イエス第三作。初期の傑作として位置づけられ、組曲形式や大作主義を持ち込んだプログレッシヴ・ロック・グループとしてのアイデンティティを確立しつつある様子が見て取れる、重要なアルバムだ。
オープニングの「ユアズ・イズ・ノー・ディスグレイス」から既に組曲形式の大作で、ポジティヴ・パワーを湛えた関連性のある楽曲が次々と連なっていく方法論は、後の「危機」に繋がるものであることは明白。
こういった楽曲の組み立て方やアレンジメントの細やかさの要因は、やはり新たに加入したスティーヴ・ハウに依るところが大きい。バンクスと明らかに違うのは、極めて理性的にアレンジの裏表を縫った演奏を繰り広げることである。他のパートに重きが置かれるときは控えめに、かつ細かいアルペジオで支え、自らのソロではテクニックの嵐というスタイルだ。完全なソロ作品である「ザ・クラップ」が収録されているのも、ハウの存在意義を前面に押し出しているようで興味深い。
組曲形式のナンバーは他にも多数収録されている。プログレの「長く複雑な」特徴は、様々なハウのギター・プレイを聴くことが出来る「スターシップ・トゥルーパー」や、見事なコーラス・ワークが光る「アイヴ・シーン・オール・グッド・ピープル」、複雑なリズムを次々と出現させるハウとケイのコラボレーションが絶妙な「パペチュアル・チェンジ」と殆どの曲に当てはまるのだが、そこに聴き易さが加わるところがイエスならではと言える。これらの楽曲は、後々の重要なレパートリーとして永く残っている。それほど本作がイエスにとって、ターニング・ポイントであり重要な作品であることは論を待たない。
- 原題
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The Yes Album
- 邦題
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サード・アルバム
- パーソネル
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John Anderson - vocals/percussion
Chris Squire - bass guitars/vocals
Steve Howe - electric & acoustic guitars/vachalia/vocals
Tony Kaye- piano/organ/moog
Bill Bruford - drums/percussion
- 曲目
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- Yours is No Disgrace (ユアズ・イズ・ノー・ディスグレイス)
- The Clap (ザ・クラップ)
- Starship Trooper (スターシップ・トゥルーパー)
- Life Seeker (ライフ・シーカー)
- Disillusion (ディシルージョン)
- Wurm (ワーム)
- I've Seen All Good People (アイヴ・シーン・オール・グッド・ピープル)
- Youe Move (ユア・ムーヴ)
- All Good People (オール・グッド・ピープル)
- A Venture (ア・ヴェンチャー)
- Perpetual Change (パペチュアル・チェンジ)
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