一週お休みの間も、「仮面ライダーディケイド」においてそれなりに話が進行していたので、どんな風に整合性や連続性を確保するのかと思いましたが、こう来ましたか!
とりあえず、冒頭とエピローグで「ディケイド」関連のシーンをチラリと登場させておいて、あとはそれなりに同時進行させつつ、あまり関係ない部分で双方を展開していくという、実に巧みな構成でした。気になる「ディケイド」関連のお話は、「ディケイド」本編をご覧頂くとして、今回の本筋に話を移します。
「ディケイド」とのコラボレーションが、文字通りお祭りの様相を呈している為、それと同時進行となる今回はさぞ地味な展開になるかと思いきや、千明を中心に据え、茉子をそれに絡ませるとともに、千明の父親を登場させることで、父子という普遍性のあるテーマを重厚に描ききりました。しかも、千明の父・蔵人がかなり軽い感じの人物として描かれる為、逆に爽やかな雰囲気も感じさせています。
千明と蔵人、互いが面と向かって口にすることなく、互いに強さを認めるあたりも素晴らしく、両者の間に位置する茉子の存在も実に効果的です。
これまでの展開で、千明の強さそのものは、ある程度完成されてきた感じになっていましたが、ここで再び発展途上キャラの属性を再認識させることで、千明の成長物語を継続させているのも巧い処置。しかしながら、千明には千明自身の独特の強さがあることもちゃんと匂わせており、まだ丈瑠達を超えるまでには至らないものの、確実にその強さは本物になっているという雰囲気が伝わってきます。
では、見所をまとめてみましたので、ご覧下さい。
冒頭は、「ディケイド」関連。烏賊折神を盗まれた源太は、盗んだ張本人である海東を追跡中です。
そして、チノマナコ・ディエンド態が、体中の隙間から大勢のナナシ連中を招聘しているシーンも描写されます。
その気配を察知したシンケンジャーが登場!
大勢のナナシ連中を、華麗な太刀捌きで一掃します。この立ち回りの華麗さは筆舌に尽くしがたいテンポとカッコ良さ!いきなり冒頭から飛ばしてきます。
ナナシ連中を全て倒し、退却という時に、黒子の一人が頭巾を捲ります。黒子の正体は、仮面ライダーディケイドこと門矢士。
海東なる人物から、源太は烏賊折神を取り戻せるのか。そして、チノマナコ・ディエンド態とは何か。何故士が黒子に交じっているのか。
その全ての謎は、「ディケイド」にて明かされますが、ここでは、巧みなナレーションと、前回のエンディング前に少しだけ挿入されたシーンによって、今回の本筋を邪魔しない程度の理解が出来るようになっており、非常に巧い構成になっていると感じます。
さて、ここからが今回の本筋。
六門船に、アヤカシのササマタゲがやって来ますが、何故か誰も居ません。
季節的に三途の川が荒れ、アヤカシ達は力が漲っているので、ササマタゲは勝手に暴れに出かけてしまいます。
血祭ドウコク、骨のシタリ、薄皮太夫の3人が一切登場しないという珍しい処置。一応「ディケイド」には骨のシタリが登場しますが、彼らの不在は劇中における何らかの事情を匂わせているのでしょうか。それとも、たまたま居なかっただけ?
まぁとりあえず、その辺りは気にしないことにします。
冒頭のナナシ連中の大挙登場を受け、とりあえず警戒態勢をとってパトロールしていたのは、茉子と千明。とりあえず異常はないということで、千明は、稽古まで時間があるから涼んでいこうと提案します。
屋敷にクーラーがないことをボヤく千明は、
「俺、暑いの超ダメ」
と不満タラタラです。茉子はその提案に躊躇していましたが...。
その頃、ササマタゲはサラリーマンの頭に卵を産み付けていました。
ウミガメのように涙を流しつつ産卵する姿が可愛らしいのですが、ササマタゲ自体のデザインも、カメがフィーチュアされていて、やや可愛らしく仕上がっています。とはいえ、身体の大部分はアヤカシらしい「禍々しき赤」のラインを踏襲しています。
頭に卵を産み付けられた男は、突如ナナシの蛮刀を持って暴れ始めます。
結局、茉子と千明はファミレスに。千明はパンケーキを注文しています。このパンケーキは、本筋には作用しませんが、「絆の描写」という点では何気に重要な小道具です。
茉子は、彦馬が病院に行っているという話をし始めます。これは「ディケイド」と密接に繋がる部分。
彦馬が行こうとしていた「吉田接骨院」は、いつの間にか「光写真館」に変わっています。
「ディケイド」未見の方の為に少し説明しておくと、「光写真館」はディケイド達がパラレルワールドを移動する際の拠点となっており、「光写真館」ごと他の世界に移動し、その世界の建造物とすり替わってしまうのです。「確か喫茶店だった」といったような会話が、「ディケイド」初期では聞かれました。したがって、今回は「確か病院だった」と彦馬が洩らすわけです。
その光写真館の主人が光栄次郎なる好々爺。この栄次郎、写真館の主人にも関わらず、客人に喫茶店に匹敵する「旨いコーヒー」を出したりするので、
「ちょっとした手当ぐらいは出来ますよ」
...なんてことも、お手の物。
彦馬の腰痛も、鋭く見抜いてしまいます。
茉子は、彦馬が病院に行くかどうかで丈瑠と喧嘩したらしいと千明に言います。これは先週の「ディケイド」で描かれたシーンに触れています。このさり気なさも良い匙加減です。
茉子はこの喧嘩を「親子喧嘩みたいなもの」と評し、千明も賛同します。
「ジイさん頑固だしな。もし親父だったら、俺なんか毎日喧嘩だよ。あ、でも、侍としては、強くなってたかもな」
「自分の力不足を親の所為にする気?」
「そうじゃねぇけど、半分くらいはな」
以前、千明の父親の「だらしなさ」を、流ノ介に見抜かれるという出来事がありましたが、ここできっちりと活かされるわけです。抜け目がないですね。そして、そこに千明の父・蔵人その人が登場します。
「半分は親の所為なんだよな...超ショックなんですけど」
と蔵人。しかし、何故か妙に嬉しそうな表情。しかも、千明と同じパンケーキを注文し、ちゃっかりと千明の隣に座ります。
蔵人役は菊池健一郎さん。御歳から考えると、随分若い父親ですが、千明を17~18歳とすれば、20歳前後での子供ということになりますから、それ程奇をてらったキャスティングでもありません。というより、何だか千明の父親としてベストマッチな感じすらします。
「相変わらずパンケーキかよ」
と千明。ちょっとした口論になり始めたところで、店内に悲鳴が響きます。
先程、ササマタゲに卵を産み付けられたサラリーマンが、女性を人質にしてしまったのです。
アヤカシの仕業と気付かぬままに、早速、茉子と千明は女性の救出作戦を即席で立てて、行動に移します。千明が子供を助けている間に茉子が女性を助ける算段だったのですが、蔵人が、サラリーマンの振るう蛮刀から茉子を庇った為に、女性の救出は失敗に終わってしまいます。
蔵人は軽い怪我を負い、千明は店内の人々をなるべく逃がしつつ、子供を連れて外へ逃げます。ところが、ファミレス内にはナナシ連中が大挙して乱入して来るのでした。
蔵人の行動を軽率だと感じていた茉子は、一方で赤ちゃんの存在に気付き、蔵人の行動が単なる軽率な思いつきでないことを悟るのですが...。
結局、ファミレスは占拠されてしまい、
「ネエさん...親父が邪魔しなきゃ...」
と千明は歯噛みします。そして、千明の周辺は、卵を産み付けられて暴れる人々で溢れていました。千明はふと卵の存在に気付き、それを斬り落とすことで暴れる人を元に戻します。流ノ介とことはにも、卵を斬るよう指示する千明。ファミレスを占拠した男にも卵があったことを思い出します。
千明は、茉子にメールを送信し、中の様子を知らせるよう連絡を取りました。同じく到着していた丈瑠は、
「茉子から中の状況の連絡が来たら、一気に踏み込む」
と指揮。千明は、
「ったく...親父の奴が邪魔しなけりゃ、今頃ネエさんと俺であっさり片付けてたのに。あのバカ親父」
と蔵人を疎ましく思います。すかさず、
「千明、お父さんのことそんな風に言うたらあかんわ」
と反論するところは、非常にことはらしくてイイ感じ。千明はなおも、
「ホントにそうなんだから、しょうがねぇよ。そりゃ親父としちゃ、お気楽で楽しいけど。侍として戦った後で見るとね」
と付け加えます。丈瑠は、
「まるで一人前になったみたいな言い方だな」
と、ちょっと皮肉を言ってみますが、
「悪ぃけど、俺もちょっとは成長したっつの」
と千明は返答。
丈瑠の皮肉もそれ程本気でないように聞こえる上、千明にしてもそんなことでいちいちカッカしないところに、2人の関係の変化が確かに伺われます。
そうこうしている間にも、次々とササマタゲの卵の被害者が。
千明に現場を任せ、丈瑠、流ノ介、ことははササマタゲ討伐に向かいます。茉子からの連絡を受け、千明のファミレスへの踏み込みは、14時30分丁度に決行ということになりました。
「え?千明がやるのか。え?大丈夫かなぁ」
と蔵人。茉子は迷わず、
「大丈夫です」
と返します。何の迷いもない即答なのが素敵。
一方、ササマタゲと対峙する丈瑠達。ササマタゲは、
「人間をお手軽に外道に出来る私の卵、素敵でしょ?」
と挑発します。
「いや、今すぐやめてもらう」
と丈瑠。一触即発といった感じです。
丈瑠達とササマタゲが緊迫している一方、ファミレスには長~い時間が流れていました。思わず欠伸をする蔵人。茉子はそれを見て思わず微笑みます。
ここで気付くのは、蔵人の真の姿。ちょっと深読みかも知れませんが、お付き合い下さい。
蔵人が見せた欠伸の意味を考えてみると、色々なことが見えてきます。
一つは、道化を自然に演じられる人物であるということ。欠伸をしたのは、この緊迫した状況の中で本当に退屈したからだとは思えません。従って、これは茉子を安心させる男の優しさの現れだと、私は思います。もっとも、茉子にそんな気遣いは無用ではあるのですが。
さらに、軽い人物を装うのは、侍という宿命を、本当は千明に背負わせたくなかったという、父親としての愛情の裏返しだったのではないかと思えるのです。早くに妻を亡くしていることもあり、千明に母親からの愛情が欠けているのではないかと危惧してか、千明には自由に生きて欲しかったのではないでしょうか。実際の蔵人の腕の程は、今回証明されるわけですが、侍としての教育を殆どしなかったのは、実はこんな感情故ではないでしょうか。
こう解釈することによって、次の茉子と蔵人の会話が、より深みを帯びてきます。
「ごめんね」
と欠伸を謝る蔵人。
「いえ。でも、さっきのことがなかったら、誤解してたかも」
「さっき?」
「私、赤ちゃんが居ることに気付けてませんでした。あのまま飛び掛かっていたら、赤ちゃんは危険な目に。ああいう形で止めてくれたから、私の正体もバレなかったし」
「そんなの偶然偶然。それよりさ、さっきは嬉しかったなぁ」
「え?」
「千明のこと。あんなはっきり大丈夫って言ってくれて」
「千明、確かに最初は未熟でしたけど、型にはまってない分、すごく自由なんです。武術もモヂカラも。時々、参ったって思うことありますよ。私は結構、ガチガチな方だから」
「そんなことないでしょう」
「お父さんに似たんですね、千明。今日判りました」
「いやぁ...私、ホント侍らしいこと、教えて来なかったから。早くに亡くなった千明の母親もね、とにかく明るい子にって、名前も千の明りで千明って付けて。だから、武術っていうより、なんか、そういうことをね。ただ、私もほら、こんな感じだし、一緒に遊んじゃったりしてさ」
「多分、そのおかげで、千明は千明らしい侍になってると思います」
「ホントに?ありがと」
蔵人の教育方針は、私が「深読み」した通りであれば、至極自由に育てるという方針だったわけですが、結果的に侍の世界に身を投じざるを得なくなった千明のことを思い、自分の教育方針は誤っていたのではないかという、少々の後悔がこの会話の中に見られるのです。
ところが、千明の強さと侍としての確かさを知っている茉子は、蔵人の教育方針こそが千明の今を築き上げたことを悟り、蔵人の後悔を霧散させるのです。実にいい話じゃないですか。往年の青春ドラマの親子物語を思わせる熱さもありつつ、現代的なテイストにも仕上げられていて好感が持てます。
そして、訪れる突入の時間。
茉子はシンケンマルを構え、千明は「竹」のモヂカラで発生させた竹を伝い、天井から滑り降りて登場!
千明はナナシ連中を華麗な立ち回りで一掃します。このアクションの流麗さは特筆モノです。蔵人役の菊池さんには悪いですが、息子の太刀捌きに軍配が上がります(笑)。
茉子も隙を見て、サラリーマンの頭の卵を斬り落とします。
事件がとりあえず片付き、安堵する一同でしたが、いつの間にか蔵人の背後にナナシが!
しかし、蔵人の目付きが変わると、現れたナナシ連中をたちまち切り捨ててしまいました。
これがスローモーションで処理されていて、異様な凄味を感じさせるのです。侍・谷蔵人、ここにありといった感じです。一転して、
「痛ぇ、千明ぃ」
とおどける蔵人は、
「千明強くなったじゃん。外道衆倒したらさ、また一緒にパンケーキ食おう。たまには自炊して、家で待ってっから。な」
と千明に告げます。千明は黙って丈瑠の元に向かいます。
この年頃の親子ならではの像だと私は思います。ただ、この親子はもう互いの事が十分に分かっていて、そこに溝とかわだかまりといったマイナス要素はありません。この爽やかさがいいのです。
さて、ササマタゲとの戦いは遂にクライマックス。
ササマタゲは丈瑠、流ノ介、ことはの同時攻撃に晒され、さらに丈瑠の「火炎之舞」で、発射した卵をゆで卵にされてしまいます。
そして、丈瑠の烈火大斬刀が炸裂した後、珍しい流ノ介とことはの共同攻撃である「水流土煙之舞」が炸裂し、一の目撃破です。
そして、例によって二の目で巨大化を果たすササマタゲ。千明と茉子も状況に気付きます。道中、千明は、
「ネエさん、強くなると、もっと強いのが見えるんだな。親父の剣、ずっと見てたのにさ、強さは分かってなかった」
と茉子に言います。
「ったく、ネエさんもそうだけど、ことはも流ノ介も源ちゃんも、俺の目の前強ぇヤツばっかだよ。で、その先にはあいつが居るしよ!」
イメージシーンが非常に効果的。
千明は、目の前に立つ「強ぇヤツ」に向かって走っていきます。千明はまだまだ成長途上。しかし、そんなひたむきな千明の姿勢が、彼を更なる高みにいざなうのです。階段を上ると、次の階段が見えて来るということを、千明は悟るまでに至っている。これだけでも彼の成長振りを存分に感じることが出来ます。
この後、茉子と源太がフレームアウトし、現実の丈瑠、流ノ介、ことはにオーバーラップするという、実に職人芸的な素晴らしいシーンが見られます。
巨大ササマタゲを、テンクウシンケンオーで迎撃。
ここで「ディケイド」と関連させるシーンが登場。光写真館の孫娘である光夏海が、巨大戦に気付くというくだりです。
「何ですかあれ...もしかしたら、士君もあそこに...」
と呟く夏海。基本的に仮面ライダーに巨大戦はありませんから(「X」や「J」、劇場版「剣」とか劇場版「キバ」など「数多くの例外」もありますけど)、反応が自然でいいですね。
源太は、テンクウシンケンオーの苦戦を見て、ダイカイオーを出します。源太は、盗まれた烏賊折神が気になっており、とにかく早く勝負をつけようと慌ただしい様子なのが可笑しい。
ダイカイオーニシ、ヒガシと使い分けてササマタゲを翻弄し、「天空唐竹割り」と「海老ばさみ本手返し」を同時に炸裂させます。
源太はとにかく急ぐあまり、恒例化した「一本締め」も省略し、とっとと退散していってしまいました。一本締めに当初難色を示していた流ノ介が、一本締めをすかされて、この時最も源太を批判しているのも笑えます。
戦いが終わり、茉子は丈瑠に、
「千明、強くなったよね」
と告げます。丈瑠は、
「充分とは言えないがな」
と答えますが、さすがは茉子。丈瑠の本当の本心は見抜いている様子で、
「とか言って、気をつけないと追い越されるよ」
と、丈瑠をちょっとからかいます。勿論、丈瑠は微笑みます。
茉子の役割が、ここでもしっかりと活かされていました。
エンディング前には、「ディケイド」に直接繋がるシーンが挿入されます。
丈瑠の背後に、鳴滝が登場。
鳴滝とは、ディケイドを敵視し、パラレルワールドを自由に行き来してディケイドの旅の邪魔をする謎の人物です。
「この世界は浸食されている。ライダーに、ディケイドに。ディケイドは世界を破壊する。排除しなければ」
と鳴滝は丈瑠に吹き込みますが...。そこに黒子が登場。
「シンケンジャーか。確かに、この世界では仮面ライダーは必要ないらしいが」
黒子がその装束を脱ぎ捨てると、士がその姿を明らかに。
今週の「ディケイド」はその直後のシーンから始まっており、2つのヒーロー番組がシームレスに繋がるという凄い瞬間を目の当たりに出来ます。
エンディングは、劇場版の予告仕様。そして、エンディングテーマは、主役陣が歌唱に参加するバージョンとなっており、主役キャストの歌声を堪能することが出来ます。いよいよ、劇場版への盛り上がりも加速して来ました。
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