新ドラマーのアラン・ホワイトと共にツアーを終えたイエスが発表したのは、2枚組全4曲という「これぞプログレ」と言わんばかりのコンセプト・アルバムだった。何やら宗教めいた歌詞や奥行きのある音場作り、壮大なスケール感。要素を引っ張り出すと傑作の香りに包まれたアルバムであると断言できる。
アンダーソンの呪文のようなヴォーカルから幕開ける「神の啓示」は、ウェイクマンのシンセサイザーがかなり前面にフィーチュアされた、シンフォニックなナンバー。前半はゆったりとしたリズムで推移していくが、突然後半よりテンポ・アップし、ホワイトならではの重厚なリズムとウェイクマンの驚異的なソロが堪能できる。2曲目「追憶」は、一転してコーラス・ワークを重視した静かなナンバーだが、そこは簡単にいかない本作、後半はハードなハウのアルペジオをフィーチュアしたものに変化していく。
異様に細かいフレーズが続々と重なるオープニングが鮮烈な「古代文明」は、変拍子と不協和音を多用した幻想味溢れる構成で、イエスとしては少々異色のナンバーである。ただし、ハウのアコースティック・ギターが延々とフィーチュアされるなど、イエスならではの要素も縦横に感じられる。最後を飾る「儀式」は、本作のハイライト。各インストゥルメントの複雑で不思議なコラボレーションと美しいコーラス・ワーク、特にホワイトが作り出すドラムは一見オーソドックスでありながら、実に各パートをうまくリードしており、この安定感がイエスにもたらした影響は大きい。
制作中にリック・ウェイクマンが「冗長だ」という類の発言をしたそうだが、強ち外れてはいない。しかしながら本作を強く傑作に推したいところ。何といっても2枚にわたり各人の力量が如何なく発揮され、魅力的なフレーズがそこかしこに現れる贅沢さがたまらない。さらに、「危機」までに比べミックスなどポスト・プロダクションに緻密さが感じられるのが良い。音が綺麗だ。
- 原題
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Tales from Topographic Oceans
- 邦題
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海洋地形学の物語
- パーソネル
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Jon Anderson - Vocals
Steve Howe - Guitars, Vocals
Chris Squire - Bass, Vocals
Rick Wakeman - Keyboards
Alan White - Percussion
※ ジャケットに記載されたクレジットが人名のみなので、独自に再構成しました。
- 曲目
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DISC ONE
- The Revealing Science of God (神の啓示)
- The Remembering (追憶)
DISC TWO
- 'The Ancient' (古代文明)
- Ritual (儀式)
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