あまりに良く出来ていて、ツッコミどころが「時代劇なビジュアル」だけという凄まじさ。
しかも、それは狙ってやっているわけで、面白がって見ている側は、完全に術中にハマっています。
スーパー戦隊シリーズは、チームのメンバーそれぞれの個性が絡み合うという図式が根幹。勿論、そこにはぶつかり合いや友情というテーマが生まれます。
対立構造という図式が明確化したのは、意外なことにシリーズ誕生からかなり時を経てのことで、15作目である「鳥人戦隊ジェットマン」が嚆矢。友情というテーマが全面に押し出されたのは、12作目の「超獣戦隊ライブマン」あたりだと記憶しています。
その後、色々な要素を加えたり取り除いたりして、シリーズは制作され続けてきたわけですが、今回の「シンケンジャー」は、一味違う感覚でそれらのテーマを描いているように思えます。
表現が非常に難しいのですが、友情というテーマは何となく当てはまりませんし、対立というテーマも、何か違う感じがするのです。
「シンケンジャー」が特殊なのは、殿と家臣という図式。「忍者戦隊カクレンジャー」では姫と従者でしたが、彼らはワイワイガヤガヤやっている現代人といった印象であり、ここまで上下関係がはっきりしているのは初めてなのです(「ジャッカー電撃隊」のビッグワンは?というツッコミは無しの方向で)。
これから先「友情」といった方向にシフトしていく可能性があるものの、現時点では「友情」というより「運命共同体」という感覚だし、絶対の信念を持つ「殿」である丈瑠に、まだ少しずつ迷いを覗かせる4人という対比構造には、素晴らしい魅力があります。
その4人の「迷い」は、対立構造に近似した感覚をもたらし、ドラマを重厚にしていますが、かといって重苦しくはならず、爽やかな青春群像というスーパー戦隊シリーズの定番に落とし込んでいるところは、さすがです。
さらに、5人それぞれのスタンスを表現することで、そのキャラクターを浮き彫りにすることにも成功。
- 丈瑠 ... シンケンジャーの理念の絶対的体現者
- 流ノ介 ... 古式ゆかしき侍の姿に固執する者
- 茉子 ... 侍と現代人の間でゆれる者
- 千明 ... しきたりへの反発者
- ことは ... シンケンジャーに自分の活きる道を見出す者
当然、完全対極にある流ノ介と千明は徹底的に衝突します。
茉子とことはは同じような場にいるのですが、茉子がシンケンジャーであることに対して慎重になっているのに対し、ことはは殆ど無思慮にシンケンジャーであろうとしています。
今回は、ことはのこの態度が皆の心を揺さぶっていくという流れになっており、キャラクターの巧い使い方には感服です。
また、今回最大のトピックは、シンケンオーが登場すること。
史上初(特殊な場合を除く、レギュラー設定としての史上初)の巨大戦闘員(大ナナシ連中)も登場し、「巨大チャンバラ戦」を演じてくれました。これは凄い。
では、見所を中心に紹介していきます。
冒頭は、丈瑠以外の4人によるモヂカラの鍛練。
流ノ介の水飛沫の勢いがあり過ぎたり、ことはの出した石が流ノ介の足の上に落ちたりと、楽しいシーンになっています。
一応、流ノ介、茉子、ことはは普通にモヂカラを使えるのですが、千明だけモヂカラが巧く使えないという状況。
書き順がダメという理由がとても面白いし、一定の説得力もあります。
丈瑠は、
「役に立たないヤツは必要ないからな」
と千明に言い放ちます。
丈瑠自身の言い方にも一応問題はあるのですが、千明のモヂカラが一切役に立たない感じに映るのも確か。
当然、互いに気に入らないという構図になります。
この絶妙な対立関係、少なくとも次回までは確実に引っ張られるようです。
そして、ここでオープニング。
第一幕ではシンケンレッドの立ち回りにクレジットが被る形式だっので、正式なオープニングは今回が初披露ということになります。
このオープニング、何と「ゴレンジャー」以来変わることのなかった、「メンバー各々のアップに、各々のクレジットが被る」という形式が、遂に崩されることに!
オープニングの構成上は、ちゃんと各々がアップになるカットが織り込まれていますが、それぞれのクレジットが流れるタイミングは、それとは全くシンクロしていません。これは斬新。
各々のアップにクレジットをシンクロさせずとも、各キャラクターの差別化と名前の印象付けには自信があるとでも言うが如き姿勢に、随分と感心してしまいました。
さて、今回の外道衆。
三途の川を溢れさせ、人間の世界を沈めてしまうのが目的と、今回初めて明言されました。
外道衆は、三途の川の水さえあれば、人間の世界に住めると言っており、つまり人間の世界に一時的に出張ることは出来ても、定住は困難であるものと思われます。
人間の世界に、災害等良くないことが起きると、三途の川の水が増えるという記録があるという骨のシタリ。
それを聞いた血祭ドウコクは、人間世界を荒らしまわることで、三途の川の水を溢れさせようと企みます。
至極単純な思考と動機。でも、それがいいんですよね。
今回は、オオツムジが派遣(?)されます。
その頃、ことはが突如いなくなり、流ノ介達は探しに出かけます。
ことはは田舎から一歩も出たことがないという、いわゆる世間知らずな子ということらしい。
道中、流ノ介は「家臣として、殿への礼儀は当然だ」と千明に説教し始めます。
千明の態度を見て、流ノ介は、
「いい加減な親らしいな」
と一言。千明は、
「当たってるだけに腹立つんですけど!」
と返します。
実に楽しいやり取りですね。2人のキャラの違いも浮き彫りになって、巧いです。
茉子は、
「やめなさいよ!」
と間に入ります。茉子のポジションって、実は結構曖昧だったりするんですけど、その曖昧さがドラマの中でさり気なく活かされていたり。
この「止めに入る」という役割には、それが良く出ています。
「自分の夢放り出してきてんのよね。いい加減なヤツだったら、命は預けられない」
と茉子。
流ノ介程、丈瑠に心酔することはない。しかし、千明のようにしきたりへの反発を見せる程、侍としての自覚がないわけでもない。
それ故、殿である丈瑠が自分の命を賭けるに値する人物かどうか、冷静に見極めたいのですね。
ことはは、一人で稽古に励んでいました。
体の弱い姉の代わりにシンケンジャーになったということは。
勉強や家業の竹細工は全然ダメで、得意なのは笛と剣だけだといいます。
「シンケンジャーしかないねん、ウチに出来んの。そやから、殿様と一緒に頑張りたい」
京都弁は、ことは役の森田涼花さんが京都出身ということで、急遽現場処理的に決定したらしい。
ことはのちょっとフンワリした雰囲気に合致していて可愛いです。
流ノ介はことはの純粋さに、大袈裟に感動。
この表情が秀逸です。
一方で、千明は、
「ここまで洗脳されてるなんて可哀想だろ」
とおでんを差し出します。
実際、この現代において、流ノ介やことはこそが特殊であり、千明の感想は至極真っ当です。
つまりは、千明こそが視聴者に最も近いキャラクターだということ。彼のいい加減さに感情移入できるかどうかは別として、感覚の近いキャラクターが居るということは、作劇上重要です。
なお、この「おでん」は、重要な伏線になります...というのは冗談ですが、意外な形で使われます。
侍という存在に迷いのある茉子は、ことはのひたむきな姿勢に心打たれたのか、ことはをいとおしく感じたらしく、ことはを抱きしめます。
さて、オオツムジ活動に際し、志葉家に戻ってきた一同。
「スキマセンサー」により、オオツムジの出現が知らされます。
神社がモチーフになっているこのメカニック(?)。従来のスーパー戦隊シリーズとは一線を画する、ギャグなのか真面目なのかといった議論を吹っ飛ばすような、凄い代物です。
おみくじ型ユニットが、感知したポイントを示し、すかさず黒子が地図を広げるという、そのテンポの良さには痺れます。
このアヤカシがオオツムジ。
声は郷里大輔さんです。いきなり大物が出てきました。巨大戦が似合う声ですよね。
デザインモチーフはムカデのようです。
変身、名乗りに続いて外道衆達との戦いが展開されます。
今回のアクションは、じっくり見せるタイプ。初回でも触れましたが、チャンバラを強く意識しつつも、伝統的なスーパー戦隊アクションの要素をベースにしています。
個々人の武器を丁寧に描写する姿勢は、今回でも見られます。
この戦いの中、ことはのミスに気を取られた丈瑠が危機に。
丈瑠が物凄く強いレッドであることを、前回で印象付けているだけに、どのように仲間の存在をアピールするのかと思っていましたが、こう来るとは!
ことはをやや未熟な侍として描き、それによって丈瑠自身に非が無くともがピンチに陥る。実に巧い処理だと思います。
オオツムジはチャンスを生かし、丈瑠を庇いに集まってきた4人をまとめて倒してしまいます。
この流れもいい。
殿である丈瑠を、ことはが守ろうとし、そのことはを心配して自然に3人が集まってくる。ホント、無駄がないです。
丈瑠は、
「お前達、立てるよな。まだ生きているなら、立て!...言っただろ、外道衆を倒すか、負けて死ぬかだって...。」
と鼓舞。しかし、最前面に立ったことはのダメージが大きい為、他の3人はそれを心配します。それを見て丈瑠は、
「放っとけ!この程度で潰れるようなヤツはいらない」
と更に付け加えます。何となく格闘技系アニメのような雰囲気のセリフです。一時的に丈瑠への感情移入を避ける効果もあります。
これに反発する一同。何と流ノ介も丈瑠に突っかかり、ことはの一生懸命さを訴えるのですが、
「一生懸命だけじゃ人は救えない!」
と一蹴。
流ノ介は、殿という存在に心酔こそすれ、丈瑠という人物そのものを直視していなかったことが、ここで暴露されるのです。
何とハードな(笑)。
で、丈瑠の態度が横暴に見えた流ノ介、茉子、千明は自分達だけで戦おうと言い始めるのですが、ことはは、
「殿様の言ってること、正しいわ」
と言い、3人に一石を投じるのです。
ことはの視線の先には、子供を助けて戦う丈瑠の姿が!
ことは「誰も守れへんかったら、意味ないもん」
千明「あいつ、確かに強ぇ」
流ノ介「その場凌ぎの優しさなど、侍には無用か。為すべきことはただ、外道衆を倒すこと」
茉子「そして人を守ること」
それぞれのキャラクターを反映した、シンプルでいいセリフ。
4人は変身して丈瑠の戦いに合流します。
丈瑠は、
「俺と同時に攻撃しろ」
と指示。
流ノ介が一瞬戸惑いますが、きっと反抗した自分は許してもらえない等と思っていたのでしょう。
5人はシンケンマルを構え、オオツムジに突進。そして、「シンケンマル・螺旋の太刀」を決めます。
必殺技が合体武器とかじゃないのが新鮮ですね。
色々な技のバリエーションが出てくれると、子供達のごっこ遊びも広がるのではないでしょうか。
オオツムジは二の目で巨大化。
いよいよ今回最大の盛り上がり処であるシンケンオー登場です。
と、その前に...。
何故か丈瑠を差し置いて侍合体を指示する流ノ介。
そして...。
「よ~し!完成!」
「何か、ヘンじゃない?」
「あ、おでんや」
「流ノ介、何だそれは」
「間違ってますか?」
「俺、余ってるだろ!」
「あ~!」
「オイ!何やってんだよ!てゆうか、何で俺一番下なんだよ」
これがおでんにまつわる壮大なギャグでした。
重苦しいテーマをふっ飛ばしてしまう、笑いの要素が振るってます。
わざわざバンクっぽい「合体シークェンス」が作られているのも、ひたすら可笑しい。
ダルマ落としで崩されるのも、折神がこの形ならではです。
気を取り直し、ショドウフォンで「合」の字を描く丈瑠。
本当の侍合体です。
最後に兜を自分で被るのがカッコいい。
コクピットはこんな感じ。屏風とか水引とか、ホントにぶっ飛んでます。制作陣も思わず笑ってしまったとか。それでいて割とカッコいいのがニクい。
「シンケンオー!天下統一!」
がキメ台詞。
イメージ映像のやり過ぎ感が堪りません。
巨大戦の新味は、大ナナシ連中!
チャンバラよろしく、バッサバッサと切り捨てていきます。
巨大戦闘員なんてのは、今までになかった要素ですね。毎回やってくれるのでしょうか。やってくれると嬉しいのですが。
その間、「獅子火炎哮」なる技も登場。「胸ライオン」から火炎を吐くという、ファンタジー戦隊ならではの技です。
そして、オオツムジに「ダイシンケン侍斬り」!
懐かしの円月殺法型でした。やっぱり巨大ロボの必殺技はこうでなくては。
「これにて、一件落着!」
が敵を撃破した後のキメ台詞のようです。
戦いが終わり、皆で反省会(?)。
流ノ介は、
「侍としての覚悟、ようやく身に染みましたぁっ!」
と土下座。
茉子は、黙って頷いています。
千明は、
「殿様ってのが気に食わないのは、一緒だけどね」
と相変わらず流ノ介に食って掛かります。
ことはは、
「殿様、あの、ごめんなさい。うち、もっと頑張ります」
と決意表明。それに対し丈瑠は、
「お前は強かった」
と笑顔で答えます。笑顔になる一同。
丈瑠の「殿」としての度量、そして本来は優しいというヒーローならではの性格が、滲み出た瞬間です。
こういう短いシチュエーションで、キャラクターを描くという手法が小気味良いのです。
ある程度丈瑠というキャラクターを突き放しておいて、ここで一気に求心させるなど、揺さぶり方の巧さが際立っています。
流ノ介は、
「ああっ!何て寛大な!それに比べて私は!戦闘中にまであのような失態を!情けない!殿、お詫びの印に!」
といきなり服を脱ぎ始めます。
侍ならではの責任の取り方、つまり切腹でも始めようとするのか、と思わせるところがポイント。
でも、流ノ介は滝(?)に打たれるのでした。
茉子は、
「流ノ介が一番疲れるかも」
と冷ややかな一言。今回の笑いどころの一つです。
冬場の撮影だった筈なので、随分厳しかったでしょう。流ノ介役の相葉さんには拍手拍手です!
マサネコ
特撮方面でははじめまして^^;。
シンケンジャー第2話、折神獣のおでん合体には私も爆笑してしまいました。
後で知ったのですが、放送日の2月22日はおでんの日だったのですね…。
(熱々のおでんを冷ます際の「ふ~ふ~ふ~」との語呂合わせのようです。)
SirMiles(管理人)
こちらでははじめまして(笑)。
なるほど、おでんの日だったんですね。
ということは、この日を鑑みてわざわざネタ仕込みをしたってことですか。凄いですねぇ。