問答無用のイエス最高傑作。全3曲という構成は、紛れも無くプログレッシヴ・ロックの記号的解釈を誘うことができるが、このアルバムは当然それにとどまることが無い。前作で得られた強固な各人のコラボレーションが、さらに拡大解釈と詳細設計を施され、1枚のアルバムに作品として収められている。それは効果音から一糸乱れぬコーラスまでを完璧にコントロールした、一種のインダストリアル・プロダクションだ。
長尺でありながら、一気に聴かせる構成力。複雑なアレンジを、窮屈さを感じさせること無く適度な緊張感を維持して盛り込む類稀な演奏力。あらゆるアイディアを見事な構成力でまとめたタイトル・チューン「危機」は、イエスのプログレッシヴ・ロック・グループとしての側面を最も象徴した一曲だ。ロックならではの高揚感も、ここではさながらシンフォニーのようなドラマチックな高揚感へと昇華される。フィナーレに至る部分は何度聴いても鳥肌モノだ。
2曲目「同志」は、一転してハウのアコースティック・ギターをフィーチュアした穏やかなパートより開始される。全編がハートウォーミングなフレーズで彩られ、ウェイクマンのメロトロンが壮大さを演出する。ここでは、スケールの大きなイエス・ワールドが演出されており、1曲目との対比が鮮やかだ。
そして、最後を締めくくるのは、軽やかなフレーズで人気の「シベリアン・カートゥル」。細かい音符が織物のように一つの曲を形成しており、複雑な構成ながらポップな雰囲気を醸し出す代表曲。「同志」とこの曲は後々までずっとライヴで演奏されており、「サード・アルバム」の楽曲群と並んで最重要レパートリーになっている。
- 原題
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Close to the Edge
- 邦題
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危機
- パーソネル
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Jon Anderson - Vocals
Bill Bruford - Percussion
Steve Howe - Guitars, Vocals
Chris Squire - Bass, Vocals
Rick Wakeman - Keyboards
- 曲目
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- Close th the Edge (危機)
- The Solid Time of Change (着実な変革)
- Total Mass Retain (全体保持)
- I Get Up I Get Down (盛衰)
- Seasons of Man (人の四季)
- And You and I (同志)
- Cord of Life (人生の絆)
- Eclipse (失墜)
- The Preacher the Teacher (牧師と教師)
- Apocalypse (黙示)
- Siberian Khatru (シベリアン・カートゥル)
- Close th the Edge (危機)
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