初めて聴いたときは衝撃的だった。オープニング・ナンバーはのっけからディストーションの効いたハウのスティール・ギター。ノリの良いロックンロール系リズムに度肝を抜かれる。アンダーソンのこれまで以上にハイ・トーンなヴォーカル、独創的なコーラス、ウェイクマンの超速弾きシンセ。素晴らしくハイ・テンションなタイトル・チューン「究極」はイエスに新しい側面を加えた印象的な1曲だ。
本作を聴くと、精緻なモザイクのような緻密に過ぎるイエス・ミュージックはない。むしろパワーに溢れた、各人の技量に依存したライヴ感溢れる音作りになっており、ダイナミックな量感に圧倒される傑作アルバムだということが分かる。
アンダーソンの持つ叙情性と、ハウのマイルドなアコースティック・ギターが見事なコラボレーションを成す「世紀の曲り角」、次なる「パラレルは宝」は、ウェイクマンのチャーチオルガンがシアトリカルな効果を存分に発揮する。「不思議なお話を」はスロー・テンポな曲ながら、アンダーソンの澄んだヴォーカルとハウの爽やかなギター、ウェイクマンのきらびやかなシンセ、スクワイアとホワイトによる足元のしっかりしたリズムセクションが冴える傑作。
そして、何と言っても真に「究極」なのは、シャープなプログレ・ナンバー「悟りの境地」。幽玄の彼方から迫るアンダーソンのヴォーカルに始まり、目くるめくハウのギターとウェイクマンのキーボード・ワークが展開されていく。スクワイアの骨太なベースとホワイトのズッシリとしたドラミングが支える中、自由に飛び回るヴォーカル、コーラス、ギター、キーボード。見事なアンサンブルで幻想に満ちた世界を描ききった超傑作ナンバーだ。
- 原題
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Going for the One
- 邦題
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究極
- パーソネル
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Jon Anderson - Vocals, Harp
Steve Howe - Steel guitar, Acoustic and electric guitar and vocals, Vachalia
Chris Squire - Bass guitar and vocals
Rick Wakeman - Piano and electric keyboards, Church organ, Polymoog
Alan White - Drums and percussion, tuned percussion
※ 各トラックのクレジットを元に構成しました。
- 曲目
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- Going for the One (究極)
- Turn of the Century (世紀の曲り角)
- Parallels (パラレルは宝)
- Wonderous Stories (不思議なお話を)
- Awaken (悟りの境地)
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