このアルバムを初めて聴いたときの驚きは、キング・クリムゾンの「ディシプリン」を聴いた時に匹敵するものだった。
確かに、本作と「ディシプリン」の2作には共通点がある。共に、それまでのグループにとって明らかに異質な、それでいて強力な個性を持ったメンバーが加入している点。そして別のグループ名義で活動しようとしていたものが、結局「元サヤ」になったというパターンを踏んでいる点である。
ただ、クリムゾンの「ディシプリン」に比べ、イエスとしての違和感があまり感じられないのが本作の特徴。それは、ラビンのハード・ポップ・コンポーザーとしての個性が、イエスが常に標榜していたと思われる「ポジティヴ」に見事にマッチしたからに他ならない。リズムとしては基本的に8ビートがベースで、以前のような変拍子の嵐や細かな音符の重なりといったものは感じられにくいが、そこはトレヴァー・ホーン(!)による緻密なプロデュース・ワークによって、イエスの構築美感覚が完璧に発揮されている。
本作は80年代ロックにありがちな、独特の古臭さがないところが本当に凄い。イエスのアルバムの中で一番売れており、現在でもCMソング等に採用されている「ロンリー・ハート」など、絶妙なノリを湛えたチューンは酔える事必至。
- 原題
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90125
- 邦題
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ロンリー・ハート
- パーソネル
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JON ANDERSON - VOCALS
CHRIS SQUIRE - BASS GUITAR AND VOCALS
TREVOR RABIN - GUITARS, KEYBOARDS, VOCALS
ALAN WHITE - DRUMS, PERCUSSION, VOCALS
TONY KAYE - KEYBOARDS
- 曲目
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- Owner of a Lonely Heart (ロンリー・ハート)
- Hold On (ホールド・オン)
- It Can Happen (イット・キャン・ハプン)
- Changes (変革)
- Cinema (シネマ)
- Leave It (リーヴ・イット)
- Our Song (アワ・ソング)
- City of Love (シティ・オブ・ラヴ)
- Hearts (ハーツ)
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