イエスのデビュー作。重厚なリズム・セクションと、リッチなコーラスに彩られたポップ・チューンは、今聴いても十分新鮮。適度な緊張感もあり、ジャズやブルーズのテイストも散りばめられ、イエスとしてのアイデンティティは、未完成ながらもこのアルバムに感じられる。
「アイ・シー・ユー」と「エヴリ・リトル・シング」がカヴァー曲。どちらも原曲からかなり距離を置いたアレンジメントが施されており、結構楽しめる。オリジナル曲もその後のイエスを考え併せると、2、3倍は楽しめる。冒頭を飾る「ビヨンド・アンド・ビフォア」や、「サヴァイヴァル」の、少々マッタリとした展開に分厚いコーラスとガリガリベースが絡むところなど必聴。
ところで、ファーストの特徴は、何といってもピーター・バンクスのギター。スティーヴ・ハウ加入後のイエスと決定的に違うのは、やはりこの一点に尽きる。トニー・ケイとリック・ウェイクマン二人のキーボード・プレイヤーの違いに比べ、より大きなギャップがあると思える。そのバンクスのプレイが光るのは、皮肉にも2つのカヴァー曲である。
一方、「ルッキング・アラウンド」のように、ケイのグルーヴィなオルガンが鳴り響く佳曲も。以上のような楽しさに満たされたファースト。しかしながらこのままでは、イエスがプログレ・バンドの彗星になることは出来なかっただろう。
- 原題
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Yes
- 邦題
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ファースト・アルバム(旧邦題:イエスの世界)
- パーソネル
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Bill Bruford - drums, vibes
Tony Kaye- organ, piano
Peter Banks - guitar, vocals
Chris Squire - bass, vocals
John Anderson - lead singer and inicidental percussion
- 曲目
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- Beyond and Before (ビヨンド・アンド・ビフォア)
- I See You (アイ・シー・ユー)
- Yesterday and Today (昨日と今日)
- Looking Around (ルッキング・アラウンド)
- Harold Land (ハロルド・ランド)
- Every Little Thing (エヴリ・リトル・シング)
- Sweetness (スウィートネス)
- Survival (サヴァイヴァル)
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