「加哩侍」は「かれーさむらい」と読みます。源太とことはをメインに据えて、源太が自らの目標を再確認する様子が描かれます。
ところで、カレーと戦隊シリーズは割と関係が深く、元祖「ゴレンジャー」ではキレンジャー・大岩大太の大好物とされ、そのあまりの好物振りに「キレンジャー=カレー好き」という図式が広く浸透する程でした。その後も、「サンバルカン」のバルパンサーのカレー好きだったり(キレンジャーを踏襲したと思われる)、「アバレンジャー」における「恐竜や」の名物メニューがカレーであったりと、そこかしこにカレーが姿を現します。
カレーという食べ物は、非常に当たり障りの少ないポピュラーなものであり、小道具としても準備しやすいものであることから、シチュエーションとして多用されているものと思われますが、今回は特に源太が「寿司屋」であるという面から、最も縁遠いものの一つとして考えられるカレーが、採用されたと言っていいでしょう。奇しくも、シンケンイエローとキレンジャーに、「黄色」という共通項が見出せますが、特段ことはがカレー好きというわけでもなさそうなので、その辺りにオマージュ的な感情があるかどうかは分かりません。ただ、キレンジャーの存在を知る身からすれば、黄色=カレー好きという図式が否応なく想起されることでしょう。
今回は、ことはがスーパーシンケンイエローになるというクライマックスこそ用意されていますが、ストーリーのメインにポジションを取っているのは源太であり、ことはは、源太の目標を再確認させるという位置を担っているだけです。ことはは図らずも源太を一度寿司から引き離し、再び源太の中に占める寿司の存在の大きさを確認させることで、源太の寿司屋としての目標をより強固にしました。そこにまるで他意がなく、また企図もないというのが、ことはの自然体の爽やかさを際立たせています。これを見ると、茉子とことはという二人のヒロインが、あれこれ考えてしまうタイプとそうでないタイプの代表になっていることが分かります。
源太も、改めて寿司屋としてのアイデンティティを確立することにより、様々な迷いを払拭しました。これで、源太に関しても、最終戦に向けたプライベートな段取りを済ませたと言えるのではないでしょうか。
それでは、本編のまとめをご覧ください。キャプはことはメインでいきたいと思います(笑)。
源太のゴールド寿司に、今日も丈瑠達がやって来ます。ゴールド寿司の屋台は基本的に閑散としているらしく、恐らく常連客は丈瑠達くらいのものでしょう。それだけに、今回のカレー騒動が源太を迷わせることとなります。
次々と注文する一同の中、ことはだけが注文を迷っています。そんなことはを見て、「何でも作る」という源太。源太は「寿司なら何でも握る」というつもりで言ったのでしょうが、ことはは、
「うち、カレーライスが食べたい」
と答えるのでした。
唖然とする一同でしたが、
「いいだろう...男に二言はねぇ!」
と、源太は丈瑠達の注文を無視して、カレーを作り始めます。生まれて初めて作ったというカレーのお味は...?
「おいしい!」
ことはの感想を聞いて、流ノ介、千明、丈瑠、茉子もすぐに試食。皆その味に感心することに。中でも茉子の、
「悔しいけど...負けたわ...」
という反応が秀逸。以前、薄皮太夫の一件で料理本の騒動が併せて描かれましたが、その時茉子は、自らの料理の腕を客観的視点で見る機会がありました。どうも、茉子はその際に自らの料理の腕を正当に評価したわけではなかったらしいのです。これは可笑しいトピックでした。
一方、いつも寿司の味を「普通」だと評価されている源太は、思わぬ反応に有頂天。
「俺には溢れんばかりの料理の才能があるってことだ!」
と喜びを露にします。
それと同時に、カレーの匂いに誘われ、次々とお客が入って来ます。源太のゴールド寿司始まって以来の大盛況です。
さて、シーンは六門船へ。骨のシタリが、筋殻アクマロの行動に一石を投じようと調達したアヤカシは、ソギザライ。最近の筋殻アクマロ系のアヤカシとは異なり、ややコミカルな面が強調されています。
骨のシタリ「ソギザライの能力があれば、シンケンジャー相手でも楽しめる筈だよ」
血祭ドウコク「確かに、腕は立つ野郎だが...」
筋殻アクマロ「でしたら、お手並み拝見といきましょうか」
骨のシタリはかなり張り切っている様子ですが、血祭ドウコクはそれ程興味がないようで。筋殻アクマロは、この骨のシタリの横槍を面白くないと思いつつも、大した脅威だとは思っていない様子です。いずれにせよ、骨のシタリと筋殻アクマロが静かなる対立関係にあることを、ここで強調しています。
翌日、源太が昨日限りのつもりで作ったカレーは、いつの間にかクチコミで評判を呼んだらしく、お客が殺到することに。
流行らない自分の寿司とのジレンマに悩みつつも、腹をくくった源太はカレーを作り、お客に振舞うのでした。
たちまち大忙しとなるゴールド寿司。しかし、ソギザライの行動開始に伴って、外道衆の報を受けた源太は、丈瑠達に合流すべく、ダイゴヨウに待たせているお客の対応を任せ、屋台を後にするのでした。
しかしながら、一体どうやってダイゴヨウが応対するのか...?そこを見てみたかった気がしますね。多分「待って下せぇ!」とか「待ちねぇ!」といった語を連呼していただけだと思いますが。
ソギザライは建造物を次々と粉々にしつつ、愉しそうに暴れまわっていました。冷静さを保ちつつ迎撃するシンケンジャーでしたが、源太だけはお客を待たせているという状況故に、焦りを見せつつ戦っており、ソギザライ相手に精彩を欠いてしまいます。
源太の苦戦を見て、助太刀する千明でしたが、超高速回転で攻撃してくるソギザライに、シンケンマルを削られてしまいます。
何気ないシーンですが、シンケンマルが目に見えて破壊されるのは非常に珍しく、その衝撃度において重要なシーンと言えます。
図らずも敗色の濃度が増してきたシンケンジャー。源太は状況を打開しようと無理矢理立ち向かうのですが、やはり跳ね飛ばされてしまいます。もう源太の頭の中には、お客を待たせているということしかありません。
幸いにも、ソギザライは水切れで退散。源太は慌てて、待っているお客の元に戻るのでした。
志葉家の屋敷に丈瑠達が戻ると、彦馬が大声を上げて出迎えます。彦馬のショドウフォンに映し出されたのは、何とゴールド寿司を紹介するワイドショー番組。
ゴールド寿司はカレーの名店として紹介されていました。それにしても、ショドウフォンにワンセグ(?)が搭載されていたとは。驚きですね。時代劇のモチーフを大幅に導入しつつも、こういった処に現代の感覚がしっかり取り入れられています。
番組内の源太は緊張のあまり完全にあがってしまっており、どんな質問に対しても素っ頓狂な声で、
「目標は三ツ星ですっ!」
しか答えられません。ミシュラン三ツ星の野望はまだまだ健在のようです。しかし、源太のこの様子にはさすがの丈瑠達も呆れ顔。
ここでも、茉子がやや嫉妬しているのが面白い。どうも今回の茉子は、自分の料理の腕が源太より優れていると考えている節があります。その点では、これまでの流れとややズレを生じている気がしないでもありません。ただ、この茉子の方が面白いですけどね。
殺到するお客、テレビの取材に続いて、今度はゴールド寿司にブローカーが現れます。
「まずは銀座に本店を...」
と話を切り出すブローカー。
いきなりスケールの大きな話を持ちかけられ、源太は思わず大喜びではしゃいでしまいます。しかし、源太は寿司の店を出せると有頂天になっていたのですが、ブローカーはカレー店としての展開を考えており、源太にためらいの色が浮かびます。
その様子を陰から見守る丈瑠達。皆カレー店でもいいじゃないかと思ってはいないものの、静観を決め込んでいる中、ことはは、本当にカレー店でいいのだろうかと真剣に心配し始めます。
とってもいい表情です。丈瑠達が「やれやれ」といった表情をしている中、この表情は非常に際立って見えます。セリフに頼らない場面作りが好印象ですね。
その夜、源太は悩みに悩んだ末、ある結論に達したような表情を見せます。
それにことはも呼応するかのように、何かの決心を固めます。
両者の決断は、完全に方向を異にしています。源太はカレー店を足がかりに寿司屋を展開する事を。ことはは源太の迷いを直感してそれを指摘する事を決断したのでした。ことはの場合、それはカレーという迷い道に源太を誘い込んでしまったという反省も含まれます。
六門船で水切れを癒し、再びソギザライが人の世へと出て行きます。骨のシタリが三途の川の水を汲み、ひしゃくでソギザライにかけてやるという光景がやけに微笑ましいですが、三途の川の沐浴以外で、はっきりと水切れの解消方法を示した初のシーンとして印象に残ります。
翌日、源太はカレーの準備に勤しんでいました。準備は万端といったところで、そこにことはが現れます。
「お、ことはちゃん。手伝いに来てくれたんか?」
「源さん、うちの所為で、何か大変な事に...」
「何言ってんだよ。ことはちゃんのおかげで、店が出せるんだぜ!雑誌の取材もバンバン来てるし、これでゴールド寿司も有名店の仲間入りだ」
話は前後しますが、この後、源太には「目が覚めた」発言が登場します。しかし、ここでの源太はカレー店展開に「甘んじている」感が漂っており、無理をしているように見えます。
「でも、ホンマに源さんこれでいいの?」
「勿論だよ。俺の長年の夢が叶おうとしてるんだからな」
「でも、これって違う!これは、源さんのホンマの夢と違うんとちゃうの?」
しばしの沈黙の後、源太は、父親より看板を継いだ時からずっと思っていた事があると語り始めます。それは、いつかは屋台ではなく、立派な店を開いてやりたいということ。子供の頃は父親の気持ちをよく理解できなかった源太ですが、今なら、夜逃げした際の父親の気持ちが分かる気がするというのです。即ち、源太の父親は、夜逃げした際、いつかもう一度店を建て直してやろうという気持ちだったのでしょう。そんな父親の意が理解できる源太は、まがりなりにも店が出せることの方が大きいと言うのでした。
源太の想いを聞いたことはは、源太の寿司を所望します。源太の寿司は一般的に「普通」だということになっていますが、ことはと十臓だけは、美味いという評価を持っています。ことはが源太の寿司を評価するということは、ことはの基準で評価するということですから、丈瑠達が評価するよりも、より厳しいものになる筈です。
握られた寿司を、端っこだけ口に入れることは。
「美味しく...ない...だって、源さんの握ったお寿司、カレーの匂いがする」
ことはの評価は、源太の姿勢に一石投じるに充分だったようです。
「そういや、寿司握ったのは久しぶりだ。ずっとカレーばっか作ってたからな」
と、最近の状態を顧みます。実際に寿司にカレーの匂いが染み付いていたわけではなく、あくまで源太の視線が寿司に向かっていないという、ことはの感性による指摘だと、私は思います。
「うち、こんな源さん、嫌や。源さんの夢はカレー屋さんと違う。お寿司屋さんやろ?...そやろ?源さん!」
ことはは畳み掛けるのですが、源太はまだ、カレーを足がかりにして店を出せるということと、根っからの寿司職人であることの狭間で悩み続けます。そこに、例のブローカーが再びやって来ます。
ブローカーは、カレー専門店「ゴールドカレー」の店舗完成予想図を広げ、源太に見せます。
カレー店であること以外を、つまり寿司を完全に排除しようとするブローカーの言を聞き、遂に源太は、
「ことはちゃん、ありがとな。ようやく目が覚めたぜ!」
と笑顔を見せます。
これには、ことはも嬉しい表情。
前述の通り、源太は状況を把握していて、決してカレー専門店でも良いという感じで有頂天になっていたわけではないのですが、「目が覚めた」というのは、寿司屋の店を構えることに近道は必要ないという源太の「悟り」だと言っていいでしょう。
「俺は、寿司屋だぁぁぁぁっ!」
源太の大迫力にブローカーも腰を抜かしてしまいます。普通ならば、このブローカーが完全に悪者になってしまうところですが、このブローカーもカレーの味に惚れ込んで話を進めて来た感じに描写されており、それは、源太とことはがブローカーを助け起こすという、とても微笑ましい描写に集約されます。この爽やかさは抜群ですね。
そこに、ソギザライ出現。ことはと源太を含め、直ちに集結して名乗りを上げるシンケンジャー!
しかし、先の戦いと同様、ソギザライの高速回転攻撃に翻弄されてしまいます。
ここでことはが一計を案じ、インロウマルの拝借を進言。インロウマル登場からかなり経過していますが、ようやくスーパーシンケンイエロー登場です。
ことはの作戦とは、「真・猿回し」の超高速回転で、ソギザライに対抗するというもの。
同じ速度で回転することにより、相手の動きが止まって見える為、隙を突くことが容易になるという離れ業です。ビジュアルによってかなり無理矢理納得させていますが、実際はこれ、ウソです。実際に2人で向かい合って同じ方向に回転してみるとよく分かりますが、同じ方向に回転すると正面ですれ違う速さは2倍になる為、隙を突くどころではないのです。この方法で最も的確なのは、敵の頭上にて同じ速度同じ向きで回転すること。それがダメなら、せめて敵とは反対方向に回転することです。ま、そのあたり突っ込んでもしょうがないんですけど。
ソギザライの回転が止まり、逆転の好機を掴んだシンケンジャー。ここで飛び出したのは源太で、「元祖回転攻撃」と称して、「サカナマル・千枚おろし」を炸裂させます。迷いのなさが源太を強化したという風にもとれます。
源太の猛攻撃で戦意を喪失したソギザライに、ことはは「真・土煙之舞」を見舞って一の目撃破を果たします。
二の目には、ダイカイシンケンオーとダイゴヨウのタッグで迎撃。やはり等身大戦と同様、回転攻撃の前に苦戦を強いられます。それでも何とかダイゴヨウがソギザライを押さえることに成功。その間に、サムライハオーを完成させます。矢継ぎ早な展開が気持ちいいです。
サムライハオーになってからは、当然苦戦などしません(笑)。モヂカラ大弾円を決め、勝利の一本締めとなります。
その後、源太はスッパリとカレー作りをやめます。ゴールド寿司への行列もなくなり、寒風吹き抜ける様子が描かれ、閑散としています。
しかし、源太の心は晴れやか。カレーによって店を出せるという話は嬉しくはあったものの、源太はかなり無理をして自分を納得させていたのでしょう。
源太のおごりで寿司を振舞われる丈瑠達。いつもの「普通の」源太の寿司に戻っており、一同は談笑するのでした。そんな中、ことはだけは、いつものごとく、
「美味しい!」
と笑顔。
源太の寿司は、ことはの笑顔にも支えられ、これからも精進していくことでしょう。
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