トレヴァー・ラビン体制に耐えかねたアンダーソンが、自身のソロ・プロジェクトとしてブラッフォード、ウェイクマン、ハウといった「こわれもの」「危機」を作り上げた仲間を集結させた。やがてそれはイエスそのものではないかという認識となり、ラビン体制のイエス(いわゆる90125イエス)とは異なるもう一つのイエスとして活動することになった。それが、このアンダーソン・ブラッフォード・ウェイクマン・ハウというグループである。長いグループ名になったのは、無論本家90125イエスが存続していたからである。
さて、肝心の内容はというと、キラキラとした透明感を伴った粒子の細かい音が絡み合うようにして構成された、実に美しくダイナミックな曲群が並ぶ傑作である。それは、そのまま「危機」や「究極」といった傑作の特徴を継承したものだ。
イエスを名乗ったとした場合、このアルバムに欠けているのはスクワイアのベースとコーラスなのだろうが、決定的に欠けているのはアコースティック感である。この時期、ブラッフォードはエレクトリック・パーカッションに傾倒しており、ウェイクマンのキーボード・ワークも当然デジタル化されているわけで、所々では音の軽さが目立っている。ちなみに、ベースはトニー・レヴィンが担当している。レヴィンの起用は恐らくブラッフォード繋がり。
ただ、重量感という点をあえて軽視したとき、本作の美しさの突出振りがうかがえるのは間違いない。「テーマ」、「ブラザー・オブ・マイン」のようなこれぞ新世代イエス・ミュージックと唸らせるようなものや、「バースライト」や「クァルテット」のように各人の持ち味が存分に発揮されたもの、「TEAKBOIS」のようにアンダーソン趣味丸出しのものまで、実にバランスよく配された傑作アルバムである。
- 原題
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Anderson, Bruford, Wakeman, Howe
- 邦題
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閃光
- パーソネル
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Jon Anderson - Lead Vocals
Bill Bruford - Acoustic and Electric Drums
Rick Wakeman - Keyboards
Steve Howe - Guitar
- 曲目
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- Themes (テーマ)
- Sound (サウンド)
- Second Attention (セカンド・アテンション)
- Soul Warrior (ソウル・ウォーリアー)
- Fist of Fire (フィスト・オブ・ファイアー)
- Brother of Mine (ブラザー・オブ・マイン)
- The Big Dream (ビッグ・ドリーム)
- Nothing Can Come Between Us (ナッシング・キャン・カム・ビトゥイーン・アス)
- Long Lost Brother of Mine (ロング・ロスト・ブラザー・オブ・マイン)
- Birthright (バースライト)
- The Meeting (ザ・ミーティング)
- Quartet (クァルテット)
- I Wanna Learn (アイ・ワナ・ラーン)
- She Gives Me Love (シー・ギヴズ・ミー・ラヴ)
- Who Was the First (フー・ワズ・ザ・ファースト)
- I'm Alive (アイム・アライヴ)
- TEAKBOIS (TEAKBOIS)
- Order of the Universe (オーダー・オブ・ザ・ユニバース)
- Order Theme (オーダー・テーマ)
- Rock Gives Courage (ロック・ギヴズ・カリッジ)
- It's So Hard To Grow (イッツ・ソー・ハード・トゥ・グロウ)
- The Universe (ザ・ユニバース)
- Let's Pretend (レッツ・プリテンド)
- Themes (テーマ)
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