イエス初のオムニバス盤である本作は謎に満ちている。その謎の主体は、その選曲にある。冒頭の「アメリカ」と最後の「ディア・ファーザー」はオリジナル・アルバム未収録曲とあって、未収録曲を収録するスタンスを採ることの多いオムニバス盤としての手法に基づいている為例外とするが、その他の曲がすべて「ファースト・アルバム」と「時間と言葉」の曲で占められているのだ。
発売時を考えると傑作アルバムが出揃っているので、「こわれもの」や「サード・アルバム」、「危機」「海洋地形学の物語」「リレイヤー」といったアルバムから壮大な組曲がエディットされてでも収録されそうなものだが、そういった作品はなぜか一切無視されている。もしかしたら、「サード・アルバム」で名声をものにしたイエスが、それ以前の歴史をファンに知ってもらおうと意図したのかも知れないし、単に本人達のノスタルジーであったのかも知れない。
実際、このオムニバス盤を聴いていると無性に初期2枚が聴きたくなる。本オムニバス盤発売時のイエスは、モラーツの脱退や音楽性の試行錯誤などもあって、結構疲弊していたのではないだろうか。初期へのノスタルジーという解釈は、強ち外れとは言いがたいのではないか。
以後、かなりのオムニバス盤が発売されるイエスだが、ここまで極端で妙な個性を放つものは現れようがない。
- 原題
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Yesterdays
- 邦題
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イエスタデイズ
- パーソネル
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Jon Anderson - vocals
Chris Squire - bass & vocals
Steve Howe - guitar & vocals
Rick Wakeman - keyboards
Bill Bruford - drums
Tony Kaye - organ
Peter Banks - guitar & vocals
- 曲目
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- America (アメリカ)
- Looking Around (ルッキング・アラウンド)
- Time and a Word (時間と言葉)
- Sweet Dreams (スウィート・ドリームス)
- Then (ゼン)
- Survival (サヴァイヴァル)
- Astral Traveller (星を旅する人)
- Dear Father (ディア・ファーザー)
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