イエスの代表作といって、これを挙げる人は多い。それほど、このアルバムには「イエスらしさ」が溢れている。その「らしさ」とは、つまり緻密なアレンジが生むダイナミズムと、次々と繰り出されるフレーズがまとまりを見せて曲を成すこと、さらにポップなフィーリングであると説明できるだろう。
まず1曲目「ラウンドアバウト」から既にその特徴が顕著である。骨太かつ疾走感溢れるベース、タイトで正確無比それでいて個性的なドラミング、バッキングでありながらフレーズとして成立するギターワーク、驚嘆すべき手数でアレンジの幅を広げるキーボード・プレイ。それら全てがこの1曲に集約されている。
このアルバムのもう一つの特徴は、各人のソロ系ナンバーが収録されていることである。ウェイクマンのキーボード・ワーク「キャンズ・アンド・ブラームス」、アンダーソンのコーラス・ワーク「天国への架け橋」、ブラッフォードの手によるアヴァンギャルドな「無益の5%」、ハウのアコースティック・ナンバー「ムード・フォー・ア・デイ」、そしてスクワイアの「ザ・フィッシュ」。それぞれのテクニックやアイディアが、小品に詰まっているようで面白い。ただ、トータルの完成度における評価を次作「危機」に譲った形になっているのが、これらソロ作品による散漫なイメージ故であることも付け加えておかなければならない。
本作は、そういったソロ作品に費やされて、前作のような大作が少ないのだが、「天国への架け橋」から「南の空」へ繋がるシークェンスや、「遥かなる想い出」から「ザ・フィッシュ」への組曲的な構成など、前作を思わせる部分が継承されており、全員が素晴らしいコラボレーションを見せる「燃える朝焼け」では組曲・大作として結実する。このアルバム構成は見事と言うほかない。
- 原題
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Fragile
- 邦題
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こわれもの
- パーソネル
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Jon Anderson - Vocals
Bill Bruford - Drums, Percussion
Steve Howe - Electric and Acoustic Guitars, Vocals
Chris Squire - Bass Guitars, Vocals
Rick Wakeman - Organ, Grand Piano (Electric Piano and Harpsichord) Mellotron,
Synthesizer.
- 曲目
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- Roundabout (ラウンドアバウト)
- Cans and Brahms (キャンズ・アンド・ブラームス)
- We Have Heaven (天国への架け橋)
- South Side of the Sky (南の空)
- Five Per Cent for Nothing (無益の5%)
- Long Distance Runabout (遥かなる想い出)
- The Fish (ザ・フィッシュ)
- Mood for a Day (ムード・フォー・ア・デイ)
- Heart of the Sunrise (燃える朝焼け)
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