ウェイクマン、そしてイエスの「顔」とも言うべきアンダーソンが脱退。窮地に立たされたスクワイアの大胆な試みは、「ラジオスターの悲劇」で大ヒットを飛ばしたトレヴァー・ホーンとジェフ・ダウンズからなるバグルスを吸収合併するというものだった。元々バグルスの2人がイエスのファンだったということも手伝って、スクワイアの思惑はすんなりと通用した。
プロダクションが緻密で、よく出来たプログレッシヴ・ロック・アルバムである。「マシーン・メシア」では、ホーンがアンダーソンを彷彿させるハイ・トーン・ヴォーカルを披露しているが、他のパートは過去のイエスと異なり、かなりヘヴィな音作りになっている。このあたりは、ダウンズの醸し出すキーボード・ワークの雰囲気に拠るところが大きい。「白い車」に至ってはダウンズの誇るシンセ・オーケストラの独壇場で、過去のイエス・ワールドとは全く異なっている。
一方、「夢の出来事」では、変拍子、明るいメロディといった部分が本来のイエス・ミュージックを感じさせる。「光を越えて」では、ホワイトの安定感溢れるドラムやメロディの組み立て方が、後の90125イエスへの展開を予感させる。「光陰矢の如し」は「イエス」という単語が連発される、疾走感溢れるナンバーで、往年のスピード感を強く感じさせる。
このように、イエスになろうとする要素と、後のエイジアで展開される、複数の楽器のユニゾンで厚みと奥行きを出す方法論や、アンダーソンほどの華がないホーンのヴォーカルなどとがズレを生じさせており、スクワイアの妙に元気なベースを除けば、後にダウンズとハウが参加するエイジアのアルバムに聞こえてしまう部分が多い。「レンズの中へ」などは傑作ナンバーながら、その感覚が最も強い曲に挙げられるだろう。
- 原題
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Drama
- 邦題
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ドラマ
- パーソネル
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Geoff Downes - Keyboards & vocoder
Trevor Horn - Vocals & bass
Steve Howe - Guitars & vocals
Chris Squire - Bass, vocals & piano
Alan White - Percussion & vocals
Steve Howe used the following guitars:
Track 1 - Gibson The Les Paul
Track 3 - Gibson Les Paul Gold Top
Track 4 - Fender Steel and Telecaster
Track 5 - Martin Mandolin, Gibson The Les Paul
Track 6 - Fender Telecaster
- 曲目
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- Machine Messiah (マシーン・メシア)
- White Car (白い車)
- Does It Really Happen? (夢の出来事)
- Into the Lens (レンズの中へ)
- Run Through the Light (光を越えて)
- Tempus Fugit (光陰矢の如し)
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