8人イエスから再び離散が起こり、ラビン体制の90125イエスが残留した。「ロンリー・ハート」、「ビッグ・ジェネレイター」を制作したメンバーの手による本作は、それら2つのアルバムとはかなり赴きの異なる作風となった。
勿論、ラビンのヘヴィでハードなポップ・ミュージック趣向は全編に漂っているが、「ビッグ・ジェネレイター」程あからさまではなく、イエスとしてのアイデンティティ、つまりプログレッシヴ・ロック・グループという肩書きの雰囲気が存分に感じられるアルバムとなっている。これは、「結晶」で既に示された方向性であり、ABWHとの交流がこの音を作ったのだろう。現に「結晶」で聴かれた90125イエスの楽曲の雰囲気は、本作と大差ないように思われる。
「コーリング」や「ステイト・オブ・プレイ」といったキャッチー路線はもはや無敵の印象。ラビン無しにはありえない旋律の美しさとアレンジメントの重厚さが映える傑作である。一方で、「リアル・ラヴ」や「ホェア・ウィル・ユー・ビー」のようなABWHを想起させるような曲もあり、必ずしもラビンが一方的にプロデュース・ワークを行っていたわけではないことが感じられる。
そして、本アルバム最大の問題作は最終を飾る大作「エンドレス・ドリーム」である。スピード感と重厚感をこれでもかと感じさせる開幕パートの素晴らしさは鳥肌モノ。泣きギターが唸る重厚な中間パートはタイトル・チューンでもある。最後のパートは奥行きを感じさせるバラッドとなっており、プロダクションの良さが光る。当時は「危機」の続編だとはやし立てられたのだが、「危機」とは全く世界が異なるのは一聴瞭然であり、アルバム全体の中にこの形態で配されたことに意味がある。90125イエス最後の輝きを是非とも感じ取っていただきたい。
- 原題
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Talk
- 邦題
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トーク
- パーソネル
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Jon Anderson - Vocals
Trevor Rabin - Guitars, Keyboards, Vocals, Programming
Chris Squire - Bass Guitars, Vocals
Tony Kaye - Hammond Organ
Alan White - Drums
- 曲目
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- The Calling (コーリング)
- I am Waiting (アイ・アム・ウェイティング)
- Real Love (リアル・ラヴ)
- State of Play (ステイト・オブ・プレイ)
- Walls (ウォールズ)
- Where Will You Be (ホェア・ウィル・ユー・ビー)
- Endless Dream (エンドレス・ドリーム)
- Silent Spring (サイレント・スプリング)
- Talk (トーク)
- Endless Dream (エンドレス・ドリーム)
- The Calling
(コーリング<スペシャル・ヴァージョン>)
※ 8 はボーナストラックです。
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