のシタリに剣を振るう等という行為は、血祭ドウコクの心情が常態でないことを示しています。


 そして、血祭ドウコクの怒りは雷鳴と共にこの世に轟き、暗闇をもたらします。どこからともなく無数の岩が集合し、無数のスキマを形成。

血祭ドウコク

 そのただならぬ様子に、筋殻アクマロも、


「まさか...」


と動揺を隠せません。

 次の瞬間、集合した岩の大爆発と共に、遂に血祭ドウコクがこの世に出現!

血祭ドウコク

 しかし、すぐに水切れが起き、肩や胸等が乾いてひび割れを起こし始めます。

 が、怒りのまま筋殻アクマロを目指す血祭ドウコクは、剣の一振りでシンケンジャーと筋殻アクマロを巻き込む大爆発を起こすという豪腕振りを発揮。ナパームの規模が凄いことになっています。

 すぐさま血祭ドウコクの縛りが筋殻アクマロを捉えようとしますが、筋殻アクマロは何とか逃げおおせることに成功します。筋殻アクマロを逃がしてしまった血祭ドウコクは、目前に居る丈瑠に目を向け、


「シンケンレッド...志葉の当主めが!」


と苛立ちを露に。迎え撃って来る丈瑠のシンケンマルを剣の一振りで折り、そのまま丈瑠を吹き飛ばしてしまいます。

シンケンレッド

 他の5人の攻撃も一切通用せず、シンケンジャーは未曾有の危機を迎えるのでした。


 この危機に際し、何とか立ち上がった丈瑠は、ことはのシンケンマルを手に取り、スーパーシンケンレッドとなってスーパーモウギュウバズーカを構えます。ことはが握ろうとしているシンケンマルを無言で取り上げる丈瑠の姿は、スタンドプレーを身上とする超実力派リーダーのそれであり、そこには、最近のシンケンジャーが培ってきた双方向性を、「強さ」という名分の元にかなぐり捨てようともがく丈瑠の姿が、痛い程感じられます。


「志葉の...手前ぇら一族には返しきれねぇ借りがある!」


 水切れの進む血祭ドウコクでしたが、それをものともせず、凄まじい空中戦へと展開していきます。このCGを駆使したバトルがアニメ的でスピーディ!

スーパーシンケンレッド VS 血祭ドウコク

 そして、激しい空中戦を制した血祭ドウコクは、丈瑠に軽く止めを刺すと、早々に筋殻アクマロの手から弾き飛ばした三味線を拾い、薄皮太夫の元へ向かいます。

 凄まじい衝撃波を受け、吹き飛ばされるスーパーシンケンレッド!

スーパーシンケンレッド

 変身も解け、丈瑠はその場で昏倒してしまいます。

丈瑠

 完全にとどめを刺さなかったのは、血祭ドウコクの興味の中心が薄皮太夫であり、水切れの限界まで時間がないのを悟っていたからだと思われます。水切れの限界を知らせる骨のシタリを振り切り、薄皮太夫の傍に付く血祭ドウコクは、


「手前ぇは外道に堕ちた。他に行く場所はねぇ」


と言い、自らの身体の一部を剥ぎ取ると、その切片で三味線を修復し、薄皮太夫に手渡します。

三味線

 思わず三味線を抱きすくめる薄皮太夫。

薄皮太夫

 水切れで命を危険にさらし、更には自らの身体の一部を用いて三味線を修復した血祭ドウコク。それは、三味線の音色への執着が、変則的、倒錯的な「愛」に見えたような瞬間でした。

 時間切れと見た骨のシタリは、無理矢理血祭ドウコクをスキマに押し込んで、三途の川に連れ戻します。


 ここからは、ややノルマ消化といった感がある巨大戦。骨のシタリが、大ナナシ連中を呼び出してシンケンジャーを片づけようとします。ことはに丈瑠を託し、流ノ介は、スーパーシンケンブルーとなってインロウマルの能力による「真侍合体」を発動。ダイカイシンケンオーで迎撃します。

 大ナナシ連中の操る大筒は、以前よりパワーアップしているということが説明されますが、この巨大戦自体に今一つ訴求力がないので、何となく流してしまいます...。


 丈瑠不在とあって、源太がモウギュウダイオーを操り、イカテンクウバスターの「折神大開砲」と「猛牛大回転砲」で大ナナシ連中を撃破します。

大ナナシ連中 VS ダイカイシンケンオー&モウギュウダイオー


 重傷を負った丈瑠は、ことはと黒子によって志葉家に搬送され、直ちに手当てを受けることに。

丈瑠と彦馬

「殿様...」


 ことはが心配して駆け寄りますが、奥の間には近付かず、ただ見守るのみ。

ことは

 この表情、いいです(笑)。


 一方、血祭ドウコクはひどい水切れで、しばらく動けない状態になってしまい、三途の川に沈んでいきます。六門船の上から、骨のシタリがその様子を覗き込んでいましたが、そこに現れたのは何と筋殻アクマロ。


「我を追い出す力はござりますまい」


と血祭ドウコク不在を良いことに、ちゃっかり六門船に戻ってくる辺り、非常に狡猾というか浅ましいヤツで、これまた実に魅力的です。

骨のシタリと筋殻アクマロ

 血祭ドウコクに助けられた薄皮太夫は、六門船には戻らず、一人修復された三味線を抱いて沈黙していました。

薄皮太夫

 十臓がその様子を遠巻きに見ていましたが...十臓の心中にあるものは何か、画面からは分かりません。


 血祭ドウコクがしばらく動けなくなったことで、物語的には少しばかりの膠着状態になるものと予想されますが、それを利用して各々のキャラクターの背景に決着を付けて来るものと思われます。最終クールという局面においても、抜かりない構成には、ホント、感心させられますね。