第三十四幕「親心娘心」

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 遂に、ベールに包まれていた茉子の家族が明らかになるエピソードです。しかも、両親が二人共登場するという徹底振りで、茉子の性格や性質、人となりの元となった要素が、それとなく、しかし深く感じられる、奥ゆかしい感触に仕上がっています。


 茉子の父・衛役は冨家規政さん。時代劇の出演も多い俳優さんですが、今回は侍という立場からは遠い役回りを、印象的に演じてみせてくれています。茉子のキャラクター設定から想像される人物像とは違った、意外性のあるキャラクター設計が見事で、むしろ千明の父親に近い雰囲気を持っているところが面白いです。

 茉子の母・響子には、「ゲキレンジャー」でのレギュラー以来の登場となる、伊藤かずえさんが起用されています。「ゲキレンジャー」での美希役が強烈な印象を残している為、茉子の母親にキャスティングされたという情報を得た時は、ふと「?」な感じを覚えましたが、ラストシーンで登場した際の雰囲気は正に茉子の母親!髪型を似せているということもありますが、醸し出す雰囲気まで似せてくるとはさすがの一言です。また、前述の美希役が、先代シンケンピンクという件の説得力を高めているようにも思います。いかにも戦えそうですから(笑)。


 茉子の両親の3クール半ばという地点での登場は、少々機を逸しているような気がしなくもないですが、薄皮太夫に対する同情心を払拭したかに見える茉子の、さらなる強化の為には必要な通過点だったのではないでしょうか。今回の茉子は本当に強く、これまで封印してきた弱さをカタルシスによって昇華されることにより、「強がっている強さ」から「真の強さ」へと進化している様子が容易に読み取れます。


 なお、茉子のこれまでの様々な行動様式(?)が、響子の影響であろうことを思わせているのですが、かなり薄く匂わせている感じになっており、注意深く画面から読み取って納得する必要があります。子供にはちょっと難しい要素ですが、大人が分かって子供に説明してくれればいいという潔さなのかも知れません。そう、これは親子の物語ですから。


 では、そのあたりも整理してみましたので、お付き合い下さい。

 稽古が終わると、何と茉子の父親が来ていました。茉子の父親は衛という名で、かなり調子のいい感じの男性です。

衛

 自己紹介を済ませた衛に質問したのは、ことは。


「そしたら、前のシンケンピンクさんですか?」


という、ことはらしい何とも可愛らしい質問です。確かに、「天」のモヂカラを使う侍が女性だとは限りません。ただ、後に茉子の境遇が明かされた際に判明するように、どうやら性別によって受け継がれるモヂカラが、殆ど決まっているように見受けられます。


「え?まさか!...前のシンケンピンクは私の妻。つまり、茉子の母親です。私は侍でも何でもありません。しがない婿養子です」


 衛はこう答え、彼が白石家の婿殿であることが判明。つまりは、白石家は代々(と言っても、明確なのは茉子の祖母の代までですが)当主にあたるのが侍たる女性であり、婿養子をとってきたことになっているようです。この衛の飄々とした態度に茉子は、


「お父さん!」


と、やや不機嫌な感じに。これに、


「やっと声が聞けた」


と返す衛。なかなかのダンディ振りです。衛は唐突に、茉子を迎えに来たなどと言い出します。茉子に、シンケンジャーをやめてハワイに行こうと言うのです。


「ずっと離れ離れだったけど、やっぱり親子は一緒がいい。お母さんもそう言ってるんだ。最初に、茉子を迎えに行こうって言いだしたのは、お母さんなんだ」

「お母さんが?でも、だって...」


 茉子が両親とずっと離れて暮らしていることが分かり、また両親がハワイに住んでいることも分かりました。衛の突如の提言に、やや困惑気味の茉子。

茉子

 茉子は、幼少の頃の苦い出来事を思い出していました。モノクロームで描かれる過去の映像。幼い茉子が、車椅子に乗った母親と、それを押して行く衛を、悲痛な叫びをあげながら追い掛けていくという光景です。幼い茉子の背後には、かなり大きなお屋敷が映っており、白石家がかなりの名家であることを伺わせます。

 その想起によって、さらに困惑の表情を浮かべる茉子を見て、たまりかねた千明が口を出そうとしますが、丈瑠が孫の手のような道具(?)でひょいと制止。ちょっとコミカルですが、丈瑠の行動の奥ゆかしさが印象に残ります。


 衛は、侍を職業とみなすならば、辞めることも不自然ではないと主張します。茉子の抜けた分は、衛の会社がバックアップすると言い、


「ハワイの黒子と持って下さい。ねぇ」


と彦馬に告げるのですが、当の彦馬は茉子と同様困惑しています。そこに、スキマセンサーの反応が。話が途切れて幸いといった雰囲気も少しだけ漂っていますが、それよりも緊急性が強調されています。

 いざ、出陣。


「やっぱり、唐突過ぎたかなぁ...」


と、衛は心情を吐露します。しかし、衛はこれで諦めたわけではありませんでした。


 事件現場では、ナナシ連中が学校から児童を誘拐していました。普通の平和な教室にナナシ連中が乱入してくる様子は、かなり空恐ろしい感覚です。


 学校に到着し、ナナシ連中を蹴散らすシンケンジャー。学校を舞台としたアクションだと、身近な建造物である為、リアリティがアップし迫力が増します。

シンケンゴールドとシンケングリーン

 シンケンジャーはナナシ連中を全滅させますが、一部の子供は既に誘拐された後でした。しかも、正に今スキマの彼方に連れ去られようという子供が。茉子は、足元にあったスキマセンサーを投げ、誘拐されて行く子供のポケットに潜り込ませます。

スキマセンサー

 流ノ介が彦馬にスキマセンサーの追跡を依頼し、一旦待機状態に。流ノ介は、衛が帰ったという彦馬からの伝言を茉子に伝えます。茉子は微笑みつつも、やや表情を曇らせています。鉄棒で前回りを披露する茉子がやけに可愛らしく、この辺りは両親と別れてしまった幼少の頃との重なりを、意識した演出になっていそうです。

 源太が衛のことを聞き、


「おい、何かあったのか?だったら言ってくれよ!力になるぜ」


と勇ましく宣言。

源太

 しかし、


「あれか?親父さんが夜逃げ...」


と、自分の経験に基づいた短絡的解釈が飛び出し、


「源ちゃん。源ちゃん家と一緒にしないの」


と千明に釘を刺されます。これらのコミカルなやり取りはテンポも良く、重くなりがちな今回の雰囲気を緩和しています。


 さて、六門船にシーンを移します。

 筋殻アクマロが企んでいたのは、人の世に賽の河原を作るということでした。


「三途の川を溢れさせるより、人の世の方から引き込ませた方が早いのではと」


と説明する筋殻アクマロ。人の世に、人の世でない場所を作り出せば、スキマが生じて自ずと三途の川の水が溢れるという自説を展開します。子供達には、石を高く積めば親の元に帰れると吹き込み、それを都度ナナシ連中に邪魔させて絶望を煽る作戦なのですが、


「へぇ、理屈だけって気がするがねぇ」


と、骨のシタリが悪意に満ちた感想を述べます。血祭ドウコクは、


「まぁいい。三途の川の水がありゃ、俺もこの世へ乗り出せる」


と、慣用な態度をとりますが、


「だがよ、その理屈に十臓と太夫が関係あんのか?」


と、作戦の裏に隠された筋殻アクマロの「真意」について追求します。


「お見通しとはさすが。腕の立つ者が必要になる時もござりますれば、どうか、お許しの上、お認め下さりませ」


 筋殻アクマロは、その場をサラリと理屈で回避していきます。が、ここで「そうか」などと引かないのが、いつもの血祭ドウコクとは違うところ。


「これからは、そいつを最初に言うってのを覚えておけ」


 そう言う血祭ドウコクは、刀を抜き、筋殻アクマロの足の甲に突き刺すのでした。

血祭ドウコク

 血祭ドウコクが筋殻アクマロの腹黒い面を知りつつ、好きにさせているということは、前回も指摘したとおりですが、今回はただ泳がせているだけでなく、外道衆の総大将としての貫禄を威力によって見せ付けるという行動に出ました。これは実に珍しい行動であり、インパクト大です。


 その頃、十臓は、筋殻アクマロがいつになったら裏正を元に戻してくれるのかと、苛立った様子で呟いていました。


「足元を見られているのは、初めから承知の筈」


と言う薄皮太夫は、黙って待っておけと十臓に告げます。十臓はおもむろに折れた裏正を握り締めて一振り!たとえ折れた裏正といえど、岩をも両断する威力は健在であることを示します。それをヒラリと交わす薄皮太夫。


「わちきを斬るなよ」


 十臓は、それを聞いてニヤリと笑います。

十臓

 実にクールなやり取りであり、今回は実力行使する出番のない二人でありながら、その実力の程を垣間見せるという、職人芸的な描写に唸らされます。この二人の動向は、ストーリーに大きく関わって来るであろう事が明白なので、今後も要注目です。


 流ノ介達による、茉子の境遇に対するヒアリングが開始されます。茉子とヒアリング者が歩いて来る様子を、まず足元から映して引くというカットを、個々の質問毎に繰り返すという面白い絵作りがなされます。普通のドラマではあまり使われない手法を用いてくるのは、さすが戦隊シリーズのベテラン監督といったところでしょうか。

 ヒアリング内容を簡単にまとめてみると、茉子は祖母に育てられ、侍の稽古も祖母に付けられたとのこと。血祭ドウコクを封印した先代の戦いの後、茉子の両親は幼い茉子を置いて、ハワイに移住してしまったようです。そのような事態になった理由そのものは、後から衛の口によって語られるので、ここでは保留しておきます。また、衛は仕事の関係で日本に来ることがあり、茉子とは何度か会っているといいます。そこでことはが、


「お母さんとは会ってへんの?」


と質問。当然と言えば当然ですが、


「え?...うん、何回かは会ったかな。ほら、遠いから」


と、何となく茉子は無理して笑っている様子です。

茉子

 恐らく、父親の衛とは違い、母親とは殆ど会っていなかったか、または会う機会があっても会うことを互いに避けていたか。そんな感じだと思います。いずれにせよ、茉子にとってはあまり触れられたくない部分なのでしょう。


 そこに再び衛がアロハシャツで登場。

衛

 何故か運転手にハワイの景色のホリゾントを持たせるという、コミカルな演出。やや場違いで、リアリティに欠ける行為ですが、好意的に解釈するならば、一応これにより、衛が侍とは遠い世界に住んでいることを印象付けています。


「お前は稽古着の代わりにサマードレスを来て、刀の代わりにトロピカルジュースを持つんだ。楽しいぞ。毎日が夏休みだ!」


 コミカルで何てことないセリフのようですが、実際は衛の真意が込められた重要なセリフです。今回を本当の意味で楽しみ味わうには、随所で、このように「シーンから本当の意味をすくい取る」という行為が必要になります。ここでの衛の真意とは、ズバリ「茉子に侍をやめさせること」です。冒頭でも「シンケンジャーをやめる」ことを提言していましたが、このシーンでは、稽古着や刀といった侍をシンボライズするアイテムを否定し、代わりに侍からは程遠い「ハワイでのお嬢様の生活」をシンボライズするアイテムをあてがっています。したがって、かなり理屈より感覚に訴える手法になっており、衛の本気度が伺えるのです。

 これにはさすがの茉子も唖然。しかし、ここでも茉子の回答はペンディングになります。

 彦馬よりタイミングよく、スキマセンサーが山江町で発見されたとの連絡が入ります。作戦の失敗を直感する一同。「山江町で発見された=作戦失敗」の結び付けが弱く、説得力が今ひとつなのは残念。ある程度丈瑠の表情からは読み取れるようになっているのですが、丈瑠による、


「落としたか、気付かれたか」


という理由付けをもっと前に持って来れば、より明確だったのではないかと思います。

 一同は早速山江町へと向かうのですが、茉子が丈瑠達と共に行動開始しようとすると、


「茉子!お母さんがホントにお前を!」


と呼び止める衛の声が。「ホントに」という言葉から、母親の話を引き合いに出したのが方便ではなく、本当に母親が茉子を連れ帰りたいと考えていることが分かります。茉子がそれを聞いて一瞬躊躇することから、茉子の中で最も引っかかっているのが母親のことだということも分かります。

 しかし、茉子は迷いを断って丈瑠達の後を追います。小学校に、子供を誘拐された親達の悲痛な叫びが渦巻き、茉子の決心を補強するのでした。


 一方、「この世の賽の河原」に仕立て上げられている廃工場らしき建物の中では、一人の子供が、脱出の突破口を発見していました。茉子は子供たちが集められているその場所に、一人辿り付いています。茉子が都合良く発見しているのが不自然とかいった指摘は、この際ナシだと思います。

 子供は、隙を見て逃亡。ナナシ連中による見張りなど、所詮こんなものといった雰囲気がいいです。茉子は、タイミング良くその子供を助けることが出来たものの、腕に傷を負ってしまいます。

 すると、そこに衛が現れます。茉子を尾行していたとしか思えません(笑)。

 さらに丈瑠達も合流し、筋殻アクマロ一団と斬り合いになります。その間に、子供は全て手際良く救出され、さすがの筋殻アクマロも、


「用心棒を連れてくるべきであった!」


と悔やみます。


 丈瑠達が奮闘する中、一人衛によって足止めされている茉子。衛は、戦場に飛び込んで行こうとする茉子を心配しているのです。


「お父さん何とも思わないの!?子供を心配してる人達の事だって見てたでしょう?同じ親じゃない!」

「そうだ。親だよ。親なんだ。自分の子供を安全な場所に避難させたいと思う、身勝手な親だ。茉子、それはお母さんも同じなんだよ」


 身勝手な親。それは親ならば誰しもにあてはまる真理でしょう。衛の茉子を安全なハワイに連れ帰りたい心境が、非常に良く分かります。


「そんなこと...言ったって。...だったらどうして、あの時、私も一緒に...」


 衛の言葉に困惑し、別離の日の記憶がまざまざと蘇ります。

茉子、衛、響子

「置いて行かれたと思った。最後までお母さんが、私の事なんか目に入らなくて。だからずっと一人で侍になる為に!...今になってどうして!」

茉子

「連れて行きたかったよ、お前も。だが、お母さんは最後の戦いで心も体も酷く傷付いてたんだ。自分の事だけで精いっぱいだった!お父さんも、侍になるお前を手放さないおばあさんから、とても引き離す余裕は...。言い訳だな...お前を酷く傷付けた。恨むのは当然だ」

衛

 ここで先代シンケンピンクである茉子の母親の、壮絶な戦いの果てを垣間見られます。丈瑠の父は戦死し、茉子の母親は後遺症が残る程の深手を負ったのです。流ノ介や千明の父親はそれぞれの生活に復帰している為、先代シンケンジャーが再起不能になる程の戦禍ではなかったことは分かるものの、個々のその後の生涯に与える影響は、それぞれ大きかったことでしょう。


 一方、筋殻アクマロの攻撃に丈瑠達は危機を迎えます。仲間の危機を知った茉子は、


「私、侍はやめない!お父さん達のことを恨んでるわけじゃないし。後悔もしてないから。ただ、あの時...ただ...」


と衛に告げ、雄叫びと共にナナシ連中に斬りかかって行きます。高梨さん渾身のアクションが炸裂!

 「あの時...ただ...」というセリフの続きは、この時点でも充分予測出来ますが、エピローグの感動までとっておきましょう。とにかくここでは茉子の強さを堪能。一筆奏上のモヂカラが、筋殻アクマロの攻撃をはじき返すという凄さです。

一筆奏上!

 筋殻アクマロを、沈着冷静な牽制と素早い太刀筋で翻弄し、丈瑠よりインロウマルを受け取った茉子は、スーパーシンケンピンクとなり、「真・天空之舞」で筋殻アクマロに一太刀浴びせます。

スーパーシンケンピンク

「よろしい!作戦は諦めましょう!」


 形勢不利と見た筋殻アクマロは、切神を出してシンケンジャーを襲撃します。大ナナシ連中やノサカマタと共に、妙に笑えるフォーメーションで存在を誇示する切神!

切神、大ナナシ連中、ノサカマタ

 流ノ介の、


「また派手なことを!」


という感想が、視聴者を代弁しています。丈瑠は、


「まずは蹴散らす!」


と宣言し、自らは牛折神を出し、茉子にはシンケンオーを出すよう指示します。

 大ナナシ連中の騎馬戦形態と、牛折神に乗ったシンケンオーによる決戦が開始されます。

牛折神・シンケンオー VS 大ナナシ連中

 いつもの大チャンバラとは異なり、騎兵隊の合戦といった趣で展開されており、迫力あるミニチュア特撮と相まって見応え充分です。

 さらに、ダイカイオーミナミも参戦。

ダイカイオーミナミ

 モウキュウダイオー、シンケンオー、ダイカイオーミナミのトリオで切神とノサカマタを追い詰めていきます。そして、「海老刀大名おろし」、「ダイシンケン侍斬り」、「猛牛大回転砲」の三大必殺技が炸裂!

ダイカイオーミナミ、モウキュウダイオー、シンケンオー

 これにて一件落着となります。


 そして、今回の最重要トピックであるエピローグ。


「お前の気持ちはお母さんに伝えたよ。戦いぶりもな」


 茉子の戦い振りと決心を目の当たりにした衛は、茉子を連れ帰ることをやめてハワイへ帰ることに。この様子をそっと遠くから見守る一同がいい感じです。

ことは、源太、丈瑠、流ノ介、千明

「お母さん、何て?」

「ん?自分で訊いてみるといい」

「え?」

茉子

 驚く茉子。何と、母・響子は衛と一緒に日本に来ていたのです。

響子

 伊藤かずえさんの、この悲哀と愛情を湛えた表情が素晴らしい。茉子の母、遂に登場といった展開で、鳥肌モノです。


「茉子、あの時、一人にしてごめんなさい...。でも、あなたを忘れてたわけじゃないの。ずっと、あなたを思わない日はなかった...ごめんね」


 茉子に「あの日」が重なります。


「お母さん...お母さん!」

響子と茉子

響子と茉子

 そう。両親との別離も勿論悲しいことではあったのですが、せめて茉子は母親に抱きしめてもらいたかったのです。恐らく、血祭ドウコクとの戦いに明け暮れる先代シンケンピンクは、茉子を構ってやる精神的余裕すら欠いていたのだと推察されます。実に凄絶な設定です。

 ここで幾つか判明する事柄があります。

 茉子が弱った人をギュッとしたくなる性質は、幼い頃にハグされなかったことの裏返し。料理が下手なのは、女の子にとって最も近い理想の女性である母親が不在だったことによるもの。茉子が「普通のお嫁さん」に憧れるのは、母親の愛情が幼少時代に欠けていたこと。つまりは、茉子の特徴的な面はすべて、母親のネガティヴな影響だったということです。逆に、茉子の侍としての凛とした様子は、深く傷付くまで戦い抜いた母親の侍魂を受け継いでこそのものであり、これは伊藤かずえさんが醸し出す雰囲気が、多くを語っているように思います。真に重要なのは、最後に挙げたポジティヴな事項であり、本エピソードの収穫はここにこそあると断言出来るでしょう。

丈瑠

響子

茉子

 それぞれの笑顔が映し出され、また一つ成長を遂げた茉子を祝福します。両親とは離れていても、茉子は侍として頑張って行ける、そんな希望的なラストが爽やかです。