遂に始まったスーパー戦隊シリーズ第33作「侍戦隊シンケンジャー」。
最初デザイン等が発表された際、正直なところぶっ飛んだのですが、この第1話の感触は非常に良好。
中途半端な部分を一切削いで、「和のテイスト」に振り切ったのは成功でしょう。
漢字を大胆に配置したデザインは、実は個人的に「やられた」感がありまして、15年以上前に、私も考えたことがあるんです。
しかし、そのデザインは額のエンブレムとして漢字を配するという方法論だったので、シンケンジャーの「ゴーグルにしてしまう」という大胆さにまでは至っていません。
ホント、シンケンジャーのデザインのインパクトは強いです。
さて、「シンケンジャー」の特徴をこの第1話から拾い集めて見ると、次のようになると思います。
- 時代劇を意識するどころか、取り入れてしまっている
- 携帯電話型変身アイテムは、定番化
- 伊吹吾郎さんが出ている!
- レッドがクール
- レッドが他の戦士より格上であることが、保証されている
- 変身前の共通ユニフォームがない
- 敵側に素面幹部がいない
- 撮影手法の変更
1は、「バトルフィーバーJ」にて、倉間鉄山将軍の一面として積極的に取り入れられたのみで、ここまで全面的にフィーチュアされるのは初めてです(「忍者」は別)。
現代のサムライというテイストをどう打ち出すか興味がありましたが、時代錯誤な(伝統を重んじる)ジイと、それに反発しつつもサムライとしての自覚がある丈瑠のやり取りが良く、世界観構築は一定以上の成功を収めています。
また、各メンバーについては、流ノ介を伝統芸能の継承者、ことはを山村出身(?)というキャラクターに据えることで和のテイストを確保し、茉子と千明をいかにも現代的なキャラクターに仕立ててバランスをとっています。
それぞれの丈瑠に対する態度の違いも面白いです。
2は、何と筆に変形するという新味を取り入れて魅せます。
書道、漢字といったモチーフは、今問題になっている漢検等に象徴される「漢字ブーム」を取り入れたものと推測されます。
3は、言わずと知れた「水戸黄門」の格さんで、いきなり冒頭から丈瑠の傍で口上を始めてしまうのですから、実に嬉しい。
しかも、途中で遮られることで、その「伝統」を皮肉ってしまうところが良く、時代劇テイストを取り入れつつも、それを少しだけ笑ってみせるという姿勢が伺えます。
それにしても、いわゆる「本格的時代劇俳優(勿論、現代劇にも沢山出演しておられますが)」の登板は、前述の倉間将軍役の東千代之介さん以来ではないでしょうか。
また、司令官キャラが主人公より格下というのも、珍しいパターンです。
4は、「ボウケンジャー」以来の冷静沈着型レッドということで。しかも、冷静ながらも熱血タイプの多いレッドにあって、これだけクールなのは異色。
5は、4とも関連しますが、一人だけ突出したリーダー格というのも久々です。「ボウケンジャー」のボウケンレッドもかなりの権限を持ったリーダーでしたが、何しろ今回は「殿」と「家臣」ですから、既に身分自体が違うわけです。
ここまでレッドをリーダーとして特別扱いする戦隊は、前代未聞。せいぜい、「オーレンジャー」のオーレッドの階級が一人だけ大尉だったり、「ジュウレンジャー」のティラノレンジャーが一人だけプリンス(他のメンバーはナイト。因みにプテラレンジャーはプリンセス)だったくらい。
これには驚きました。ただ、この設定は徐々に崩れていくのではないかと予想。
6は、恒例化している故に当然今年も、と思わせておいて、サラッとかわされた印象。確かにユニフォームもいいですけど、個人的には色々な衣装を見たいので、この路線変更は歓迎です。
7は、久々に着ぐるみだけの敵組織ということで、そのデザインも相俟って不気味さが増しています。
「ゲキレンジャー」で多大な感情移入を許し、「ゴーオンジャー」でお茶目路線になったことから、素面幹部が廃されたものと想像できますが、やや残念な気もします。
最近は、劇的に悪い素面幹部というものを出しにくくなったのかも知れませんね。
8は、本当に驚いたんですが、フィルム撮影が廃止され、またオールアフレコも廃止されたそうなのです。
確かに独特の粒子感がなくなってよりハイビジョンな画質になっていたり、芝居とシンクロした音の空気感があったりと、平成仮面ライダーシリーズに近い感触になっていて驚きました。しかし、やっぱり戦隊テイストな画面。何故だろうと思っていると...。
公式サイトによれば、フィルムに近い思想のデジタルビデオカメラである「レッドワン」使用とのこと。これには納得です。
また、「よくオールアフレコをやめたな」というのが正直な感想で、恐らくアフレコの時間がない分、役者陣の拘束時間は長くなるのではないかと。また、作品の性質上、撮影のタイミングどりも大変なんじゃないか、と勝手に心配しました。
ただ、近年の殆どの特撮TVドラマが同録を当たり前としている中、スーパー戦隊シリーズだけがオールアフレコなのに違和感があったのも確か(逆パターンとして「ウルトラマンティガ」には開始当初、物凄い違和感がありました)。これは戦隊の新時代を告げると言っても過言ではないでしょう。
さて、第1話ということでちょっと長くなりますが、人物紹介がてら、ストーリーを追ってみます。
子供が隙間から現れた外道衆に襲われます。
隙間から現れるってのがいいですね。子供がちょっと怖がる要素ってのがいいです。
そして、黒子が煙玉を投げると、シンケンレッドが登場!
黒子が随所で効果的に使われており、全てが超常テクノロジーでないところに、ちょっとしたユーモアと絶妙なリアリティが感じられます。
「外道衆共、よーく聞け!こちらにおわすのは、300年の昔より貴様たちを葬ってきた侍の末裔、志葉家18代目当主である、シンケンレッド・志葉丈瑠様だ!さあ、恐れ入って隙間へ帰るか、殿の刀の錆となるか、しかと...」
「ジイ」
「はっ」
「長い」
「しかし、戦いと言うものはまずは...」
「参る!」
このやり取りがたまりません。
さすがは格さん。よく通る中低音の声質、場がパリッと引き締まる間の取り方、シンケンレッドがちゃんと「殿」に見える立ち位置に構え方。
どれを取っても極上の旨味。
やはり伊吹さんの起用は大正解であり、「侍戦隊」を冠するに相応しいキャスティングです。
しかも、ここで「伝統」を笑いに変えてしまっているのが良いです。
ここからは、オープニングに乗せてバッサバッサと爽快に切り捨てるシンケンレッドの勇姿。
とにかく強いレッドという図式は、チャンバラならではの趣向ですね。
シンケンレッドは、志葉家18代目当主・志葉丈瑠(しば たける)。ちょっと古風な感じが「殿」らしい。見事なキャスティングです。
ジイは「シンケンジャー結集のご決断を」とせまります。
しかし、丈瑠は1人でいいと答え、「忠義とか家臣とか時代錯誤だ」と返します。
基本、「シンケンジャー」はチャンバラ世界と現代劇の葛藤だということが、早くも冒頭で示されるのです。
ここからは、敵の紹介。
外道衆の「本部」は三途の川。
琵琶の音が凄くいい感じです。
こちら、骨のシタリ。チョーさんが怪しさ全開で声を演じています。
「大将」と呼ばれる血祭ドウコク。西凜太朗さんが声を担当。西さんといえば「ダイレンジャー」のシャダム中佐。嬉しい登板です。
そして、女性幹部は薄皮太夫。琵琶の音はこの薄皮太夫によるもの。超人気声優の朴璐美さんが担当しています。
血祭ドウコクをなだめられるのは、薄皮太夫と酒だけと言われており、彼の凶暴振りが際立ちます。
血祭ドウコクはかつて、志葉一族を皆殺しにしており、自らも返り討ちにあってバラバラにされたらしく、元に戻るまで時間がかかったようです。
しかし、志葉一族には生き残りが居ました。それが、丈瑠です。
さて、今回の怪人は、カゲカムロ。
カゲカムロはドウコクらとタメ口をきいているので、それほど上下関係は厳しくないのかもしれません。
このあたり、殿と家臣であるシンケンジャー側との対比が効いていますね。
カゲカムロの声は飛田展男さんが担当。カミーユ・ビダンとロラン・セアックが(以下自粛)。
ここからは、シンケンジャー集合プロセスが簡潔に描かれていきます。
池波家は歌舞伎役者の家柄であり、代々志葉家に仕えてきた家。
最も「伝統」に近いポジションにあり、「シンケンジャー」におけるチャンバラ世界の色濃い体現者だと言えます。
この青年が、シンケンブルーになる池波流ノ介(いけなみ りゅうのすけ)。現代的でありつつ、凛として表情がいいです。
流ノ介の父は池波流三郎。家元です。
父から水のエンブレムを受け取る流ノ介。このエンブレム、「水戸黄門」の印籠っぽくもあり、シンケンジャーをシンボライズする小道具として効果を発揮しています。
「いざという時には、いかなる時でも殿となる方の元へ。まだ見ぬお前の仲間達も、思いは同じだろう」
という父の言葉に頷く流ノ介。しかし...。
白石茉子(しらいし まこ)は幼稚園で子供達と楽しく過ごし、天のエンブレムは無造作にポケットへ。
谷千明(たに ちあき)はゲーセンで遊び呆けている最中。
花織ことは(はなおり ことは)は森の中で横笛を吹いています。竹細工職人という設定らしい。
その頃、カゲカムロは街に繰り出して非道の限りを尽くしていました。
人を斬りまくっていて、近年にない非道振りを発揮。なかなかショッキングです。
ジイはカゲカムロのような「アヤカシ」まで出てきたことで危機感を抱き、一刻も早く「家臣」を招集することを提案します。
丈瑠の回想では、火のエンブレムを父より受け継いだ時のことが描かれます。
津田寛治さんが17代目志葉家当主役。ただし、顔は見えません。矢が刺さっているのが壮絶です。
で、ジイがどうやって「家臣」を召集するかというと、何と矢文!
歌舞伎の舞台中に矢が到達し、本番を放棄して現場に急ぐ流ノ介。画像はありません。
頬張ろうとした肉まんに矢が命中したのは、シンケングリーンになる谷千明。いかにも現代風の少年といった感じ。
幼稚園の木に矢が刺さり、それに気付いたのは、シンケンピンクになる白石茉子。籠での迎えが来るという、何故か特別待遇です。「姫」とされていても違和感のない、上品な美貌の持ち主ですね。
額に吸盤付きの矢が命中するというおとぼけ振りを発揮したのは、シンケンイエローになる花織ことは。何となくフワッとしたムードが可愛らしいです。
ジイは「畳返し」(!)で床下から4人分のショドウフォンを取り出し、丈瑠に手渡すと、丈瑠はショドウフォンで「馬」のモヂカラ(文字の力)を発動し、白馬を登場させて街に向かいます。
ちゃんと本人が馬を操っているのが秀逸。このシーンの為に乗馬クラブに通ったとか。
集合場所では、到着した流ノ介が茉子を殿と間違え、更にことはが流ノ介を殿と間違えるというギャグが登場。初対面であることを印象付ける名シーンです。
流ノ介は直ちにメイクを落として挨拶。
千明に至っては、流ノ介の格好とか、茉子の籠を見て、
「何か、すげぇな」
と半ば呆れたような発言。各々のスタンスすら簡潔に表す秀逸なやり取りです。
白馬に乗って丈瑠が現れる様は「暴れん坊将軍」を彷彿。
「(ショドウフォンを受け取るかどうかは)覚悟で決めろ」
と言う丈瑠に、
「殿!ここに来た以上、覚悟はできています。戦わせて下さい。殿と共に!」
と流ノ介。
「ま、子供の頃からそのつもりでいたし...」
と茉子。
「一生懸命頑張ります」
とことは。
「大袈裟なんだって。さっさと終わらせればいい話だろ。なぁ、殿様」
と千明。
短いセリフだけで意気込みの違いや温度差を遺憾なく描写。
4人がショドウフォンを受け取ると、黒子がいきなり登場。
幕が取り巻き、男女関係なく無理矢理着替えさせられる(笑)!
そして、正装(?)となった5人が登場。
「その家紋、まさか、お前ら!」
とカゲカムロ。
家紋で判断するあたりが、時代劇っぽくて面白いです。素晴らしいケレン味。
モヂカラでシンケンジャーに変身!
刀を使ったシンプルな名乗り。しかも、「シンケンレッド」と「シンケン」を付けるのは丈瑠のみで、他のメンバーは「同じくブルー」と「同じく」と名乗ります。これは新しい!
「天下御免の侍戦隊!シンケンジャー、参る!」
ここからは、大量のナナシ連中相手にチャンバラアクション!
完全なチャンバラの殺陣ではなく、戦隊アクションの要素もちゃんと入っているところがミソ。
それぞれの個人武器をちゃんとフィーチュアしたアクションも、紹介編としては及第点以上の出来。
そして、ナナシ連中があまりに大量な為、流ノ介が「殿をお守りする」とか言い出すのですが、
「お前は自分を守ってろ。面倒だ」
と軽くあしらう丈瑠のカッコ良さ。
レッドが素晴らしく強いってのも爽快ですね。巨大な烈火大斬刀で豪快に斬り飛ばしまくります。
逆に、
「もっとまじめに練習しとくんだった」
という千明のセリフにより、シンケングリーンがちょっとダメなヤツという印象付け。
遅ればせながら、これがカゲカムロです。普通に不気味なデザイン。
カゲカムロは、何とシンケンレッド一人に倒されてしまいます。
今回の巨大化のエクスキューズは、「アヤカシは命を2つもっており、一の目と二の目がある」というもの。
つまり、等身大戦で一の目を潰したとしても、二の目がある為巨大化して襲ってくるということです。なかなか巧いですね。
すぐに丈瑠は火のエンブレムを「折神大変化」で巨大化させ、獅子折神に一体化。
他のメンバーも続きます。
獅子折神、龍折神、亀折神、熊折神、猿折神。
折神は式神であり、巨大化した時だけこの形になるわけではなく、小さい時も変形して可愛らしい動きを見せてくれます。
前作の炎神キャストの発展型ですね。
巨大戦は、エンブレムモードを使ったシュールでユーモラスな攻撃が秀逸。
はっきり言ってしまうと、エンブレムモードって使えない形状だな、と思っていましたが、ゴロゴロ転がったりする様子を見て、演出に込められた創意工夫に驚嘆しました。
カゲカムロの足の上に落ちて、カゲカムロの目玉が飛び出したりと、楽しい演出が満載。
とどめは獅子折神の五角大火炎。飛行モードに変形して火の鳥になって突っ込むというもの。
「これにて一件落着」
のキメ台詞も、らしくてイイですね。
第1話にして、それぞれの個性が際立っていて痛快。
しかも、チャンバラの要素を全面的に押し出し、逆に現代劇をスパイスにすることで、そのギャップの面白さを狙っており、好感が持てます。
折神も、最初雑誌で見たときは正直微妙でしたが、動くのを見ると可愛らしく魅力的であり、今年もミニプラを買い漁ることになりそうです(笑)。
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